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遺産分割協議に参加したくない方へ。無視するリスクと対処法を弁護士が解説

作成日:
s.miyagaki

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

他の相続人と顔を合わせたくない、手続が面倒といった理由で、遺産分割協議への参加をためらっていませんか。
そのお気持ちは無理もありませんが、協議への不参加を続けると、手続が完全に停止したり、家庭裁判所の調停・審判に発展したりと、望まない結果を招く可能性があります。

この記事では、「遺産分割協議に参加したくない」とお悩みの方へ向けて、協議に参加しない場合のリスクから、相続放棄という選択肢、さらには相続権を維持しつつ協議の負担を回避する具体的な対処法まで、弁護士がわかりやすく解説します。

遺産分割協議に参加しない場合のリスク

遺産分割協議への不参加は、法的なリスクや手続の遅延といった深刻な問題を引き起こす可能性があります。
具体的に陥る可能性があるリスクは以下のとおりです。

  • 協議が無効になり手続が止まる
  • 預貯金や不動産の名義変更ができない
  • 家庭裁判所の調停・審判に発展する

協議が無効になり手続が止まる

遺産分割協議は、相続人全員の合意があって初めて法的に有効となります。

一人でも参加しなかったり、協議内容に同意しなかったりした相続人がいる場合、その遺産分割協議は無効です。

全員の署名と実印が押された「遺産分割協議書」がなければ、預貯金の解約や不動産の名義変更といった、そのあとの主要な相続手続を一切進めることができません。

無視を続けることで、結果として他の相続人にも迷惑が及ぶことになります。

預貯金や不動産の名義変更ができな

遺産分割協議が成立しないと、被相続人名義の預貯金の解約や払い戻し、不動産(土地・建物)の所有名義の変更(相続登記)といった手続ができません。
金融機関や法務局は、相続人全員の合意を証明する遺産分割協議書の提出を求めるためです。

給与の振込口座が凍結されたままになる、不動産を売却して現金化できないなど、具体的な不利益が生じます。

家庭裁判所の調停・審判に発展する

当事者間での話し合いが成立しない場合、他の相続人は家庭裁判所に「遺産分割調停」を申立てることができます。
調停は、裁判所の調停委員が間に入って話し合いを進める手続ですが、これにも応じなければ調停は不成立となり、自動的に「審判」という手続に移行します。

審判では、裁判官が各相続人の主張や証拠など、諸般の事情を考慮したうえで、遺産の分割方法を法的に決定します。
ご自身の意向が全く反映されない結果になる可能性もあるでしょう。

遺産分割協議に参加したくない理由

遺産分割協議への参加をためらう背景には、感情的な問題から手続上の負担まで、いろいろな理由が存在します。
多くの方に共通する理由は以下のとおりです。

  • 他の相続人と会いたくない
  • 遺産の分け方に不満がある
  • 手続が面倒で関わりたくない

他の相続人と会いたくない

相続人同士の人間関係が悪化している場合、顔を合わせて話し合うこと自体が大きな精神的苦痛となります。
長年の確執や、被相続人(亡くなった方)の生前の介護負担をめぐる不満などが原因で、冷静な話し合いが期待できないケースは少なくありません。
感情的な対立から、協議の場に出席すること自体を拒否してしまうのです。

遺産の分け方に不満がある

提示された遺産の分割案に納得できないことも、参加を拒む大きな理由です。
特定の相続人に有利な内容になっている、遺産の全体像が明らかにされず不信感がある、ご自身の法定相続分が不当に侵害されていると感じるなど、不満の原因はさまざまです。

不公平な内容の協議書に安易に署名・捺印してしまうことを避けるため、協議への参加を保留する方もいます。

手続が面倒で関わりたくない

遺産分割協議には、戸籍謄本の収集や財産目録の作成など、煩雑な手続が伴います。
仕事や家庭の事情で時間がなかったり、手続の複雑さに圧倒されたりして、関わること自体を面倒に感じてしまうケースです。

特に、相続財産に不動産が含まれる場合や、相続人が多い場合は手続がより複雑化するため、関与したくないという気持ちが強まる傾向にあります。

相続に一切関わりたくないなら「相続放棄」

プラスの財産もマイナスの財産(借金)も一切引き継がず、相続関係から完全に離脱したいと考えるなら、「相続放棄」という選択肢があります。
ただし、重大な注意点がいくつか存在します。

相続放棄とは全財産を手放す手続

相続放棄とは、被相続人の遺産を一切受け取らない代わりに、借金などの負債も引き継がなくて済む法的な手続です。
家庭裁判所に申述(申立て)を行い、受理されることで効力が生じます。

「特定の財産だけ放棄する」ことはできず、預貯金や不動産といったプラスの財産もすべて手放すことになります。
借金があることが明らかな場合に有効な手段です。

相続開始から3ヵ月の期限に注意

相続放棄の手続は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内」に家庭裁判所で行う必要があります。
この期間を「熟慮期間」と呼びます。

期限を過ぎてしまうと、原則として相続放棄は認められず、単純承認(すべての財産と借金を相続すること)したとみなされるため、迅速な判断が求められます。

相続権が次の順位の親族に移る

ご自身が相続放棄をすると、その人は初めから相続人ではなかったことになります。
その結果、相続権は次の順位の相続人に移ります。

例えば、子が全員相続放棄すると、被相続人の親、親が亡くなっていれば兄弟姉妹へと相続権が移動します。
借金がある場合は、その返済義務も次の順位の親族が負うことになるため、事前に事情を伝えておくなどの配慮が必要です。

一度受理されると撤回できない

家庭裁判所に相続放棄の申述が受理されたあとは、原則として撤回(取り消し)することはできません。
あとから高額な財産が見つかったとしても、「やはり相続したい」と主張することは不可能です。

相続放棄は、それほど重大な効果を持つ手続であるため、財産調査を慎重に行ったうえで、本当に放棄していいのかを熟慮する必要があります。

遺産に手を付けると放棄できなくなる

相続財産の一部でも処分したり、消費したりすると、相続の意思があるとみなされ(法定単純承認)、相続放棄ができなくなる可能性があります。
例えば、被相続人の預貯金を引き出してご自身のために使ったり、価値のある遺品を売却したり、単なる形見分けとはいえない高価な遺品をご自身のものにしたりする行為がこれにあたります。

財産の現状を維持し、安易に手を付けないよう注意が必要です。

相続はしたいが協議には参加したくない場合の対処法

相続権は主張したいものの、他の相続人と直接顔を合わせたくない、あるいは話し合いの場に参加する時間がないという場合でも、解決策はあります。
ここでは2つの有効な方法をご紹介します。

書面やオンラインで参加する

遺産分割協議は、必ずしも全員が一堂に会して行う必要はありません。
他の相続人が作成した遺産分割協議書の内容に合意できるのであれば、その書面を郵送してもらい、署名・捺印して返送する「持ち回り方式」で参加できます。

また、近年ではZoomなどのWeb会議システムを利用して、遠隔地からオンラインで協議に参加する方法もあります。

弁護士に代理人を依頼する

弁護士に依頼し、ご自身の代理人として遺産分割協議に参加してもらう方法が有効な解決策の一つです。
弁護士が代理人となれば、他の相続人との交渉や連絡、複雑な書類の作成などをすべて任せられます。

直接顔を合わせる精神的なストレスから解放されるだけでなく、法的な観点からご自身の正当な権利(法定相続分)を主張し、不利な条件での合意を防ぐことができます。

参加しない相続人がいて困っている場合の対処法

ご自身の立場とは逆に、相続人の一人が協議に参加してくれず、手続を進められずに困っているというケースもあるでしょう。
その場合に取れる法的な手段について解説します。

手紙などで協議に応じるよう説得する

まずは、協議に応じない相続人に対し、改めて協議への参加を促す手紙を送ることから始めましょう。
感情的にならず、遺産分割協議がなぜ必要なのか、このままでは預貯金の解約や不動産の名義変更ができず、全員が困ってしまう状況を丁寧に説明します。

内容証明郵便を利用すれば、相手に心理的なプレッシャーを与え、こちらの真剣な態度を示す効果も期待できます。

家庭裁判所に遺産分割調停を申立てる

説得を試みても相手が応じない場合や、当事者間での話し合いが不可能な場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申立てるのが有効な手段です。
調停では、裁判官や調停委員といった中立的な第三者が間に入り、各相続人の主張を聞きながら、合意形成に向けた話し合いを進めてくれます。
これにより、冷静かつ公平な解決が期待できるでしょう。

弁護士への依頼|メリットと費用

遺産分割に関する問題を抱えたとき、弁護士への依頼は非常に有効な選択肢です。
依頼する具体的なメリットと、気になる費用の相場について解説します。

弁護士に依頼するメリット

弁護士に依頼するメリットは以下のとおりです。

  • 交渉窓口が一本化され精神的負担が減ります
  • 他の相続人とのやり取りや書類作成を任せられます
  • 法的な観点から正当な権利を主張できます
  • 感情的な対立を避け円満な解決を目指せます

また、法律の専門家である弁護士は、依頼者の方の正当な権利を主張し、不利な条件で合意してしまう事態を防ぎます。
感情的な対立が激しい場合でも、冷静かつ法的な根拠に基づいて交渉を進め、円満な解決を目指せるでしょう。

遺産分割の交渉・調停の費用相場

遺産分割の交渉や調停を弁護士に依頼する場合の費用は、一般的に「着手金」と「報酬金」で構成されます。
着手金は依頼時に支払う費用で、20万円~50万円程度が相場です。

報酬金は、最終的に確保できた経済的利益(取得した遺産の額)に応じて変動し、その数%~十数%程度となるのが一般的です。
法律事務所によって料金体系は異なるため、事前に確認することが重要といえます。

相続放棄の費用相場

相続放棄の手続を弁護士に依頼する場合の費用は、遺産分割交渉に比べて安価な傾向にあります。
家庭裁判所に提出する書類の作成と申述の代行を依頼する費用として、10~20万円程度が相場です。

相続放棄の期限が迫っている場合や、手続に不安がある場合には、費用を払ってでも弁護士に依頼するメリットは大きいといえるでしょう。

まとめ

遺産分割協議に参加したくない場合、「相続放棄」で一切の権利義務を手放すか、弁護士を代理人として「相続権を主張する」方法があります。
協議を無視し続けると調停・審判に発展し、不利な結果になるリスクがあるため、ご自身の状況に合った最適な方法を慎重に選ぶことが重要です。

遺産分割の進め方や他の相続人との交渉でお悩みの方は、一人で抱え込まずにアディーレ法律事務所へご相談ください。
相続問題に精通した弁護士が、あなたの状況を丁寧にお伺いし、代理人として円満な解決をサポートします。