「仕事中にケガをして、後遺症が残ってしまった…」
このような場合、労働者の生活に大きな影響を及ぼすことでしょう。
労災による後遺障害が認定された場合、労災保険によって障害(補償)給付を受けられます。
そして、適切な補償を受けるためには、等級認定のプロセスを理解し、適切に対応することが不可欠です。
しかし、なかには認定結果に納得できない場合もあるでしょう。
そこで、この記事では、労災による後遺障害の基本から、給付金の申請方法、そして不服がある場合の対策などを解説しています。
この記事が、労働者が自らの権利を守り、安心して生活を続けるための一助となれば幸いです。
この記事を読んでわかること
・労災による後遺障害
・労災保険の手続と流れ
・労災の後遺障害認定に納得できない場合の対処法
ここを押さえればOK!
労災保険制度は、こうした労働者に適切な補償を提供することを目的としており、労働者は保険の内容を理解し、適切な手続を行うことが重要です。
後遺障害の等級認定は、1級から14級まであり、障害の程度に応じた補償を決定します。認定には医師の診断書や検査結果が必要で、労働者は認定基準を理解し、必要な書類を準備することが求められます。
給付金は、障害の程度に応じて年金または一時金として支給されます。申請し、審査が完了すると、給付金の支給(または不支給)が決定されますが、結果に納得できない場合は、労働者災害補償保険審査官への審査請求や労働保険審査会への再審査請求、さらには裁判所に取消訴訟を提起することが可能です。
各手続には期限があるため、迅速な対応が求められます。
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東京大学法学部・東京大学法科大学院卒。アディーレ入所後は未払残業代請求事件をメインに担当し、2022年より労働部門の統括者。「自身も同じ労働者だからこそ、労働者の方々に寄り添える」との信念のもと、より多くのご依頼者様を、より良い解決へ導くことを目標に尽力している。東京弁護士会所属。
労災による後遺障害とは
労災とは、労働災害の略であり、労働者が、業務または通勤が原因でケガや病気になることや、死亡してしまうことです。
そして、労災による後遺障害とは、労災が原因で、治療後も身体や精神に残ってしまった症状のことを指します。
後遺障害は、将来にわたって労働能力や生活の質の低下をもたらします。
労災保険制度は、こうした労働者に対し、適切な補償を提供することを目的としています。
労働者が適切な補償を受けるためには、労災保険の内容を正確に把握し、適切な手続を行うことが重要です。
したがって、労災による後遺障害とその補償内容について理解することは、労働者が自らの権利を守り、生活の安定を図るために欠かせない要素といえるでしょう。
労災後遺障害の認識を深めることで、労働者は必要なサポートを受けやすくなります。
後遺障害の等級認定
後遺障害の等級認定は、労災によって生じた後遺障害の程度を表し、適切な補償を決定するための重要なプロセスです。
等級は1級から14級までに分類され、数字が小さいほど障害の程度が重くなっています。
この認定は、労働者が受け取る給付金の額や種類に直接影響を与えるため、正確な評価が求められます。等級認定のプロセスでは、医師の診断書や検査結果の提出が必要であり、専門的な知識が求められることもあります。
労働者は、認定基準を理解し、必要な書類を適切に準備することが重要です。
等級は、身体機能の喪失や精神的な影響など、さまざまな要素を考慮して決定されます。
また、認定結果に納得できない場合は、再審査を求めることも可能です。
このように等級認定は、労働者が適切な補償を受けるための基盤となります。
労働者が自らの権利を守るためには、このプロセスをしっかりと理解し、必要な手続を適切に進めることが不可欠です。
労災の後遺障害の給付金
労災の後遺障害に対する給付金は、労働者が負った障害の程度に応じて支給される補償です。
後遺障害が残った人に支給される労災保険を、障害(補償)給付といいます。
障害(補償)給付は、次のとおりです。
障害等級によって受けられる給付の種類が異なってきます。
- 障害補償年金(1~7級)
- 障害補償一時金(8~14級)
- 特別支給金(1~14級)
- 障害特別年金(1~7級)
- 障害特別一時金(8~14級)
基本的には、1級から14級までの等級に応じて、一時金または年金として支給されます。基本的に給付金の算出には、主に労働者の平均賃金や障害等級などが考慮されます。
労働者が適切な補償を受けるためには、給付金の種類や計算方法を理解し、必要な書類を整えて申請することが重要です。
給付金の申請にあたってわからないことがあれば、専門家のアドバイスを受けることも検討しましょう。
労災保険の手続と流れ
まず、医療機関で診察を受け、必要な治療を開始しましょう。
後遺障害の等級申請には、症状固定と診断される必要があります。
症状固定とは、医学上一般に認められた治療を行っても、それ以上医学的に改善が見込めない状態のことです。
医師から症状固定の診断書を取得したら、労災保険の申請に必要な申請書を作成します。
ほかにも、後遺障害の内容や状況などに応じて、書類の提出が必要になることもあります。
これらを、提出先である所轄の労働基準監督署に提出し、審査を受けます。
審査の一環として、労働基準監督署における面談が行われることもあります。
提出した書類からは判断できないことを主に質問されるため、症状を詳細に伝え、質問にはしっかりと回答するようにしましょう。
審査が完了し、給付金の支給(または不支給)が決定されると、労働者に通知されます。
書類の不備などがなく、スムーズに審査できた場合には、申請書の提出から3ヶ月程度であることが多いようです。
労災の後遺障害認定に納得できない場合は?
不支給決定となってしまったり、認定された障害等級に不服があったりして、結果に納得できない場合には、次のような手段があります。
(1)労働者災害補償保険審査官への審査請求
まずは、当該決定を行った労働基準監督署長を管轄する、都道府県労働局の「労働者災害補償保険審査官」に対する審査請求があります。
ただし、この審査請求は基本的に労災保険給付に関する決定があったことを知った日の翌日から3ヵ月以内に行う必要があるため、速やかな手続が求められます。
(2)労働保険審査会への再審査請求
審査請求の結果に不服がある場合、労働保険審査会に対して再審査請求を行うことができます。
ただし、再審査請求にも期限があり、請求期間は「決定書の謄本が送付された日の翌日から2ヶ月以内」とされているため、うっかり徒過しないようご注意ください。
裁判所に取消訴訟を提起する
再審査請求の結果に不服がある場合には、裁判所に取消訴訟を提起することができます。
取消訴訟は、再審査請求の結果を知った日の翌日から起算して6ヶ月以内に提起しなければなりません。
また、再審査請求の結果が出てから1年が経過した場合も、取消訴訟を提起できなくなります。
なお、再審査請求の結果が出る前であっても、取消訴訟を提起できる場合があります。
【まとめ】労災の後遺障害は労働基準監督署に申請する
労災による後遺障害は、労働者の生活に大きな影響を与える可能性があります。
適切な補償を受けるためには、後遺障害の等級認定や給付金の申請手続についてしっかりと理解し、正確に進めることが重要です。
認定のポイントを押さえ、必要な書類を整えることで、スムーズな手続が可能になるでしょう。
また、専門家のサポートによって、よりスムーズに給付手続を進めることが期待できます。
労働者が自らの権利をしっかりと理解し、適切な行動を取ることで、安心して生活を続けることができるでしょう。
労災保険を活用し、安心できる未来を築くために、今一度手続きを確認し、必要な準備を進めてください。
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