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内定取消しは違法?対処法や裁判例について解説

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リーガライフラボ

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

「内定取消しにあってしまった……どうすればいいの?」

最近、新型コロナウイルスの流行の影響で、内定取消しが急増しています。
実は、内定取消しが違法で無効となるケースは少なくありません。
ですが、泣き寝入りしている方が多いのが現状です。

内定取消しにあってしまったら、まずはしかるべき相談窓口に相談するべきです。

このことを知っていれば、内定取消しにあったとしても泣き寝入りしてしまうことなく済ませることができる可能性が高まります。

この記事では、次のことについて弁護士が解説します。

  • 内定取消しとは何か
  • 内定取消しが違法になるケース・違法にならないケース
  • 内定取消しにあった場合の対処法
  • 内定取消しに関する裁判例
この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

内定取消しとは

「そもそも内定取消しってどういうことだろう」

「内定取消し」と言われてしまうと、動揺してしまいますよね。

実のところ、コロナ禍により、内定取消しが相次いでいます。
しかし、内定取消しの法的な意味は、意外に知られていません。
まずは、内定取消しの法的な意味についてご説明します。

会社が内定者への内定を取り消すこと

内定取消しとは、簡単にいえば、会社が、内定者に対し、「やっぱり採用を取りやめる」と通知する行為です。
内定取消しの法的性質は、個別のケースによって異なるものの、一般的には、「会社が内定者に対し、就労開始前に、一種の労働契約を解約する行為」と、解釈されています(大日本印刷事件・最高裁第二小法廷判決昭和54年7月20日)。

内定の段階では、一種の労働契約が成立すると解釈されています。
この内定の段階の労働契約には次の特殊性があります。

  1. 始期付き(入社日までは働く義務はないし、賃金を支払う義務もない)
  2. 解約権が留保されている(卒業できなかったら解約できるなど)

内定取消しは、この留保されていた解約権を行使する行為となります。

内定取消しは違法になることも

会社が内定を取り消すと、違法になる場合があります。
どのような場合に内定取消しが違法になるのか、解説いたします。

(1)内定取消しが違法になる理由とリスク

内定は法律上の「始期付・解約権留保付の労働契約」にあたり、たとえ就労前であっても雇用関係が成立しています。
そのため、会社は自由に内定取消しをできるわけではありません。
判例によれば、次の場合に該当しない限り、内定取消しは違法となります(最高裁第二小法廷判決昭和54年7月20日)。

・採用内定当時知ることができず、または知ることが期待できないような事実であって、

・これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的に認められ社会通念上相当として是認できるもの

内定取消しが違法となった場合には、内定取消しが無効となる場合があります(大日本印刷事件・最高裁第二小法廷判決昭和54年7月20日)。
また、恣意的な内定取消しの場合は慰謝料などの損害賠償の対象となることがあります。

さらに、次のいずれかの場合に該当すると、社名が公表されることがあります(職安則17条の4第1項、平成21年1月19日厚生労働省告示第5号)。

  1. 2年以上連続して内定取消しが行われた
  2. 同一年度内で10名以上に対し内定取消しが行われた(内定取消しとなった新卒者の安定した雇用を確保するための措置を講じ、内定取消しとなった新卒者の安定した雇用を速やかに確保した場合を除く)
  3. 事業活動の縮小を余儀なくされているとは明らかにいえない
  4. 内定取消し対象となった新卒者に対し、内定取消しの理由を十分に説明していない
  5. 内定取消し対象者となった新卒者に対し、就職先の確保に向けた支援を行わなかった

(2)例外的に内定取消しが違法とならないケース

裁判所は、内定取消しに対し、厳しい態度をとっており、違法と判断されることも多いです。
しかし、例外的に内定取消しが違法とならないケースもあります。

次のような場合には、内定取消しが違法とはならないことがあります。

  • 学校を卒業できず、予定していた入社日に入社できなくなった
  • 業務に支障が出るような病気など健康上の問題が新たに見つかった
  • 履歴書に重大な虚偽があったことが発覚した
  • 内定後に刑事事件を起こした
  • 会社が経営難となった場合であって、一定の要件を満たしている

(3)内々定の取消しは違法にはなりにくい

内々定とは、会社が応募者に対して、採用予定であることを通告しているだけの状態です。
数社から内々定を得ている応募者もおり、この場合、内定の通知までに1社を選ぶことになります。
このように内々定の段階では、一般的には、会社も応募者の双方ともに、拘束力を持った関係に入ったという認識がないと考えられます。
そのため、内々定の段階では、通常、労働契約は結ばれていないと判断されるため、内々定を取り消しても原則として違法にはなりません(裁判例につき、東京地裁判決平成23年11月16日など)。

内定取消しにあった場合

では、内定取消しにあった場合、誰に相談するべきでしょうか。
どのような対応を取るべきでしょうか。
これらにつき、解説いたします。

(1)大学のキャリアセンターやハローワークに相談する

就職のサポートをしてくれた大学のキャリアセンターやハローワークなどに内定取消しにあった旨を伝えて、どのような対処を取ればいいのか相談するという方法があります。

また、新型コロナウイルスの流行の影響で、内定取消しが急増していることを受けて、2020年4月13日から、内定取消しされた方向けの特別窓口が、ハローワークに設けられています(2022年1月現在)。

参考:「新卒者内定取消等特別相談窓口」を全国56ヵ所の新卒応援ハローワークに設置します|厚生労働省

(2)総合労働相談コーナーに相談する

総合労働相談コーナーでは「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づき、内定取消しなどの労働相談に乗ってくれます。
必要応じて、助言・指導・あっせん(当事者間の話し合いの仲立ち)を行ってくれます。
総合労働相談コーナーは、各都道府県労働局や全国の労働基準監督署内などに、設置されています。

参考:総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省

(3)損害賠償請求をする

違法な内定取消しをされたことにより、損害が発生したとして、損害賠償請求を行う方法があります。
このような請求の場合、専門知識が必要なことはもちろん、複雑な対応が必要となることがあります。
このため、損害賠償請求を考えている場合は、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

内定取消しに関する裁判例

内定取消しに関する裁判例について、詳細をご紹介いたします。

(1)大日本印刷事件(最高裁第二小法廷判決昭和54年7月20日)

この事件の内定取消しの主な理由は、

応募者は陰気な印象なので当初から不適格と思ったものの、それを打ち消す材料が出るかも知れないので採用内定としておいたところ、そのような材料が出なかった

というものでした。

陰気な印象であることは当初からわかっている事実ですので、会社としてはその段階で調査を尽くせば、従業員としての適格性の有無を判断することができたはずです。
それにもかかわらず、「陰気という不適格性を打ち消す材料が出なかったので内定を取り消す」ということは、解約権の濫用であり、内定取消しは無効と判示されました。

(2)HIV内定取消事件(札幌地裁判決令和元年9月17日)

応募者は、採用面接でHIV感染を告げずに病院から社会福祉士としての内定を得ましたが、病院側が受診記録を調べ、本人に無断で感染を把握しました。
その後、応募者より就労に問題ないとの診断書が提出されたものの、内定取消しとなりました。

当該応募者からの損害賠償請求に対し、裁判所は感染について申告の義務があったとは言えないとして、病院側に165万円(内、慰謝料150万円)の支払いを命令しました。

なお、厚生労働省は通達で、HIV感染を理由とした就業制限や解雇を禁止し、職場で不当な扱いを受けないよう、感染の申告も義務付けていません。

【まとめ】内定取消手続きの相談は弁護士へ

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 内定取消しとは、会社が内定者への内定を取り消すこと。
  • 内定取消しは自由にできるわけではなく、違法になることもある。
  • 例外的に内定取消しが違法にならないケースとして、学校を卒業できず予定していた入社日に入社できなくなった場合などがある。
  • 内々定の取消しは違法になりにくい。
  • 内定取消しにあった場合、大学のキャリアセンターやハローワークに相談するなどの方法がある。

内定取消しにあってしまうと、どうしたらいいのか分からずに困ってしまいますよね。
ですが、内定取消しにあった場合には泣き寝入りせずに適切に対応することが大切です。
内定取消しにあってしまった場合には、大学のキャリアセンターやハローワーク、または弁護士などに相談するようにしましょう。

参考:全国ハローワークの所在案内|厚生労働省

この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

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