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内定取消しは違法?労働者が知っておきたい法的リスクや手続きについて解説

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新型コロナウイルスの流行の影響で、内定取消しが急増しています。
実は、内定取消しが違法で無効となるケースが少なくないのですが、泣き寝入りしている方が多いのが現状です。
労働者が知っておくべき内定取消しについての基礎知識や対処法を、解説します。

内定取消しとは

コロナ禍により、内定取り消しが相次いでいますが、内定取消しの法的な意味は、意外に知られていません。
まずは、内定取消しの法的な意味と、コロナ禍における内定取消しの現状を解説いたします。

会社が内定者への内定を取り消すこと

内定取消しとは、簡単にいえば、会社が、内定者に対し、「やっぱり採用を取りやめる」と通知する行為です。
内定取消しの法的性質は、個別のケースによって異なるものの、一般的には、「会社が内定者に対し、就労開始前に、一種の労働契約を解約する行為」と、解釈されています(大日本印刷事件(最高裁第二小法廷判決昭和54年7月20日))。

すなわち、内定の段階で、一種の労働契約が成立すると解釈されています。
この内定の檀愛の労働契約には次の特殊性があります。

  1. 始期付き(入社日までは働く義務はないし、賃金を支払う義務もない)
  2. 解約権が留保されている(卒業できなかったら解約できるなど)

内定取消しは、この留保されていた解約権を行使する行為となります。

コロナ禍で内定取消しが急増している

新型コロナウイルスの広がりにより、業績が悪化する企業が増加しています。
その結果、従業員の解雇や新規採用の見送りなどとともに、新卒者の内定取消しも増加しています。
厚生労働省の調べでは、2019年度の新卒者の内定取消しは174人(76事務所)と、前年度の5倍以上(※人数比)にものぼっています(2020年8月末現在)。
上記人数は、厚生労働省が把握している人数ですので、実際の内定取消者数はさらに多い可能性があります。

参考:令和元年度新卒者内定取消し等の状況を公表します|厚生労働省

内定取消しは違法になることも

会社が内定を取り消すと、違法になる場合があります。
どのような場合に内定取消しが違法になるのか、解説いたします。

(1)内定取消しが違法になる理由とリスク

内定は法律上の「始期付・解約権留保付の労働契約」にあたり、たとえ就労前であっても雇用関係が成立しています。
そのため、会社は自由に内定取消しをできるわけではありません。
判例によれば、以下に場合に該当しない限り、内定取消しは違法となります(最高裁第二小法廷昭和54年7月20日)。

・採用内定当時知ることができず、または知ることが期待できないような事実であって、

・これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的に認められ社会通念上相当として是認できるもの

内定取消しが違法となった場合には、内定取消しが無効となる場合があります。(大日本印刷事件(最高裁第二小法廷判決昭和54年7月20日))。
また、恣意的な内定取消しの場合は慰謝料などの損害賠償の対象となることがあります

さらに、次のいずれかの場合に該当すると、社名が公表されることがあります(職安則17条の4第1項、平成21年1月19日厚労令4号)。

  1. 2年以上連続して内定取消しが行われた
  2. 同一年度内で10名以上に対し内定取消しが行われた(内定取消しとなった新卒者の安定した雇用を確保するための措置を講じ、内定取消しとなった新卒者の安定した雇用を速やかに確保した場合を除く。)
  3. 事業活動の縮小を余儀なくされているとは明らかにいえない
  4. 内定取消し対象となった新卒者に対し、内定取消しの理由を十分に説明していない
  5. 内定取消し対象者となった新卒者に対し、就職先の確保に向けた支援を行わなかった

ただし、内定者の責めに帰すべき事由により内定取消しとなった場合や、倒産により翌年度は新卒者の募集・採用がないことが確実な場合は、社名の公表はありません。

参考:令和元年度新卒者内定取消し等の状況を公表します|厚生労働省

(2)例外的に内定取消しが違法とならないケース

裁判所は、内定取消しに対し、厳しい態度をとっており、違法と判断されることも多いですが、例外的に、内定取消しが違法とならないケースがあります。

参考:Q&A 雇用契約|厚生労働省

(2-1)学校を卒業できなかった

学校を卒業することは、通常、内定の前提条件です。
そのため、内定を出した学生が大学を卒業できず、予定していた入社日に入社できないときは、内定取消しをしても、適法となる可能性があります。

(2-2)健康上の問題がみつかった

業務に支障が出るような病気がみつかったときは、内定取消しが適法となる可能性があります。
ただし、業務に支障のない病気の場合は、内定取消しは違法となることがあります。

(2-3)履歴書に虚偽の内容があった

履歴書に虚偽の内容があったときに、内定取消しが適法となるのは、「虚偽記載の内容・程度が重大で、それによって労働者としての不適格性あるいは不信義性が判明した場合」に限ります(日立製作所事(横浜地裁判決昭和49年6月19日))。

例えば、「経験年数が一定年数以上の人」を募集している会社に対し、全く経験も技能もないにもかかわらず、経験があるように履歴書に虚偽の事実を書いた場合には、内定取消しは適法となる可能性があります。

(2-4)内定後に刑事事件を起こした

内定後に、内定者が刑事事件を起こした場合に、内定取消しが適法となる可能性があります(電電公社近畿電気通信局事件(最高裁判決昭和55年5月30日))

(2-5)会社が経営難のとき

経営難を理由とする内定取消しの場合、

いわゆる整理解雇の有効性の判断に関する1.人員削減の必要性、2.人員削減の手段として整理解雇することの必要性、3.被解雇者選定の合理性、4.手続の妥当性という四要素を総合考慮のうえ、解約留保権の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当と是認することができる

場合に、適法となります(インフォミックス事件(東京地裁判決平成9年10月31日))。

この「整理解雇の有効性を判断するための4要素」の詳細は、次のとおりです。

  1. 経営上の必要性
    人員削減が必要である
  2. 解雇回避努力
    配転、出向、希望退職の募集など、解雇以外の手段を試みている
  3. 被解雇者選定の合理性
    解雇の対象者が、客観的で合理的な基準により、公正に選ばれている
  4. 手続きの相当性
    解雇の対象者や組合に、人選の基準や当否につき十分に説明し、協議している

(3)内々定の取消しは違法にはなりにくい

内々定とは、会社が応募者に対して、採用予定であることを通告しているだけの状態です。
数社から内々定を得ている応募者もおり、この場合、内定の通知までに1社を選ぶことになります。
このように内々定の段階では、一般的には、会社も応募者の双方ともに、拘束力をもった関係に入ったという認識がないと考えられます。
そのため、内々定の段階では、通常、労働契約は結ばれていないと判断されるため、内々定を取り消しても原則として違法にはなりません。

裁判例でも、内々定者の

採用が見送られる可能性があることは当然であって、他に特段の事情がない限り、・・・不採用としたこと自体が違法の評価を受けることはないと言うべきである

とされています(東京地裁判決平成23年11月16日)。

ただし、内々定の取消しにあたり、会社の態度が不誠実であった場合、損害賠償責任が発生することもあるので注意が必要です(コーセーアールイー事件(福岡高裁判決平成23年3月10日))。
また、内々定段階で、拘束の度合いが強ければ、内々定ではなく、内定と評価される場合もあります。

内定取消しにあった場合

では、内定取消しにあった場合、誰に相談するべきでしょうか。
どのような対応を取るべきでしょうか。
これらにつき、解説いたします。

(1)大学のキャリアセンターやハローワークに相談する

就職のサポートをしてくれた大学のキャリアセンターやハローワークなどに内定取消しにあった旨を伝えて、どのような対処を取ればいいのか相談するという方法があります。

また、新型コロナウイルスの流行の影響で、内定取消しが急増していることを受けて、2020年4月13日から、内定取消しされた方向けの特別窓口が、ハローワークに設けられています(2020年9月24日現在)。

参考:「新卒者内定取消等特別相談窓口」を全国56ヵ所の新卒応援ハローワークに設置します|厚生労働省

なお、新卒者に対し内定を取消したり、内定期間を延長する場合、会社は、あらかじめハローワークの所長及び学校の長にその旨を通知することとされています(職業安定法施行規則第三十五条第二項)。
また、ハローワークの長は、この通知を受けて、速やかに、内定取消しの回避について、指導を行うこと、とされています。

(2)総合労働相談コーナーに相談する

総合労働相談コーナーでは「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づき、内定取消しなどの労働相談に乗ってくれます。
必要応じて、助言・指導・あっせん(当事者間の話し合いの仲立ち)を行ってくれます。
総合労働相談コーナーは、各都道府県労働局や全国の労働基準監督署内などに、設置されています。

参考:総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省

(3)損害賠償請求をする

違法な内定取消しをされたことにより、損害が発生したとして、損害賠償請求を行う方法があります。
このような請求の場合、専門知識が必要なことはもちろん、複雑な対応が必要となってくることがあるため、損害賠償請求を考えている場合は、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

内定取消しに関する裁判

内定取消しに関する裁判例について、詳細をご紹介いたします。

(1)大日本印刷事件(最高裁第二小法廷判決昭和54年7月20日)

この事件の内定取消しの主な理由は、

応募者は陰気な印象なので当初から不適格と思ったものの、それを打ち消す材料が出るかも知れないので採用内定としておいたところ、そのような材料が出なかった

というものでした。

陰気な印象であることは当初からわかっている事実ですので、会社としてはその段階で調査を尽くせば、従業員としての適格性の有無を判断することができたはずです。
それにもかかわらず、「陰気という不適格性を打ち消す材料が出なかったので内定を取り消す」ということは、解約権の濫用であり、内定取消しは無効と判示されました。

(2)HIV内定取消事件(札幌地裁判決令和元年9月17日)

応募者は、採用面接でHIV感染を告げずに病院から社会福祉士としての内定を得ましたが、病院側が受診記録を調べ、本人に無断で感染を把握しました。
その後、応募者より就労に問題ないとの診断書が提出されたものの、内定取消しとなりました。

当該応募者からの損害賠償請求に対し、裁判所は感染について申告の義務があったとは言えないとして、病院側に165万円(内、慰謝料150万円)の支払いを命令しました。

なお、厚生労働省は通達で、HIV感染を理由とした就業制限や解雇を禁止し、職場で不当な扱いを受けないよう、感染の申告も義務付けていません。

【まとめ】内定取消手続きの相談は弁護士へ

内定取消しは、違法な場合が多いです。
とはいえ、例外的に内定取消しが違法にならない場合もあります。
内定取消しでお悩みの場合は、弁護士へご相談ください。

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