「給料から雇用保険が天引きされているけど、どういうときに雇用保険が役立つのかよくわからない。」
実は雇用保険に加入していると、失業したときにお金がもらえるだけではなく、一定の条件を満たせば、在職中や再就職したときにお金がもらえることもあります。
ただし、自分から申請しないと雇用保険からお金はもらえません。
そのため、どのようなお金をもらえるのか知っておくことが大切です。
このことを知っていれば、「制度を知らないせいでお金をもらい損ねた」という事態を防ぐことができます。
この記事では、次のことについて弁護士が分かりやすく解説します。
- 雇用保険の給付金の種類
- 雇用保険の加入条件・加入メリット
中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。
雇用保険とは
雇用保険とは、労働者が失業した場合や、雇用の継続が困難となった場合、育児休業をした場合などに、一定のお金がもらえる政府が管掌する保険制度です。
また、失業中・在職中の職業訓練などの費用も雇用保険からもらえます。
このように雇用保険は、様々なメリットがある制度です。
2017年1月1日からは、65歳以上の人も雇用保険の適用がされることになりました。
雇用保険は強制保険なので、加入条件を満たせば必ず加入しなければなりません。
雇用保険の受給資格者が失業すると、もらえるお金は?
雇用保険に入っていると、失業したときに次のようなお金をもらうことができます。
- 基本手当
- 技能習得手当
- 寄宿手当
- 傷病手当
- 高年齢求職者給付金
- 特例一時金
- 日雇労働求職者給付金
- 就職促進給付
- 教育訓練給付
- 雇用継続給付
これらについてご説明します。
参考:雇用保険手続きのご案内|ハローワークインターネットサービス
(1)基本手当
基本手当とは、失業した人が、失業中の生活の心配をすることなく、就職活動をし、再就職できるようにするために、もらえるお金です。
給付日数は90~360日です。
給付日数は、離職事由(自己都合退職か、会社都合退職か等)や被保険者期間等により異なります。
(2)技能習得手当
技能習得手当とは、受給資格者の再就職を促進するため、一定の条件を満たして公共職業訓練等を受講する場合に、基本手当とは別にもらえるお金です。
技能習得手当には、次の2種類の手当があります。
- 受講手当
いわば、日当のようなものです。
一定の公共職業訓練等を受けた場合にもらえます。
日額:500円(上限2万円) - 通所手当
いわば、通勤手当のようなものです。
自宅等から公共職業訓練等を行う施設へ通うために、交通機関や自動車等を利用する場合にもらえます。
上限は月額で最高4万2500円です。
(3)寄宿手当
受給資格者が一定の公共職業訓練を受けるために、家族(事実婚も含む)と別居して寄宿する場合にもらえるお金です。
寄宿手当は原則、月1万700円です。
(4)傷病手当
受給資格者が離職後、ハローワークに来所して求職の申込みを行った後に、15日以上引き続いて病気やケガのために就職することができなくなった場合にもらえるお金です。
14日以内の病気やケガの場合には基本手当がもらえるのですが、14日を超えると基本手当が支給されなくなります。その代わりに傷病手当がもらえるようになります。
傷病手当の支給額は基本手当と同額です。
病気やケガにより30日以上、就職することができないときは、基本手当の受給期間を最大4年間まで延長することができます。
なお、病気やケガを理由に、他の法令に基づいて、傷病手当と類似した給付をもらうと、当該給付日については、傷病手当はもらえなくなります。
(5)高年齢求職者給付金
65歳以上の被保険者の内、一定の要件を満たす方が失業した場合に、もらえるお金です。
一般の被保険者とは異なり、被保険者であった期間に応じて、次の額に相当するお金がもらえます。
基本手当日額×(30日分または50日分)
(6)特例一時金
季節的に雇用されている方等を「短期雇用特例被保険者」として、一定の要件を満たした場合にもらえる一時金です。
一般の被保険者とは区別して給付されます。
この特例一時金をもらうことができる方を、一般被保険者とみなして計算した場合の、次の額に相当する額を原則としてもらえます。
基本手当の日額×30日分(当面は、暫定的に40日)
(7)日雇労働求職者給付金
日雇労働被保険者には、一般被保険者とは異なる制度が設けられています。
日雇労働被保険者が失業した場合には、その雇用形態に即してお金をもらうことができます。
(8)就職促進給付
基本手当の受給資格がある方が、早期に就職するなど、一定の要件を満たした場合にもらえるお金です。
就職促進給付のうち、就職促進手当として、次のようなものがあります。
- 「再就職手当」
- 「就業促進定着手当」
- 「就業手当」
- 「常用就職支度手当」
また、就職促進給付には次のようなものもあります。
- 移転費
- 広域求職活動費
- 短期訓練受講費
- 求職活動関係役務利用費
就職促進給付のほかに、給料も受け取ることになります。
そのため、基本手当の受給を全て受けてから就職するより、基本手当の日数を残したまま、早期に就職して就職促進給付を受けた方が金銭的に得する場合があります。
(8-1)再就職手当
再就職手当とは、「安定した職業」に早期に就職した場合にもらえるお金です。
「安定した職業」とは、雇用保険の被保険者となる場合や、事業主となって、雇用保険の被保険者を雇う場合などをいいます。
基本手当の残りの支給日数が所定給付日数の3分の1以上ある状態で、この安定した職業に就職し、一定の要件に該当する場合に再就職手当がもらえます。
【支給額】
基本手当の残りの支給日数 | 給付額(上限あり(※)、1円未満切り捨て) |
---|---|
所定給付日数の3分2以上残っている | 支給残日数×70%×基本手当日額 |
所定給付日数の3分1以上残っている | 支給残日数×60%×基本手当日額 |
※上限額(2022年7月31日までの額。毎年8月1日に改定)は次のとおりです。
離職時の年齢:60歳未満⇒6120円
60歳以上65歳未満⇒4950円
参考:再就職手当のご案内|ハローワークインターネットサービス
(8-2)就業促進定着手当
再就職手当をもらった方が、引き続きその再就職先に6ヶ月以上雇用されたが、「以前の仕事に比べて賃金が下がった」場合に、一定条件を満たせばもらえる金です。
「以前の仕事に比べて賃金が下がった」場合とは、「再就職先で6ヶ月の間に支払われた賃金の1日分の額」が、「雇用保険の給付を受ける離職前の賃金の1日分の額(賃金日額)」に比べて下がっていることをいいます。
【受給条件イメージ】
【支給額】
(離職前の賃金日額(※1)-再就職の日から6ヶ月間の賃金の1日分の額(※2))×再就職の日から6ヶ月間の賃金支払いの基礎となった日数
※1 賃金日額には、上限額と下限額があります。
※2 所定の計算方法があります。
【就業促進定着手当の上限日額】
基本手当日額(※1)×基本手当の支給残日数(※2)×(30%または40%(※3))
※1 基本手当日額の上限額(2022年7月31日までの額。毎年8月に改定)
離職時の年齢:60歳未満⇒6120円
60歳以上65歳未満⇒4950円
※2 基本手当の支給残日数
再就職手当をもらう前の、基本手当の支給残日数
※3 給付率
再就職手当の給付率が70%の場合⇒30%
再就職手当の給付率が60%の場合⇒40%
参考:再就職後の賃金が、離職前の賃金より低い場合には「就業促進定着手当」が受けられます|ハローワークインターネットサービス
(8-3)就業手当
基本手当の受給資格がある人が、臨時のパートやアルバイトなど、再就職手当の支給対象とならない形態で就業した場合にもらえる可能性のあるお金です。
就業手当をもらうためには、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上ある必要があるほか、一定の条件を満たす必要があります。
【支給額】
就業日×30%×基本手当日額
【1日当たりの支給額の上限】
(2022年7月31日までの額。毎年8月に改定)
60歳未満⇒1836円
60歳以上65歳未満⇒1485円
(8-4)常用就職支度手当
一定の受給資格者(※)の内、障害があるなど、就職が困難な方が安定した職業に就いた場合に、一定の条件を満たすともらえるお金です。
※一定の受給資格者
- 基本手当の受給資格者
(基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1未満である場合に限る) - 高年齢受給資格者
- 特例受給資格者
- 日雇受給資格者
【支給額(基本手当の受給資格者の場合)】
90(※1)×40%×基本手当日額(※2)
※1 基本手当の支給残日数が45~89日⇒支給残日数に相当する数
基本手当の支給残日数が44日以下⇒45
※2 基本手当日額の上限額
(2022年7月31日までの額。毎年8月に改定)
離職時の年齢:60歳未満⇒6120円
60歳以上65歳未満⇒4950円
(8-5)移転費
一定の条件を満たした受給資格者等が、ハローワーク等の紹介した職業に就くため、または公共職業訓練等を受講するため、引っ越しをする必要がある場合等に、受給資格者本人とその家族(※)の移転費用がもらえます。
受給資格者により、生計を維持されている同居の親族のことをいいます。
(8-6)広域求職活動費
一定の条件を満たした受給資格者等が、ハローワークの紹介により、遠くの求人事業所を訪問して、求人者と面接等をした場合、交通費及び宿泊料がもらえるというものです。
(8-7)短期訓練受講費
一定の条件を満たした受給資格者等が、ハローワークの職業指導により、再就職のために必要な教育訓練を修了した場合に、もらえるお金です。
具体的には、当人が当該教育訓練のために支払った入学金(または登録料)と受講料の2割(上限10万円)がもらえます。
(8-8)求職活動関係役務利用費
一定の条件を満たした受給資格者等が、求人者との面接等や、教育訓練を受講したりするため、保育等サービス(※1)を利用して子を預けた場合に、当人が支払った保育等サービスの利用料の80%(1日の上限6400円(※2))がもらえるものです。※1ここでいう「保育等サービス」は次のものを指します。
- 認可保育所の保育
- 認可幼稚園の保育
- 認定子ども園の保育
- 一時預かり事業等
※2 次の上限日数があります。
求人者と面接等をした場合⇒15日
対象訓練を受講した日⇒60日
(9)教育訓練給付
離職者だけではなく、在職者の能力向上やキャリア形成のため、資格取得に必要な講座の受講等、一定の教育訓練を受講した場合などに、受講費用の一部がもらえるというものです。
また、専門実践教育訓練を受講する45歳未満の離職者については、基本手当が支給されない期間に、受講に伴い負担した諸経費についてもらうことができます。
教育訓練給付の対象となる講座は厚生労働大臣により指定されています。
どの講座が対象であるかは、次のサイトで検索できます。
参考:教育訓練給付制度 厚生労働大臣指定教育訓練講座 検索システム|厚生労働省
(9-1)一般教育訓練給付金
一定の条件を満たす在職者(雇用保険の被保険者)または離職者(雇用保険の被保険者であった人)が、教育訓練施設に支払った教育訓練経費の20%をもらえます。
【上限額】
原則10万円
なお、教育訓練経費が4000円を超えない場合は、もらうことができません。
(9-2)専門実践教育訓練給付金
一定の条件を満たす在職者(雇用保険の被保険者)または離職者(雇用保険の被保険者であった人)が、厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講し修了した場合にもらえるお金です。
一般教育訓練給付金よりも専門的な教育訓練(看護師の養成課程、AIスキル習得講座など)が対象となっており、給付率も引き上げられています。
教育訓練施設に支払った教育訓練経費の50%がもらえます。
【上限額】
訓練期間1年まで⇒40万円
2年まで⇒80万円
3年まで⇒120万円
(訓練期間は最大で3年間)
なお、教育訓練経費が4000円を超えない場合は、もらうことができません。
また、専門実践教育訓練の受講修了後、一定の資格を取得し、受講修日の翌日から1年以内に被保険者として雇用された方、または既に雇用されている方は、教育訓練経費の20%を追加でもらえます。
【訓練経費50%と追加給付20%を合算した場合の上限額】
訓練期間1年まで⇒56万円
2年まで⇒112万円
3年まで⇒168万円
10年間に、複数回、専門実践教育訓練を受講する場合⇒168万円
法令上最短4年の専門実践教育訓練を受講⇒3年目受講終了時に、上限額が224万円に増額。
なお、教育訓練経費が4000円を超えない場合は、もらうことができません。
(9-3)教育訓練支援給付金
2022年3月31日まで適用される制度です。
初めて専門実践教育訓練(通信制、夜間制を除く)を受講する方で、受講開始時に45歳未満など一定の条件を満たす方が訓練期間中、失業状態にある場合にもらえるお金です。
【支給額】
当該受講中の基本手当がもらえない期間について、次の計算式で算出される金額
基本手当の日額×80%×失業認定を受けた日数
(9-4)特定一般教育訓練給付金
一定の条件を満たす在職者(雇用保険の被保険者)または離職者(雇用保険の被保険者であった人)が、厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講し修了した場合にもらえるお金です。
税理士、社会保険労務士などの資格取得のための講座や介護職員初任者研修など、キャリアアップ効果の高い講座が対象とされています。
教育訓練施設に支払った教育訓練経費の40%がもらえます。
【上限額】
20万円
なお、教育訓練経費が4000円を超えない場合はもらうことができません。
(10)雇用継続給付
雇用継続給付には次の3種類があります。
- 「高年齢雇用継続給付」
- 「育児休業給付」
- 「介護休業給付」
これらについてご説明します。
(10-1)高年齢雇用継続給付
高年齢雇用継続給付には、次の2種類があります。
- 「高年齢雇用継続基本給付金」:基本手当などをもらっていない方が対象
- 「高年齢再就職給付金」:基本手当を受給し、60歳以降再就職した方が対象(同一の就職に対して、再就職手当をもらった方は、高年齢再就職給付金はもらえないことに注意してください。)
参考:高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について|厚生労働省
一定の要件を満たした60歳以上65歳未満の一般被保険者が、原則として60歳の時の75%未満の賃金で、60歳以降も働き続ける場合にもらえます。
【支給額】
60歳以上65歳未満の各月の賃金が、60歳時点の賃金の61%以下に低下⇒各月の賃金の15%相当を支給
61%超から75%未満に低下⇒低下率に応じて、各月の賃金の15%未満に相当する額
各月の賃金が36万0584円(2022年7月31日までの金額。毎年8月に改定)を超える場合は、高年齢雇用継続給付金はもらえません。
【支給期間】
高年齢雇用継続基本給付金:被保険者が60歳に達した月から65歳に達する月まで
高年齢再就職給付金:原則として、60歳以後の就職した日の属する月から、1年または2年に経過する月の属する月まで(ただし上限は、65歳に達する月まで)
※船員の方で、55歳になった日が2010年4月1日以降で、かつ1959年4月1日までに生まれた方は、上記の「60歳」は「55歳」、「65歳」は「60歳」となります。
参考:令和3年8月1日から支給限度額が変更になります。皆さまへの給付額が変わる場合があります。|厚生労働省
(10-2)育児休業給付
一定要件を満たした被保険者が、1歳または1歳2ヶ月(※)(支給対象期間の延長をした場合は1歳6ヶ月または2歳)未満の子を養育するために、育児休業を取得した場合にもらえるお金です。
※両親ともに育児休業を取得する場合、子が1歳2ヶ月になる前日までに1年間(女性の場合は、出産日以降の産後休業期間を含みます)育児休業を取得できる制度として、パパママ育休プラス制度があります。
【支給額(1ヶ月あたり)】
休業開始時の賃金日額(※1)×支給日数(※2)の67%(育児休業の開始から6ヶ月経過後は50%)
※1 賃金日額
育児休業開始前の6ヶ月間の賃金÷180日(原則)
※2 支給日数
原則30日
育児休業が終了する日の属する支給対象期間は、当該支給対象期間の日数
【上限額(1ヶ月あたり)】(2022年7月31日までの額。毎年8月1日に改定)
育児休業開始~6ヶ月経過する前(支給率60%) 30万1902円
育児休業開始~6ヶ月経過した後(支給率50%) 22万5300円
育児休業中に一定以上の就労をすると、育児休業給付金が減額されたり、もらえなくなることがあります。
参考:令和3年8月1日から支給限度額が変更になります。皆さまへの給付額が変わる場合があります。|厚生労働省
(10-3)介護休業給付
家族を介護するために休業した被保険者で、一定の要件を満たす場合にもらえるお金です。
【支給額(1ヶ月ごと)】
休業開始時の賃金日額(※1)×支給日数(※2)×67%(原則)
※1 賃金日額
介護休業開始前の6ヶ月間の賃金÷180日(原則)
※2 支給日数
原則30日
介護休業が終了する日の属する支給対象期間は、当該支給対象期間の日数
【上限額(1ヶ月あたり)】(2022年7月31日までの額。毎年8月に改定)
33万2253円
参考:令和3年8月1日から支給限度額が変更になります。皆さまへの給付額が変わる場合があります。|厚生労働省
雇用保険(基本手当)の給付条件
基本手当をもらう場合、離職理由に合わせて次の3つのパターンがあります。
- 一般の離職者
- 特定理由離職者
- 特定受給資格者
どのパターンに該当するかによって、後からご説明する給付日数などが変わってきます。
いずれにおいても、失業状態にあり、就職の意思があることが、給付の前提条件となります。
(1)一般の離職者の定義と雇用保険(基本手当)給付条件
一般の離職者とは、自己都合退職する一般の離職者のことをいいます。
基本手当の給付を受けるためには、離職の日より以前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12ヶ月以上あることが必要です。
(2)特定理由離職者の定義と雇用保険(基本手当)給付条件
自己都合退職した場合でも、一定の正当な理由がある場合や、期間の定めある労働契約の更新がないことにより離職した場合(ただし一定の条件を満たす必要あり)は「特定理由離職者」となることがあります。
参考:特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要|ハローワークインターネットサービス
基本手当の給付を受けるためには、離職の日より以前の1年間に、被保険者期間が通算して6ヶ月以上あることが必要です。
(3)特定受給資格者の定義と雇用保険(基本手当)給付条件
企業の倒産や解雇(自己の責めに帰すべき重大な事由に基づく解雇は除く)など、一定の理由によって、離職を余儀なくされた場合は、特定受給資格者となります。
会社都合退職した方の多くが、この特定受給資格者に該当します。
基本手当の給付を受けるためには、離職の日より以前の1年間に、被保険者期間が通算して6ヶ月以上あることが必要です。
会社都合退職とは何かについては、次のページをご覧ください。
雇用保険の基本手当をもらえる期間
次に、雇用保険の基本手当をもらえる期間について説明します。
(1)受給開始時期
雇用保険の基本手当の受給開始時期は、離職理由により異なります。
【受給開始日】
一般の離職者は失業手当(基本手当)を受給できるまで2~3ヶ月間の待機期間がありますので、その分、受給開始時期が遅くなります。
- 特定受給資格者、特定理由資格者:7日経過後
- 一般の離職者
2020年9月30日までに離職→3ヶ月+7日経過後
2020年10月1日以降に離職→原則 2ヶ月+7日経過後
例外(※)3ヶ月後+7日経過後
- 自己の責めに帰すべき重大な理由で離職した場合(横領したことで離職した場合など)
- 5年間で3回以上の正当な理由のない自己都合退職をした場合
なお、新型コロナウイルスの影響で重い後遺症が残り、医師の診断書があるようなケースでは、正当な理由のある自己都合離職として待期期間がなくなる可能性もあるようですので、お住いの地域のハローワークに問い合わせてみるとよいでしょう。
その他、災害等があると、特例的に、待機期間などが変更されることがありますので、最新情報にご注意ください。
(2)(給付日数)一般の離職者の場合
一般的な自己都合退職の方や、自己の責めに帰すべき重大な事由に基づいて解雇された方(特定受給資格者及び一部の特定理由離職者(※)以外の方)の給付日数は次のとおりです。
※一部の特定理由離職者:期間の定めある労働契約の更新がないことにより離職した場合(その他一定の要件を満たす必要があります)
年齢 | 被保険者であった期間 | ||||
---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 | |
65歳未満 | - | 90日 | 120日 | 150日 |
※2017年4月1日以降に離職した場合
参考:基本手当の所定給付日数|ハローワークインターネットサービス
(3)特定受給資格者や一部の特定理由離職者の場合
特定受給資格者や一部の特定理由離職者(※)の給付日数は次のとおりです。
※一部の特定理由離職者:期間の定めある労働契約の更新がないことにより離職した場合(その他一定の要件を満たす必要があります)
年齢 | 被保険者であった期間 | ||||
---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
30歳以上35歳未満 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
35歳以上45歳未満 | 150日 | 240日 | 270日 | ||
45歳以上60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳以上65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
※2017年4月1日以降に離職した場合
(4)障害者などの場合
障害者などの就職困難者の場合、給付日数は次のとおりです。
年齢 | 被保険者であった期間 | |
---|---|---|
1年未満 | 1年以上 | |
45歳未満 | 150日 | 300日 |
45歳以上65歳未満 | 360日 |
※2017年4月1日以降に離職した場合
参考:基本手当の所定給付日数|ハローワークインターネットサービス
雇用保険の基本手当について給付率と日額を解説
基本手当の金額は、離職時の年齢や今までもらっていた給与により変わってきます。
基本手当の給付額の計算
基本手当の給付額は、次の式によって求めることができます。
基本手当の給付額=「基本手当日額」×所定給付日数
「基本手当日額」という言葉が出てきましたが、基本手当日額は次の式によって求めることができます。
「基本手当日額」=「賃金日額」×45~80%(年齢や賃金日額によって異なる)
この基本手当日額は、毎年8月に改定されています。
2022年7月31日までの基本手当日額は、年齢に応じて6760~8265円です。
また、「賃金日額」という言葉が出てきましたが、賃金日額は次の式によって求めることができます。
「賃金日額」=退職前6ヶ月の給与総額÷180
パートタイムの雇用保険加入条件
ここまでご説明したとおり、雇用保険に加入していると、様々なお金をもらえます。
「でも私は、パートタイムだから関係ない」
そう考えている方はいらっしゃいませんか。
実はそれは間違いで、パートタイムの方であっても、一定の条件を満たせば、正社員でなくても雇用保険対象となり、退職時に失業給付をもらうことができます。雇用されるときに「雇用保険対象になるか」を会社に確認しておくことが大切です。
「扶養内かどうか」は、雇用保険には関係ありません。
「扶養内かどうか」が関係するのは、健康保険や厚生年金です。
次の条件をいずれも満たす方は、原則として、雇用保険の加入をすることができます(雇用保険法6条)。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがある方
- 昼間学生でないこと
これらの雇用保険の加入条件について、詳しく解説します。
(1)1週間の所定労働時間が20時間以上であること
所定労働時間とは、会社との雇用契約で定めた労働時間で、いわゆる定時のことをいいます。
所定労働時間には、残業時間は含めません。
この所定労働時間が1週間につき20時間以上になる場合には、雇用保険の加入条件の一つを満たすことになります。
雇用契約上の1週間の所定労働時間が、周期的に頻繁に変動する場合には、その1周期における所定労働時間を平均した時間が、雇用保険上の1週間の所定労働時間となります。
雇用契約上で、「2週間で所定労働時間を40時間とする」、など、所定労働時間がある一定の期間を単位として決まっている場合には、以下の方法で算出した時間が、雇用保険上の、1週間の所定労働時間となります。
雇用契約上の所定労働時間 | 雇用保険上の所定労働時間(週) |
---|---|
複数の週単位で定められている場合 | 各週の平均労働時間 |
1ヶ月単位で定められている場合 | 1ヶ月の所定労働時間÷(12分の52) (=約月87時間以上であれば加入できる) |
1年単位で定められている場合 | 1年の所定労働時間÷52 (=年1040時間以上であれば加入できる) |
参考:雇用保険事務手続きの手引き【令和3年8月版】|厚生労働省
(2)31日以上の雇用見込みがある方
31日以上雇用見込みがあるか否かは次のように判断されます。
参考:雇用保険事務手続きの手引き【令和3年8月版】|厚生労働省
(3)学生でないこと
学校教育法第1条や第124条または134条1項に定められている「学校」に通う生徒は雇用保険対象外となります(雇用保険法6条4号)。
具体的には、高校・大学・専門学校等で昼間勉強している方は、原則として、雇用保険の適用されない「学生」とみなされます。
参考:学生アルバイトの労働条件に関する自主点検表|厚生労働省
学生でも雇用保険の加入対象となる4つの例
ただし、次に該当する方は、学生でも雇用保険の加入対象となります。
- 卒業後に働く予定の事業所で、「卒業見込み」の状態で働く人(卒業見込証明書が必要)
- 休学中に働く人(休学を証明する文書が必要)
- 大学院等に在学することを事業主が了承した上で、雇用を維持したまま在学する人
- 学校の課程修了に出席日数が関係なく、他の労働者と同じように勤務できる人(当該事実を証明する文書が必要)
参考:雇用保険事務手続きの手引き【令和3年8月版】|厚生労働省
雇用保険の加入条件を満たさなくなると対象外になるので注意
今まで雇用保険対象であっても、労働条件が変わると対象外になることがあります。
例えば、所定労働時間が週20時間未満に変更になると、原則として、雇用保険の対象から外れ「雇用保険の資格喪失手続き」が必要となります。
ただし、所定労働時間の短縮が、臨時的な場合は、雇用保険の対象外とはなりません。
次のいずれかの場合、「臨時的な」所定労働時間の短縮と解釈される可能性があります。
- 所定労働時間の短縮が、約6ヶ月以内
- 育児のために所定労働時間を短縮した場合には、子が小学校就学前まで
パートやアルバイトでシフトを減らしたりして、所定労働時間が減ると、雇用保険の対象外になることもあるので、雇用保険の加入条件に注意して労働時間を減らすことが大切です。
参考:事業主が行う雇用保険の事務手続に係る取扱いの変更について|厚生労働省 東京労働局
(1)一時的に週20時間を超えても雇用保険の対象外となる
雇用契約では所定労働時間が、週20時間以内となっているが、繁忙期だけ週20時間以上働くことになっても、雇用保険の対象外となります。
「通常の週」において、所定労働時間が20時間以上であることが必要です。
(2)パートやアルバイトの掛け持ちでも1社でしか雇用保険に加入できない
雇用保険の加入条件は「同一の事業主」のもとで満たされる必要があります。したがって、雇用保険加入になるのか否かを判断する上で、「所定労働時間」は、複数の勤め先の分を合算できないので注意しましょう。
(例)
A社(仮称)での所定労働時間が週10時間、B社(仮称)での所定労働時間が週11時間である場合
→合算すると所定労働時間は週21時間になりますが、A社、B社単独でみると、所定労働時間は、週20時間未満です。
そのため、雇用保険には加入できません。
自分が雇用保険に加入できているかの確認方法
雇用保険の加入条件を満たしていても、何らかの理由で加入できていないこともあり得ます。
そこで、雇用保険に加入しているかを調べる3つの方法を紹介します。
(1)給与明細を確認する
雇用保険料が天引きされているかを確認してください。
雇用保険料が天引きされている場合には、雇用保険に加入しているものと推測することができます。
(2)雇用主に直接聞く
できれば雇用されるときに「雇用保険対象かどうか」を聞くとよいです。
ただし、雇用主の知識不足で雇用保険の加入条件を理解していないことがあるので注意が必要です。
また、「雇用保険料を徴収しているのに、それを国に納めていない」という悪質な場合もあります。
このような場合、遡って雇用保険に加入することができる場合があります。
雇用保険料が天引きされていたことを証明するため、給与明細などをハローワークに持参して、遡って雇用保険に加入できないか相談しましょう。
(3)ハローワークで確認する
雇用主に聞きにくい場合は、ハローワークに対し、本人・住所確認書類とともに、必要事項を記入した「被保険者資格取得届出確認照会票」を提出すると、雇用保険に加入しているかどうかが判明します。
参考:雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!|厚生労働省
(4)マイナポータルで雇用保険の加入記録を確認する
マイナンバーカードを持っている人の場合は、マイナポータルという国のサイトで、雇用保険の加入記録などを確認することができます。
なお、これを利用するためには、事前に、マイナンバーをハローワークに届け出ておく必要があります。
参考:マイナポータルであなたの雇用保険の加入記録などを確認することができます!|厚生労働省
【まとめ】もらえるお金は失業保険だけじゃない
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 雇用保険とは、一定の場合に、次のようなお金もらえる制度。
手当名 | 手当をもらうための主な要件 |
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基本手当 | 失業して一定の条件を満たしたとき |
技能習得手当 | 一定の条件を満たして公共職業訓練等を受講するとき |
寄宿手当 | 一定の公共職業訓練を受けるために、家族(事実婚も含む)と別居して寄宿するとき |
傷病手当 | 離職後、ハローワークに来所して求職の申込みを行った後に、15日以上引き続いて病気やケガのために就職することができなくなったとき |
高年齢求職者給付金 | 65歳以上の被保険者のうち、一定の要件を満たす方が失業したとき |
特例一時金 | 季節的に雇用されている方等が、一定の要件を満たしたとき |
日雇労働求職者給付金 | 日雇労働被保険者が失業して、一定の要件を満たしたとき |
就職促進給付 | 基本手当の受給資格がある方が、早期に就職するなど、一定の要件を満たしたとき |
教育訓練給付 | 能力向上やキャリア形成のため資格取得に必要な講座を受講するなど一定の教育訓練を受講したとき |
雇用継続給付 |
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- 週所定労働時間が20時間以上であること、31日以上の雇用見込みがあることなどの条件を満たせば、雇用保険に加入することができる。
- 労働条件の変更により雇用保険の加入条件を満たさなくなると対象外になることがある。
- 自分が雇用保険に加入できているかの確認は、給与明細を確認する、ハローワークで確認する、などの方法がある。
雇用保険にしっかりと入っていれば、失業したときはもちろん、教育訓練を受講したときや再就職したときなどに様々な金銭面でのサポートを受けることができるので安心ですよね。
だからこそ、雇用保険に関してトラブルがある場合は放置せず、しっかりと解決しておくことが大切です。
雇用保険に関して、不安な点がある場合には、ハローワークの窓口などに相談してみましょう。
ハローワークの所在地情報などについては、次のページをご覧ください。
参考:ハローワーク|厚生労働省