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【ケース別】一人っ子の遺産相続の流れや注意点を分かりやすく解説します

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リーガライフラボ

誰しも大切な家族が亡くなってしまうことを想像したくはありませんが、残念ながら生きている限りいつか訪れ、向かい合わなければならないことです。

家族が亡くなると、悲しみながらも様々な手続きに追われる毎日となりますが、相続手続も忘れずに対応しなければなりません。

「一人っ子だから相続は関係ない」
「母親が財産を全部相続するから、自分には関係ない」

「亡くなった疎遠な父親は借金を抱えていたと聞いているし、財産はいらないから相続は関係ない」

このように考えて何も手続きしない方もかたもいるかもしれません。しかし、実際にはこれらの理由は「相続が関係ない」理由にはなりません。関係ないと放置していると、相続人として借金の返済を迫られたり、思わぬトラブルが生じかねません。

第1次ベビーブーム(1947~1949年)、第2次ベビーブーム(1971~1974年)を過ぎ、令和元年には合計特殊出生率(15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの)は1.36となっており、一人っ子世帯は日本における平均的な家庭となっています。一人っ子の相続は珍しいものではなく、むしろ日本各地で「一人っ子の相続」が起きていることになります。

今回は、一人っ子の相続に関し、次のことについて弁護士がご説明します。

  • 相続とは
  • 【ケース別】一人っ子の相続について
  • 財産がなくても相続するのか

参照:令和3年度出生に関する統計の概況|厚生労働省

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

相続とは

相続とは、亡くなった人(被相続人)と一定の関係にある人(相続人)が被相続人の亡くなった時点で持っていた財産や負債をすべて受け継ぐことです。

父親・母親・子どもの3人家族で、父親が亡くなった場合、母親とその子どもが父親の相続人となります。被相続人の遺産の相続分は法律で決められており、これを「法定相続分」と言います。父親が亡くなり、母親と子どもの計2人が相続人とある場合、それぞれの法定相続分は2分の1です。ただ、相続人の話し合いにより法定相続分とは異なる相続分とすることもできます。

一人っ子の相続

相続は、被相続人が亡くなったら必ず発生し、誰が相続人となるかは法律で決められています。

一人っ子であっても、被相続人の遺産を全部相続するとは限りません。相続人が誰か、何人いるかによって全部相続しないこともあります。

父親を被相続人として、ケース別に説明します。

(1)母親が存命しているケース

父親が亡くなり、母親と一人っ子のケースでは、母親と子どもが相続人となり、それぞれの相続分は2分の1ずつとなります。

(2)母親がすでに亡くなっているケース

父親が亡くなったときに、すでに母親も亡くなっている場合には、相続人は一人っ子のみで、子どもがすべて相続します。

(3)実は別に子どもがいるケース

父親が再婚していて、前婚の時に子どもがいることがあります。また、父親が知らぬ間に婚外子をもうけていて、父親が亡くなって相続手続をしていてそれに気づくことも稀ですがあります。

そのような場合には、現在結婚している配偶者との間の子どもだけでなく、前婚の子どもと、婚外子が認知されていればその婚外子も相続人になります。法定相続分は、配偶者が2分の1、子どもが2分の1ですので、子どもが複数いる場合には、2分の1をさらに分割します。
例えば前婚で子どもが1人おり、配偶者との間に子ども1人で計2人であれば、子どもは4分の1ずつ相続することになります。元配偶者(元妻)は相続人ではありません。

両親は仲が良かったので、父親に婚外子がいるとは考えられないのですが…。

遺産相続手続では、相続人が誰なのかを特定する必要があります。例えば、不動産を相続して登記を移転しようとするときには、手続上、あなたや母親が相続人であること、他に相続人がいないことを確認する必要があるのです。他に相続人がいないことを確認するために、被相続人が亡くなった時から生まれたときまでさかのぼって戸籍を集めます。

財産を持っていなくても相続する?

親から相続するのは価値のあるプラスの財産だけではありません。被相続人が不動産を保有していれば、それが市場価値のないようなものであっても相続します。さらに、マイナスの財産、つまり借金を返すべき義務も相続することになります。

ただし、相続は被相続人の死亡によって当然に発生しますが、その相続を受け継ぐかは相続人が自由に決めることができます。

すべて相続するときは、「単純承認」をします。

法律で定められた一定の条件にあたると、単純承認をしたものとみなされますので(これを「法定単純承認」といいます)、通常、特に単純承認の手続は必要ありません。

一人っ子とはいっても、必ず相続しなければならないわけではありません。借金の方が多いケースでは、「相続放棄」をして遺産を一切相続しないこともできます。また、借金もあるけど価値のある財産もある場合には、価値のある財産と同じ金額だけ借金を受け継ぐ「限定承認」をすることもできます。

単純承認、相続放棄、限定承認について説明します。

(1)単純承認

すべて相続すると決めたのであれば(これを「単純承認」といいます)、財産名義を変更したり、借金を支払ったりします。

ただし法律が定めた一定の要件にあたる次のような行為をした場合には、自動的に単純承認したとみなされます(これを「法定単純承認」といいます)。法定単純承認をした後に親に借金があったことが分かり、「借金を返済できない、やはり相続をしたくない」と思っても時すでに遅しです。

ですので、親に借金があると考えられるときは、民法921条に定められた、次のような法定単純承認とされる行為を行わないように注意しましょう。

  • 相続人が相続財産を処分したとき。ただし、保存行為及び民法602条に定める期間(建物を貸す場合は3年)を超えない賃貸をすることは別。
  • 相続人が相続の開始があったことを知ってから3ヶ月以内に、限定承認又は相続放棄をしなかったとき。
  • 相続人が、限定承認又は相続放棄をした後に、遺産を隠したり、私的にこれを消費したり、悪意をもって遺産を相続財産の目録に記載しなかったとき(例外あり)。

参考:民法|e-Gov法令検索

特に、財産の処分には注意が必要です。例えば、遺産に価値のある車があって、相続人がそれを買取り業者に売却してしまった場合には、相続財産を処分したとして、単純承認したとみなされます。あとで相続財産に借金があることが分かっても、相続放棄することはできません。

そうなんですね…。父親が持っていた、とても売れないような遺品を母親と形見分けしたのですが、それは処分にあたるのでしょうか。

一般的に経済的な価値のない形見分けは、「処分」にあたらないと考えられています(東京地方裁判所平成21年9月30日)。しかし、どのような行為が法定単純承認にあたるのかの判断は、専門的な知識が必要なこともありますので、事前に弁護士などにご相談ください。

(2)相続放棄

相続したくない場合には、相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に「相続放棄」を行います(民法938条、915条1項)。ただし、相続財産の調査に時間を要するなどの場合には、3ヶ月の熟慮期間を延長することができます。

借金だけが遺されたケースでは、相続放棄を選択する方が多いです。
相続放棄をすると、初めから相続人でなかったものとみなされる(民法939条)ため、マイナスの財産だけでなくプラスの財産も相続しないことになります。

ただし、相続放棄をしても、亡くなった方の借金について保証人となっている場合には、保証人として返済する義務がありますので注意が必要です。

父親には借金しかなかったので、相続放棄しようと思います。母親と父方の祖父母が存命なのですが、その場合に気を付けた方がいいことはありますか。

あなたが相続放棄した場合、あなたは初めから相続人でなかったことになりますので、次の順位の相続人が相続することになります。次の順位の相続人は父方の祖父母で、相続分は、母親が3分の2、祖父母が6分の1ずつです。

もし本当に借金しかないのであれば、他の相続人も相続放棄を検討した方がいいので、母親や父方の祖父母などと相談するとよいでしょう。

(3)限定承認

価値のある財産の限度で借金を相続することを「限定承認」といいます。

限定承認をするには、相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に相続人全員が共同して裁判所に限定承認を申述します(民法923条、924条、915条1項)。ただし、相続財産の調査に時間を要するなどの場合には、3ヶ月の熟慮期間を延長することができます。

限定承認は、相続人全員が共同して手続きを行う必要があること、相続放棄でなくあえて限定承認をすべきケースが少ないことなどから、実務ではほとんど利用されていません。借金を受け継いでも残したい一定の財産があるなどの場合に採られる例外的な手続きと位置付けられます。

【まとめ】一人っ子でも遺産の内容によっては慎重に相続するかどうかを判断する必要あり

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 相続とは、亡くなった人(被相続人)と一定の関係にある人(相続人)が被相続人の亡くなった時点で持っていた財産や負債をすべて受け継ぐこと
  • 父親が亡くなり、母親と一人っ子のケースでは、母親と子どもが相続人となり、それぞれの相続分は2分の1ずつ
  • 父親が亡くなり、母親もそれ以前に亡くなっており、一人っ子のケースでは、一人っ子がすべて相続する
  • 借金が残されていることもあるので、法定単純承認となるような行為をとらないように注意する。法定単純承認となった場合、あとで「相続放棄したい」と言っても認められない。
  • 遺産は借金だけで、相続したくない場合には、相続放棄すれば初めから相続人でなくなるので、借金を受け継ぐことはない
  • 相続放棄すると他の相続人の相続分が増えたり、他の親族が相続人となったりする。他の相続人が相続放棄という方法を知らなければ、伝えてあげるのもよい。

家族が亡くなると、悲しむ間もなく様々な手続きに追われ、大変忙しくなります。

相続手続きも、借金が多い場合には相続放棄を検討する必要がありますが、相続の開始を知った時から原則3ヶ月以内に行う必要があります。

仕事や日々の用事を行いながら、必要な書類を揃えたり、書類を準備するのは労力とストレスがかかる作業です。

そこで、相続放棄を検討している方は、一度弁護士に相談することをお勧めします。

アディーレ法律事務所では、相続放棄に関するご相談は何度でも無料ですので、フリーコール「0120-406-848」までご連絡ください。

アディーレ法律事務所に相続放棄をご依頼いただければ、次のことを弁護士が代わりに行います。

  • 戸籍謄本の収集
  • 相続人の調査
  • 裁判所に対して行う相続放棄の申述
  • 裁判所からの照会書に対する対応
  • 相続放棄申述受理通知書の受領
  • 支払いの督促をされている債権者へ相続放棄したことの連絡
  • 後順位相続人へのご連絡およびご説明

これにより、ご依頼者様の負担を減らすことができます。

もし、相続放棄のお手続きが完了しなかった場合(相続放棄の申述が受理されなかった場合)、弁護士費用は、原則として全額返金となりますので、安心してご依頼いただけます。

(※以上につき2022年9月時点)

アディーレ法律事務所では、相続放棄を積極的に取り扱っています。

相続放棄でお悩みの方は、アディーレ法律事務所(フリーコール「0120-406-848」)にご相談ください。

一人っ子であっても相続とは無縁ではいられません。
親がどのような財産を持っているかについて、あらかじめ聞いておいた方がいざというときに慌てなくて済むでしょう。

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

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