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接近禁止命令の効果は?申立ての方法や注意点についても解説

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2018年の司法統計によれば、離婚調停において離婚を希望した女性のうち、実に20.8%が夫の暴力を離婚理由に挙げています。
2001年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(いわゆるDV防止法)が制定され、暴力をふるう加害者から被害者を保護する仕組みが作られました。
その代表的なものが、地方裁判所による接近禁止命令です。
この記事では、接近禁止命令の効果や、申立ての方法、注意点などについて弁護士が解説します。

参考:性別離婚申立ての動機別割合の推移(1975-2018)|司法統計

接近禁止命令とは?

DV防止法には、配偶者(事実婚を含む)・元配偶者からの暴力を防止し、被害者の生命・身体の保護を目的として、裁判所が、被害者の申立てにより、一定期間、加害者を被害者から引き離すために発する保護命令を発令できることが規定されています。
保護命令は、大きく分けて二つあります。
被害者への身辺への「つきまとい」や「はいかい」を禁止する接近禁止命令(DV防止法10条1項1号)と、同居する住居からの退去を命じる退去命令です(同条1項2号)。
まずは、接近禁止命令について詳しく説明します。

参考:保護命令手続きについて|裁判所 – Courts in Japan

(1)接近禁止命令の具体的な内容

接近禁止命令は、被害者(「申立人」といいます)の申立てにより、保護命令の効力が生じた日から6ヶ月間、被害者の住居又は職場の付近をはいかいすることを禁止することを、加害者である相手方に命じるものです。

命令の効力が生じた日から起算して六月間、被害者の住居(当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く。以下この号において同じ。)その他の場所において被害者の身辺につきまとい、又は被害者の住居、勤務先その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないこと。

引用:DV防止法10条1項1号

(2)期待できる効果

保護命令に違反した場合には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金という刑罰が課されますので(DV防止法29条)、刑罰の抑止力により、相手方に暴力を控えようという心理が生じることが期待されます。
また、保護命令が発令されると、その旨が地方裁判所から警察や配偶者暴力相談支援センターへ通知されますので(DV防止法15条3項)、万が一、相手方の保護命令違反があって警察に相談する際には、迅速に対応してもらうことができるでしょう。

接近禁止命令では防止できないこと

申立人に対する接近禁止命令だけでは、相手方からの電話やメール、FAX、手紙などを送る行為は禁止対象に含まれませんので、防止することができません。
また、申立人以外のその子供や親族等への接近を防ぐことができません。

したがって、電話やメールで生命・身体に対する脅迫を受けていたり、子どもの連れ去りの危険があったり、申立人の親族宅に押し掛けるおそれがあったりする場合には、別途、電話などの行為を禁じたり、子どもや親族等へのつきまといやはいかいを禁止する接近禁止命令について申立てる必要があります。

電話等の行為の禁止命令と子どもや親族等への接近禁止命令は、単独で発せられるものではありません。申立人への接近禁止命令を前提とし、それと同時又はその発令後に、発令されることになります。

被害者に対する接近禁止命令以外の保護命令

接近禁止命令だけでは防ぐことができない、相手方からの電話等での連絡、子どもや親族等への接近を防ぐために、電話等禁止命令、子への接近禁止命令、親族等への接近命令を申立てることができますので、詳しい内容を説明します。
また、相手方に対して、被害者と同居する住居からの退去を命じる退去命令についても説明します。

(1)電話等禁止命令

電話等禁止命令とは、被害者の申立てにより、その生命・身体に危害が加えられることを防止するために、(元)配偶者に対して、被害者に対する接近禁止命令の効力が生じた日から6ヶ月間、次の内容の行為を禁止する保護命令です(DV防止法10条2項各号)。

  1. 面会を要求すること。
  2. その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
  3. 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
  4. 電話をかけて何も告げず、又は緊急やむを得ない場合を除き、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールを送信すること。
  5. 緊急やむを得ない場合を除き、22~6時までの間に、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、又は電子メールを送信すること。
  6. 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
  7. その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
  8. その性的羞恥心を害する事項を告げ、若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付し、若しくはその知り得る状態に置くこと。

(2)子への接近禁止命令

子への接近禁止命令とは、(元)配偶者が被害者と同居している幼い子を連れ戻すおそれがあり、そのために被害者がその子について(元)配偶者と面会を余儀なくされることを防ぐために、被害者に対する接近禁止命令の効力が生じた日から6ヶ月間、子の住居や学校などでの子へのつきまといやはいかいの禁止を命じるものです(DV防止法10条3項)。
子が15歳以上の場合は、子への接近禁止命令を発する場合には、その子の同意が必要です(同条3項但書)。

例えば、配偶者が被害者の幼い子を通園先から連れ去ったりして、被害者がその子の世話をするために配偶者のもとに行かざるを得なくなれば、再度、被害者は暴力を受ける危険があります。そのような事態を防ぐために、被害者の接近禁止命令の他に、子への接近禁止命令が設けられています。

(3)親族等への接近禁止命令

親族等への接近禁止命令とは、(元)配偶者から被害者の親族などの住居に押し掛けて、著しく乱暴な言動を行っているなどの事情があることから、被害者がその親族等について配偶者と面会を余儀なくされることを防ぐために、被害者に対する接近禁止命令の効力が生じた日から6ヶ月間、親族などの身辺でのつきまとい又は住居・勤務先などでのはいかいの禁止を命じるものです(DV防止法10条4項)。
親族等が15歳以上である場合にはその同意が必要で、15歳未満の場合はその法定代理人の同意が必要です。

例えば、配偶者が被害者の親族等の住居に押し掛けて、「被害者の住所を教えろ」「教えなければ殴るぞ」などと著しく乱暴な言動を行うなどの事情があり、被害者が親族等を助けたり仲裁したりするために配偶者と会わざるを得なくなれば、再度、被害者は暴力を受ける危険があります。そのような事態を防ぐために、被害者の接近禁止命令の他に、親族等への接近禁止命令が設けられています。

(4)退去命令

退去命令は、命令の効力が生じた日から2ヶ月間、被害者と同居している住居から退去すること及びその住居の付近をはいかいしてはならないことを命じるものです(DV防止法10条1項2号)。

接近禁止命令の要件とは

接近禁止命令が発令されるためには、次のような要件があります。

(1)相手と申立人が夫婦、内縁関係、同棲関係であること

接近禁止保護命令は、申立人と相手方に一定の関係が存在する必要があります。
一定の関係とは、婚姻関係にある夫婦であること(事実婚を含む)、婚姻関係にあって離婚したこと(事実婚の解消を含む)、現在同棲している又は過去同棲していたことを指します(DV防止法1条2項、3項、28条の2)。

DV防止法で保護の対象とされていたのは、当初は事実婚及び法律婚の(元)夫婦間の暴力だけでしたが、2014年の法改正により、対象が「生活の本拠を共にする交際」関係にある恋人同士にも広げられました。
したがって、デートDVであっても同棲していればDV防止法の保護命令の対象となりますが、同棲していない場合には、DV防止法の適用の範囲外となります。

(2)結婚期間中又は同棲期間中に相手から暴力や脅迫を受けたこと

結婚期間中または同棲期間中に、「身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫」を受けた事実が必要です。
したがって、心身に有害な影響を及ぼすような言動(精神的DV)だけでは、身体に対する暴力があったとは言えませんので、要件を満たしません。

(3)将来申立人の生命又は身体に重大な危害が及ぶおそれが大きいこと

今後、「身体に対する暴力」を受けることにより、「生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいこと」が必要です。
「生命や身体に重大な危害を受けるおそれ」とは、被害者が、(元)配偶者の暴力により、殺人、傷害等の被害を受けるおそれがある場合を指します。
保護命令違反の罰則が重いことから、単に将来暴力を振るう可能性があるだけでは足りず、過去の暴力の頻度、態様、被害者のケガの程度などの事情を考慮したうえで、被害者に対して暴力を振るってその生命や身体に重大な危害を受ける可能性が高いといえることが必要だと考えられています。

接近禁止命令の申立ての流れ

接近禁止命令の手続きは、次のように、通常、専門機関への相談、裁判所への申立て、申立人の面接、相手方の審尋、接近禁止命令の決定という流れになります。

(1)警察やDVセンターへの相談

申立書には、警察又は配偶者暴力相談支援センター(DVセンター)へ相談したり保護を求めていたりした場合には、その事実と所定事項を記載します。配偶者暴力相談支援センターには、申立書のひな型が備え付けられていますので、利用するとよいでしょう。

事前に警察などに相談していない場合には、公証人役場でDV被害の内容や状況についての公証人面前宣誓供述書(当事者が書面に記載してあることが事実であると宣誓・押印し、公証人に認証してもらった書面)を作成する必要がありますが(DV防止法12条2項)、手間や時間、費用がかかることもあり、あまり利用されていないようです。

(2)申立てを行う

接近禁止命令の申立ては、申立人の住所又は居所(一時的に避難している場合は避難先の場所)を管轄する地方裁判所、相手の住所地を管轄する地方裁判所、DV被害が発生した地を管轄する地方裁判所のいずれにも行うことができます。

申立書などの記録は、相手方が閲覧できますので、避難先の住所を秘匿したい場合には、避難前の住所を記載すれば足ります。

申立書に記載すべき事項は、基本的に、接近禁止命令を求める旨、過去相手方から身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた具体的状況、将来生命・身体に重大な危害をうけるおそれが大きいといえる具体的事情、警察などに相談した事実です(DV防止法12条1項各号)。
親族等や子への接近禁止も求める場合には、親族等や子の情報も必要になります。
過去暴力を受けた証拠(ケガの写真、診断書、DVの日記など)や、今後の暴力のおそれが大きいといえる証拠(暴言やつきまといがある証拠)も提出します。

また、結婚の事実や同棲の事実がわかる資料(戸籍謄本、住民票、賃貸契約書の写し、公共料金の請求書の写しなど)も必要です。

(3)申立人の面接を行う

保護命令は緊急性が高いので、地方裁判所は速やかに対応するものとされています(DV防止法13条)。
通常、申立ての当日または直近の日に、地方裁判所で申立人の面接が行われます。

(4)相手の審尋(しんじん)

申立人の面接後、相手方に申立書や証拠の写しなどを送付し、相手に対して裁判所への出頭を求め、申立てられた内容について口頭で陳述をする機会を設けます(DV防止法14条1項)。
通常、申立人の面接から1週間~10日程度内に行われているようです。

また、裁判所は、申立人が相談した警察又は配偶者暴力相談支援センターに対し、相談や保護の内容について記載された書面の提出を求めたり、説明を求めたりします(DV防止法14条2項、3項)。

(5)申立てについての決定

接近禁止命令は、相手方が審尋に出頭した場合には、その場で言い渡されて効力が生じます。
相手方が審尋に出頭しない場合には、決定書が相手方に送達されることで効力が生じます(DV防止法15条2項)。
接近禁止命令の要件を満たさないと判断された場合には、命令は発令されません。

接近禁止命令に関する注意点

接近禁止命令は、命令違反の罰則を担保にして、相手方に一定の行為を禁止することから、決して簡単に認められるものではありませんので、次のような注意が必要です。

(1)証拠次第で接近禁止命令が発令されない場合がある

裁判所は、接近禁止命令を発令するにあたっては、法律上必要な要件を満たすかどうかを証拠に基づいて判断しますので、過去受けた身体的暴力や脅迫、将来身体的暴力を受ける可能性が高いことなどについて、客観的な裏付けとなる証拠が必要です。
したがって、身体的DVにより負傷したことのわかる診断書や写真、脅迫を受けた記録(音声データや動画)などがあると、有利な証拠となります。
申立人の陳述書(申立人がDV被害を受けた経緯について述べた書面)以外の客観的な証拠がないような場合、接近禁止命令が発令されず、申立てが却下される可能性があります。
また、暴力を受けた証拠があっても、その時期が申立ての数ヶ月前のみであるような場合には、将来生命・身体に危害を受けるおそれが大きいとは言えないとして、申立てが却下される可能性もあります。

参考:配偶者暴力に関する保護命令を申立てようとお考えの方へQ13|広島地方裁判所

(2)再度の申立ても可能

被害者は、一度接近禁止命令が発令された後でも、再度接近禁止命令を申立てることができます。
接近禁止命令の効力は、命令の効力が生じた日から6ヶ月ですから、その後も生命・身体に重大な危害をうけるおそれが大きいといえるような場合には、再度の申立てを検討することになります。
裁判所が、新たな申立てとして審理しますので、申立て書類一式が再度必要になりますし、接近禁止命令の要件を満たしているかどうかも新たに審理されます。
例えば、相手方が「接近禁止命令の効力が終わったら覚悟しろ」などと危害を加える旨の予告をしているような場合には、効力失効日と次の接近禁止命令の発令日までに空白期間ができないよう、申立てを行うことが大切になります。

(3)離婚後や別居後の住所を知られないようにする

被害者は、自分の身を守るために、相手方に離婚後や別居後の住所を知られないように細心の注意を払う必要があります。
すぐに避難先が見つからないような場合には、緊急一時保護施設(シェルター)を利用することもできます。
シェルターは、婦人相談所や民間団体の施設などに設置されており、原則として地域の福祉事務所を通して利用することになっていますが、緊急の場合には、24時間いつでも、警察に保護を求めるようにしましょう。警察にシェルター利用の希望があることを伝えれば、警察からシェルターに連絡をしてくれます。
また、市役所に住民票等の交付制限の申出をすることで、相手方が住民票などを取得して住所を調べることを防止することができます。
接近禁止命令の申立ての際にも、申立書に現住所を書く必要はなく、証拠に現住所が記載されている場合には、黒塗り・白抜きするなど、相手方に現住所を知られないようにする必要があります。

(4)接近禁止命令が万能ではないことを理解する

接近禁止命令の効力には6ヶ月という制限があり、罰則で担保されているものの、罰則が課されてもかまわないという人物がいないとは限りません。
接近禁止命令発令後も、相手方の行動範囲には近づかない、相手方と通じている人物との接触を控える、夜間一人での外出を控えるなどの自衛行為が必要となるでしょう。
危険を感じた場合には、速やかに警察に連絡するようにしてください。接近禁止命令が発令されたことについては、裁判所から警察に連絡がいくことになっていますので、迅速に対応してくれるでしょう。

【まとめ】接近禁止命令の申立てには要件や注意点が!お困りの方は弁護士に相談を

生命・身体への危険を感じた場合には、警察に保護を求めて、まずは避難して安全を確保するようにしましょう。
接近禁止命令の申立てが必要とされる状況は、緊急性がありますので、命令発令に必要な要件を満たすのかどうか、十分な証拠があるのかどうかなどについて、迅速に判断して申立てをする必要があります。
法テラス(公設の法律事務所)であれば、所得上限などの利用条件がありますが、相談は3回まで無料ですし、弁護士費用の立替制度(弁護士費用を長期分割で支払う)を利用することもできますので、経済的に不安を抱える方も弁護士に依頼することが可能です。
滞りなく接近禁止命令の申立てを行うためには、弁護士に相談することを検討下さい。

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