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相続財産清算人(相続財産管理人)とは?選任されるケースや役割、費用まで解説

作成日:
LA_Ishii

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

相続が発生した際、相続人がいない場合や相続人全員が相続放棄した場合には、相続財産はどうなるのでしょうか?
これらのケースで重要な役割を果たすのが「相続財産清算人(相続財産管理人)」です。相続財産清算人は、亡くなった方の借金を支払うなどして清算し、残った財産を国に帰属させます。
この記事では、相続財産清算人の役割や選任方法、報酬について詳しく解説します。
相続に関する法的トラブルを回避し、財産を適切に管理・保全するための知識を身につけましょう。

ここを押さえればOK!

相続人がいない、または全員が相続放棄した場合、故人の財産を清算するため相続財産清算人(2023年4月1日施行の民法改正で、旧称「相続財産管理人」から名称変更)が選任されます。
これは、債権者が借金の返済を求める場合や、相続放棄した相続人が不動産の管理責任から免れたい場合などに必要です。遺言による遺贈や特別縁故者への財産分与時にも選任されることがあります。

選任は、故人の最終住所地の家庭裁判所へ利害関係人などが申し立てます。弁護士などの専門家が選任されることが多く、選任後、清算人は相続人を捜すための公告を行い、財産の管理、債務弁済、残余財産の国庫帰属などを行います。
申立てには実費に加え、清算人の報酬や業務費用に充てられる予納金(数十万円から数百万円)が必要となることがあります。清算業務は通常数ヶ月から1年程度かかります。
相続財産清算人は、財産の管理だけでなく、換価や債務の弁済、分配、国庫帰属までを担う点で、新しく設けられた「相続財産管理人」とは異なります。

相続でお悩みの方は、1人で悩まず一度アディーレ法律事務所にご相談ください。

相続財産清算人が必要となるケース

相続財産清算人は、相続人のあることが明らかでないとき、相続人全員が相続放棄をしたときなどに、相続財産を保存・管理する等のために必要となります。

具体的には、次のようなケースで相続財産清算人が選定されることが多いです。

(1)被相続人の債権者が借金の返済を求めるケース

亡くなった方=被相続人が、すでに祖父母、父母も亡く、配偶者、子ども、兄弟姉妹がいない場合、法律上相続人となる人がいません。
相続人がいないと、被相続人にお金を貸していた債権者は、誰にも返済を求めることができなくなります。
ただし、債権者はその遺産から債権を回収できる可能性があります。

この場合、家庭裁判所に申し立てることにより相続財産清算人が選任され、相続財産清算人が財産の管理と清算を行います。

相続人の存在・不存在が明らかでないときにも、相続財産清算人選任の申立は可能です。

(2)相続放棄後に不動産の管理をしたくないケース

相続人は、相続放棄をすれば相続人でなかったことになり、遺産に関する一切の権利義務と無関係になります。
相続人全員が相続放棄をすると、財産の管理者がいなくなります。このような場合、空き家となった不動産を管理する人がいないと問題になりますので、管理すべき人を民法が定めています。

(相続の放棄をした者による管理)
第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

引用:民法 | e-Gov 法令検索

つまり、被相続人の不動産に住むなどして現に占有している相続人は、相続放棄をしたとしても、相続財産清算人に財産を引き渡すまでは、その不動産に関する管理責任を負います(民法940条)。
管理責任から逃れるためには、相続財産清算人の選任が必要です。

一方、被相続人の不動産に住んでいない相続人は、相続放棄をしても管理責任は負いません。

(3)遺言で第三者への遺贈がある場合

相続人がおらず、遺言で遺贈を受けた第三者がいる場合には、遺贈を受けるために、相続財産清算人の選任が必要なことがあります。

(4)特別縁故者が相続財産の分与を求める場合

例えば、事実婚のパートナーは、長い間夫婦のように暮らしていたとしても、法律上相続する権利はありません。
ただし、亡くなった人に相続人がいない(見つからない場合も含む)場合には、一定期間内に裁判所に申し立てて特別縁故者と認められると、相続財産清算人が清算した後の相続財産の全部又は一部を受け取れる可能性があります。

特別縁故者と認められるためには、次のような条件を満たす必要があります。

  • 被相続人を生計を同じくしていた
  • 被相続人の療養看護をしていた
  • その他被相続人と特別の縁故があった

相続財産清算人の選任手続きと流れ

相続財産清算人の選任は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所への申立てから始まります。

(1)申立てできる人

相続財産清算人の選任の申立は、次の人が行えます。

  • 利害関係人(被相続人の債権者、遺贈を受けた者、特別縁故者など)
  • 検察官

(2)申立ての準備と必要書類

申立てには、以下の書類が必要ですので、漏れのないように準備します。
被相続人に相続人がいないことを書類で示す必要がありますので、様々な戸籍が必要です。

  • 申立書
  • 添付書類(標準的なもの)
  • 被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
  • 被相続人の父母の出生時から死亡時までの戸籍謄本
  • 被相続人の子(及びその代襲者)が亡くなっている場合、その子(及びその代襲者)の死亡時までの全ての戸籍
  • 被相続人の兄弟姉妹が亡くなっている場合、その兄弟姉妹の戸籍謄本
  • 代襲者としての甥姪が亡くなっている場合、その甥姪の戸籍謄本
  • 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
  • 財産を証する資料
  • 利害関係人が申し立てる場合、利害関係を証する資料
  • 相続財産清算人の候補者がある場合にはその住民票又は戸籍附票

参考:相続財産清算人の選任|裁判所

(3)家庭裁判所での審理と選任

家庭裁判所は、提出された書類を基に審理を行い、適切な相続財産清算人を選任します。
相続財産清算人に選任されるために資格は不要です。弁護士や司法書士などの法律専門家が選ばれることもあります。申立人が候補者を示したときは、その候補者が選任されることもあります。

家庭裁判所は、6ヶ月以上の期間を定めて、相続財産清算人が選任されたことを知らせる公告と、相続人を捜すための公告を行います。
この公告の期間満了までに相続人が名乗らなければ、相続人がいないことが確定します。
この公告の期間満了後3ケ月以内に、特別縁故者が相続財産分与の申立を行うことがあります。

また、この公告があったとき、相続財産清算人は、2ケ月以上の期間で相続財産の債権者・受遺者を確認するための公告をします。

(4)相続財産清算人の業務

相続財産清算人は、被相続人の財産の管理、保存を行いますが、必要があれば家庭裁判所の許可を得て、不動産や有価証券などを売却し、金銭に変えます。
また、債権者へ債務の弁済、受遺者への支払い、特別縁故者からの審判に応じて財産を分与する手続きを行います。
なお相続財産が残存する場合には、国庫に引き継いで業務終了となります。

参考:相続財産清算人の選任|裁判所

相続財産清算人選任の申立てにかかる費用

相続財産清算人の選任の申立てには、一定の費用がかかります。

(1)最低限の手続き費用

申立てには、裁判所に支払う手数料など最低でも次の費用がかかります。

(1)収入印紙

収入印紙800円が必要です。
申立時に必要なので、郵便局やコンビニで購入して準備しておきます。

(2)郵便切手

裁判所が連絡用に利用する郵便切手を購入して提出します。
家庭裁判所によって異なりますが、1000円程度であることが多いです。
切手の値段と枚数を指定されますので、事前に問い合わせて、過不足なく準備します。

(3)官報公告料

相続財産清算人が選任されたら、家庭裁判所は官報公告を行いますので、その費用5075円が必要です。
申立時ではなく、家庭裁判所の指示があってから支払います。

(4)戸籍取得料

申立には、被相続人に相続人がいないことが分かる戸籍(除籍、改製原戸籍)を収集する必要があります。
戸籍だけではなく、除籍や改製原戸籍も含め複数取得する必要があります。また、郵送で取り寄せる場合には切手代もかかりますので、取得費用が1万円を超えることもあります。

(2)予納金

相続財産清算人の業務に対しては必要な費用や報酬が支払われます。
その必要な費用や報酬は、通常相続財産から手当されますが、足りない可能性がある場合には、申立人が相当額を予納金として裁判所に納付する必要があります。
予納金の金額は財産の規模や複雑さに応じて異なりますが、一般的には数十万円から数百万円程度が目安です。
指定された予納金が支払えない場合には、相続財産清算人の申立ては却下されることになるでしょう。

(3)弁護士費用

相続財産清算人の申立ては、自分で行うこともできますが、弁護士に依頼することもできます。
弁護士に依頼すれば、面倒で労力のかかる戸籍の収集も代わりにやってくれるでしょう。
弁護士費用は事務所によって異なります。ホームページがある法律事務所であれば、一般的に費用も確認できます。
相談無料の法律事務所も多いので、一度相談してみてはいかがでしょうか。
その際に費用など疑問点も確認するとよいでしょう。

相続財産管理人と相続財産清算人の違い

民法改正(2023年4月1日施行)により、従来の「相続財産管理人」は、「相続財産清算人」という名称に変更されました。
また、相続財産管理人という制度が設けられましたが、これは従来の相続財産管理人とは異なります。

相続財産清算人は、相続人がいるかどうか分からない場合に、相続財産の保存・管理を行い、債権者や相続人を探すための公告を行い、相続財産を処分・換価して債権者・受遺者への支払い、特別縁故者への分与という清算業務を行う権限があります。また、財産が残った場合には、国庫に帰属させます。

一方、新しい相続財産管理人は、相続人がいるかどうか分からない場合に限らず、基本的にいつでも申立てにより選任され、遺産に必要な管理を行います(民法897条の2)。

分かりやすく説明すると、相続財産管理人は主に財産の管理を行い、相続財産清算人は財産の換価、返済、分配と国庫帰属までを担当するという違いがあります。

相続財産清算人に関するQ&A

相続財産清算人に関するよくある質問と回答を紹介します。

(1)誰が相続財産清算人になれるのですか?

通常、弁護士や司法書士などの法律専門家が選任されます。これにより、相続財産の管理と処理が適切に行われることが期待されます。
適切な候補者がいる場合には、申立時に候補者を裁判所に伝えることもできます。

(2)相続財産清算人の報酬はどのように決まりますか?

財産の規模や業務の内容に応じて、家庭裁判所が決定します。

(3)相続財産清算人の報酬は誰が支払うのですか?

相続財産清算人の報酬は、基本的に相続財産から支払われます。
しかし、相続財産では不足する可能性がある場合には、申立人が納めた予納金から支払われます。

(4)相続財産清算人の任期はどのくらいですか?

相続財産清算人の任期は、他に相続人のあることが明らかにあるまで、又は相続財産の清算業務が完了するまでです。
具体的な期間はケースバイケースで異なりますが、清算業務が終了するまでに、通常は数ヶ月から1年程度はかかると考えられます。

(5)相続財産清算人の選任申立てが却下されることはありますか?

必要書類が不足していて追加提出要請に応じない場合、決められた予納金が納められない場合などでは、家庭裁判所は選任申立てを却下することがあります。
事前に必要書類を確認し、適切に準備することが重要です。

(6)相続財産清算人が管理する不動産が売れない場合はどうなりますか?

相続財産清算人は、裁判所の許可を得て不動産を売却しますが、適切な売却価格での売却を試みます。通常、任意売却の方が価格が高くなるので、任意売却を試み、買い手がいないようであれば競売で処分することもあるでしょう。
いずれにせよ、相続財産清算人は勝手に財産を処分することはできませんので(民法953条、27条、28条)、裁判所に相談しながらその許可を得て換価を目指すことになります。

(7)相続財産清算人に進捗状況を聞いてもいいですか?

もちろん聞くことができます。
債権者と受遺者は、相続財産の状況の説明を求めることができ、相続財産清算人は報告する義務があります(民法954条)。

【まとめ】相続財産清算人は相続人の有無がわからない遺産の管理・処分・清算を行う

相続財産清算人制度は、相続人がいない場合(有無が分からない場合を含む)や相続放棄が行われた場合に、相続財産を適切に管理し、弁済や分配を行い、残余財産を国庫に帰属させる重要な制度です。

相続財産清算人の選任が必要なケースに関わることになったら、1人で悩まず、一度アディーレにご相談ください。
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