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兄弟の一人だけ相続放棄するときの注意点|他の相続人への影響や手続きの流れも解説

作成日:
LA_Ishii

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

「兄弟のうち、一人だけが相続放棄をする」という状況で悩んでいるかもしれません。
相続放棄は個人の自由ですが、自分だけが放棄することで、他の兄弟にどのような影響があるのか不安に感じている方もいるでしょう。

この記事では、兄弟のうち、一人だけが相続放棄をする際の手続きや、他の兄弟に生じる影響、そして他の相続人に円満に告げるポイントを分かりやすく解説します。
相続放棄を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

ここを押さえればOK!

兄弟のうち一人だけ相続放棄をすることは可能です。相続放棄に、兄弟を含む他の相続人の同意や許可は不要です。
ただし、一人だけ相続放棄をすると、その分の相続分が他の兄弟に按分されるため、負債もより多く引き継がれることになります。また、不動産の管理責任が移るなどの影響も考慮しなければなりません。
トラブルを避けるためにも、相続放棄の意向を事前に伝え、相続財産の内容を正確に把握しておくことが重要です。

相続放棄の手続きは、自己のために相続の開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述をする必要があります。ケースによっては必要書類も多いです。手続きに不安がある場合や兄弟間のトラブルが懸念される場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

相続放棄を検討している方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。

兄弟姉妹のうち一人だけ相続放棄は可能

兄弟姉妹のうち、一人だけが相続放棄をすることは可能です。

(1)相続放棄は個人の権利

相続放棄は、民法で定められている相続人個人の権利です。
遺産を相続するかどうかについては、個々の相続人が自由に決定できます。
他の相続人が相続放棄をしていなくても、自分だけが相続放棄を選択することができます。

そして、相続放棄をすると、その人は最初から相続人ではなかったことになります(民法939条)。

(2)他の相続人の同意は不要

相続放棄は、家庭裁判所に申し立てて行います(民法938条)。他の相続人である兄弟姉妹の同意や承諾を得る必要はありません。
自分一人で手続きを進めることができ、家庭裁判所が受理すれば、相続放棄は成立します。

一人だけ相続放棄した場合の他の兄弟姉妹への影響

相続放棄をした場合、その人は最初から相続人ではなかったものとして扱われます。
そのため、一人だけが相続放棄をすると、次で説明するように、他の相続人である兄弟姉妹に影響がおよぶ可能性があります。

(1)相続分が増える可能性がある

共同相続人のうち、一人が相続放棄をすると、その人の相続分は他の相続人に按分されます。
例えば、相続人が配偶者とその二人の子ども2人(兄弟)だった場合、法定相続分は配偶者2分の1、子ども(兄弟)は各4分の1です。子ども(兄弟)の内一人だけが相続放棄をすると、他の兄弟の相続分は4分の1から2分の1に増えることになります。

(2)相続順位が繰り上がることも

相続人が配偶者とその子ども1人だった場合、法定相続分は各2分の1です。子どもが相続放棄をすると、相続順位が繰り上がり、被相続人(亡くなった方)の親が相続人になります。そして、法定相続分は、配偶者3分の2、親3分の1(両親が健在であれば各6分の1)になります。

(3)借金などの負債も引き継がれる

被相続人に借金などの負債があった場合、相続放棄をしない他の相続人が、その負債も引き継ぐことになります。

相続放棄をした人は、借金の返済義務から逃れることができますが、その分、他の兄弟姉妹を含む相続人の負担が増加する可能性があります。

(4)不動産の管理責任が移る

相続財産の中に不動産が含まれている場合、相続放棄すれば、その管理義務を負わずに済みます。他の兄弟姉妹を含む相続人が、その不動産を管理する責任を負うことになります。

特に、老朽化した空き家や遠方の土地など、管理に手間や費用がかかる不動産の場合、相続放棄をしない兄弟姉妹を含む相続人に負担をかけることになるかもしれません。

ただし、「その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているとき」には、他の相続人などに引き渡すまで、その財産を保存しなければならないという責任が定められています(民法940条1項)。

兄弟姉妹間でトラブルにならないための注意点

相続放棄を検討している場合、後々のトラブルを防ぐためにも、いくつかの注意点を押さえておくことが重要です。

(1)相続放棄する旨を事前に伝える

相続放棄をする際は、事前に兄弟姉妹を含む他の相続人にその旨を伝えておくとよいでしょう。
事後報告では、残された兄弟姉妹が混乱したり、不信感を抱いたりして、これまで良好だった人間関係に亀裂が入る可能性があります。

相続放棄に至った経緯や理由を共有して、円滑なコミュニケーションを図ることが大切です。
もちろん、他の相続人とはもともと疎遠だったりして伝えにくい場合には、伝えないという選択肢もあります。また契約内容にもよりますが、弁護士に相続放棄を依頼すれば、弁護士から他の相続人に伝えてもらうこともできます。

(2)相続財産の内容を正確に把握する

相続放棄をする前に、相続財産を正確に把握しておくことが重要です。
プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれていないか、しっかりと調査しましょう。他の相続人が把握している遺産の情報は、共有してもらうようにしましょう。

「借金を相続したくない」という理由の場合は、プラスの財産が借金を上回っていれば、相続放棄せずに済むかもしれません。

相続財産の調査について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

相続財産の調査は自分でできる?調査方法と相談先を解説

相続放棄の手続きと必要書類

相続放棄の手続きは、家庭裁判所で行います。期限や提出書類が決まっていますので、次のポイントに注意して早めに準備しましょう。

(1)相続放棄の期限(熟慮期間)

相続放棄は、自己のために相続があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。この3ヶ月の期間を熟慮期間といい、この期間を過ぎると原則として相続を承認したとみなされます。

被相続人が死亡してしばらくたってからその事実を知ったケースなど、熟慮期間の起算点について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

相続放棄ができる期間は3ヶ月?熟慮期間の起算点について弁護士が解説

(2)家庭裁判所への申述

相続放棄は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して申述書や必要書類等を提出して行います。申述書には、相続放棄をしたい旨や理由などを記載します。

(3)必要書類と費用

相続放棄の申し立てには、申述書のほか、被相続人の住民票除票又は戸籍の附票、相続放棄をする方の戸籍謄本など、複数の書類が必要です。また、収入印紙800円と、切手(家庭裁判所によっていくらかは異なる)が必要です。

家庭裁判所に提出する書類は、被相続人との関係性によって、必要となるものが変わります。必要な書類をすべて漏れなくそろえなければ、相続放棄の手続は進みません。

ケース別の相続放棄に必要な書類について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

【ケース別】相続放棄の必要書類とは?集め方を弁護士が解説

例えば、被相続人の兄弟姉妹が相続放棄する場合に必要な書類は下記です。

(1)相続放棄申述書
(2)被相続人の住民票除票又は戸籍の附票
(3)相続放棄をする方の戸籍謄本
(4)被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
(5)被相続人の子で死亡している方がいる場合、その子の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本(*もしも孫がいた場合には孫の分も必要)
※(4)により、被相続人にもともと子どもがいないことが判明すれば、(5)は不要です。
(6)被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

事前に、あなたの場合にどのような書類が必要になるのか、家庭裁判所のホームページを見たり問い合わせたりして確認するようにしましょう。

参考:相続放棄の申述|裁判所

忙しい毎日を送りながら書類を集めるのは大変です。弁護士に依頼すれば、基本的に戸籍の収集を代わりに行ってもらうことができます。
相続放棄を検討している方は、早めに一度相談する事をお勧めします。

相続放棄の撤回はできる?

一度、家庭裁判所に受理された相続放棄は、原則として撤回できません(民法919条1項)。
したがって、相続放棄をするかしないかは慎重に検討する必要があります。

例外的に、詐欺や脅迫によって相続放棄をした場合などでは、取消しが認められる可能性がありますが(民法919条2項)、極めて特殊な状況に限られるでしょう。
取消しは、相続放棄と同じように家庭裁判所に申述したうえで、受理される必要があります。

相続放棄を弁護士に依頼するメリット

相続放棄の手続きには、期限があり、必要書類の収集が大変なケースもあります。
1人でもできますが、弁護士などの士業に依頼することには、次のような多くのメリットがあります。

(1)手続きを任せられる

相続放棄の申述が受理されるためには、期限内に、書類を作成したうえで必要書類を漏れなく収集し、家庭裁判所に提出する必要があります。
仕事や家事育児など、忙しい毎日を送る中で、役所から戸籍を取り寄せたりするのは労力と時間がかかります。

弁護士に依頼すれば、書類作成と書類収集を基本的に任せることができますので、依頼者の負担の軽減が期待されます。

(2)他の相続人とのトラブル回避

相続放棄を検討している場合、兄弟姉妹を含む他の相続人との間で感情的な対立が生じることがあります。
契約内容にもよりますが、相続放棄を弁護士に依頼すると、他の相続人に対して相続放棄をする旨伝えてもらうことができます。
他の相続人と冷静にコミュニケーションをとることができ、感情の掛け違いによるトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。

(3)適切なアドバイスを受けられる

相続放棄には、借金だけでなくプラスの財産も一切引き継げない、3ヶ月という期間制限、他の相続人への影響などの注意点があります。
弁護士は、依頼者の利益のために、個々の状況に応じて適切なアドバイスを提供します。

【まとめ】

共同で相続人となった兄弟姉妹のうち、一人だけが相続放棄をすることは可能です。
しかし、一人だけが放棄することで、他の兄弟の相続分が増え、結果として引き継ぐ負債も増えるなどの影響が生じます。そのため、トラブルを避けるためには、事前に相続放棄をする旨を伝えることが望ましいです。

相続放棄は、期限が定められており、必要書類が多いこともあります。もしご自身での手続きが難しいと感じたり、他のご兄弟との間でトラブルが見込まれる場合、弁護士にご相談ください。
アディーレ法律事務所では、お客様一人ひとりに寄り添い、相続放棄の手続きをサポートいたします。

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