「収入を増やしたいからダブルワークを考えているけど、残業代は請求できる?できるなら、どちらに請求すべきなの?」
このような疑問をお持ちではありませんか?
ダブルワークは収入を増やすための有効な手段ですが、労働時間が長くなることで残業代の問題が発生することもあります。残業代を正しく請求するためには、労働基準法に基づく基本ルールや計算方法を理解することが不可欠です。
残業代の計算は一見複雑に思えるかもしれませんが、正確な情報と適切な手順を踏むことで、労働者の権利を守ることができます。
もし計算や判断が難しい場合は、専門家である弁護士に相談することで、適切なアドバイスを受けることができます。
この記事を通じて、ダブルワークにおける残業代請求の概要を理解し、適切な対応を取るための知識を身につけましょう。
この記事を読んでわかること
- ダブルワークにおける残業代の基本ルール
- 残業代の計算方法
- 残業代の請求手順
ここを押さえればOK!
ダブルワークにおける残業代は、労働基準法に基づき、本業と副業の労働時間を通算して計算されます。
原則として、1日の労働時間が8時間、1週間で40時間を超える場合に残業代が発生し、通常の賃金に対して1.25倍の割増率が適用されます。
残業代の支払義務は副業先にあるとされることが多いですが、場合によっては本業の会社にも請求できることがあります。
個人事業主として副業を行う場合、労働基準法が適用されないため残業代の請求はできません。ただし、実態が雇用契約に近いと感じる場合は専門家に相談するとよいでしょう。
一般的に、残業代の請求は、労働時間の記録、必要書類の収集、残業代の計算、請求書の作成、雇用主への提出と交渉、労働基準監督署や弁護士への相談、といった手順で行われます。
ダブルワークを始める際には、労働契約書や就業規則を確認し、健康管理にも注意が必要です。トラブルが発生した場合は、専門家の助けを借りることをおすすめします。
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ダブルワークとは?その基本概念を理解しよう
ダブルワークとは、同時に二つ以上の仕事を持つことを指します。
ダブルワークを選ぶ理由はさまざまで、収入を増やすため、スキルを磨くため、あるいは趣味を仕事にするためなどであるようです。
しかし、ダブルワークにはメリットとデメリットが存在します。
メリットとしては、収入の増加や多様な経験が得られる点が考えられます。
一方で、デメリットとしては、労働時間が長くなり過労や健康問題を引き起こすリスクがあること、そして労働時間の管理が難しくなることがあります。
また、労働基準法に基づく労働時間の制約や、雇用主との契約条件によっては、ダブルワークが制限される場合もあります。
ダブルワークを始める前に、これらの制約や契約条件を確認し、自分にとって最適な働き方を見つけることが重要です。
ダブルワークにおける残業代の基本ルール
ダブルワークにおける残業代の基本ルールは、労働基準法に基づきます。
労働基準法では、原則として、法定労働時間たる1日8時間、週40時間を超えて働いた場合に時間外労働の残業代として割増賃金が発生すると定められています。
なお、所定労働時間を超える残業をしたものの1日の労働時間が8時間を超えないのであれば、時間外労働にはならず割増賃金は発生しませんが、通常の賃金を時給換算したものに残業時間数を乗じて計算される残業代が支払われることになります(所定労働時間を超えるものの法定労働時間を超えない残業のことを法内超過とか法内残業と呼びます。)。
ダブルワークの場合、本業と副業の労働時間を通算して考える必要があります。
たとえば、本業で1日8時間働き、副業でさらに4時間働いた場合、合計12時間となり、4時間分が時間外労働として扱われます。
時間外労働の残業代の計算は、通常の賃金に対して25%の割増率が適用されます(月60時間まで)。
なお、月に60時間を超える時間外労働があった場合、その部分の割増率は50%となります。
ダブルワークにおいては、各雇用主がそれぞれの労働時間を正確に把握し、適切に残業代を支払う義務があります。
また、労働時間の管理も問題になり得ます。
労働者自身が労働時間を記録し、必要に応じて雇用主に報告することが求められます。
労働時間の記録が不十分な場合、適切な残業代を請求することが難しくなるかもしれません。
ダブルワークを行う際は、労働時間や残業代の計算方法をしっかりと理解し、適切に対応することが重要です。
ダブルワークにおける残業代はいずれの会社に請求する?
(1)原則的な労働時間の通算方法による場合
まず、先行して雇用契約を締結した会社(本業の会社)の所定労働時間を前提として、それより後に雇用契約を締結した会社(副業先の会社)の所定労働時間を加えることで通算し、次に、所定外労働が行われた順番に所定外労働の時間も通算し、このように通算した全体の労働時間を踏まえ、残業代が発生するのか確認することになります。便宜上、所定外労働が行われる順番を、本業の会社→副業先の会社の順としますと、①本業の所定労働時間→②副業先の所定労働時間→③本業の所定外労働時間→④副業先の所定外労働時間の順に通算していくことになり、本業と副業先のいずれの会社の労働が法定労働時間を超える残業となるのかなど確認していくことになります。
たとえば、1日の所定労働時間が本業及び副業先のいずれも3時間であり、本業及び副業先のいずれにおいても所定労働時間だけ働いたのであれば、その日の労働時間は①→②の通算で6時間となり、残業代は発生しません(ケースⅠ)。
これに対し、本業で所定労働時間3時間のみならず、更に3時間の残業をし、副業先で所定労働時間3時間働いた場合、①→②→③の通算でその日の労働時間が法定労働時間を超える9時間となり、残業代が発生します(ケースⅡ)。
このケースⅡにおいては、本業の会社が残業代を支払うことになります。本業の会社における労働が所定労働時間を超えることがなければ、ケースⅠのとおり、残業代は発生しなかったのでありますから、本業の会社が法内超過の2時間分の残業代と割増賃金が上乗せされる時間外労働の1時間分の残業代を支払わなければなりません。残業代は、本業の会社に請求することになります。
本業の所定労働時間が8時間、副業先の所定労働時間が3時間であり、本業で所定労働時間だけ働き,引き続き副業先でも所定労働時間だけ働いた場合、その日の労働時間は①→②の通算で法定労働時間を超える11時間となり、残業代が発生します(ケースⅢ)。
この場合、副業先の労働時間の全てが時間外労働となるため、副業先の会社が割増賃金が上乗せされた3時間分の残業代を支払わなければなりません。残業代は、副業先の会社に請求することになります。
本業の所定労働時間が6時間、副業先の所定労働時間が2時間であり、本業で所定労働時間を超えて2時間残業し、引き続き副業先で所定労働時間を超えて2時間残業した場合、その日の労働時間は①→②→③→④の通算で法定労働時間を超える12時間となり、残業代が発生します(ケースⅣ)。
この場合、①→②の通算時点で労働時間が8時間となり、③本業における2時間の残業と④副業先における2時間の残業の合計4時間が時間外労働とるため、本業の会社及び副業先の会社は、それぞれ割増賃金が上乗せされた2時間分の残業代を支払わなければなりません。残業代は、本業の会社及び副業先の会社のいずれに対しても請求することになります。
本業の会社では、1日の所定労働時間が8時とされることが多く、これを前提としてダブルワークをするとなると、ケースⅢのように、副業先での労働時間の全てが時間外労働の残業とされ、割増賃金の上乗せされた残業代が発生することになります。
(2)管理モデルによる場合
原則的な労働時間の通算方法は、上記(1)のとおりですが、厚労省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、ダブルワークにおける簡易な労働時間の管理方法として、いわゆる管理モデルの導入が推奨されています。
1の原則的な労働時間の通算方法によると、他社における労働時間がどの程度になるのか把握することが求められますが、管理モデルは、設定された労働時間の上限を超えない範囲で労働者を働かせる限り、他社における労働時間を把握することなく、労働基準法を遵守することができるものとされます。労働者にとっても、それぞれの雇用主に労働時間を申告するという手間が省けるメリットがあるとされます。
具体的には、
⑴ダブルワーク開始前において、本業における法定外労働時間と副業先における労働時間(所定外労働時間を含む)の合計時間が時間外労働の上限規制の単月100時間未満、複数月で平均80時以内となる範囲内で、それぞれの会社が労働時間の上限をそれぞれ設定し、
⑵ダブルワーク開始後において、それぞれの会社が⑴で設定した労働時間の上限の範囲内で労働させ、
⑶本業の会社は、自らの事業場における法定外労働時間の労働について,副業先の会社は、自らの事業場における労働時間の労働について、それぞれ36協定の延長時間の範囲内とし、割増賃金を支払う
という内容となります。
管理モデルによると、上記1のケースⅡ及びケースⅣにおいて、本業の会社は、①→③の通算となり、いずれのケースも通算で労働時間が8時間を超えておらず、時間外労働とはならないため,法内超過の残業代は発生するものの、割増賃金の支払いは要しません。副業先の会社は、②→④の通算となり、いずれのケースも通算した労働時間分の割増賃金を支払うということになります。管理モデルの導入によって、本業の会社の支払額が減額され、副業先の会社の支払額が増額します。そのため、本業の会社及び副業先の会社のいずれにも残業代を請求することができますが、請求額が上記1とは異なることになります。
なお、この管理モデルの導入には、本業の会社、副業先の会社及び労働者の三者官間の合意が必要となります。
ダブルワークにおける残業代の支払い責任は、基本的には副業先(あとから労働契約を締結した会社)が負うことが原則です。
あとから労働契約を締結する会社は、労働者がすでにほかの会社で働いていることを確認したうえで労働契約を締結すべきとされているためです。
つまり、副業先の会社には、労働者がすでにほかの仕事を持っていることを認識し、その労働時間を考慮して給与計算を行う義務があります。
たとえば、本業で1日8時間働き、副業でさらに4時間働いた場合、副業の4時間が残業時間として扱われ、副業先の会社がその分の残業代を支払う必要があります。
しかし、場合によっては本業の会社に残業代を請求できることもあります。
たとえば、勤務後に労働者が別の会社で働くことを知っていながら、労働時間を延長して働かせた(残業させた)場合です。
労働者が副業について申告しており、副業先での勤務時間を合わせると、1日8時間を超える労働が生じることがわかっていながら労働時間を延長すれば、その分の残業代を支払わなくてはなりません。
その場合において、どちらが先に労働契約を締結したかは関係ありません。
(3)個人事業主として副業を行っている場合は、残業代を請求できない
フリーランスなど、個人事業主として副業をしているなら、残業代の請求はできません。
労働基準法が適用されないからです。
ただし、名目上は個人事業主として業務委託契約で働いている場合であっても、実態は雇用契約のような状況になっているケースはあります。
自分の労働実態が雇用契約なのではないかと感じている場合は、弁護士などの専門家に相談するとよいでしょう。
ダブルワークの残業代の具体的な金額の計算方法
残業代の計算は、労働基準法に基づいて行われます。
基本的に、残業代は通常の賃金に対して1.25倍の割増賃金が適用されます。
具体的な計算方法を見てみましょう。
たとえば、本業で1日8時間働き、副業でさらに4時間働いた場合、法定労働時間を超える副業の4時間が残業時間として扱われます。
副業の時給が1,000円の場合、残業代は1,000円の25%増しで1,250円となります。
したがって、副業の4時間分の残業代は1,250円×4時間=5,000円となります。
(計算がわかりやすいように時給を1,000円としていますが、執筆時点の東京都における最低賃金は1,113円です。就業場所における最低賃金は、よく確認しておくようにしましょう。)
基礎となる時給の計算方法について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
また、労働契約書や就業規則に残業代の計算方法が明記されている場合、その内容をしっかり確認しておきましょう。
労働者が労働契約の内容をよく理解し、適切に対応することが重要です。
ダブルワークの残業代を請求する手順
ダブルワークにおける残業代を請求する手順は、たとえば次のとおりです。
まず、残業代請求の基本的な流れを理解しておきましょう。
労働時間の記録を整える:本業と副業の労働時間を正確に記録します。タイムカードや労働時間管理アプリを使用して、労働時間を詳細に把握しましょう。
必要な書類と証拠の収集:残業代を請求するためには、労働時間の記録だけでなく、給与明細や労働契約書などの書類も必要です。これらの書類は、残業代の計算根拠となるため、しっかりと保管しておきます。
残業代の計算:労働基準法に基づき、残業代を計算します。通常の賃金に対して1.25倍の割増賃金が適用されるため、正確に計算することが重要です。
請求書の作成:残業代の計算が完了したら、請求書を作成します。請求書には、労働時間、残業時間、割増賃金の詳細を明記し、雇用主に提出します。
雇用主への提出と交渉:作成した請求書を雇用主に提出し、残業代の支払いを求めます。雇用主が支払いに応じない場合は、労働基準監督署に相談するか、弁護士に依頼して再び交渉することや法的手続を進めることが考えられます。
労働基準監督署や弁護士への相談:残業代の支払いが拒否された場合やトラブルが発生した場合は、労働基準監督署や弁護士に相談することが重要です。専門家の助けを借りることで、適切な対応方法を見つけることができます。
交渉が難航してからではなく、残業代の計算から弁護士に依頼することもできます。
場合によっては、必要な書類や証拠の収集についてアドバイスをもらえることもあるでしょう。
ダブルワークの残業代請求に関するよくある質問
(1)ダブルワークを始める際に会社に報告する必要がありますか?
法的には必ずしも報告する義務はありませんが、就業規則や労働契約に規定がある場合には、基本的に規定の内容に従うことが必要です。
報告することで会社側も労働時間の管理がしやすくなり、トラブルを未然に防ぐことができます。実際のとこころ、労働者から報告がないと、会社側が労働時間を把握・管理することは事実上不可能といえます。
(2)ダブルワークの労働時間はどのように計算されますか?
ダブルワークの場合、本業と副業の労働時間を通算して計算します。
具体的な通算方法は,上記のとおりです。
(3)未払い残業代が発生した場合の対処法は?
まずは雇用主に対して未払いの事実を伝え、支払いを求めます。
それでも解決しない場合は、労働基準監督署に相談して指導を求めることや、弁護士に依頼して代わりに請求・交渉してもらうことが考えられます。
ダブルワークをする際の注意点とアドバイス
まず、労働契約書や就業規則をよく確認することが重要です。
特に副業を行う際には、本業の会社が副業を許可しているかどうかを確認しましょう。
副業禁止の規定がある場合、違反すると懲戒処分の対象となる可能性があります。
また、副業先の労働条件や残業代の取扱いについても、事前に確認しておくことが必要です。
健康管理も忘れてはいけません。
ダブルワークは労働時間が長くなりがちで、過労やストレスが溜まりやすくなります。
適切な休息を取り、バランスの取れた食事や運動を心がけることで、健康を維持することが重要です。過労が続く場合は、医師の診断を受けることも検討してください。
さらに、労働時間の記録を正確に行うことが大切です。
タイムカードや労働時間管理アプリを使用して、労働時間を詳細に記録しましょう。
これにより、残業代の請求時に必要な証拠を確保することができます。
最後に、トラブルが発生した場合は、労働基準監督署や弁護士に相談することをおすすめします。
専門家の助けを借りることで、適切な解決方法が見つかるかもしれません。
【まとめ】ダブルワークの残業代請求を成功させるために
ダブルワークにおける残業代請求は、労働時間の管理や計算方法、請求手順を正確に理解することが重要です。
しかし、ダブルワークにおける残業代の計算は複雑で、法的な判断が必要となる場合もあります。
そのような場合は、専門家である弁護士に相談することで、適切なアドバイスを受けることが期待できます。弁護士のサポートを受けることで、未払い残業代の請求をスムーズに進めることができるでしょう。
アディーレ法律事務所は、残業代請求に関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として成果があった場合のみ報酬をいただくという成功報酬制です。
そして、原則として、この報酬は獲得した金銭(例:残業代、示談金)からお支払いとなり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
※以上につき、2024年8月時点
ダブルワークの残業代請求でお悩みの方は、残業代請求を得意とするアディーレ法律事務所へご相談ください。