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雇用保険未加入で起こる問題と未加入が発覚したときの対処法を解説

作成日:更新日:
リーガライフラボ

「子どもが産まれたので、育児休業をして給付金をもらいたい。」
「失業したので、失業手当をもらいたい。」

これらの給付金をもらうためには、雇用保険に加入している必要があります。

この点、雇用保険の加入条件を満たす労働者を雇用したら、会社は原則としてその労働者を雇用保険に加入させる義務があります。
ところが、雇用保険料は会社も負担しなければならないので、この負担をきらって、雇用保険への加入手続きを怠っている会社もあります。

しかし、これにより不利益を受けるのは労働者です。

この記事では、次のことについて弁護士が解説します。

  • 雇用保険とは何か
  • 雇用保険未加入で起こる問題
  • 雇用保険に入っているか確認する方法
  • 雇用保険未加入が分かったときの対処法
この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

労働者を守る雇用保険とは?

「雇用保険」とは、労働者が失業した場合や、雇用の継続が困難となった場合、育児休業をした場合などに、一定額が給付されるものです。
また、失業中・在職中の職業訓練などの費用も雇用保険から給付されます。
このように雇用保険は、労働者を守る保険といえます。

会社は、加入希望の有無にかかわらず、原則として、適用条件を満たしている労働者の雇用保険の加入手続き(被保険者となった旨をハローワークに届け出)をしなくてはなりません(雇用保険法7条)。

会社が雇用保険加入の義務に違反した場合、懲役6ヶ月(※)以下もしくは罰金30万円が科せられることがあります(雇用保険法第83条1号)。

雇用保険料は、会社と労働者の両方が負担して支払います。

※2022年6月の刑法改正により、懲役刑と禁錮刑が廃止され拘禁刑に1本化されました。

参考:雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!|厚生労働省

雇用保険の加入条件

雇用保険法には、労働者が雇用保険に加入することができる条件が定められています。
雇用保険法では、被保険者とならない者(適用除外)の条件にあたらない限り、原則として全ての労働者が雇用保険に入ることとされています。
被保険者とならない者の条件は、例えば、次のとおりです。(雇用保険法6条)。

  • 1週間の所定労働時間が20時間未満であること
  • 31日以上の雇用見込みがないこと
  • 昼間学生であること

雇用保険の加入条件を満たしている場合は、正規、非正規(契約社員、アルバイト、パート)に関係なく、原則として、会社は労働者を雇用保険に加入させなくてはなりません。

参考:雇用保険事務手続きの手引き【令和5年8月版】|厚生労働省

雇用保険未加入で起こる問題

雇用保険未加入の場合、在職中は育児休業や介護休業の給付を受けられないといった問題が生じます。
また、在職中だけでなく、解雇や退職によって失業した際に失業手当などの受給ができないという問題も生じます。
雇用保険未加入の場合に生じるこれらの代表的な問題を紹介します。

参考:雇用保険手続きのご案内|ハローワークインターネットサービス

(1)育児休業給付を受けられない

雇用保険未加入の場合、育児休業給付を受けることができません。

育児休業給付とは、一定の要件を満たした被保険者が、1歳または1歳2ヶ月(※)(支給対象期間の延長をした場合は1歳6ヶ月または2歳)未満の子を養育するために、育児休業を取得した場合に支給されるお金です。

※両親ともに育児休業を取得する場合、子が1歳2ヶ月になる前日までに1年間(女性の場合は、出産日以降の産後休業期間を含みます)育児休業を取得できる制度として、パパママ育休プラス制度があります。

(2)介護休業給付を受けられない

雇用保険未加入の場合、介護休業給付を受けることができません。

介護休業給付とは、介護休業を取得し、その他一定要件を満たした場合に、支給されるお金です。
介護休業は「ケガや病気、もしくは身体・精神の障害などの理由で要介護状態にある家族」を介護する場合に、一定要件を満たすと取得できる休暇です(育児介護休業法第11条)。

(3)失業手当(基本手当)の給付を受けられない

雇用保険未加入の場合、失業手当(基本手当)の給付を受けることができません。

基本手当とは、失業した人が、失業中の生活の心配をすることなく、就職活動をし、再就職できるようにするために支給されるお金です。
給付日数は原則として、90~360日です。
給付日数は、離職事由(自己都合退職か、会社都合退職か等)や被保険者期間等により異なります。

基本手当があるのとないのとでは、再就職までの生活費の負担なども大きく異なります。

(4)就職促進にかかわる給付を受けられない

雇用保険未加入の場合、再就職にかかわる次のような給付を受けることができません。

  • 再就職手当
  • 就業促進定着手当
  • 就業手当
  • 常用就職支度手当

(4-1)再就職手当

再就職手当とは、「安定した職業」に早期に就職した場合に給付されるお金です。
「安定した職業」とは、雇用保険の被保険者となる場合や、事業主となって、雇用保険の被保険者を雇う場合などをいいます。
基本手当の残りの支給日数が所定給付日数の3分の1以上ある状態で、安定した職業に就職し、一定の要件に該当する場合に再就職手当が支給されます。

(4-2)就業促進定着手当

就業促進定着手当とは、再就職手当の支給を受けた方が、引き続きその再就職先に6ヶ月以上雇用されたものの、「以前の仕事に比べて賃金が下がった」場合に、一定条件を満たせば給付されるお金です。
「以前の仕事に比べて賃金が下がった」場合とは、「再就職先で6ヶ月の間に支払われた賃金の1日分の額」が、「雇用保険の給付を受ける離職前の賃金の1日分の額(賃金日額)」に比べて下がっていることをいいます。

(4-3)就業手当

就業手当とは基本手当の受給資格がある人が、「再就職手当の支給対象とならない形態」(臨時のパートやアルバイトなど)で就業した場合に支給されるお金です。
就業手当を受給するためには、基本手当の支給残日数が「所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上ある」必要がある他、一定の条件を満たす必要があります。

(4-4)常用就職支度手当

常用就職支度手当とは、一定の受給資格者の内、障害があるなど、就職が困難な方が安定した職業に就いた場合に、一定の条件を満たすと支給されるお金です。

雇用保険に入っているか確認する方法

ここまでご説明したように、雇用保険未加入だと受けられない給付がいくつもあります。
そこで、「ご自身が雇用保険に加入しているのかどうか」を確認する方法として、次のようなものがあります。

  • 給与明細で雇用保険の控除項目があるか確認する
  • 「雇用保険被保険者証」または「雇用保険資格取得等確認通知書」を確認する
  • ハローワークに問い合わせる

これらについてご紹介します。

(1)給与明細で雇用保険の控除項目があるか確認する

基本的に雇用保険料は、給料から天引きされています。
そのため、毎月の給与明細書の控除項目に「雇用保険」の記載があれば、雇用保険に加入していると推測されます。
ただし、給与明細書の控除項目に雇用保険の記載があっても、実は雇用保険未加入(会社が雇用保険の加入手続きをしていない)という、ブラック企業もあるため注意が必要です。

他方で、給与明細書の控除項目に雇用保険の記載がない場合は、雇用保険未加入の可能性が高いです。

(2)「雇用保険被保険者証」または「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書」を確認する

雇用保険に加入すると、ハローワークから事業主を通じて「雇用保険被保険者証」と「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)(※)」が交付されます。
※2003年5月以降に雇用された場合

【雇用保険被保険者証】

そのため、「雇用保険被保険者証」または「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」を確認すれば、雇用保険に加入しているかどうか確認できます。
ただし、雇用保険被保険者証は、退職するまでは会社が保管しており、労働者本人は所持していないことも多いです。

参考:雇用保険の手続きはきちんとなされていますか?~被保険者記録に誤りがないことを確認するために~|厚生労働省

(3)ハローワークに問い合わせる

雇用保険に加入しているか確実に確認したいという方は、ハローワークに問い合わせすれば雇用保険未加入かどうか確認することができます。

具体的には、

  • 「雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票」(ハローワークで交付またはダウンロードして印刷)に必要事項を記入の上、
  • 本人確認書類を添えて
  • 管轄のハローワークに提出します(郵送可)

電話での問い合わせはできません。

参考:雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票|ハローワークインターネットサービス

雇用保険未加入とわかったときの対処法

では、雇用保険の加入条件を満たしているにもかかわらず、雇用保険未加入であると判明したときは、どうしたらよいでしょうか。
雇用保険未加入には、次のような対処法があります。

  • 雇用保険への加入を会社に要求する
  • 雇用保険料をあとから納付する

これらについてご紹介します。

(1)雇用保険への加入を会社に要求する

雇用保険への加入義務があるにもかかわらず、会社があなたのために雇用保険の加入手続きをしていなかった場合は、会社に、雇用保険への加入手続きをするよう強く要求します。
単純に会社が雇用保険への加入を忘れている場合もあるため、ブラックな会社ではない限り、基本的に加入の要求に対応してくれるでしょう。

(2)雇用保険料をあとから納付する

雇用保険に加入すべき対象であったことがハローワークによって確認された場合には、遡って雇用保険に加入して、雇用保険料を後納するか検討しましょう。

というのも、次のように雇用保険の加入期間(被保険者期間)が、失業手当の受給条件や受給期間に影響してくるからです。

(2-1)失業手当の受給条件には、雇用保険の加入期間が関係していることに注意

失業手当を給付するためには、原則として、「離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算12ヶ月以上あること」(※)が必要です。
※特定受給資格者または特定理由離職者については、「離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6ヶ月以上」である場合も給付の条件を満たします。

退職の直前に雇用保険未加入であることがわかったときは、雇用保険を後納しないままだと失業手当を受けられないことがあります。
しかし、雇用保険料を後納することで失業手当を受けることが可能になることがあるのです。

(2-2)雇用保険の加入期間で失業手当の受給期間が異なることに注意

雇用保険の加入期間などによって、失業手当の受給期間は異なります。
例えば、一般的な自己都合退職の場合、失業手当の受給期間は次のようになります。

被保険者であった期間
年齢 1年未満 1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
65歳未満 90日 120日 150日

(2-3)いつまで遡って雇用保険に加入できる?

このように雇用保険の加入期間が、失業手当の受給条件・受給期間に関係してくることから、「いつまで遡って雇用保険に加入できるか」が問題となります。
2010年9月末までは、2年までしか遡って加入できませんでした。
しかし、2010年10月1日以降に離職した場合は、給与明細・源泉徴収票などで雇用保険料が給料から天引きされていたことが書面で確認できる場合には、2年を超えて、雇用保険に加入できるようになりました。

雇用保険に遡って加入する場合、具体的にいくらの雇用保険料を納めなければならないのか、そもそも遡って加入した方が得をするのかどうかはハローワークや専門家にご確認ください。

参考:基本手当について|ハローワークインターネットサービス
参考:雇用保険に加入していますか~労働者の皆様へ~|厚生労働省
参考:~雇用保険の加入手続漏れの是正期間が変わります~|厚生労働省

会社が雇用保険の加入手続をしてくれずに失業手当をもらえない場合は?

雇用保険への加入義務があるのもかかわらず、会社が雇用保険未加入のままにしていた場合には、会社へ、損害賠償請求することも検討しましょう。
損害賠償請求の手続きは、複雑であり個人では対応が難しいため、法律の専門家である弁護士に相談しましょう。

【まとめ】雇用保険未加入だと失業手当などがもらえない

この記事のまとめは次のとおりです。

  • 「雇用保険」とは、労働者が失業した場合などに一定額のお金がもらえる保険。
    会社は、労働者の加入希望の有無にかかわらず、条件を満たしている労働者について雇用保険への加入手続きをしなければならない。
  • 雇用保険法により、被保険者とならない者(適用除外)の条件にあたらない限り、原則として全ての労働者が雇用保険に入ることとされている。
  • 雇用保険未加入の場合、育児休業給付・介護休業給付や、失業手当などの受給ができないという問題が生じる。
  • 雇用保険未加入かどうかを確認する方法として、給与明細で雇用保険の控除項目があるか確認するなどの方法がある。
  • 雇用保険未加入と分かったときの対処法として、雇用保険への加入を会社に要求することや、雇用保険料をあとから納付することなどがある。

労働者を守る雇用保険に未加入であると、さまざまな不利益が生じます。
それだけに、雇用保険に未加入かもしれないと思うと、不安になってしまいますよね。
そんなときは、ハローワークに確認することなどで、雇用保険に加入していることを確認するようにしましょう。
また、雇用保険未加入が原因でさまざまな困りごとに直面してしまっている場合には、労働問題に詳しい弁護士に相談するのもひとつの方法です。

ハローワークへの相談先について、詳しくはこちらをご覧ください。

参考:全国ハローワークの所在案内|厚生労働省

この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

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