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労働基準法における残業代の定義とよくある違法な残業ケース10例

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kiriu_sakura

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

「自分の残業代は、法律に従ってきちんと支払われているのかな?」

残業代の支払い義務は、労働基準法に定められており、会社は労働基準法にしたがって残業代を支払わなければなりません。
それにもかかわらず、会社が残業代を支払わないことは、違法です。

この記事を読んでわかること
  • いわゆる残業代の意味
  • 違法な残業ケース10例
  • 未払い残業代がある場合は、過去にさかのぼって会社に請求できる場合がある
この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

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法律上の残業代とは「時間外労働」「深夜労働」「休日労働」の割増賃金のこと

会社は、「時間外労働」「休日労働」「深夜労働」に対して、適切な割増賃金を支払う義務があります(労働基準法37条)。

残業代は、残業の種類(時間外労働・休日労働・深夜労働)ごとに、
「1時間あたりの基礎賃金×割増賃金率×対象の労働時間数」で計算します。

ここからは、残業の3種類、時間外労働・休日労働・深夜労働について説明します。

(1)「時間外労働」とは?

「時間外労働」とは、法定労働時間を超えた労働のことです。
時間外労働をしたときは、会社は労働者に、所定の割増賃金率を加算した賃金を支払わなければなりません(労働基準法第37条)。

法律上定められた労働時間の上限のことを「法定労働時間」といいます。この法定労働時間は、原則として、1日8時間以内・1週40時間以内と定められています。

一方「所定労働時間」という言葉があります。
所定労働時間とは、会社が独自に定める労働時間です。所定労働時間は、就業規則や雇用契約書に明記されるのが通常です。
この所定労働時間は、法定労働時間である8時間を超えることはできません。

すなわち、法定労働時間の範囲で、所定労働時間を1日4時間や6時間とすることはできます。
しかしながら、法定労働時間を超えて、所定労働時間を1日あたり10時間や12時間とすることは許されません。
所定労働時間を超えて労働した場合の残業代については、残業時間が法定労働時間を超えるか否かによって異なります。

たとえば、所定労働時間が7時間との定めがあり、ある日の実労働時間が8時間であったときには、所定労働時間を1時間超過しているので、1時間分の残業代は発生します。

しかし、法定労働時間である8時間を超えていないので、残業代として割増賃金の支払いは法律上、必要ではありません。
会社は、残業代として通常の1時間分の賃金を支払えば足ります(※)。

これに対し、所定労働時間が7時間との定めがあり、その日の実労働時間が10時間であったとしますと、所定労働時間を(1時間)超過するのみならず、法定労働時間たる8時間を(2時間)超過して残業をしたことになるため、残業代として割増賃金が発生することになります。

すなわち、所定労働時間を超過した3時間のうち、次の支払いがそれぞれ必要となります。

  1. 法定労働時間たる8時間までの1時間の残業
    ➡残業代として通常の1時間分の賃金の支払い
  2. 法定労働時間たる8時間を超過しての2時間の残業
    ➡「時間外労働」となり、残業代として割増賃金の支払い

(※)会社によっては、法定労働時間を超過しない残業についても、残業代として割増賃金を支払う旨規定していることもありますので、就業規則等をご確認ください。

(2)「休日労働」とは?

「休日労働」の前提として、まず「法定休日」について説明します。
休日については、会社は労働者に対し「毎週1日以上の休日」または「4週につき4日以上の休日」を与えなければならないと定められています(労働基準法35条1項)。

この規定によって、会社が労働者に対し、義務的に与えなければならない休日を「法定休日」と言います。
1年を週にすると約52週超になるので、最低でも52~53日間の法定休日が必要です。

休日に関する法的な規制はこれだけなので、「週休1日制」や「国民の祝日を会社の休日としないこと」も違法ではなく、可能です。

次に「所定休日(法定外休日)」について説明します。
会社は、個々の雇用契約や、就業規則において、休日の定めを置いており、多くの会社では週休2日制を採用しています。
この2日の休日のうち1日は法定休日となりますが、他の1日の休日は「法定外休日」ということになります。

例えば、土曜日及び日曜日が休日である場合、このうち日曜日が法定休日とされていれば、土曜日が法定外休日となります。この法定外休日のことを「所定休日」と言います。

休日労働とは、「法定休日」に労働させることであり、「所定休日(法定外休日)」に労働をさせても休日労働にはなりません。

休日労働に対しては、会社は労働者に、所定の割増賃金率を加算した賃金を支払わなければなりません(労働基準法37条1項)。

また、割増賃金率は労働基準法の定め(35%以上)をクリアしなければなりません。
なお、割増率は次のとおりです。

  • 休日労働の割増率 35%以上
  • 休日労働と深夜労働(22時~5時)が重複した部分の割増率 60%以上
    (休日労働の割増率35%以上+深夜労働の割増率25%以上)

(3)「深夜労働」とは?

原則として22時~5時の「深夜労働」に対しては、会社は労働者に、所定の割増賃金率を加算した賃金を支払わなければなりません(労働基準法37条4項)。
変形労働時間制であっても、深夜労働の割増賃金の適用対象です。

割増賃金率は36協定で定めますが、労働基準法の定め(25%以上)をクリアしなければなりません。ここまでにご説明した割増賃金率を表にまとめると、次のとおりとなります。

違法残業の典型ケース10例

労働基準法37条はどの会社も必ず守らなければいけません。
しかし、残念ながら、会社がわざと、または、法令の理解不足で、不適切な残業運営をしている場合もあります。

ここからは、不適切な残業運営の典型ケースとして、10のケースを説明します。

(1)「時間外・休日労働に関する労使協定」(36協定)が締結・届出されていない

会社が労働者に時間外労働や休日労働をさせる場合は、いわゆる36協定(サブロク協定)を締結し、労働基準監督署に届け出た上で、その内容を労働者に周知させなければなりません。

36協定とは、労働基準法36条に基づく労使協定であり、会社が法定労働時間(原則として1日8時間・1週間で40時間)を超えて労働(残業)を命じる場合に必要となります。
36協定は、締結するだけではなく、所轄の労働基準監督署へ届け出なければ、会社は従業員に法定労働時間外の労働(残業)をさせることはできません。締結・届出をしないまま、法定労働時間を超えて労働させると「労働基準法違反」になります。

そして、雇用契約書や就業規則などに、36協定の範囲内で時間外労働や休日労働を命じる旨を明記しなければならないことになっています。

36協定について詳しくはこちらをご覧ください。

36協定をわかりやすく解説!締結における時間外労働の上限は何時間?

(2)サービス残業が常態化している

2つ目のケースは、サービス残業が常態化している場合です。
一般に「サービス残業」とは、実際には労働をしているのに、勤務管理上の労働時間に計上されず、正当な割増賃金が支払われない残業のことをいいます。
例えば、終業のタイムカードを打刻した後も、残業をさせているような場合がこれにあたります。

サービス残業について詳しくはこちらをご覧ください。

(3)いわゆる「名ばかり管理職」になっている

3つ目のケースは、名ばかり管理職のケースです。
労働基準法では、「管理監督者」に対しては、会社は残業手当や休日手当の支払い義務はありません(※深夜手当は支払わなければなりません)。

管理職と呼ばれる立場の方がすべて労働基準法の管理監督者に該当するというわけではなく、管理職と呼ばれる者の中でも実態として「経営者と一体的な立場」にあると言える場合に限り、管理監督者と認められます。

実態は管理監督者に該当しないのに、管理職だからという理由で管理監督者扱いをされて残業手当などを支払われていないケースを、「名ばかり管理職」と言います。

一般的には、部長や工場長など一定の組織の長であれば管理監督者に該当する可能性はありますが、店舗や事業所の長であるから必ず管理監督者にあたるというものでもありません。
例えば、チェーン店の店長は店舗の長ですが、管理監督者性が否定されるケースもあります。

課長や部長等の肩書きが与えられていても、職務内容や勤務上の裁量、人事権の有無など、経営者と一体的立場ではなく管理監督者に相当する実態がない場合には、「名ばかり管理職」の可能性があります。

管理職の残業代について詳しくはこちらをご覧ください。

(4)休憩時間が名ばかりで、実質的には労働時間

4つ目のケースは、実質的に休憩時間がない場合です。

労働基準法上、「休憩時間」は労働時間に含まれません。

会社は、休憩時間について、次の原則を守らなければなりません。

  1. 「途中付与の原則」
  2. 「一斉付与の原則」
  3. 「自由利用の原則」

それぞれの意味は次のとおりです。

  1. 「途中付与の原則」:休憩は労働時間の途中に与えること
  2. 「一斉付与の原則」:休憩時間は事業場において原則として一斉に付与しなくてはならないこと(運輸業、商業など業種による例外があります)
  3. 「自由利用の原則」:会社は休憩時間を付与した場合、労働者を完全に業務から解放し、その自由な利用に委ねること

休憩時間につき、労働者が何の実作業もしていない状態にあるとしても、会社から指示があれば即時に何らかの対応をすることが求められている場合があります。

例えば、貨物の積込係が貨物自動車の到着を待機している時間(いわゆる「手持ち時間」)や、ビル・マンションの警備員・管理人の仮眠時間は、労働時間なのか、休憩時間といえるかが問題となります。

会社が労働者を完全に業務から解放していないということであれば、「手待ち時間」や「仮眠時間」は、労働時間に算入できる可能性があります。

労働基準法における休憩時間について詳しくはこちらをご覧ください。

労働基準法が定める休憩時間とは?違反しているときの適切な相談先も紹介

(5)「時間外労働の上限規制」を超えて残業させられる

5つ目は、時間外労働の上限規制を超えて労働させている場合です。

時間外労働と休日労働には、「時間外労働の上限規制」(原則月45時間・年間360時間)があります。

2019年4月施行の働き方改革関連法により、大企業が2019年4月から、中小企業が2020年4月から適用されており、原則としてすべての労働者に上限規制が適用されます。

月45時間・年間360時間を超えて残業をさせることもできますが、所定のルールを守る必要があります。
ルールを守らないでこの上限を超えた残業をさせている場合には、違法残業となる可能性があります。

働き方改革関連法による残業ルール改正について詳しくはこちらをご覧ください。

働き方改革で残業関連のルールはどう変わった?6つのポイントを解説

(6)「みなし残業制(固定残業代制度)だから残業代は出ない」と言われる

6つ目のケースは、固定残業制度のケースです。

固定残業制度は、固定残業代を支払えばいくらでも残業をさせてよいという制度ではありません。

実際の残業時間(時間外労働・休日労働・深夜労働)が固定残業代の相当する残業時間を超過した場合は、会社は超過時間分の残業代の支払いが必要になります。
固定残業代を理由に、会社が実際の残業時間を管理していない場合には、違法残業の可能性があります。

実際に発生した残業代が固定残業代を超過していれば、当然、超過分の残業代が支払われなければいけません。

固定残業代について詳しくはこちらをご覧ください。

固定残業代とは?みなし残業の違法性や残業代の請求方法も解説!

(7)「変形労働時間制だから残業代は出ない」と言われる

7つ目は、変形労働時間制のケースです。

変形労働時間制が適用される労働者にも、一定の場合には割増賃金が支払われます。
変形労働時間制だからといって一切残業代が支払われない場合には、違法な運用がなされている可能性があります。

変形労働時間制について詳しくはこちらをご覧ください。

変形労働時間制とは?種類やメリットとデメリットについて解説

(8)「フレックスタイム制だから残業代は出ない」と言われる

8つ目はフレックスタイム制の場合です。

フレックスタイム制とは、一定の期間(3ヶ月以内の清算期間)のなかで、一定時間労働することを条件として、自由な時間に出勤・退勤できる制度です。

フレックスタイム制適用者にも、清算期間単位で実際の労働時間が法定労働時間を超える場合には、残業代として割増賃金の支払いが必要です。
フレックスタイム制だから残業代は出ないと言われた場合、違法残業の可能性があります。

フレックスタイム制について詳しくはこちらをご覧ください。

フレックスタイム制とは?メリットとデメリット、導入方法について解説

(9)「裁量労働制だから残業代は出ない」と言われる

9つ目は、裁量労働制のケースです。

裁量労働制とは、一定の専門的・裁量的労働をする労働者に対して、実際の労働時間に関係なく、一定の労働時間だけ働いたとみなす制度です。

裁量労働制適用者にも、深夜労働や休日労働をした場合は、残業代の支払いが必要です。

また、裁量労働制が認められるための要件は厳しく、そもそも裁量労働制が認められない場合には、当然残業代が支払われなければなりません。

裁量労働制を理由に残業代を支払わない場合、違法残業となる可能性があります。

裁量労働制について詳しくはこちらをご覧ください。

裁量労働制とはどのような制度?残業代や休日手当などを解説

(10)「年俸制だから残業代は出ない」と言われる

10個目は、年俸制のケースです。

年俸制とは、給与総額の合意・更改を1年単位で行なう給与の決め方であり、1年間の仕事の成果を翌年度の賃金額に反映させるシステムです。
年俸制は、1年分の給与総額を合意するというだけであり、残業をした場合には別途残業代が発生します。

年俸制を理由に残業代を支払わない場合、違法残業となる可能性があります。

年俸制については詳しくはこちらをご覧ください。

未払い残業代は会社に請求できる

未払い残業代がある場合は、会社に請求できる可能性があります。

会社に未払い残業代の支払いを申し入れても取り合ってくれない場合は、労働基準監督署に相談したり、訴訟を起こしたりして請求するのが現実的な対処です。

労働基準監督署は、管轄区域内の企業が労働関係法令を守っているか、監督する公的機関です。
違反行為があれば指導・是正勧告を行いますが、会社と労働者のトラブルを解決する権限はありません。たとえば残業代が払われていない場合、支払うように勧告はしますが、それでも会社が残業代を支払わない場合、裁判所の判決のように強制執行が可能になるものではありません。

一方、弁護士は、依頼者の個人的な問題を解決することを目的としています。残業代の請求を主張して、交渉や訴訟等により労働者の権利を実現することができます。労働基準監督署に相談して解決できないケースでも、弁護士に相談すると解決できる例は多々あります。未払い残業代の請求については、弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。

弁護士に依頼すると、残業代の消滅時効期間の確認や、正確な未払い残業代の計算、残業の証拠収集に関するアドバイスなどを行ってもらえます。

ここからは、残業代の請求における2つのポイントを説明します。

(1)残業代請求には時効がある

残業代を遡及して請求する場合には、賃金請求権の消滅時効期間に注意する必要があります。
まずは、残業代が時効によって消滅していないか確認しましょう。
残業代は、あなたがすでに退職している場合でも請求することができます。

ただし、過去の残業代を遡って請求する場合には、賃金請求権の消滅時効期間に注意が必要です。

残業代を請求する権利には時効があります。
すなわち、残業代は、請求しないまま一定期間が経過すると、会社側が時効を主張することで、残業代を請求する権利を失ってしまいます。

なお、2020年4月1日以降に支払日が到来する残業代の時効は3年です。

各残業代が本来支払われるべき日ごとに、その翌日から時効のカウントが始まります。
弁護士に相談・依頼すると、消滅時効期間の確認や、消滅時効期間の経過によって残業代を請求する権利が消滅しないようにする手続きなどを行なってもらえます。

(2)未払い残業代の証拠集めが重要

次に、残業代を請求する場合には、証拠をそろえることが必要です。
まずは、労働者の側で、残業代が発生していることを証拠によって証明することになります。
あなたができる範囲で、労働時間の実態を示す証拠が必要となるので、あらかじめ集めておくことをお勧めします。

労働時間は、原則として、タイムカードやWeb打刻、タイムシート、タコグラフ(トラック運転手の方など)、出勤簿などの客観的な記録が証拠となります。

弁護士に相談・依頼すると、このような残業代の証拠の確認をしてもらえます。

残業代請求時の証拠集めについて詳しくはこちらをご覧ください。

【まとめ】残業代とは、「時間外労働」「深夜労働」「休日労働」に対する割増賃金

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • いわゆる残業代とは、法的には「時間外労働」「深夜労働」「休日労働」の割増賃金を指す
  • 故意または法令の理解不足で、不適切な残業を指示したり、残業代が未払いになっている会社は少なくない
  • 未払い残業代がある場合は、会社に請求できる可能性がある

アディーレ法律事務所は、残業代請求に関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として成果があった場合のみ報酬をいただくという成功報酬制です。

そして、原則として、この報酬は獲得した残業代からお支払いとなり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。

また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。

※以上につき、2023年2月時点

残業代請求でお悩みの方は、残業代請求を得意とするアディーレ法律事務所へご相談ください。

この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

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