お電話では土日祝日も休まず朝9時~夜10時まで(Webでは24時間対応)法律相談のご予約を受付けています。 万全な管理体制でプライバシーを厳守していますので、安心してお問い合わせください。

空き家を相続したときの3つの注意点と対処法をアディーレの弁護士が解説

作成日:
s.miyagaki

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

「両親が死亡して実家が残されたけれど、誰も住む予定はないから空き家になってしまう…。とりあえず兄弟で共有にしておけば良い?」

人が死亡すると(死亡した人を「被相続人」といいます)、被相続人の財産は相続人に相続されます。
近年、被相続人の住居を相続したものの誰も住まず、空き家として放置されていることが社会問題となっており、国も空き家を放置させない方針を取っています。

今回は、「空き家を相続した時の注意点と対処法」について弁護士がご説明します。

この記事を読んでわかること
  • 法律上の「空き家」の定義
  • 空き家を相続したときの3つの注意点
  • 空き家を相続した時の対処法         
この記事の監修弁護士
弁護士 重光 勇次

弁護士 重光 勇次

アディーレ法律事務所

同志社大学、及び、同志社大学法科大学院卒。2009年弁護士登録。アディーレに入所後、福岡支店長、大阪なんば支店長を経て、2022年4月より商品開発部門の統括者。アディーレがより「身近な法律事務所」となれるよう、新たなリーガルサービスを開発すべく、日々奮闘している。現在、神奈川県弁護士会所属

社会問題となっている「空き家」とは

まず前提として、法律上「空き家」とは次の建物をいいます(空家等対策の推進に関する特別措置法。いわゆる「空き家法」)。

第2条(定義)

1 この法律において「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。(以下、略)

引用:空家等対策の推進に関する特別措置法 | e-Gov法令検索

簡単に言えば「空き家」とは、年間を通じて誰も住んでおらず、使用もしていない建物です。

国土交通省によれば、空き家の総数は1998年から2018年の20年にかけて1.5倍に増加(567万戸➡849万戸)しました。
空き家を放置することは『防犯性の低下』『衛生の悪化』『悪臭の発生』『景観の悪化』などにつながることが指摘されており、空き家を放置させないことが国の急務となっています。

参照:空き家の現状と課題|国土交通省

今日、国は法律を制定して地方自治体が空き家に直接対処できるようにしたり、「空き家バンク」を支援するなど空き家対策を進めていますが、少子化などを理由とする「家あまり」の現象もあり、空き家は増え続けています。

空き家を相続した時の注意点3つ

地元を離れて生活している方が実家を相続したものの、誰も住まずに実家が空き家になることは多いです。そこで、空き家を相続した(又は相続した不動産が空き家になってしまう)時の注意点についてご説明します。

【注意点①】空き家を放置すると税金の負担が大幅に増える可能性がある

地方税法上、専ら人の居住に供する家屋の敷地(住宅用地)は、特例で次のとおり、固定資産税や都市計画税が軽減されています(地方税法349条の3の2、702条の3)。

【住宅用地に対する固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例】

固定資産税都市計画税
小規模住宅用地
(200㎡まで)
6分の13分の1
一般住宅用地
(200㎡を超える部分)
3分の13分の2
参照:固定資産税・都市計画税(土地・家屋) | 税金の種類 | 東京都主税局

「空き家を処分したいけれど、解体して更地になると固定資産税が増額するし…。」
そのように考え、相続した空き家を解体せずそのままにしてしまう方も少なくありません。
ですが、「空き家」を放置して次のような状態となった場合、やはり住宅用地特例の対象から除外されるリスクがあります。

  • そのまま放置すれば、倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  • そのまま放置すれば、著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  • 適切な管理が行われていないことにより、著しく景観を損なっている状態
  • その他、周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

そうなると、結局、固定資産税及び都市計画税の軽減を受けられなくなり、税金の負担が増大する可能性があるのです。

このような状態に該当する空き家を『特定空き家』といいます(空き家法2条2項)。
『特定空き家』に認定されると、市町村長から修繕など周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとるよう「助言・指導」をされ、それでも状態が改善されないときは、必要な措置をとるよう「勧告」されます(空き家法14条1項、2項)。
そして、市町村長が「特定空き家等」の所有者等に対して「勧告」した場合は、地方税法に基づき、空き家の敷地について、住宅用地特例の対象から除外されてしまうのです(地方税法349条の3の2第1項)

また、地方自治体によっては、「特定空き家」に至っていなくても、主要構造部(屋根、外壁、基礎など)が著しく管理不全状態にあり、今後居住の用に供される見込みがない場合には、住宅用地特例を適用しないとしているところもあります。

参照:「特定空家等」に該当すると土地に対する固定資産税・都市計画税の税額が高くなる場合があります|東京都主税局

【住宅用地特例の対象から除外される流れ】

「空き家」の調査

「特定空き家」に認定

(必要な措置をとるよう)「助言・指導」

「勧告」+住宅用地特例の対象から除外

さらに、正当な理由なく勧告された措置をとらなければ、必要な措置をとるよう「命令」されることがある(空き家法14条3項)上、命令に従わなければ、最大で50万円の『過料』を課せられる可能性があります(空き家法16条1項)。

誰も住んでいない空き家であっても、放置せずにちゃんと手入れをしておけば「特定空き家」に認定される可能性は低いです。
更地にすると住宅用地特例が受けられなくなるため空き家をそのままにする場合であっても、しっかり手入れをしておくことが必要です。
空き家を相続した相続人が複数いる場合には、交通費・清掃代・庭木の剪定費用などの管理費用をどう負担するのかしっかり話し合った上で管理をすることをお勧めします。

民事上も、ちゃんと手入れをしていなかったために空き家が倒壊したり、瓦が落ちて通行人がけがをしたり、近くに駐車中の他人の車が壊れたなどの損害が発生した場合、所有者が損害賠償責任を負う可能性があります(民法717条1項)ので、注意してくださいね!

また、京都市では「非居住住宅利活用促進税」(いわゆる「空き家税)を設け、空き家の所有者に対する独自の税金導入が進められています。
今後、他の自治体においても、空き家に関する税負担を見直すなどの可能性がありますので、空き家を放置しないことはとても重要です。

参照:非居住住宅利活用促進税について|京都市

【注意点②】問題の先送りは、自分の子供らに解決を押し付けることになる可能性も

空き家を複数の相続人で共同相続した場合、(相続人が話合いなど何もしなければ)基本的には空き家は相続人の『共有』となります。

例えば、両親が亡くなり3人の子供が空き家を相続した場合、法律上、空き家は子供3人がそれぞれ3分の1の持分で共有することになります。
その後、相続人である子供が亡くなれば相続が発生し、子供の持ち分はその配偶者や子供などの相続人に相続され、さらに共有者が増える可能性があります。

子供が3人とも亡くなる頃には、通常、どんどん共有者が増えていることが想定されますし、さらにその次の代では、共有者(親戚)であっても会ったこともない者もいるケースも珍しくありません。
空き家を売却したり解体するなど空き家を処分するには、基本的には共有者全員の同意が必要です。

ですが、共有者が増えてしまうと、いざ処分しようと思っても、まず誰が共有者なのか確認するだけでも一苦労ですし、会ったこともない共有者と処分について話合いをしたくても話合いがまとまらないことも多いです。

これまで、不動産を相続した際に登記をしなかった人も多く、日本では誰が相続人か不明な土地がたくさんあります。所有者不明の土地面積(約410万ヘクタール)は九州の土地面積(約368万ヘクタール)よりも広く、それは実に日本の国土の約2割にもなるのです。そこで、2024年4月1日以降、不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることを義務付けるよう不動産登記法が改正されました(正当な理由のない申請漏れには過料の罰則あり)。

改正不動産登記法の施行日(登記が義務とされる日)は2024年4月からですが、それ以前に相続により不動産を取得していた人も、施行日から3年以内に相続登記の申請が義務となりますので注意してくださいね!

空き家のまま放置すると、結局空き家問題の解決を自分の子供や孫などに押し付けることになりかねません。
空き家問題は、相続人(共有者)が少なく、相続人同士の意見をまとめやすい段階で解決することを強くお勧めします。

参考:なくそう、所有者不明土地!所有者不明土地の解消に向けて、不動産に関するルールが大きく変わります!|政府広報オンライン

【注意点③】売りたい時に売れなくなる可能性も

空き家を含む家屋は、通常は築年数が経過すれば劣化して価値は下がります。
空き家が都心にあったり、駅が近いなど利便性の高い場所にあれば、(空き家自体はともかく)敷地に資産価値がありますので、急いで空き家を処分しなくても、いずれ売却できる可能性は高いでしょう。
ですが、敷地自体の資産価値も高くない場合には、空き家は放置すればする分価値が下がり、どんどん売れなくなってしまう可能性を視野にいれなければいけません。

「特定空き家」に認定されないためにも定期的にメンテナンスの費用はかかりますし、先ほどご説明したとおり、どんどん共有者が増えた場合には、売りたくても他の共有者の同意が得られずに売れなくなることは十分予想できます。

空き家は、売れるタイミングで売った方が良いことも多いです。
空き家の市場価値などを踏まえて、売却するか手元に置いておくかは慎重に判断されることをお勧めします。

空き家を共同相続した場合の対処法を解説

それでは、空き家を共同相続した場合の対処法についてご説明します。

【対処法①】相続放棄をする

相続放棄は、相続人が相続を拒否して、最初から相続人にならなかったことになる制度です(民法939条)。
相続財産に空き家があった場合、相続放棄をすれば空き家の相続を免れます。

ただし、相続放棄をした場合、空き家だけではなくその他の財産についても全て相続できなくなることに注意してくださいね。

相続放棄の流れや注意点について詳しくはこちらの記事をご確認ください。

借金を相続したくない!自分で相続放棄をする際の注意点【弁護士が解説】

相続放棄をしても空き家の管理義務を負うケースに注意!

相続放棄をすれば、空き家を管理する義務が一切なくなるわけではありません。
2023年4月1日以降、相続放棄をした方の相続財産の管理義務は次のとおり規定されています。

① 「相続放棄をした時に、現に占有している相続財産」について
② 相続人(法定相続人全員が相続放棄をした場合には、相続財産の清算人)に対してその財産を引き渡すまでの間
③ 自己の財産におけると同一の注意義務をもって保存すること

「相続放棄時に現に占有している」というのは、例えば、被相続人の生前、被相続人の所有する不動産に一緒に住んでいた場合などです。
例えば、実家と離れた場所で生活しており、被相続人の財産とは全く関わらずに生活していたという方であれば、相続放棄をすれば、基本的には(被相続人の死亡により空き家となった)実家を含む相続財産の管理義務は負いません。

他方、実家で被相続人と同居しており、被相続人の死亡に伴い転居して実家が空き家になるという場合には、相続放棄をしても、基本的に空き家となる実家の管理責任を負う可能性があります。空き家の管理義務を負うか分からないという場合には、まずは弁護士にご相談ください。

【対処法②】空き家を欲しい相続人がいたら、引き取ってもらう

複数の相続人が空き家を共同で相続した場合、空き家の所有権について何も取り決めなければ、基本的には法定相続分に沿った持ち分割合で共有となります。
他方、共同相続人は「遺産分割協議」により次のような方法で、相続した空き家の所有権を決めることができます。

現物分割:その形状や性質を変更することなく分割する方法。
*空き家などの不動産が複数ある場合には、相続人がそれぞれ別の不動産を相続することができます。

換価分割:空き家を売却して得られた金銭を分割する方法

代償分割:空き家の所有権を1人の相続人に相続させる代わりに、他の相続人に対して相続相当分の代償金を支払う債務を負担させる方法

共有分割:相続人の共有とする方法

他の相続人が空き家を相続したいけれど自分は要らないという場合、「代償分割」が適しています。
例えば、相続人が3人いて空き家の価値が900万円という場合には、空き家の所有権を取得する相続人は、他の2人に対して基本的には300万円ずつ代償金を支払って空き家を単独で相続します。

ただし、法定相続分に応じた代償金にこだわると分割ができないことも多いです。
空き家を欲しくない場合には、相続相当分の代償金にこだわらず、柔軟に対応することも大切です。結局話合いがまとまらず、欲しくもない空き家を共有となると、さらに処分が大変になる可能性もあります。

法定相続人の相続割合と遺産分割について詳しくはこちらの記事をご確認ください。

【対処法③】賃貸や売却で空き家を有効活用

空き家は、所有しているだけでメンテナンスなどの維持費用や税金などの費用が必要です。
賃貸に出して不労所得を得たり、思い切って売却して活用できる現金に換える方法も検討してみてください。

地方自治体が主体となって運営する「空き家バンク」に登録してみるのも良いですね。

なお、相続した空き家を賃貸する場合、通常は持ち分の過半数以上の同意があれば賃貸契約を締結できます(*賃貸期間によって全員の同意が必要な場合もあります)。
例えば、子供3人が同一持ち分で相続した場合、基本的に2人の同意があれば賃貸は可能です。
他方、売却する場合には、3人全員の同意が必要です。

なお、相続した空き家を、2023年12月31日までに売却した場合には、一定の要件を満たせば譲渡所得の金額から3000万円までは控除を受けられる可能性があります(*2023年2月時点の情報です。)!

参照:被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁

かなり田舎の物件なので、貸せないし売れない可能性が高いです。
最近、相続した土地を国が引き取ってくれる制度ができたと聞きましたが、空き家も引き取ってもらえないんですか?

確かに、2023年4月27日から「相続土地国庫帰属制度」により、相続した『土地』について、一定の条件下で国が引き取る制度が開始します。
ただし、国が引き取るのはあくまでも『土地』ですので、空き家がある場合には申請をしても却下されます。相続土地国庫帰属制度により土地を引き取ってもらうには、まずは空き家を解体する必要があるのです。

参照:相続土地国庫帰属制度の概要|法務省

【まとめ】相続した空き家を放置すると、固定資産税等が高くなる可能性がある。遺産分割協議の上、早めの対処がお勧め

今回の記事のまとめは、次のとおりです。

  • 両親が住んでいた実家を相続したものの誰も住まず、空き家になるケースは多い。
  • 基本的には、空き家であっても、住宅用地特例により居住用建物が建っていれば敷地の固定資産税などが軽減されるが、空き家を放置して「特定空き家」になった場合、いずれ軽減措置が受けられなくなることもある。
  • 相続した空き家を放置した場合、さらに相続が発生して共有者が多数になり、より処分が困難になることもある。
  • 空き家は放置すればするほど、基本的には価値が下がる。後々売りたいと思っても売れなくなるリスクは念頭に置くべき。
  • 空き家を相続した時の対処法は、「相続放棄をする」「共有者で欲しいものがいれば代償分割などにより単独で所有権を取得させる」「賃貸や売却などにより有効活用する」など。

空き家を相続すると、処分について頭を悩ませることも多いです。
売れないし、解体費用も高額だし、解体しても固定資産税などが高くなる…。そういう状況で、ついつい空き家の問題を先送りにしてしまうケースも少なくありません。
ですが、今回ご説明したとおり、空き家問題を先送りにしても良いことは何もありません。
「鉄は熱いうちに打て」と言いますが、空き家の相続も同様です。
他の共同相続人と意見がまとまらない場合には、まずは弁護士にご相談ください。

アディーレ法律事務所は、遺産分割について積極的にご相談・ご依頼を承っております。
「もしうまくいかなかったら弁護士費用無駄になってしまうんじゃない?」
ご安心ください、アディーレには『損はさせない保証』というものがあります。
すなわち、アディーレ法律事務所では、弁護士にご依頼いただいたにもかかわらず、結果として一定の成果を得られなかった場合、原則としてお客さまの経済的利益を超える費用はご負担いただいておりません。
なお、ご依頼いただく内容によって、損はさせない保証の内容は異なりますので詳細はお気軽にお問い合わせください。
※以上につき2023年2月時点

空き家を相続して遺産分割についてお困りの方は、アディーレ法律事務所(フリーコール「0120-406-848」)にご相談ください。

この記事の監修弁護士
弁護士 重光 勇次

弁護士 重光 勇次

アディーレ法律事務所

同志社大学、及び、同志社大学法科大学院卒。2009年弁護士登録。アディーレに入所後、福岡支店長、大阪なんば支店長を経て、2022年4月より商品開発部門の統括者。アディーレがより「身近な法律事務所」となれるよう、新たなリーガルサービスを開発すべく、日々奮闘している。現在、神奈川県弁護士会所属

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

よく見られている記事