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アリシアクリニックが破産!?脱毛クリニックから返金が受けられないときの対処法を弁護士が解説

作成日:
川手雅

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

アリシアクリニックという大手脱毛クリニックの経営母体である医療法人が、突然、破産を申請し、破産手続き開始決定を受けたという報道がありました。
これにより、利用者は、費用を支払済みなのに施術を受けられず、未施術の分の返金にも応じてもらえない状態になります。

現金で全額支払い済みの場合、未施術で返金されるべきお金は、破産債権として取り扱われます。破産債権は、破産手続きの中で配当を受けることで一部返金されることになりますが、破産管財人によれば現時点で配当の見込みはなく、返金は極めて難しいとのことです。

全国に支店を設けて利用者も多い脱毛クリニックが、破産手続きを行うことはしばしばあります。

今回の記事では、脱毛クリニックの返金トラブルについての対処法を解説します。

※本記事は2024年12月11日時点の情報に基づいて執筆しております。

この記事を読んでわかること

  • アリシアクリニックの騒動の概要
  • 脱毛クリニックで返金トラブルに遭遇した場合の対処法

ここを押さえればOK!

アリシアクリニックの経営母体が破産手続きを申請し、利用者が未施術分の返金を受けられない事態が発生しました。
現金で全額支払済みの場合、未施術分の返金は破産債権として扱われ、配当できるお金があれば一部配当金として返金されますが、破産管財人によればそれは極めて難しい状況とのことです。
クレジットカードで分割払いをしている場合は、クレジットカード会社に支払い停止を求めれば、支払を止められる可能性がありますので、すぐに対応することが重要です。
脱毛クリニックの返金トラブルに遭った場合の一般的な対処法として、脱毛クリニックに返金請求をする、クレジットカード会社に支払い停止や返金を求める、第三者に相談をする、他の脱毛クリニックで施術を受けるなどの方法があります。
この記事の監修弁護士
弁護士 重光 勇次

弁護士 重光 勇次

アディーレ法律事務所

同志社大学、及び、同志社大学法科大学院卒。2009年弁護士登録。アディーレに入所後、福岡支店長、大阪なんば支店長を経て、2022年4月より商品開発部門の統括者。アディーレがより「身近な法律事務所」となれるよう、新たなリーガルサービスを開発すべく、日々奮闘している。現在、神奈川県弁護士会所属

アリシアクリニック騒動の概要

アリシアクリニックは、医療脱毛クリニックです。

その経営母体である医療法人が、突然破産手続きを申請し、破産手続き開始決定を受けたという報道がありました。

報道により、代金を支払った利用者が破産を知ったことも多いようです。利用者としては、当然、「全額支払ったのに、未施術の分のお金を返してほしい」「クレジットカードで分割払いしたけど、引き落としは拒否できるの」という不満や不安を抱えることでしょう。

破産管財人によれば、債権者は約9万人を超えるということであり、その中には相当数の返金を受けられない利用者が含まれると考えられます。

代金を全額支払い済みの場合、未施術で返金されるべきお金は、破産債権として取り扱われます。破産債権は、破産手続きの中で配当を受けることで一部返金されることになりますが、現時点で配当の見込みはなく、返金は極めて難しいとのことです。

参考:「アリシアクリニックの破産について」|破産管財人

脱毛クリニックで返金トラブルに遭った場合の対処法5つ

アリシアクリニックを経営する医療法人は破産申請を行って破産手続き開始決定を受けていますので、個別に返金を請求したとしても、残念ながら返金されません。

アリシアクリニックに限らず、脱毛クリニックに対し、中途解約をして返金を求めたのに、返金してもらえないというトラブルはしばしばあります。

以下では、一般的な脱毛クリニックの返金トラブルの対処法についてご説明します(個別のケースにより対処法は異なります)。

  1. 脱毛クリニックに返金の請求をする
  2. クレジットカード会社に支払いの停止を求める
  3. クレジットカード会社に返金を求める
  4. 法律相談をする
  5. 他の脱毛クリニックで施術を受ける

(1)脱毛クリニックに返金の請求をする

脱毛クリニック側が費用を受け取っておきながら、脱毛の施術をしてくれない場合は、契約を解除して費用の返金を請求することが考えられます。

(1-1)返金を拒否されることもある

ところが、返金を求めても拒否されることがあります。

例えば、「総施術回数が10回の場合、5回目までは返金対象だが、6回目以降は返金できない」といった場合です。

脱毛クリニックの契約は「特定商取引法」という法律で規制されています。

特定商取引法では、“有償の期間・回数を超えた後の中途解約(返金)はできない”というルールになっています。

先ほどの例では、脱毛クリニック側は「5回目までは有償契約」「6回目からは無償契約(無料のサービス)」「有償契約終了後の解約なので返金しない」と主張しているというわけです。

しかし、脱毛クリニック側が返金できないと主張していても、実はその主張は「法的には認められないもの」であることも少なくありません。

例えば、脱毛クリニック側が主張する無償契約の内容が、法的にみると、有償契約の内容と実質が変わりなく、消費者側にもそのように認識させるような契約である場合などです。

返金を巡ってトラブルになった場合は、消費生活センターや消費者被害を扱っている法律事務所への法律相談をお勧めします。

参考:脱毛エステの通い放題コースなどでの中途解約・精算トラブルに注意!「途中でやめたら返金なし!?」「解約したのに支払いは続く…」|独立行政法人国民生活センター

(1-2)返金を受けられても一定の自己負担額が発生することがある

解約して返金を受けられるとしても、特定商取引法上、自己負担しなければならない額=脱毛クリニック側に払わなければならないお金が発生することがあります。契約上、この額は「違約金」として定められているときもあります。
複数回施術を受ける契約をした場合、「解約を申し出したのがいつか」によって、自己負担額が変わってきます。

脱毛クリニックとの契約期間が1ヵ月を超え、かつ、契約金額が5万円を超える場合、解約した場合の自己負担額は次の通りとなります。

分かりにくいのですが、例えば、契約期間が1ヶ月を超えても契約金額が3万円の場合は、契約金額が5万円を超えないので、法律上はクーリングオフの対象ではありません。ただし、クリニック自主的な解約ルールを設けていることがありますので、一度確認してみるとよいでしょう。

解約の申し出をした時期自己負担額
契約書面を受け取ってから8日以内(クーリングオフ)なし
契約書面を受け取ってから8日経過後ではあるが、有償の期間・範囲内役務の提供を受ける前(例)脱毛施術を受ける前2万円
役務の提供を受けた後既に提供された役務分の代金 +5万円(※1)または
契約残額(※2)×20%(※3)
のいずれか低い金額
有償の期間・範囲を超えた場合全額(解約できません)
※1・3:脱毛の方法がレーザー脱毛や針脱毛等である場合
※2:契約残額とは「契約に関する役務の対価の総額―既に提供された役務の対価」で計算される額

参考:脱毛エステの通い放題コースなどでの中途解約・精算トラブルに注意!「途中でやめたら返金なし!?」「解約したのに支払いは続く…」|独立行政法人国民生活センター
参考 :特定商取引法ガイド|消費者庁

(1-3)脱毛クリニックに返金請求をしても返金されないこともある

健全な経営をしている脱毛クリニック等の場合、解約して返金請求を行えば、自己負担額以外は全額返ってくるケースも多くあります。

しかし、今回のアリシアクリニックのように、経営母体が破産してしまうと、その時点で残っている財産を、原則として債権額に応じて全債権者に平等に分配することになります。分配できるお金がなければ、返金は受けられません。
したがって、ケースによって異なるものの、残念ながら、現金やクレジットカードで全額支払い済みの場合、脱毛クリニックが破産すると、戻ってくるお金はないか、あってもごくわずかになってしまうことが多いです。

(2)クレジットカード会社に支払いの停止を求める

契約時に代金を全額支払わず、クレジットカードで分割で支払う方もいます。

その場合、(破産したため)施術が受けられないなどという事情があるときは、クレジットカード会社に支払いの停止を求めましょう。

一定の条件を満たせば(※)クレジットカードの支払いを止めてくれる可能性があります(支払い停止等の抗弁)。

※主に次の場合には、クレジットカードの支払いを停止することはできません。

  1. 割賦販売法の適用がされない場合(例:翌月1回払い)
  2. リボ払いの場合で、かつ、1回のカードの利用金額(リボ払いの分割手数料を含む)が3万8000円未満である場合
  3. 2以外の場合で、1回のカード利用に係る支払総額(分割払いの手数料を含む)が4万円未満である場合
  4. 契約(例:脱毛クリニックとの施術契約)が、クレジットカード利用者にとって営業のため、または営業として締結したものである場合(業務提供誘引販売個人契約・連鎖販売個人契約に関するものを除く)

クレジットカードの支払いを止めたい場合は、まずは、脱毛クリニックの費用の支払いに利用したクレジットカード会社に電話連絡しましょう。

参考:支払停止の抗弁に関する手続きについて(ご案内)|日本クレジット協会

その後、所定の書面(支払停止等のお申出の内容に関する書面)に記入の上、クレジットカード会社の指定する場所に送付して、支払の停止を求めることになります。

支払停止等のお申出の内容に関する書面に記入したら、送付する前にコピーをとって、そのコピーを手元に保管しておくとよいでしょう。

参考:契約中のエステサロンが破産した!|独立行政法人国民生活センター
参考:契約中の脱毛エステ店が倒産してしまった~長期・高額な契約に気をつけて~|川崎市

(3)クレジット会社に返金を求める

脱毛クリニックの費用をクレジット会社に支払い済みであるのに、脱毛クリニック側の事情でいつまで経っても施術してもらえないと言った場合、支払い済みの代金をクレジット会社から返金してもらえる場合があります(チャージバック)。

脱毛クリニック側と連絡が取れない等、返金してもらうことが難しい場合は、クレジットカード会社からの返金が重要となってきます。

なお、二重に返金してもらうことはできないため、脱毛クリニックと連絡が取れる場合は、脱毛クリニックとクレジットカード会社、あなたとの3者で協議を進めていくとよいでしょう。

チャージバックするかどうかは、各クレジット会社の判断次第となりますので、クレジットカード会社によって対応が異なる可能性があります。

そのためまずは、先ほどご説明したクレジットカード会社への支払を止める手続き(支払い停止の抗弁)をいかに早くするか、ということが重要になってきます。

(4)法律相談をする

「自分ではどうしたらいいかよく分からない」「自分で対応をしてみたけどうまくいかない」という場合は、次のような専門家に相談をしましょう。

(4-1)消費者ホットライン(局番なし 188)

都道府県の消費生活センター等につながる消費者ホットライン(局番なし188)は、脱毛クリニックに対する苦情など、消費者からの相談を受け付けています。相談は無料です(ただし通話料金は自己負担となります)。

参考:全国の消費生活センター等|独立行政法人国民生活センター

(4-2)弁護士

弁護士に返金対応を依頼すると、アドバイスにとどまらず、あなたの代理人となって返金交渉などをしてくれます。
自分に合う弁護士をホームページ等から探してみると良いでしょう。

ただし、今回のアリシアクリニックのように脱毛クリニック側が破産するとなると、直接返金されることはないため、弁護士であってもできることは限られることに注意が必要です。破産手続きに債権者として関わり、配当を受けられれば受けるということになりますが、弁護士にその対応を依頼すると、配当額より弁護士費用が高くなりかねません。

(5)別の脱毛クリニックの施術を受ける

受けていた脱毛の施術が途中で止まってしまった場合、困るのはお金のことだけでなく、脱毛そのものも途中で止まってしまうということです。

そのため、脱毛の施術を続けたい場合、別の脱毛クリニックの施術を受けることになります。

「アリシアクリニック救済プラン」などと題して、複数の脱毛クリニックがサービスを行っているようですので、一度調べてみるとよいでしょう。

【まとめ】脱毛クリニックが破産したら返金は難しい|クレジットカードで分割払の契約をした方はすぐに支払い停止の抗弁を

脱毛クリニックが破産した場合、現金で全額支払済みの利用者への返金は極めて難しい状況です。

クレジットカードで分割払いをしている場合は、クレジットカード会社に支払い停止を求めると請求がとまる可能性があります。また、支払った分についてはクレジットカード会社からの返金(チャージバック)の可能性もあります。

したがって、クレジットカードで分割払いをしている方は、すぐにクレジットカード会社に連絡し、支払い停止の手続きを行いましょう。不明な点は消費者ホットラインなどに相談し、適切な対応方法を確認することをおすすめします。

この記事の監修弁護士
弁護士 重光 勇次

弁護士 重光 勇次

アディーレ法律事務所

同志社大学、及び、同志社大学法科大学院卒。2009年弁護士登録。アディーレに入所後、福岡支店長、大阪なんば支店長を経て、2022年4月より商品開発部門の統括者。アディーレがより「身近な法律事務所」となれるよう、新たなリーガルサービスを開発すべく、日々奮闘している。現在、神奈川県弁護士会所属

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

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