「雇用保険被保険者証って何だろう?どんな時に必要になるんだろう?」
雇用被保険者証は、雇用保険に加入していることを証明する書類です。
雇用被保険者証は転職時や、教育訓練給付金を受給する際に必要となります。
今回は、次のことについて弁護士が解説いたします。
- 雇用保険被保険者証とは何か
- 雇用保険被保険者証が必要になる場面
- 雇用保険被保険者証と離職票との違い
- 雇用保険被保険者証の再発行方法
中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。
雇用保険被保険者証とは?
まずは、次のことについてご説明します。
- 雇用保険被保険者証とは何か
- 雇用保険被保険者証が発行されるタイミング
- 雇用被保険者証が必要になる時期

参考:雇用保険被保険者証|ハローワークインターネットサービス
(1)「雇用保険加入者の証明」となるもの
雇用保険に加入すると、ハローワークから事業主を通じて雇用保険被保険者証が交付されます。
雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入していることを証明するものです。
参考:雇用保険の手続きはきちんとなされていますか?~被保険者記録に誤りがないことを確認するために~|厚生労働省
厚生労働省は、労働者に雇用保険被保険者証を交付するように求めていますが、多くの会社では、紛失しないように、会社にてそのまま保管しています。
参考:雇用保険の手続きはきちんとなされていますか?~被保険者記録に誤りがないことを確認するために~|厚生労働省
(2)退職時に会社から手渡される
労働者が退職することになると、多くの会社では、保管していた雇用保険被保険者証を、労働者に対し、手渡しや郵送などで、交付します。
労働者の多くは、退職してはじめて、雇用保険被保険者証を手にすることとなります。
(3)雇用保険被保険者証は転職時の入社手続きの際に必要
転職すると、転職先で、雇用保険の再加入の手続きを取ってもらうことになります。
この際、原則として以前の雇用保険と同じ被保険者番号にて再加入の申請をしてもらうことになります。
そのため、転職先で、被保険者番号の確認を目的として、雇用保険被保険者証の提出が求められることが多いです。
雇用保険被保険者証は、貴重品を保管する場所に入れるなどして、失くさないようにしましょう(失くした場合は、後でご説明するようにハローワークで再発行手続きをしてもらえます)。
(4)雇用保険被保険者証は教育訓練給付金の支給を受けるときに必要となることも
「教育訓練給付金」の支給申請の際、必要書類として、雇用保険被保険者証が必要となることがあります(雇用保険被保険者証が手元にない場合には、代わりの書類で対応できる場合もありますので、ハローワークに問い合わせしてみてください)。
「教育訓練給付金」とは、一定の要件を満たす人が、厚生労働大臣の指定にかかる教育訓練(資格講座など)を受けた場合に、教育訓練に必要な費用の一部を、ハローワークが給付するというものです。
簿記検定講座、社会保険労務士の資格取得講座など、さまざまな講座が教育訓練給付金の対象として、厚生労働大臣により指定されています。
参考:教育訓練給付制度|厚生労働省
参考:Q&A~一般教育訓練給付金~ Q12 一般教育訓練給付金の支給申請に必要な書類は?|厚生労働省
参考:教育訓練給付制度|ハローワークインターネットサービス
雇用保険被保険者証と離職票の違いは?
雇用保険被保険者証と名称が似たものとして、離職票(正式名称「雇用保険被保険者離職票」)がありますが、全くの別物です。
離職票は退職した事実を証明するもので、雇用保険の失業給付を受給するときなどに必要な書類です。
このことから、雇用保険被保険者証は転職の際などに必要となるのに対して、離職票は失業中に必要となるという違いがあります。
離職票は、通常、退職後10日前後で、退職した会社から渡されます。
雇用被保険者証 | 離職票 |
---|---|
雇用保険に加入していることを証明 | 退職した事実を証明 |
転職時・教育訓練給付金の受給手続きに必要 | 失業保険の受給手続き等に必要 |
雇用保険被保険者証がもらえない際に考えられる理由
退職しても雇用保険被保険者証をもらえない場合は、実は雇用保険に加入していないのかもしれません。
雇用保険の加入要件は、次のとおりです(雇用保険法第6条1号、2号)。
- 所定労働時間が週20時間以上であること
- 31日以上継続して雇用見込みがあること
例えば1週間の短期バイトなどは雇用保険に加入していないことが多いです。
会社が雇用保険に加入していないものの、本来は加入の対象ではないかと疑われる場合には、労働者自らが、ハローワークに対し、雇用保険の加入の対象であるのか否か問い合わせることもできます。
雇用保険に加入すべき対象であったのに、雇用保険に未加入であることが判明した場合、さかのぼって雇用保険に加入できることがあります。
参考:雇用保険に加入していますか~労働者の皆様へ~|厚生労働省
派遣社員や公務員はもらえる?
派遣社員・アルバイト・パート・契約社員でも、先ほどご説明した条件(1.所定労働時間が週20時間以上であること、2.31日以上継続して雇用見込みがあること)をクリアしていれば雇用保険に加入できます。
雇用保険に加入していれば、派遣社員・アルバイト・パート・契約社員であっても、退職時に雇用保険被保険者証がもらえます。
これに対して、公務員は法律上、雇用保険に加入できないので、退職しても雇用保険被保険者証はもらえません(雇用保険法第6条6号)。
公務員の場合は、他の法令等に基づき、離職時に、失業保険(求職者給付及び就職促進給付)を超える内容の給付がされるためです。
事業主は雇用保険被保険者証を労働者に渡す義務がある
雇用保険に加入しているのに、退職しても会社から雇用保険被保険者証がもらえないときは、事業者側に問題があることが多いです。
というのも、労働者が入社した際、事業者は所轄のハローワークに雇用保険被保険者資格取得届を提出します。
その後ハローワークから事業主に「雇用保険被保険者証」が交付されます。
事業者は、交付された「雇用保険被保険者証」を労働者本人に渡す必要があります。
参考:雇用保険の手続きはきちんとなされていますか?~被保険者記録に誤りがないことを確認するために~|厚生労働省
しかし、労働者が失くしてしまわないように、事業主が雇用保険被保険者証を保管したままにしていることが多いです。
この場合、労働者が退職する際には、必ず会社は、労働者本人に、雇用保険被保険者証を渡す必要があります。
退職しても、雇用保険被保険者証を会社から交付してもらえない場合は、会社側に問い合わせましょう。
会社が、雇用保険被保険者証の交付を忘れている可能性があります。
雇用保険被保険者証に記載してある項目
そもそも、雇用保険被保険者証には何が記載してあるのでしょうか。
まずは、こちらの雇用保険被保険者証の見本をご覧ください。

参考:雇用保険被保険者証 | ハローワークインターネットサービス
雇用保険被保険者証には、次の項目が記載されています。
- 被保険者番号
- 資格取得日
- 氏名・生年月日
この中で最も重要なものは「被保険者番号」です。
被保険者番号とは?
被保険者番号とは、被保険者ごとに割り当てられた番号です。
被保険者番号は、次のように表示されています。
「被保険者番号
〇〇〇〇―〇〇〇〇〇〇―〇」
4桁 6桁 1桁
転職しても原則として、同じ被保険者番号を使います。
そのため、先にご説明したとおり、転職先に対して雇用保険被保険者証を提出するなどして、被保険者番号を伝える必要があります。
雇用保険被保険者証の再発行方法
このように、転職時に、雇用保険被保険者証が必要となるわけですが、雇用保険被保険者証を紛失した場合は、事務所の所在地を管轄するハローワーク(※)にて再発行手続きができます。
※離職している場合は、直近の前職の事業所を管轄するハローワーク
次のことについてご説明します。
- 雇用保険被保険者証の再発行の際に必要なもの
- 提出方法
- 注意点
(1)再発行に必要なもの
雇用保険被保険者証の再発行手続きに必要なものは、以下のものです。
- 被保険者証再交付申請書(当日ハローワークで入手できます)
- 本人確認書類
- 印鑑
被保険者証再交付申請書には、次のような事項を記入する欄があります。
- 前職の会社の名称
- 前職の会社の所在地
- 前職の会社の電話番号
- 前職の会社の郵便番号
このため、これらの会社情報がわかるものを持参すると、記入する際に便利です。
雇用保険被保険者証の再発行の手数料は、無料です。
雇用保険被保険者証再交付申請書は事前にダウンロードして、必要事項を記入の上、当日持参することも可能です。
(2)ハローワークは平日しか開いていないので注意
ハローワークは土日・祝日が休みであることがほとんどなので注意しましょう。
自分が行けない場合は、雇用保険被保険者証再交付申請を、代理人にしてもらうことも可能です(この際、委任状が必要です)。
(3)雇用保険被保険者証再交付申請は、郵送や電子申請も可能
雇用保険被保険者証再交付申請は、郵送やインターネットでの電子申請でも可能です。
郵送の場合は、簡易書留で送ると、より確実にハローワークに届けることができます。
簡易書留の場合、郵送先に手渡しとなりますし、追跡番号で、いまどこに郵便物があるのか確認することができます。
電子申請の場合、365日24時間申請可能です。
電子申請するためには、電子署名が必要です。
電子署名とは、実印に相当するものです。
事前に電子署名の発行を受ける必要があります(手数料等必要)。
参考:利用準備|e-Gov電子申請
参考:電子証明書のご案内|e-Gov電子申請
電子申請の場合、手続きがやや複雑ですので、手続きの方法をよく確認しましょう。
詳しい手続き方法は、e-Gov電子政府の総合窓口「雇用被保険者証の再交付の申請」をご確認ください。
【まとめ】雇用保険被保険者証は転職の際に必要なのでしっかり保管しましょう!
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入していることを証明するもの。
雇用保険に加入するとハローワークから事業主を通じて交付される。 - 多くの会社では、労働者が退職する際に、保管していた雇用保険被保険者証を労働者に交付する。
- 雇用保険被保険者証は、転職時や教育訓練給付金の支給を受けるときに必要となることがある。
- 雇用保険被保険者証は雇用保険に加入していることを証明するものであるのに対して、離職票は退職した事実を証明するもの。
雇用保険被保険者証は転職の際などに必要となるのに対して、離職票は失業中に必要となるという違いがある。 - 雇用保険被保険者証がもらえない理由としては、短期バイトなどのために雇用保険に加入していないことなどがある。
- 事業主は、雇用保険被保険者証を労働者に渡す義務がある。
- 雇用保険被保険者証に記載してある項目のうち最も重要なものが被保険者番号。
- 雇用保険被保険者証を紛失した場合には、ハローワークにて再発行してもらうことができる。
雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入していたら退職時に必ずもらう権利があります。
雇用保険被保険者証は、転職時や、教育訓練給付金の支給を受ける際に必要となることがあります。
雇用保険被保険者証は小さくて失くしやすいのですが、万が一の場合には再発行が可能です(ただし少し手間がかかります)。
雇用保険被保険者証をもらえるはずなのに、手元にない場合は、会社側に交付を忘れていないか確認しましょう。
雇用保険被保険者証をもらった際には、失くさないよう、しっかり保管しましょう。
雇用保険被保険者証について、ハローワークに問い合わせる際の連絡先については、次のページをご覧ください。