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過労死ラインは何時間?働く人と会社側のリスクは?

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リーガライフラボ

「残業が続いている。このままだと過労死してしまいそう……」

残業をする理由は人それぞれ。
たくさん残業をしなければならない理由がある人も多くいるはずです。
しかし、いくらたくさん残業をしなければならないとしても、超えてはならない一線があります。
それが、「過労死ライン」です。

「過労死ライン」とは、過労死等が生じやすくなる残業時間のことです。

この記事では、過労死ラインについて、弁護士が解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

「過労死」や「過労死ライン」とは何か

「過労死ライン」とは、「過労死等」を引き起こす可能性が高まるとされる残業時間(※)の基準です。

※「残業」とは、時間外労働や休日労働の時間のことです。
時間外労働、休日労働の意味は、次のとおりです。

時間外労働:原則として、1日8時間、週40時間を超える労働のこと
休日労働:法定休日(週に1日以上または4週間あたり4日以上の休日)における労働のこと

また、「過労死等」とは、次のような死亡や、死亡には至らない障害のことです。

  • 業務における過重な負荷(過労)を原因とする脳血管疾患・心臓疾患による死亡
  • 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
  • 死亡には至らないが、これらを原因とする脳血管疾患・心臓疾患や精神障害

過労死ラインを超えて残業をすると、過労死等のリスクが高まります!

過労で死んでしまうだなんて、怖い!
いったいどれだけ残業をすると、過労死ラインを超えてしまうの?

過労死ラインには、次にご説明するように具体的な基準があります。
残業をしすぎていないか判断するにあたって、ひとつの目安にしてみると良いですよ。

過労死ラインを超える残業とは、具体的には、次のような残業です。

  • 月100時間を超える残業
  • 2~6ヶ月間の平均が月80時間を超える残業

例えば、ひと月100時間を超える残業をした人が脳血管疾患のひとつであるクモ膜下出血で亡くなったとすれば、過労死である(仕事のせいで亡くなった)と認められやすくなります。

なお、過労死ラインはあくまでも過労死等であるか認定するための目安に過ぎません。
このため、ひと月あたりの残業時間が過労死ラインを超えなかったとしても(例えばひと月あたりの残業時間が60時間であったとしても)、過労死と認められる可能性はあります。

参考:過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ|厚生労働省

過労死ラインは何時間?

「過労死ライン」を超える残業とは、先ほどご説明したとおり、次のような残業です。

  • 月100時間を超える残業
  • 2~6ヶ月間の平均が月80時間を超える残業

この過労死ラインについて、詳しくご説明します。

(1)月100時間以上の残業

一つ目の目安として、ある脳血管疾患などの発症前1ヶ月間でおおむね100時間以上の残業(時間外労働・休日労働)をしていた場合には、仕事と病気の関連性が強いと評価できます。

残業時間には、会社の指揮監督下に置かれている時間が含まれます。
会社の指揮監督下に置かれていれば、必ずしも会社にいる時間に限られません(例えば、自宅でリモートワークをする場合など)。
また、休憩時間であっても電話待ちをしていたなど実際に休むことが困難であった場合には、労働時間に含まれることがあります。

(2)2~6ヶ月平均で80時間以上の残業

二つ目の目安として、発症前2~6ヶ月にわたって1ヶ月当たりおおむね80時間を超える残業をしていた場合にも、仕事と病気の関連性が強いと評価できます。

例えば、1ヶ月当たり100時間を超える残業をしていた月はないものの、過去6ヶ月間の残業時間がいずれも80時間を超えていた場合には、この二つ目の過労死ラインの基準を満たすことになります。

なお、1ヶ月当たり45時間を超えて時間外労働が長くなればなるほど、仕事と病気の関連性が徐々に強まるとされています。

参考:脳・心臓疾患の労災認定―「過労死」と労災保険―|厚生労働省

2021年に20年ぶりの見直し!過労死認定基準の変更点とは?

2021年、厚生労働省が設置した検討会がまとめた報告書により、過労死の認定基準が20年ぶりに見直されることになりました。
それまでの過労死ラインの基準そのものは変更されませんでしたが、次のような見直しがなされることとなりました。

見直しの内容は、主に次の4つです。

  • 過労死ラインを超えていなくても労災と認める場合があるとはっきりさせたこと
  • 労働時間以外にも過労死につながる要因を追加したこと
  • 業務と発症との関連性が強いと判断できる場合をはっきりさせたこと
  • 脳・心臓疾患の対象となる病気として「重篤な心不全」を追加したこと

これらについてご説明します。

参考:脳・心臓疾患の労災認定基準を改正しました|厚生労働省
参考:脳・心臓疾患の労災認定基準 改正に関する4つのポイント|厚生労働省

(1)過労死ラインを超えていなくても労災と認める場合があるとはっきりさせたこと

改正前は、次のいずれかの時間外労働が認められる場合には、業務と発症の関係が強いとしていました(いわゆる「過労死ライン」)。

  • 発症前1ヶ月におおむね100時間を超える時間外労働
  • 発症前2~6ヶ月間にわたって、1ヶ月あたり80時間を超える時間外労働

改正後は、このような過労死ラインを超えていない場合であっても、労災と認める場合があるとはっきりさせました。
過労死ラインを超えていなくても、過労死ラインに近い時間外労働を行った場合には、「労働時間以外の負荷要因」も考慮して労災を判定することにしたのです。

(2)労働時間以外にも過労死につながる要因を追加したこと

労働時間以外の負荷要因を見直し、次の項目を新たに追加しました。

  • 休日のない連続勤務
  • 勤務間インターバル(終業から次の始業まで)が短い勤務
  • 心理的負荷を伴う業務
  • 身体的負荷を伴う業務

(3)業務と発症との関連性が強いと判断できる場合をはっきりさせたこと

次のような例を示して、業務と発症との関連性が強いと判断できる場合をはっきりさせました。

短時間の過重業務発症の直前から前日までの間に、特に過度の長時間労働があった場合
発症前おおむね1週間継続して、深夜に及ぶ残業を行うなど、過度の長時間労働があった場合
異常な出来事業務に関係のある重大な人身事故や重大事故に直接関わった場合
事故の発生に伴って、特に身体的・精神的負担のかかるような救助活動や事故処理に関わった場合
生命の危険を感じさせるような事故や対人トラブルを体験した場合
著しい身体的負荷を伴う消火作業、人力での除雪作業、身体訓練、走行などを行った場合
著しく暑い作業環境の下で水分補給ができない状態や、著しく寒い作業環境の下で作業をしたり、温度差のある場所に頻繁に出入りを行った場合

(4)脳・心臓疾患の対象となる病気として「重篤な心不全」を追加したこと

これまでは、不整脈が原因となった心不全症状は、「心停止(心臓性突然死を含む)」に含めて取り扱っていました。

しかし、心不全は心停止とは異なる病態であることから、脳・心臓疾患の対象となる病気として、新たに「重篤な心不全」を追加しました。

過労死ラインを守らないことによるリスク

過労死ラインを守らないことによって、働く人にも会社にもさまざまなリスクが生じます。

(1)働く人のリスク

過労死ラインを超えた労働によって、働く人には次のような症状が起こりえます。

  • 業務上のミス
  • 心身の不調

(1-1)業務上のミス

次のような業務に関するミスが連発すると、取り返しのつかない事態になりかねません。

  • 記憶力が低下して、仕事効率が落ち、納期に遅れが出る
  • イライラや不安によって取るに足らないことで怒り、人間関係にひびが入る

特に医療現場、や車、電車、飛行機を運転する職種などにおける仕事上のミスは、他の人をも巻き込む致命的なものとなる危険性もあります。

(1-2)心身の不調

オーバーワークをすると、睡眠時間が短くなり、次のような症状があらわれることがあります。

  • 自律神経が乱れ、心身に不調が現れる
  • 免疫力が低下して、病気にかかりやすくなる
  • 睡眠の質が低下して、疲れがとれなくなる
  • 仕事が終わっても緊張状態が続き、精神的に仕事から解放されない

最悪の場合、働く人の死亡や自殺にもつながります。

(2)会社側のリスク

オーバーワークの実態を把握しながらそれを放置すると、会社にも次のリスクがあります。

  • 訴訟を起こされるリスク
  • 業務上の損失を被るリスク

従業員が自らの意思で働いているから、と考えずに適切に対応することが大切です。

(2-1)訴訟をおこされるリスク

近年、過労死や過労自殺によって亡くなった方の遺族から訴訟を提起され、会社に安全配慮義務(労働者の心身の安全や健康を確保するために必要な配慮をする義務)違反が認められるケースが増えています。

36協定によって労働者を残業させることが適法だとしても、会社は安全配慮義務を負っています。
労働者の過労死・過労自殺を防ぐ手当をする必要があるので、経営者は注意しなければなりません。

安全配慮義務違反を理由とする過労死・過労自殺の事案では、和解金や判決で認められる損害の金額が1億円を超えることもあります。
また、働き方改革の進む中、過労死や過労自殺に関するニュースはその会社に対する評判を落としてしまうでしょう。

(2-2)業務上の損失を被るリスク

オーバーワークにより心身に不調をきたした人が働くことで、業務上のミスや事故が増え、業務上の損失を被るリスクがあります。
そうなると、社会的信用の失墜する取り返しのつかない事態になりかねません。

【まとめ】過労死ラインとは過労死等が生じやすくなる残業時間のこと

この記事のまとめは次のとおりです。

  • 過労死ラインとは、過労死等を引き起こす可能性が高まるとされる残業時間の基準のこと。
  • 過労死ラインを超える残業とは、具体的には、月100時間を超える残業または2~6ヶ月の平均が月80時間を超える残業のこと。
  • 2021年、20年ぶりに過労死認定基準が見直された。
    見直しの内容は、「過労死ラインを超えていなくても労災と認める場合があるとはっきりさせたこと」などの4つ。
  • 過労死ラインを守らないことで、働く人にとっては心身の不調をきたすなどのリスクがあり、会社には訴訟を起こされるリスクなどがある。

オーバーワークの問題は、働く人の意識だけで解決できる問題ではなく、会社全体で解決していかなければならない問題です。
特に過労死ラインを超えるような残業は、働く人の心身に悪影響を与えるリスクが高くなります。ご自身を守るためにも、会社が何も対応しない場合には、労働基準監督署や労働問題を扱う弁護士に相談するのが良いでしょう。

参考:全国労働基準監督署の所在案内|厚生労働省

この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

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