退職を決意したあなた、その先に待っているのは新たな人生の扉です。
しかし、その扉を開く前に、避けては通れない重要なステップがあります。そう、退職手続きです。
複雑で面倒に思えるかもしれませんが、適切に対応することで、スムーズな人生の転換点を迎えることができるでしょう。
この記事では、退職手続きの全体像から具体的なチェックリストまで、あなたの新たな出発を後押しする情報をわかりやすくお伝えします。
この記事を読んでわかること
- 退職手続きのチェックリスト
- 自己都合退職の流れ
- 会社都合退職の流れ
- 退職後に必要な手続き
ここを押さえればOK!
退職手続きのチェックリストには、退職の意思決定と準備、会社への退職手続き、社内手続き、雇用保険関連、健康保険の切り替え、年金関連、税金関連、再就職・キャリア関連、最終確認などの項目があります。これらを漏れなく確認することが大切です。
自己都合退職の場合は、上司への意思表示から始まり、退職届の提出、退職日の確定、業務の引き継ぎなどを行います。
退職後には、ハローワークでの失業給付手続き、健康保険の切り替え、年金の切り替えが必要です。また、住民税と所得税の扱いにも注意が必要です。
退職手続きは計画的に、漏れのないように順序良く行うことが重要です。チェックリストを活用し、新たなキャリアへの第一歩を円滑に踏み出しましょう。会社とトラブルがある場合は、退職代行サービスの利用も検討してみてください。
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東京大学法学部・東京大学法科大学院卒。アディーレ入所後は未払残業代請求事件をメインに担当し、2022年より労働部門の統括者。「自身も同じ労働者だからこそ、労働者の方々に寄り添える」との信念のもと、より多くのご依頼者様を、より良い解決へ導くことを目標に尽力している。東京弁護士会所属。
退職手続きのチェックリスト
まず、退職手続きのチェックリストを紹介します。
このチェックリストを活用し、漏れのない退職手続きを行ってください。
ただし、個人の状況により、必要となる手続きが異なります。不明点はそのままにせず人事部門に確認しながら進めていくようにしましょう。
- 退職の意思決定と準備
- 退職理由の整理
- 退職時期の決定
- 引き継ぎ計画の作成
- 会社への退職手続き
- 上司への退職の意思表示
- 退職届の作成と提出
- 退職日の確定
- 業務の引き継ぎ実施
- 社内手続き
- 退職金の確認と手続き
- 未消化有給休暇の確認
- 社員証・IDカードの返却
- 貸与物品の返却
- 雇用保険関連
- 離職票の受け取り
- ハローワークでの求職申込み
- 失業認定申告書の提出
- 健康保険の切り替え
- 会社の健康保険証の返却
- 国民健康保険への加入手続き(または任意継続・被扶養者手続き)
- 年金関連
- 年金手帳の確認(年金手帳が発行されている場合)
- 国民年金への切り替え手続き(必要な場合)
- 税金関連
- 住民税の納付方法確認
- 退職所得の確定申告必要性の確認
- 源泉徴収票の受け取り
- 再就職・キャリア関連
- 職務経歴書の作成
- 退職証明書の受け取り(必要な場合)
- 再就職先の検討・活動開始
- 最終確認
- 全ての必要書類が揃っているか確認
- 期限のある手続きの完了確認
自己都合退職手続き
(1)自己都合退職手続きの流れ
自己都合退職の手続きは、退職の意思表示から始まり、必要書類の提出、最終勤務日の確認まで、順序立てて進める必要があります。
期間の定めのない雇用契約の場合、原則として2週間前に退職の申し出をすれば退職できます。法律上は、書面は要求されていないので、口頭での退職申し出でも有効です。ただし、就業規則などで「1ケ月前」などという予告期間が必要とされていたり、退職届の提出が要求されている場合もあります。
就業規則に従った方が、円満退職はしやすくなります。
具体的な流れは以下の通りです。
- 上司への退職の意思表示
- 上司や人事部門への退職届の提出
- 退職日の確定
- 業務の引き継ぎ
- 退職金や有給休暇の清算確認
- 最終勤務日の確認
期間の定めのある雇用契約の場合は、退職できる時期や予告期間などが異なります。
例えば、期間の定めのある労働者が期間の途中で退職する場合、原則として「やむを得ない事由」がないと退職できません。
この場合、会社が「やむを得ない事由」があると判断できるような退職理由(病気、ケガ、介護、給与未払いなど)を述べた方がよいでしょう。
(2)自己都合退職で会社とやり取りする書類など
自己都合退職の際に会社とやり取りする書類などは、会社によって多少の違いがあるものの、一般的に以下のものが挙げられます。なお、法的に提出義務があるわけではありません。
【会社に提出するモノ】
- 退職届:氏名、所属部署、退職日、退職理由を記載して会社に提出
- 業務引継書:担当業務の詳細と進捗状況を記載
- 有給休暇申請:退職まで有給休暇を取得したい場合
- 健康保険被保険者証:会社が指定する日までに返却
- 社員証・IDカードなどの貸与物:会社が指定する日までに返却
- 退職金の受給に関する申告書:退職金を受け取る場合
【会社から受け取るモノ】
- 雇用保険被保険者証:会社が保管している場合
- 年金手帳:会社が保管している場合
- 退職証明書:請求すれば会社に交付義務あり
- 源泉徴収票:会社から受け取り
- 離職票:会社から受け取り
提出し忘れている書類、会社から受け取り忘れている書類がないか注意しましょう。
会社都合退職手続
(1)会社都合退職とは
会社都合退職とは、一般的に、会社の事情より労働者に対して退職を働きかけ、労働者がこれに応じて退職に応じるなど、会社に原因・責任がある退職を言います。
解雇は、会社の一方的な雇用契約の解除ですので、解雇と会社都合退職とは異なります。
会社都合退職だと、退職金が割増されるなど一定のメリットがあることが多いです。
(2)会社都合退職手続きの流れ
主な会社都合退職手続きの流れは以下の通りです。
- 従業員への説明と同意の取得
- 退職条件の提示と交渉
- 退職日の決定
- 必要書類の準備と提出
- 積立金の処理、退職金や諸手当の計算と支払い
- 退職日を迎える
(3)会社都合退職で会社とやり取りする書類
基本的に、自己都合退職の場合と同様と考えられます。
ただし、退職理由が記載される書面(離職票や退職証明書など)には、きちんと会社都合の退職であることを明記してもらうようにしましょう。
退職後に必要な手続き
退職後には、雇用保険、健康保険、年金に関する手続きが必要です。
これらの手続きを適切に行うことで、失業給付の受給や医療保険の継続、将来の年金受給に支障が出ないようにすることができます。
すぐに転職しないケースだと、主な手続きは以下の通りです。
- 失業給付のためハローワークでの求職申込みと失業認定
- 健康保険の切り替え(国民健康保険への加入など)
- 年金手帳の確認と国民年金への切り替え
これらの手続きには期限があるものもあるため、退職後速やかに対応することが重要です。
(1)ハローワークでの手続き方法
雇用保険の被保険者の方が失業した場合、一定の場合に失業保険(基本手当)を受給できます。受給期間は原則として1年です。申請が遅れれば遅れるだけ、受給期間は短くなってしまいます。
したがって、退職後なるべく早く、ハローワークでの手続きをするようにしましょう。
手順は以下の通りです。
- 受給できる要件を満たすか確認:
- 原則、離職日以前2年間に、被保険者期間が通算して12ヶ月以上あること
- 求職申込み:
- 必要書類:離職票、マイナンバーカードまたは通知カード、写真(3×2.4cm)、本人名義の預金通帳又はキャッシュカード など
- 雇用保険受給者初回説明会参加
- 雇用保険受給資格者表、失業認定申告書を受け取る
- 失業認定申告書の提出:
- 原則4週間に1度
- 求職活動状況の報告が必要
- 失業認定と基本手当の支給:
- 失業認定日から通常5営業日で指定の金融機関口座に振り込まれる
参考:雇用保険の具体的手続き|ハローワークインターネットサービス
注意点として、退職の理由によって給付制限期間が異なります。
例えば、自己都合退職の場合は3か月の給付制限期間がありますが、会社都合の退職では即時に給付が開始されます(雇用保険法33条1項)。
また、求職活動実績が認められない場合、給付が停止される可能性があるため、ハローワークの指導に従い、積極的な求職活動が求められます。
(2)健康保険の切り替えについて
退職後の健康保険の切り替えは、保険を利用した医療を受けるために重要です。主な選択肢と手続きは以下の通りです。
- 国民健康保険への加入:
- 居住地の市区町村役場で手続き
- 退職日の翌日から14日以内に加入申請が必要
- 必要書類:健康保険資格喪失証明書など退職日がわかるもの、本人確認書類、マイナンバーカードまたは通知カード など
- 健康保険の任意継続:
- 退職時の健康保険を最長2年間継続可能
- 退職日の翌日から20日以内に申請が必要
- 保険料は全額自己負担(勤務時は会社と折半するので保険料は増加)だが上限がある
- 家族の被扶養者になる:
- 配偶者等の健康保険に加入
- 退職日から5日以内に、扶養者の勤務先や健康保険組合で手続き
無保険状態にならないよう、なるべく速やかに手続きを行うことが重要です。また、前職の健康保険証は必ず会社に返却する必要があり、退職後に利用することはできません。
(3)年金の切り替えについて
会社を退職した後、すぐに転職しなかったり、自営業者になったりする場合には、厚生年金から国民年金への切り替えが必要です。
- 国民年金への切り替え:
- 居住地の市区町村役場や年金事務所で手続き
- 必要書類:基礎年金番号がわかるもの(年金手帳や基礎年金番号通知書など)、本人確認書類(マイナンバーカードまたは通知カーなど)、退職日がわかるもの(離職票など) など
- 保険料の納付:
- 国民年金保険料の納付開始
- 納付は口座振替、キャッシュレス決済など可能。前納割引制度の利用も検討する
- 年金記録の確認:
- 「ねんきんネット」で加入記録を確認
- 記録に漏れがある場合は年金事務所に相談
20歳以上60歳未満の日本国内に住所を有する者は、厚生年金被保険者などの例外を除いて、国民年金に加入する義務があります(国民年金法7条1項)。
もし保険料の納付が困難な場合は、そのままにせず、窓口で相談したうえで免除や猶予の制度を利用することも検討しましょう。
退職後の住民税と所得税の扱い
退職後の住民税と所得税の扱いは、以下の点に注意が必要です。
- 住民税:
- 前年の所得に基づいて課税
- 住民税は5月~翌6月が1年度だが、1月~5月に退職する場合には特別徴収(会社が給料から天引き)で一括払いをする。6月~12月に退職する場合、特別徴収で一括払いをするか、普通徴収(自治体から送られてくる住民税の納付通知書を受けて自分で納税する)か選択可能。
- 所得税:
- 「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば、退職所得に対する源泉徴収がなされるので別途確定申告は不要(ただし医療費控除などで確定申告をする場合には記載する必要あり)
- 上記申告書を提出していない場合には、源泉徴収額が高くなるが、確定申告を行うことで精算可能
- 退職金の課税:
- 勤続年数に応じた退職所得控除あり
住民税は、前年度の収入に応じて課税されます。退職により給与が下がったり、給与がなくなる場合には注意が必要です。
参考:No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁
【まとめ】退職手続きは計画的に、漏れのないように順序よく行う
退職手続きは、単なる事務作業ではなく、あなたの新たな人生のスタートを円滑にするための重要なプロセスです。
退職届の提出から、雇用保険や健康保険の手続き、税金の取り扱いまで、それぞれのステップを確実に踏むことが大切です。
特に、すぐに就職しないケースでは、失業手当を受け取ることができるように、速やかにハローワークで手続をしましょう。
この記事で紹介したこのチェックリストを活用し、漏れのない退職手続きで、新たなキャリアへの第一歩を踏み出しましょう。
もし、会社とトラブルを抱えていて退職について言い出しにくい、引き止められて退職できないなどお悩みの方は、退職代行を利用して退職すれば、精神的な負担を軽減することができるでしょう。
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