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介護すると相続で多く遺産をもらえる?自分と配偶者のケースをQ&Aで解説

作成日:
ito-d

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

「同居して、ずっと家族で介護してきた父が亡くなった。それでも、他のきょうだいと同じだけしか相続できないなんて、不公平では?」

亡くなった親の遺産を相続する場合、民法上、兄弟姉妹の法定相続分は平等です。
しかし、自分だけが親の介護をしており、他のきょうだいは何も協力してくれなかった場合など、不公平に感じるケースは少なくないでしょう。
また、配偶者が自分の親の介護をしてくれていた場合には、配偶者にも、自分の親の相続について何らかの権利が認められないものかと思うかもしれません。

実は、民法には「寄与分」や「特別寄与者」といった制度があり、場合によっては法定相続分より多くの遺産をもらえたり、相続人でない人が、遺産から「特別寄与料」をもらったりすることができます。

ただし、「寄与分」や「特別寄与者」が認められるためのハードルは高いといえるでしょう。

自分で自分の親を介護したケースと、配偶者が自分の親を介護したケースについて、遺産を(多めに)もらえるのかどうか、Q&A形式で解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 重光 勇次

弁護士 重光 勇次

アディーレ法律事務所

同志社大学、及び、同志社大学法科大学院卒。2009年弁護士登録。アディーレに入所後、福岡支店長、大阪なんば支店長を経て、2022年4月より商品開発部門の統括者。アディーレがより「身近な法律事務所」となれるよう、新たなリーガルサービスを開発すべく、日々奮闘している。現在、神奈川県弁護士会所属

生前親の介護をしたら、相続で多めにもらえる?

実家で父親と同居し、父親の介護をしてきました。
しかし、相続についての話し合いで、何の援助も協力もしてこなかった兄が、「法定相続分どおり均等に相続しよう」と言ってきたのですが、納得できません。
私が多めにもらえなければ不公平だと思うのですが…

確かにお気持ちはわかります。
しかし、法律上は、同居して介護をしていたからといって、必ずしも多めに遺産をもらえるわけではありません。
ただ、民法には、被相続人(亡くなった人)の財産の維持または増加に寄与した相続人に対して「寄与分」を認めることで、相続における公平を確保しようとする制度があります(民法904条の2第1項)。

寄与分とは何ですか?

A 寄与分とは、被相続人に対する相続人の貢献を評価し、遺産から相続分よりも多くの財産を取得させる制度です。
具体的には、遺産から、その人が貢献したと考えられる分(寄与分)を控除して各相続人の相続分を算出し、その人の相続分に寄与分を加えた額を、その人の相続分とします。

介護をしたことは、寄与分があるといえるのでしょうか?

A 療養看護型の寄与行為に当たる可能性があります。
ただし、寄与行為の結果、被相続人の財産が維持された、または増加したといえる関係が必要です。
例えば、介護施設を利用せず、自宅で親族が介護した結果、被相続人の財産から介護施設の利用料金などを支出する必要がなかった場合などです。
さらに、その寄与が「特別」である必要もあります。

「特別」とはどういう意味ですか?

A 例えば、親子は互いに扶養義務を負っているため、親の介護や身の回りの世話をするのは、法律上当然の義務でもあります。
そこで、通常期待される程度の義務の範囲を超えるような、財産の維持・増加に特別な貢献をした、といえる内容であることが必要とされるのです。

遺産相続の際、他の相続人とどうやって話し合えば良いですか?

A 寄与分を認めると他の相続人の相続分が減ることになるため、利害関係が対立し、なかなか寄与分を認めてもらえないことがあります。
寄与分を主張する根拠をしっかりと示し、証拠となり得る資料を見せれば、納得してもらえる場合もあります。

証拠となり得る資料は、例えば次のようなものです。

  • 要介護認定通知書
  • 医師の診断書
  • 医療機関や薬局の領収書
  • 介護日誌
  • (介護ヘルパーの利用料金など金銭を援助した場合)当該利用明細書

相続人同士で話し合いがまとまらなかったらどうすれば良いですか?

A 家庭裁判所に、「寄与分を定める処分調停」を申立てることになります。
調停も、話し合いによる合意を目指す場ですが、特別の寄与といえるだけの証拠が重要となりますので、事前に準備するようにしましょう。
参考:寄与分を定める処分調停|裁判所

調停でも話し合いがまとまらなければ、どうなりますか?

A 自動的に審判手続きが開始されます(家事事件手続法272条第4項)。
(ただし、寄与分を定める処分調停のみを申立てていた場合、遺産分割審判の申立てをしなければ不適法として却下されることになります。)
審判では、裁判所が寄与分を認めるかどうか、認めるとして寄与分はいくらになるのかなどについて判断します。

【コラム~寄与分の主張には期間制限がある?~】

民法改正(2023年4月1日施行)により、寄与分の主張には10年間の期間制限が設けられることとなりました。
つまり、相続開始(被相続人の死亡時)から10年が経過すると、原則として相続人が寄与分について主張することができなくなります。
(以前は期間制限が設けられておらず、相続開始からどれだけ時間が経過していても、遺産分割協議や調停の際に寄与分を主張できることになっていました。)
また、この改正は、被相続人が2023年3月31日以前に亡くなった相続についても適用される点に注意が必要です(※経過措置として、施行時から5年の猶予期間が存在しています)。

10年は長いと感じるかもしれませんが、遺産について相続人同士で何も話し合うことなく時間だけが経過してしまったケースは少なくありません。
その間に相続人の誰かが亡くなってしまうなど、相続関係が複雑化してしまうリスクもありますので、寄与分を主張したい場合にかぎらず、相続については早めに話し合っておくことをおすすめします。

配偶者が自分の親を自宅介護したら、遺産をもらえる?

父親が亡くなる2年ほど前から、ほとんど寝たきりになり要介護2の認定を受け、妻が在宅介護をしていました。妻の献身を考えれば、妻も遺産をもらえるべきではないでしょうか?

奥様は、あなたの父親の法定相続人ではありませんので、あなたの父親の遺産を相続することはできません。
しかし、法定相続人以外の一定の親族が、介護などにより、被相続人の財産の維持・増加に寄与したとされれば、「特別寄与者」として、遺産から「特別寄与料」をもらうことができます(民法1050条第1項)。

特別寄与者とは何ですか?

A 特別寄与者とは、相続人に認められる寄与分とは異なり、本来相続人ではないものの、被相続人に対して無償で介護などの労務の提供をした親族に認められる、相続人に対して「特別寄与料」を請求できる人のことです。
(相続人ではないものの、親族ではある必要があり、単なる友人・知人が介護をしていたとしても、「特別寄与者」として認められることはありません。)
そして、そういった介護などの行為が、被相続人の財産の維持・増加に貢献し、特別の寄与といえることが必要とされています。

特別の寄与は、どのような場合に認められるのでしょうか?

A 「特別の寄与」とは、「その者の貢献に報いるのが相当と認められる程度の顕著な貢献があったこと」を意味するとされています。
実務では、かなりの負担を要するものであることが必要と考えられており、次のような程度では、「特別の寄与」として認められないでしょう。

  • 年に数回程度の面会
  • 月に数回程度の見舞いや、診察・入退院時の立会い
  • 手続書類の作成

また、葬儀の準備など被相続人の死亡後の行為も、被相続人への貢献とは認められません。

参考:静岡家庭裁判所令和3年7月26日審判

相続人が特別寄与料の支払いを認めず、話し合いがまとまらなければ、調停を申立てることになるのですか?

A はい。合意が困難な場合には、特別寄与料の支払いを請求する人が、家庭裁判所に「特別の寄与に関する処分調停」を申立てることができます。
ただし、次の期間制限があるため、話し合いが紛糾するようであれば、早期に調停を申立てる必要があります(民法1050条第2項)。

  • 相続の開始及び相続人を知った時から6ヶ月
  • 相続開始の時から1年

なお、調停が不成立となった場合には、自動的に審判に移行します。

【まとめ】寄与分も特別寄与者も、認められるためのハードルは高め

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 自身が相続人であり、被相続人(亡くなった人)の財産の維持または増加に寄与したと認められれば、「寄与分」として遺産を多めにもらえる可能性がある
  • 相続人でなくても、親族であり(例:相続人の配偶者など)、被相続人の生前に介護などをしていた人は、「特別寄与者」として相続人に対して「特別寄与料」を請求できる可能性がある
  • 当事者 全員が合意すれば、「寄与分」や「特別寄与者」について認めることは可能
  • 相続人間の話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所に調停を申立てることになる
  • 家庭裁判所における調停や審判で「寄与分」や「特別寄与者」が認められるためのハードルは高いのが現状

「寄与分」や「特別寄与者」が認められるためのハードルは高いと考えられるうえ、「特別寄与者」は新設されたばかりの制度ですので、ご自身で、「自分の場合には寄与分や特別寄与料が認められそうか」を判断することは容易ではありません。
法定相続分どおりに相続することに納得がいかず、寄与分や特別寄与料を主張したい場合など、遺産相続でお悩みの場合は、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

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なお、ご依頼いただく内容によって、損はさせない保証の内容は異なりますので詳細はお気軽にお問い合わせください。

※以上につき2023年8月時点

遺産相続でお困りの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください 。

この記事の監修弁護士
弁護士 重光 勇次

弁護士 重光 勇次

アディーレ法律事務所

同志社大学、及び、同志社大学法科大学院卒。2009年弁護士登録。アディーレに入所後、福岡支店長、大阪なんば支店長を経て、2022年4月より商品開発部門の統括者。アディーレがより「身近な法律事務所」となれるよう、新たなリーガルサービスを開発すべく、日々奮闘している。現在、神奈川県弁護士会所属

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