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残業代は1分単位で計算される?未払い残業代の請求方法も解説

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たかが1分、されど1分。
ちりも積もれば山となるというように、毎日働いていると、わずかな時間でも積み重なっていくと意外と大きな差を生むものです。

1時間あたりの賃金を基準に残業代が決められるといっても、「30分未満は切り捨て」という扱いを機械的に行うことは、労働基準法違反となります。
なぜなら、労働基準法が「賃金全額払の原則」を採用しているからです。

もらえるものをもらい損ねた日々の積み重ねが、振り返ってみれば大きな損だったということがないよう、1時間にみたない残業時間の取扱いについて押さえておきましょう。

そこで今回の記事では、

  • 1分単位の残業時間の取扱いに関する原則
  • 通達による例外的な運用
  • 最近の裁判例の動向
  • 未払い残業代の請求方法

について、解説いたします。

この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

賃金は1分単位での計算が必要

労働基準法は、その24条1項本文で、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と規定しています。
この条文には、賃金に関する3つの原則が込められています。
それは「通貨払原則」、「直接払原則」、そして、「全額払原則」です。

賃金を1分単位で支給するということが労働基準法で規定されているわけではありません。しかし、賃金は「全額を支払わなければならない。」と明記されている以上、「1分」というわずかな単位であっても、切り捨ててしまうことは全額払原則に反することとなります。
したがって、賃金の一部である残業代についても同様に、1分単位で計算することが必要となります。

切り捨てが許されない一方で、切り上げに関しては、全額払原則に反せず、労働者に対する不利益にもならないため、問題はありません。

残業代は例外的に1ヶ月単位なら30分未満の端数処理をされることも

以上が賃金全般に関する原則的な端数時間の取扱いです。
これに対して、残業代(割増賃金)の端数処理については、その計算の煩雑さから、厚生労働省の通達(昭和63年3月14日基発第150号)によって、以下のような例外的な運用が可能とされています。

(1)1ヶ月単位で計算する場合には30分未満の切り捨てが可能

割増賃金を1ヶ月単位で計算する際、時間外労働、休日労働、深夜労働のそれぞれの時間の合計に1時間未満の端数がある場合は、30分未満の端数は切り捨て、30分以上であれば1時間に切り上げることが可能とされています。

例えば、

  • 1ヶ月の残業時間が31時間20分だった場合、20分を切り捨てて31時間として残業代を計算することができます。
  • 1ヶ月の残業時間が31時間55分だった場合、55分を切り上げて32時間で残業代を計算することができます。

ただしこれは、給与事務の簡便化のための例外的な措置であり、原則的には1分単位の計算が望ましいとされているところです。

(2)1時間あたりの端数は50銭未満なら切り捨てが可能

残業代(割増賃金)を計算するにあたっては、月の給与全体から所定の手当を引いた額を月の所定労働時間で割ることによって「1時間あたりの賃金(基礎賃金)」を求めることになります。
この1時間あたりの基礎賃金に、所定の割増率を乗じ、さらに労働時間を乗じることによって残業代が算出できます。

この1時間あたりの基礎賃金を求める際に、1円未満の端数が生じる場合があります。
そのような場合、50銭未満の端数は切り捨て、それ以上は切り上げて計算するという運用が認められています。

例えば、

  • 1時間あたりの基礎賃金が1100.3円の場合、50銭未満の0.3円を切り捨て1100円で計算することが可能です。
  • 1時間あたりの基礎賃金が1100.7円の場合、50銭以上の0.7円を切り上げ1101円で計算することが可能です。

こちらも、あくまで便宜上の例外的な扱いといえるでしょう。

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15分単位の端数切り捨てが認められなかった裁判例

こうした残業代の端数処理が問題になった最近の裁判例として、名古屋地裁判決平成31年2月14日があります。

これは、医師が、雇用されている会社(A社)を相手取り、未払い残業代の請求を行った事案です。
出退勤の時間計測は、診療室への入退室時刻を時計で確認する方法でした。
所定労働時間を超えた残業時間について、15分未満の時間を切り捨てて給与計算を行っていたことに対し、医師が切り捨てられた時間分の未払い賃金を請求しました。
A社は、「医師の診療行為には裁量権がある」「診療終了時刻の直前に受け付けた患者の診療は、医師の応召義務(※1)に基づくものであり、15分未満の時間の切り捨ては労働基準法違反ではない」と主張しました。
これに対し裁判所は、労働時間の端数処理を行うことは、労働基準法では原則として許されず、一定単位未満の端数の切り捨て処理を行い、実労働時間よりも少ない時間で労働時間を集計することは認められないとし、A社に未払い残業代(10分相当、2133円)の支払いを命じました。

※1 「診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」という医師法19条1項の規定により医師が負う診療義務。

未払い残業代の請求方法

以上のように、残業代を含む賃金については、1分単位での計算が原則ということができます。
残業代が1分単位で計算されていなかったり、15分単位などで切り捨てられたりしていた場合、未払い残業代を請求できる可能性があります。
そのような場合の請求方法について解説いたします。

(1)残業時間に関する証拠を準備する

未払い残業代を請求するには、実際の残業時間と、実際に支払われた賃金の差額を明確にする必要があります。
賃金計算の基礎となる証拠としては、雇用契約書、会社の就業規則、タイムカード、Web打刻、タイムシート、給与明細などが挙げられます。

(2)会社に交渉する

証拠が準備できたら、まずは会社に対して未払い残業代を請求し、勤務を続ける場合は今後の改善要求を申し入れましょう。

一人で請求するのが心細い場合は、労働組合があれば相談してみるのも良いでしょう。団体交渉などに応じてくれる可能性もあります。

勤務を継続する場合、その後の立場が悪くなることが心配になるというケースが多いですが、報復人事は人事権の濫用となる可能性が高いため、毅然と対応するようにしましょう。

詳しくはこちらの記事もご確認ください。

報復人事かも?不当な異動の定義と事例、被害に遭った時の対処法とは

普通に請求しても対応してもらえなかったり、話を聞いてもらえなかったりする場合は、いつ、誰から誰へと郵便が送られたかを内容とともに証明してくれる内容証明郵便で、残業代を請求するのがよいでしょう。請求権の時効消滅を6ヶ月間阻止する効果があります。

(3)労働基準監督署に相談する

会社が請求に応じない場合には、労働基準監督署に相談することが考えられます。
残業代の未払いは労働基準法違反にあたるため、未払いの事実が認められれば、労働基準監督署から会社へ調査や是正勧告などがなされる可能性があります。
ただし、是正勧告には法的強制力がないため、会社が必ず残業代の請求に応じるとは限らず、あくまで支払いに向けた間接的なプレッシャーを与える効果を持つ手段ということになります。

(4)弁護士に相談する

実際の残業時間を証明するための証拠準備や、未払い残業代の計算などをすることによって、確実に未払い残業代を請求するには、弁護士に相談するのがおすすめです。

会社が話し合いに応じてくれない場合は労働審判や裁判に発展する可能性も高いため、さまざまなことを代理で請け負ってくれる弁護士に依頼すると心強いでしょう。

また、個人で請求して相手にされないような場合でも、弁護士が介入したとたんに話し合いに応じてくる企業も珍しくありません。
そのため、裁判をせずに解決したい場合でも、弁護士に相談するのがよいでしょう。

なお、アディーレ法律事務所のウェブサイトには「残業代メーター」という請求可能な残業代を簡単に計算できるページがあります。
ただし、簡易的に計算するものであるため、実際の請求額とは異なることがあります。
請求のイメージをつかむためにお役立てください。

【まとめ】残業代は原則として1分単位で計算される

今回の記事のまとめは以下のとおりです。

  • 労働基準法において、賃金は全額支払わなければならないことが定められており、会社は原則として、賃金を1分単位で支払わなければなりません。
  • ただし残業代については例外もあり、給与事務の簡便化のため、1ヶ月単位の計算なら30分未満の切り捨てが認められることがあります。1時間単位なら50銭未満も切り捨てられる場合があります。
  • これに対し、15分単位の残業代の切り捨てが認められなかった裁判例もあります。
  • 未払い残業代を請求するには、実際の残業時間を証明する証拠を収集し、残業代を計算した上で請求することが必要となります。法的手続きに入る可能性が高い場合はもちろん、そうでない場合についても、弁護士への相談がおすすめです。

未払い残業代の請求でお悩みの方は、アディーレ法律事務所へご相談ください。

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