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本人が慰謝料を支払えない場合、親族に支払い義務はあるのか?

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リーガライフラボ

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

今回採り上げる法律相談はこちら―――。

先日、息子の交際相手だった方の親御さんが怒鳴り込んできました。私たち親は、息子がその女性と結婚するものだと思って顔合わせなどもしていたのですが、息子は別の女性とも交際していたようで、婚約相手に浮気がばれて婚約破棄したという状況らしいんです。驚いて息子を問い詰めると、浮気をしていたのも息子から別れを切り出したのも事実のようです。ただ、お金がないので、手切れ金というのか、慰謝料は支払えない、と……。
息子は成人していますが、親としてこの問題を放置していいものやら決めかねています。そこで、私たち親に慰謝料の支払い義務があるのかを教えていただけませんか。

今回のご相談において、息子さんは浮気をして婚約破棄をしていますから、法律上「債務不履行」「不法行為」をしたことになります。

したがって、息子さんは、元婚約者に対して慰謝料を支払わなければならない可能性が高いでしょう。

もっとも、息子さんの両親などの親族が慰謝料の支払義務を負うかどうかは別問題で、基本的に親族は慰謝料の支払い義務を負いません。

この記事では、次のことについて弁護士が解説します。

  • 婚約破棄の慰謝料について
  • 婚約破棄をした本人の親族は原則慰謝料の支払い義務はないこと
  • 例外的に親族が慰謝料の支払い義務を負うケース

「不法行為」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご確認ください。

民法709条とは?損害賠償請求について具体的事例でくわしく解説

「婚約破棄」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご確認ください。

この記事の監修弁護士
弁護士 池田 貴之

法政大学、及び学習院大学法科大学院卒。アディーレ法律事務所では、家事事件ドメイン(現:慰謝料請求部)にて、不貞の慰謝料請求、離婚、貞操権侵害その他の男女トラブルを一貫して担当。その後、慰謝料請求部門の統括者として広く男女問題に携わっており、日々ご依頼者様のお気持ちに寄り添えるよう心掛けている。第一東京弁護士会所属。

婚約破棄における慰謝料

婚約とは、男女が結婚の約束をすることをいい、契約の一種です。

婚約破棄自体は、一方的な申し出で行うことができますが、婚約破棄されたからといって、必ずしも「精神的苦痛を受けた」として、慰謝料を請求できるとは限りません。
婚約破棄は様々な理由でなされますが、正当な理由がある場合には、債務不履行または不法行為による損害賠償を請求することはできないとされているためです。

例えば、分かりやすく、肉体関係を伴う浮気をされた側が、婚約破棄したケースを考えてみましょう。
婚約破棄されたからといって、浮気をした側が、婚約破棄をした浮気をされた側に対して、「精神的に傷ついた!」といって損害賠償を請求できると考えるのは妥当ではありませんね。

このような場合には、婚約破棄には正当な理由があると考えられますので、損害賠償を請求することはできません。

冒頭のご相談内容でいえば、浮気された女性の側から婚約破棄しても、女性側が慰謝料を支払うという話には基本的になりません。

他方、浮気をした男性側から婚約破棄をすれば慰謝料の話になるということです。

婚約破棄で支払うことになる損害賠償の内訳

このように、不当に婚約を破棄した場合、元婚約者から慰謝料などの損害賠償を請求される可能性があります。

損害賠償の内容は、財産的損害と精神的損害の2種類に分けられますので、それぞれについて説明します。

(1-1)財産的損害の損害賠償請求

財産的損害とは、婚約後に結婚するための準備をしてかかった費用などのことをいいます。

たとえば、次のようなものが挙げられます。

  • 結婚指輪の購入費
  • 式場、披露宴のキャンセル料
  • 新婚旅行のキャンセル料
  • 新居の購入費・家具の購入費

どういった内容の損害が認められるかは、ケースバイケースです。損失が生じていたとしても、婚約破棄と損失との間に因果関係がなければ、不当に婚約を破棄した相手方に対して請求することはできません。

(1-2)精神的損害の損害賠償請求

精神的損害とは、不当な婚約破棄によって被った精神的苦痛に対する慰謝料のことをいいます。

慰謝料については、次のような様々な事情が考慮されますが、数十万~100万円程度となることが多いようです。

  • 婚約破棄に至った経緯
  • 婚約破棄の理由
  • 婚前交渉の有無(妊娠・堕胎・出産の有無)
  • 交際期間の長短
  • 結婚退社(寿退社)の有無

ただし、婚約破棄の理由の不当性、それによって相手方が被った精神的損害を重視して、200万~300万円程度の高額の慰謝料が認められる場合もあります。

婚約破棄の慰謝料に加えて、肉体関係を伴う浮気(不貞行為)をして婚約破棄に至った場合には、浮気についての慰謝料を請求される可能性もありますので、慰謝料の額は高額になる傾向にあります。

原則、親族には慰謝料の支払い義務は無い

法律上、不法行為または債務不履行をした本人が慰謝料を支払わなければならないのは、道義上も当然といえるかもしれません。

しかし、今回のご相談で問題となっているのは、成人した子どもの親が慰謝料の支払い義務を負うのかどうかです。

冒頭でご説明したとおり、原則として本人以外の人が慰謝料の支払い義務を負うことはありません。
したがって、相談者の方が自らの価値観としてお金を支払うのであればともかく、法律上は慰謝料を支払う必要はありません。

ただし、ご相談内容と異なり、例外的に親族が保証人になっている場合や子どもに責任能力がない場合には、保証人となっている親族や親が支払わなければなりません。

では、例外的場合について、次で詳しく解説していきましょう。

(1)親族が慰謝料を支払う例外のケース1:親族が保証人になっている

たとえば雇用契約における身元保証契約などで、親族が保証人になっている場合には、親族が損害賠償義務を負うことがあります。

また、次のような事例でも親族が支払い義務を負うことがあります。

婚姻期間中に浮気をしたAさん(仮名)は、配偶者であるBさん(仮名)から200万円の慰謝料の支払いを求められたものの、一括で支払うことができなかったため、分割払いにしてくれるようにBさんに頼みました。Bさんは、Aさんの親族のCさん(仮名)が連帯保証人になることを条件として、月々10万円の分割払いに応じました。Aさん、Bさん、Cさんは、それぞれ合意内容を書面にました。

この場合、Aさんの連帯保証人となったCさんは、Bさんから慰謝料の支払いを求められたら、断ることができません。

このように契約上、親族が損害賠償義務を負っている場合には、親族は慰謝料を支払わなければなりません。

もっとも、親族だからといって保証人にならなければならない義務はありません。保証人になることは断ることができます。保証人になると責任を負うことになりますので、保証人になるかどうかは、慎重に判断するようにしてください。

また、保証人になるためには、法律上の条件を満たした書面に自ら署名することが必要であり、無断で作成された契約書があったとしても、それに基づいてお金を支払う必要はありません。

(2)親族が慰謝料を支払う例外のケース2:本人に責任能力がない

被害者に損害を負わせたのが12歳程度以下の子どもである場合には、その親権者などが慰謝料の支払い義務を負うことがあります。 

民法714条1項では、責任無能力者の監督義務者等の責任が定められています。

前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

引用:民法714条1項

これは、12歳程度以下の子どもに責任を負わせるのは妥当でなく、一方で被害者の損害回復が必要とされる観点から、その子どもの監督責任を負う親権者に対して、その責任を負わせる趣旨の規定です。

親権者等には、その監督すべき子どもが他人に危険が及ばないよう注意して行動するよう日頃から指導監督する義務がありますので、その義務を怠った場合には、慰謝料を含め損害賠償をしなければならないとされています。

ただし、子どもが誰かに危害を加えて損害が発生したからといって、直ちに親権者が損害賠償義務を負うわけではありません。子どもに対して適切な監督義務を果していたといえる場合などでは、損害賠償義務を負うことはありません。

冒頭のご相談内容では、そもそもご相談者の息子さんは成人していますので、当然本人が責任を負うべきとされます。

慰謝料の支払い義務がなくても親族が立て替えることは可能?

原則として、ご相談内容について、法律上親族に支払い義務はないことをご説明しました。

では、本人に慰謝料の支払い義務が認められた場合に、親族が本人の代わりに払ってあげることはできるのでしょうか。

もちろん、親族として立替払いをすることは可能です。もっとも、相手方の言い分だけを鵜呑みにするのではなく、加害者とされる本人の言い分もしっかり聞くことが大切です。

また、お金を支払うとしても、相手方の言い値をそのまま支払うのではなく、一度弁護士等に慰謝料の相場を尋ねてみるのが良いでしょう。

相手方の請求が度を越えている場合には、弁護士に対応を任せるのも1つの方法です。場合によっては、脅迫罪や強要罪が成立することもあるでしょう。

【まとめ】本人が慰謝料を支払えなくても原則親族に支払い義務はない

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 成人した人が誰かに精神的苦痛を負わせたとしても、原則としてその親族に慰謝料支払い義務はない
  • 例外的に、親族が保証人となった場合などには、慰謝料の支払い義務を負うこともある

相手方から婚約破棄の慰謝料を請求されてお悩みの方は、すぐに相手方に回答することはせず、婚約破棄の慰謝料を扱っている弁護士に相談することをおすすめします。

この記事の監修弁護士
弁護士 池田 貴之

法政大学、及び学習院大学法科大学院卒。アディーレ法律事務所では、家事事件ドメイン(現:慰謝料請求部)にて、不貞の慰謝料請求、離婚、貞操権侵害その他の男女トラブルを一貫して担当。その後、慰謝料請求部門の統括者として広く男女問題に携わっており、日々ご依頼者様のお気持ちに寄り添えるよう心掛けている。第一東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2024年4月時点。拠点数は、弁護士法人アディーレ法律事務所と弁護士法人AdIre法律事務所の合計です。

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