「同一労働同一賃金とは何だろう?」
非正規雇用労働者の待遇の低さが社会問題化したことを受け、「同一労働同一賃金」を実現するための法改正が行われました。
これは、短時間労働者・有期雇用労働者と、通常の労働者との間で、不合理な待遇差を設けてはならないというものです。
「パートだから昇給させなくてもよい」という対処をしていると、法律違反になることがあります。
この記事では、次のことについて弁護士が解説します。
- 同一労働同一賃金とは何か
- 同一労働同一賃金の根拠になる法律
- 同一労働同一賃金のメリット・デメリット
- 同一労働同一賃金で企業が対処すべきこと
- 同一労働同一賃金ガイドライン
中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。
同一労働同一賃金とは何か?
「同一労働同一賃金」とは、同じ企業の中で、通常の労働者と短時間労働者・有期雇用労働者との間の不合理な待遇差をなくすための制度です。
ここで、短時間労働者とは、「同一の事業主の下で雇用される通常の労働者」に比べ、週の所定労働時間(定時の労働時間)が少しでも短い労働者のことをいいます。
また、有期雇用労働者とは、期間の定めのある雇用契約を締結している労働者です。パート、アルバイト、契約社員、嘱託などの呼び名は関係ありません。
参考:第1章 パートタイム・有期雇用労働法の解説|厚生労働省
同一労働同一賃金の根拠になる法律
同一労働同一賃金という制度ができたのは、働き方改革の一環として、いわゆる短時間労働者法が、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(※)に改正されたことによります。
※正式名称は、「短時間労働者および有期雇用労働者双方について雇用管理の改善と均衡・均等待遇の確保を図るための短時間・有期雇用労働者法」
同一労働同一賃金の詳しい内容
法律上、どのように同一労働同一賃金が規定されているのか、詳細を解説します。
同一労働同一賃金は、主に次の3つからなります。
- 不合理な待遇差の禁止と事業主の義務
- 労働者に対する説明義務の強化
- 行政指導や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備
(1-1)不合理な待遇差の禁止と事業主の義務
同じ仕事をして同じ結果を出し、同じ意欲・経験・能力などを有しているのに、短時間労働者や有期雇用労働者と、通常の労働者の間に基本給、賞与その他待遇について不合理な差をつけるのは禁止されます。
また、仕事の内容や結果、意欲、経験、能力等のいずれかに差がある場合でも、その差に比べると、不合理となるような基本給、賞与、その他待遇の差をつけることも禁止されます。
なお、「同一労働同一賃金」は、あくまで不合理な待遇差を設けてはならないとするものであり、待遇差を一切設けてはならないとするものではありません。

また、事業主は、不合理な待遇差とならないように、次のような改善策を実施したり、改善に努めたりしなければなりません。
(事業主の努力義務)※弱い義務
- 短時間労働者や有期雇用労働者と通常の労働者の間で不合理な賃金差とならないように、賃金を決定する。
- 中長期的なキャリアアップのための訓練の実施につき、短時間労働者や有期雇用労働者と通常の労働者の間で不合理な差をつけない(幹部候補生の養成を目的とするような長期の研修や海外旅行等は除く)。
(事業主の実施義務)※強い義務
- 仕事の内容が同じであれば、原則として、通常の労働者だけではなく、短時間労働者や有期雇用労働者にも、現在の職務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練を実施する。
- 食堂、休憩室、更衣室については、通常の労働者だけではなく、短時間労働者や有期雇用労働者も、利用できるようにする。
- 短時間労働者や有期雇用労働者に対して、通常の労働者への転換の一定の機会を提供する。
(1-2)労働者に対する説明義務の強化
事業主は、1.雇用したときと、2.労働者から説明が求められたときに、待遇に関して説明する義務があります。
- 雇用したとき
事業主は、短時間労働者や有期雇用労働者を雇用したときは、速やかに、本人の待遇内容や、なぜそのような待遇内容となったのかについて説明する義務があります。 - 労働者から説明を求められたとき
事業主は、短時間労働者や有期雇用労働者から、待遇差について説明を求められたときは、待遇差の内容や、待遇差がある理由、待遇を決定するにあたって考慮した事項について説明する義務があります。
(1-3)行政指導や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備
もし同一労働同一賃金が守られていない場合や、労働者とトラブルになった場合は、行政が関与することもあります。
すなわち、事業主が、同一労働同一賃金のルールを守らない場合は、助言、指導、勧告といった行政指導の対象となることがあります。
また、事業主が勧告に従わない場合は、厚生労働大臣はその旨を公表することができます(事業主の努力義務違反の場合を除きます)。
さらに、事業主と労働者が、同一労働同一賃金めぐってトラブルになった場合には、裁判外紛争解決手続(行政ADR)を利用できるよう行政は、整備を行うことになりました。
この裁判外紛争解決手続は、都道府県労働局が、事業主と労働者の間に公平・中立な立場で介入して、話し合いをするという手続きで、無料で利用でき、非公開の手続きです。
待遇差が不合理である、待遇差の内容や理由を会社が説明してくれない、などのトラブルが、この裁判外紛争解決手続の対象となります。
事業主、労働者の双方ともに、裁判外紛争解決手続の申立てを行うことができます。
事業主と従業員の双方が、裁判外紛争手続の調停の成立に合意した場合には、民法上の和解と同じ効力を持ちます。
すなわち、「合意を守らなければならない」という効力が発生するのです。
ただし、この合意には判決と同じ効力はなく、合意が破られた場合に強制的に合意を実現させることができません。
そのため合意が守られない場合は、別途、裁判手続を利用するなど、強制的に合意を実現させるための手段を取る必要があります。
参考:パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書|厚生労働省
同一労働同一賃金のメリット
同一労働同一賃金の取り組みがあることで、企業と労働者それぞれに様々なメリットがあります。
企業へのメリットには次のようなものがあります。
- 人材を確保しやすい
- 短時間労働者・有期雇用労働者の能力が上がる
労働者へのメリットには次のようなものがあります。
- 待遇が改善され働きやすくなる
- 教育や研修を受けられる機会が増える
これらについてご説明します。
(1)企業にもたらすメリット
同一労働同一賃金は、一見、人件費高騰などの面でデメリットが多く感じられますが、実は、同一労働同一賃金は、企業にメリットをもたらすものです。
(1-1)人材を確保しやすい
短時間労働者・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同じような待遇が用意されることで、働く意欲が上がり、仕事をしたいと考える人が増えます。
そして、求人の募集も待遇の良いものに募集が集まりやすい傾向があるため、優秀な人材を確保しやすくなります。
(1-2)短時間労働者・有期雇用労働者の能力が上がる
同一労働同一賃金を実現することで、短時間労働者や有期雇用労働者の、モチベーションがアップし、能力向上に繋がります。
そして、短時間労働者や有期雇用労働者のモチベーションがアップすることで、企業全体の業務の効率化が進み、企業の業績も上がる場合があるのです。
(2)労働者にもたらすメリット
同一労働同一賃金は、短時間労働者・有期雇用労働者にとって、かなりメリットの大きい取り組みです。
(2-1)待遇が改善され働きやすくなる
同一労働同一賃金の実現によって、短時間労働者や有期雇用労働者も、賃金や福利厚生が充実し、働きやすい環境になります。
労働への対価が正当であると感じられると働くモチベーションがあがり、会社への満足度も高まるのです。
(2-2)教育や研修を受けられる機会が増える
先ほどもご説明したとおり、法律上、原則として、短時間労働者や有期雇用労働者にも、同じように、現在の職務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練を実施しなければなりません。
そのため、短時間労働者や有期雇用労働者も、通常の労働者と同じように、研修や教育を受けることで、スキルアップのチャンスも大きくなります。
同一労働同一賃金のデメリット
他方で、同一労働同一賃金にはデメリットもあります。
企業へのデメリットには次のようなものがあります。
- 人件費などが高騰する可能性がある
- 人員の削減を迫られる
- 待遇差に納得できる説明がないと行政指導や訴訟をされるリスクがある
労働者へのデメリットには次のようなものがあります。
- 正社員の賃金が減る可能性がある
- リストラのリスクが高まる
- ボーナスや手当が削減されやすい
これらについてご説明します。
(1)企業にもたらすデメリット
これまで短時間労働者や有期雇用労働者と、通常の労働者との間で、待遇差を付けていた企業にとってはデメリットも大きいです。
(1-1)人件費などが高騰する可能性がある
短時間労働者や有期雇用労働者と、通常の労働者との不合理な待遇差をなくすため、短時間労働者や有期雇用労働者の賃金を上げると、人員削減や通常の労働者の給料を下げない限り、人件費の総額が増えてしまいます。
また、賃金を上げるほかにも、福利厚生や教育訓練にかかる費用も上がる可能性があるため、会社への負担になりやすいです。
(1-2)人員の削減を迫られる
このように会社の負担がふくらみ、経営を圧迫する状況が続くと、人員削減をせざるを得なくなり、従業員からの不満が大きくなる可能性があります。
(1-3)待遇差に納得できる説明がないと行政指導や訴訟をされるリスクがある
もし、短時間労働者や有期雇用労働者と、通常の労働者との間で待遇差を付ける場合、事業主は、労働者に説明責任を果たさなければなりません。
この説明が十分でない場合は、助言、指導、勧告といった行政指導の対象になるおそれがあります。
また、事業主がこの勧告に従わない場合は、公表の対象にもなります。
さらには、労働者から訴訟提起される可能性もあるのです。
(2)労働者にもたらすデメリット
短時間労働者や有期雇用労働者の方にとっては一見メリットの大きい同一労働同一賃金にも、デメリットがあります。
(2-1)正社員の賃金が減る可能性がある
短時間労働者や有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇差を縮めるため、会社が通常の労働者の賃金をカットしてくる可能性があります。
特に、能力や業績の低い正社員の賃金が減らされる可能性があります。
(2-2)リストラのリスクが高まる
人件費の高騰を抑えるため、不要な人材はリストラに遭い、切り捨てられてしまう可能性もあります。
(2-3)ボーナスや手当が削減されやすい
人件費の高騰を少しでも抑えるため、ボーナスや手当をカットする企業もあります。
特にボーナスは、企業の業績に基づいて支払われる場合が多いので、待遇差の是正に伴い増えた人件費のせいで業績が悪化したとして、ボーナスが不給になる可能性もあるのです。
同一労働同一賃金で企業が対処すべきこと5つ

次に、同一労働同一賃金の取り組みを遵守するにあたり、企業はどのようなことをすればよいのか解説します。
同一労働同一賃金で企業が対処すべきこととして、次のようなものがあります。
- 対象社員を把握する
- 待遇を把握する
- 待遇差がある理由を確認する
- 不合理な待遇差を見直す
- 就業規則を改定する
これらについてご説明します。
(1)対象社員を把握する
まず、同一労働同一賃金の取り組み対象になる社員はいるか、確認します。
具体的には、短時間労働者や有期雇用労働者と、そうでない通常の労働者がいるかどうか調べ、一覧表にしてみましょう。
ここで、「事業所単位」ではなく、「事業主単位」で、通常の労働者かそうでないかを区分しなければいけない点に注意が必要です。
例えば、A事業主が経営する会社Bには、O事業所とP事業所があるとします。
O事業所とP事業所をそれぞれ単独でみると、所定労働時間がみな一緒でも、P事業所の労働者は、O事業所の労働者よりも所定時間が短い場合には、A事業主は短時間労働者と通常の労働者を雇用していることになります。
そのため、A事業主は、同一労働同一賃金の取組をする必要があるのです。
(2)待遇を把握する
次に、同一労働同一賃金の対象となる労働者が、今どのような待遇になっているかを確認しましょう。
具体的には、各労働者の賃金や、各種の手当、福利厚生などの待遇を調べます。
そして、短時間労働者・有期雇用労働者と、通常の労働者との各待遇を一つ一つ比較し、どのような待遇差があるか確認してみましょう。
なお、賃金の待遇差を確認する場合、賃金の総支給額の違いだけを確認するのではなく、手当の一つ一つの違いを比較する必要がある点に注意が必要です。
また、福利厚生の待遇差を比較する場合、福利厚生という一括りで、比較するのではなく、次のような点など一つ一つの福利厚生について比較する必要があります。
- 食堂を利用できるか
- 教育訓練を受けることができるか
(3)待遇差がある理由を確認する
短時間労働者・有期雇用労働者と、通常の労働者の間に、待遇差がある場合、待遇差をつけている理由を確認します。
具体的には、次の点について一人一人確認していきましょう。
- 仕事の内容や結果、意欲、経験、能力等に違いはあるのか
- これらを考慮した場合に、その待遇差が不合理なのか
待遇差が「不合理でない」場合は、いつでも労働者にその理由を説明できるように、紙に書きだすなどして整理しておきます。
(4)不合理な待遇差を見直す
待遇差が不合理である場合は、不合理ではなくなるよう待遇を変える必要があります。
例えば、短時間労働者や有期雇用労働者には支給されていなかった手当などを支給する、もしくは通常の労働者にだけ支給されていた手当などを廃止するなどの対策が求められます。
ただし、待遇の引き下げを行う場合は、労働者の同意を得ることが望ましいです。
(5)就業規則を改定する
待遇を見直した場合、その内容に合わせて、就業規則を改定することも忘れないようにしましょう。
待遇の判断材料となる同一労働同一賃金ガイドライン
ここまでご説明したように、企業に求められる対処はいろいろあるのですが、実際、何を基準に待遇の見直しをすればよいのか分からない方もいらっしゃるでしょう。
そこで、政府が出している同一労働同一賃金のガイドラインに基づき、「不合理ではない待遇」とは何か、基準を解説します。
基準には、主に次のようなものがあります。
- 基本給の基準
- 賞与の基準
- その他手当の基準
- 福利厚生の基準
- 病気休職の基準
- 法定外の有給休暇その他の休暇の基準
- 教育訓練の基準
これらについてご説明します。
(1)基本給の基準
仕事の内容や結果、意欲、経験、能力などに照らして実態に違いがなければ、同一額の基本給の支給を行わなければなりません。
仕事の内容や結果、意欲、経験、能力などに照らして実態に違いがある場合は、その違いの程度に応じた基本給の支給を行う必要があります。
そして、昇給が能力の向上に応じて行うものならば、同一の評価であるときは、同一の昇給を行わなければなりません。
能力に違いがある場合には、能力の違いの程度に応じた昇給を行う必要があります。
例えば、短時間労働者・有期雇用労働者と、通常の労働者の間には、少ししか能力に差がなく、他の条件は同じなのに、大きく基本給や昇給で差をつけてはならないということです。
ここで、そもそも基本給に差をつけても問題ない例、差をつけては問題がある例について紹介いたします。
(ただし、下記例において、基本給に差をつけてよい場合でも、それぞれの違いの程度に応じた基本給を支給する必要があります)
【問題がない例】
- 仕事の内容の変更や、転勤のある総合職が、新卒で採用された後、数年間、時短労働者のアドバイスを受けて、時短労働者と同じ定型的な仕事をしている場合に、当該総合職の基本給を時短労働者よりも高い基本給に設定すること
- 勤務時間または勤務曜日(日・祝日)に違いがあるため、基本給に差をつけること
- 通常の労働者のみが、ノルマを課されており、ノルマ不達成であれば待遇上の不利益を負うため、基本給に差をつけること
【問題がある例】
- 一定の販売ノルマを達成したら支給される基本給の一部について、時短労働者と通常の労働者とで、同じ販売ノルマの達成を条件とすること
- 勤続年数に応じて支給する基本給がある場合に、有期雇用労働者の勤続年数を当初の雇用時から通算せず、契約更新後の勤続年数しか通算しないこと
(2)賞与の基準
会社の業績への貢献に基づくものならば、同一の貢献分には同一額の賞与を支給しなればなりません。
会社の業績への貢献が違う場合には、その違いの程度に応じた賞与の額にする必要があります。
ここで、そもそも賞与の額に差をつけて問題がない例、差をつけると問題がある例について紹介いたします。
(ただし、下記例において、賞与に差をつけても問題がない場合でも、それぞれの違いの程度に応じた賞与を支給する必要があります)
【問題がない例】
通常の労働者のみが、ノルマを課されて、ノルマ不達成であれば待遇上の不利益を負うため、賞与に差をつけること
【問題がある例】
会社の業績への貢献度に応じて賞与を支給しているところ、業績への貢献度にかかわらず、通常の労働者には全員に対し、何らかの賞与を支給しているが、短時間・有期雇用労働者には賞与を支給していない場合
(3)その他手当の基準
役職手当は、同一の役職においては同一額の支給をおこなわなければなりません。
役職が違う場合には、その役職の違いの程度に応じた役職手当の支給を行う必要があります。
以下の手当は、仕事の内容や能力などが異なっても、「同じ額」の支給を行わなければならないとされている点に注意しましょう。
- 特殊作業手当……業務の危険性や、作業環境を考慮して支払われる手当
- 特殊勤務手当……交代制勤務などの場合に支払われる手当
- 精皆勤手当 ※業務内容が同一の場合
- 時間外労働手当の割増率……正社員の所定労働時間(定時)を超過して、同じ時間外労働を行った場合に支払われる手当の割増率
- 深夜・休日労働手当の割増率……深夜・休日労働を行った場合に支払われる手当の割増率
- 通勤手当
- 出張旅費
- 食事手当……勤務時間中に食事休憩をする場合の手当
- 単身赴任手当 ※同じ支給要件を満たす場合
- 地域手当……特定の地域で働く労働者に支払われる手当
なお、次の場合には、地域手当に差をつけても問題がないとされています。
- 通常の労働者に対しては、全国一律の基本給体系であるが、転勤があることから、地域の物価などを考慮した地域手当を支給する一方で、短時間・有期雇用労働者は、地域ごとの物価水準を考慮した基本給体系とし、かわりに地域手当は支給しない場合
(4)福利厚生の基準
仕事の内容や能力などが異なっても、次の福利厚生については「同じ」ものでなければなりません。
- 食堂、休憩室、更衣室の利用
- 転勤者用社宅 ※転勤の有無等の要件が同一の場合
- 慶弔休暇
- 有給での健康診断(勤務免除)
(5)病気休職の基準
仕事の内容や能力などが異なっても、病気休職は「同じ」ものを与えなければなりません。
すなわち、無期雇用の短時間労働者には、通常の労働者と同じ病気休職を与えなければなりません。
また有期雇用労働者には、その雇用期間を考慮して、同じ病気休職を与えなければなりません。
(6)法定外の有給休暇その他の休暇の基準
法律上の有給休暇の日数を上回る、有給休暇(法定外の有給休暇)を付与していたり、その他の休暇を付与している企業の場合、同一の勤続期間であれば、同じだけの法定外の有給休暇やその他の休暇を与えなければなりません。
なお、契約を更新している有期雇用労働者の場合、当初の雇用時から起算して、勤続期間を算定する必要がある点に注意が必要です。
(7)教育訓練の基準
現在の職務に必要な技能・知識を得るために実施する教育訓練については、同じ仕事内容であれば、同じ教育訓練をする必要があります。
仕事内容に違いがある場合は、その違いの程度に応じた教育訓練を実施しなければなりません。
同一労働同一賃金の施行時期
同一労働同一賃金は2020年4月1日から施行されており、中小事業主についても2021年4月1日から施行されています。
中小事業主とは、以下の条件に該当する事業主のことをいいます。
資本金3億円以下(※1)、または、常時使用する労働者300人以下(※2)
※1 資本金
小売り・サービス業は、5000万円以下
卸売業は1億円以下
※2 常時使用する労働者
小売業は、50人以下
卸売・サービス業は100人以下
【まとめ】同一労働同一賃金は労働者間の不合理な待遇差をなくすための制度
この記事のまとめは次のとおりです。
- 同一労働同一賃金とは、同じ企業の中で、通常の労働者と短時間労働者・有期雇用労働者との間の不合理な待遇差をなくすための制度。
- 法律上、同一労働同一賃金は、不合理な待遇差の禁止と事業主の義務などからなる。
- 同一労働同一賃金には、企業にも労働者にもメリットがある。
企業へのメリットには、人材を確保しやすくなることなどがある。
労働者へのメリットには、待遇が改善され働きやすくなることなどがある。 - 同一労働同一賃金にはデメリットもある。
企業へのデメリットには、人件費などが高騰する可能性があることなどがある。
労働者へのデメリットには、正社員の賃金が減る可能性があることなどがある。 - 同一労働同一賃金で企業が対処すべきこととして、対象社員を把握すること、待遇を把握すること、待遇差がある理由を確認することなどがある。
- 待遇の判断材料となるものとして、同一労働同一賃金ガイドラインがある。
待遇の見直しの基準としては、基本給の基準、賞与の基準などがある。
同じだけの成果を出しているのに、短時間労働者・有期雇用労働者であるというだけで、不合理な待遇差をつけられてしまうと、納得できないものですよね。
同一労働同一賃金の制度をしっかりと知ることで、不合理な待遇差をつけられたままになってしまうことのないようにしましょう。
同一労働同一賃金の制度について不安がある場合には、弁護士などの専門家に相談しましょう。