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営業職の残業代についての考え方とは?未払い残業代の請求方法を解説

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営業職であっても、残業代が発生することがあります。
もっとも、営業職の場合、

  • 労働時間の算定が難しい
  • 歩合給
  • 営業手当として固定残業代が払われている

といった特徴があり、会社がしばしば、残業代の支払を拒否してくることがあります。

しかし、会社の主張が間違っていることもあります。
営業職の残業代について、弁護士が解説します。

営業職でも残業代は支払われることがある

営業職は外回りの仕事が多く勤務実態が把握しづらいため、「事業場外みなし労働時間制」を採用している企業も少なくありません。

詳しくは後述しますが、事業場外みなし労働時間制の場合でも、残業代の支払義務が発生することがあります(労働基準法38条の2第1項)。
また、営業の場合、基本給+歩合給の形態であることも多いですが、歩合制の場合でも、基本的に残業代は認められます(歩合給の中に残業代が含まれると会社が主張する場合については後述します)。

「残業代が支払われない」と言われやすいケース

残業代が出ないと会社側が主張する理由はいくつかあります。
営業の残業代が支給されない理由として挙げられることの多いケースを解説します。

(1)事業場外みなし労働時間制の採用

外回りや出張が多い場合は、従業員の労働時間を正確に把握することが難しいため、「事業場外労働のみなし制」を採用している企業も少なくありません。
2020年度の厚生労働省の調査によれば、11.4%の企業(規模30人以上)が事業場外みなし労働時間制を採用しています。

事業場外みなし労働時間制とは、労働者が労働時間の全部または一部について、

  • 事業場外で労働を行い、
  • その労働時間の算定が困難な場合は、

一定時間労働時間分労働したものと「みなされる」制度です。

しばしば、事業場外みなし労働時間制の適用になり、「所定労働時間しか働いていないとみなされる」と会社が主張して残業代の支払が拒まれることがあります。
しかし、事業場外みなし労働時間制の場合でも、「事業外労働で通常必要とされる時間」が、「所定労働時間」を超える場合などは、残業代が発生します。

(1-1)事業場外みなし労働時間制の場合の労働時間のカウントの方法

事業場外労働のみなし労働時間制の場合は、「事業外労働で通常必要とされる時間」が、「所定労働時間」(就業規則等で決められた定時の労働時間)を超えるかどうかによって、労働時間のカウント方法が決まります(労働基準法38条の2第1項)。
この「事業外労働で通常必要とされる時間」が何時間を指すのかは、労使協定で決められている場合もあります。そのような決まりがない会社の場合は、具体的に何時間となるのかはケースバイケースです(労働基準法38条の2第2項)。

  1. 所定労働時間より、【「事業場外の労働で通常必要とされる時間」と「事業場内で実際に労働した時間の合算」】の方が長い場合
    この場合、「事業場外の労働で通常必要とされる時間」と「事業場内で実際に労働した時間」の合算が労働時間となります。

例えば、所定労働時間が8時間の会社において、事業場内で実労働を2時間し、事業場外労働で通常必要とされる時間が7時間であった場合、9時間が労働時間となります。
この場合、所定労働時間を1時間超える労働(時間外労働)をしているため、原則として残業代が発生します。

  1. 所定労働時間より、【「事業場外の労働で通常必要とされる時間」と「事業場内で実際に労働した時間」】の合算の方が短い場合
    この場合、所定労働時間が労働時間となります。

例えば、所定労働時間が8時間の会社において、事業場内で実労働を2時間し、事業場外労働で通常必要とされる時間が5時間であった場合、8時間が労働時間となります。

ここをチェック

「事業場外の労働に通常必要とされる時間」は、実際に事業場外で労働した時間とは異なります。
例えば、実際には事業場外で6時間労働していたとしても、通常はその労働を遂行するのに必要な時間は4時間という場合は、「事業場外で通常必要とされる時間」は4時間となります。

参考:「事業場外労働に関するみなし労働時間制」の適正な運用のために|東京労働局

(1-2)事業場外みなし労働時間制が適用されない場合

事業場外で労働しているだけではなく、「労働時間の算定が困難」な場合にもあてはまらないと、この事業場外みなし労働時間制の適用は受けません。

例えば、次の場合には、労働時間の算定が困難とはいえません。

  • 複数人で事業場外労働をする場合で、その中に労働時間の管理をする者がいる場合
  • 携帯電話等によって、随時上司の指示を受けながら事業場外労働をしている場合
  • 上司から、事業場外労働の場所、時刻など、具体的指示を受けた後、その指示通りに事業場外労働をした場合

裁判例でも、労働時間の算定が困難でないと認定されたものが多々存在します(阪急トラベル・サポート事件(最高裁第二小法廷判決平成26年1月24日労判1088号5頁)等)。

参考:令和2年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省

(2)固定残業代制の採用

会社が、固定残業代制を採用していることを理由に、残業代の支払を拒否してくることがありますが、この拒否は必ずしも適法でない場合があります。

ここで、固定残業代制とは、残業の有無にかかわらず、一定時間の残業をしたとみなして、あらかじめ固定の残業代を給料に組み込んでおく制度をいいます。
例えば、就業規則などに次の定めがある場合は、企業が固定残業制を採用している場合といえます。
例:「営業手当」として、時間外労働の有無にかかわらず、10時間分の時間外労働手当月20万円を支給するものとする

固定残業制の場合、固定残業代に想定されている時間より実際の残業時間が少ない場合でも、固定残業代は満額支払われます。
他方で、固定残業代に想定している時間を超過して残業した場合、超過した労働時間に対しては、残業代を別途請求できます。

企業の中には「どれだけ残業をしても残業代が固定されている」と勘違いしている場合もあるため注意が必要です。

また、

  • 基本給の中にいくらの固定残業代が含まれるのか明確に判別できないといった場合や、
  • 会社が「営業手当」が固定残業代の趣旨だと主張するが、その旨が就業規則等に記載されていない

等という場合には、固定残業代制の支払としては認められない可能性もあります。

一見、固定残業代制を取っているようにみえても、このように固定残業代の支払としては認められないケースが少なくありません。
ご自身の企業の固定残業代制が有効であるかどうかは、一度専門家へ相談してみるとよいでしょう。

参考:固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。|厚生労働省
参考:しっかり学ぼう!働くときの基礎知識|厚生労働省

(3)歩合制を採用している

会社が、歩合給を採用していることを理由に、残業代の支払を拒否してくることがありますが、歩合給制を採用している場合でも、残業をした場合は、原則として別途残業代の支払いが必要です。

歩合制は従業員の業績や成果によって給与額が決まります。
歩合制を採用すると、評価基準が「時間」より「売上」重視になります。
そのため、会社が、時間外労働をしても残業代の支払義務はないと誤解しているケースがあります。

歩合給と残業代は明確に区別される必要があります。

未払い残業代の計算方法

支払われるべき残業代に対し、実際に支給された残業代が下回っている場合は、会社に差額を請求できる可能性があります。
残業代の計算方法についてご説明します。

通常の残業代の計算式

通常の勤務体系の場合、残業代は次のように計算します。

残業代=残業時間×割増率×1時間あたりの基礎賃金

この内、割増率、基礎賃金について、次にご説明します。

(1-1)割増率

労働基準法上、残業の種類によって割増率は次のように異なります。

残業の種類割増賃金が発生する条件(※1)最低限度の割増率
時間外労働1日8時間・週40時間のいずれかを超えて労働。
(法定休日の労働時間は含まず。)(※2)
時間外労働が月60時間までの部分1.25倍
時間外労働が月60時間を超えた部分1.5倍
(※3)
深夜労働22~5時の間の労働1.25倍
休日労働22~5時の間の労働1.25倍
深夜労働法定休日の労働1.35倍
重複する部分時間外労働が0時間を超えて月60時間までの部分と、深夜労働が重複する部分1.5倍
時間外労働が月60時間を超えた部分と、深夜労働が重複する部分1.75倍
(※4)
法定休日に深夜労働した部分1.6倍

※1 残業時間として認められるためには、「会社の指示によって労働させられた」ことが必要です。
また、残業代を計算する上で、休憩や有給休暇は労働時間からのぞきます。
※2 時間外労働の例外
常時10人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業(映画の製作は除く)、保険衛生業、接客業については、週44時間を超えた労働
※3 次に該当する企業(中小企業、以下同じ)は、2023年3月末までは、最低の割増率は1.25倍となります。

  • 小売業:資本金5000万円以下または常時使用する労働者が50人以下
  • サービス業:資本金5000万円以下または常時使用する労働者が100人以下
  • 卸売業:資本金1億円以下または常時使用する労働者が100人以下
  • その他:資本金3億円以下または常時使用する労働者が300人以下

※4 中小企業では2023年3月末までは、最低の割増率は1.5倍となります。

所定時間は超えるものの、時間外労働にまで至らない場合は、法内残業となります。
法内残業に対しては、企業は、必ずしも割増した賃金を払う義務はありませんが、少なくとも所定労働時間における労働と同じ単価で残業代を支払う必要があります。

(1-2)基礎賃金

基礎賃金とは、所定労働時間に対する賃金から、以下の賃金を控除した金額になります。

  1. 個人の事情に基づき払われている賃金
  2. 臨時に支払われた賃金
  3. 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
  4. 割増賃金の趣旨にて支払われる賃金

所定労働時間に対する賃金から、「控除される賃金の例」を一覧にすると次のようになります。
なお、どれが控除されるのかは、名称で決まるわけではなく、その内容で決まります。

【控除される賃金の例】

1.個人の事情に基づき払われている賃金
(労働基準法施行規則21条本文、1~3号)
・家族手当
・通勤手当
・別居手当
・子女教育手当
・住宅手当 等
(家族数、通勤費、家賃等、個人の事情に応じて金額が変わるものは控除されます。
他方で、一律同じ額が支給される場合は控除されません。)
2.臨時に支払われた賃金
(労働基準法施行規則21条4号)
・結婚手当
・出産手当 等
3.1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
(労働基準法施行規則21条5号)
・賞与
(※年度初めに年俸額を決定し、その一部として賞与を払う場合、賞与は控除されません)
4.割増賃金の趣旨にて支払われる賃金所定労働時間が深夜帯にかかることに対する手当(夜から出勤して当直勤務に従事したことに対する当直手当等)など。

(1-3)基礎賃金は時給に直して計算

基礎賃金は、時給に直して計算する必要があります。
具体的には、次のような計算方法になります。

【月給制の場合】
月給の基礎賃金÷(※)1年間における1ヶ月の平均所定労働時間

※1年間における1ヶ月の平均所定労働時間
=1年間の所定出勤日数×1日の所定労働時間÷12

【年俸制の場合】
1年間の基礎賃金÷1年間の所定労働時間

【歩合給の場合】
1ヶ月の歩合給÷その月の総労働時間

会社に残業代を請求する手順

実際に残業代が発生しており、未払い分を会社に請求したい場合の手順をご紹介します。

STEP1 残業代未払いの証拠集め

STEP2 未払い残業代の計算

STEP3 未払い残業代を会社へ請求

(1)残業代未払いの証拠集め

まずは残業代未払いの証拠を集めることが重要です。
証拠がなければ残業代の計算できず、会社へ未払い残業代の請求をしても、なかなか相手にされません。

証拠としては、例えば次のようなものがあります。

  • 雇用されたときの書類
    ……雇用契約書
      労働条件通知書など
  • 就業規則、賃金規程のコピー
  • 給与明細
  • 労働時間が分かる資料のコピー
    ……出勤簿
      タイムカード
      WEB打刻のスクリーンショット
      業務用メールアカウントや会社のFAXの送受信記録履歴
      帰宅時のタクシーの領収書など
  • 残業時間中の労働内容を立証する資料の写し
    ……業務日報
      トラック運転手の方はタコメーター(タコグラフ)
  • 会社の指示によって残業させられたことを示す資料
    ……残業指示書など

(2)未払い残業代の計算をする

集めた証拠を基に未払い残業代がいくらか計算をします。
本来支払われるべき残業代から、実際に支払われた残業代を差し引き、未払い分の残業代の金額を算出することになります。
集めた証拠などを参考にし、未払い分の残業代を「正確」に計算することが大切です。

『残業代メーター』で未払い残業代をチェックする

なお、アディーレ法律事務所の「残業代メーター」で請求できる未払い残業代を簡易的に計算することができます(ただし、簡易的に計算するものであるため、正確な残業代とは異なる可能性があります)。

(3)未払い残業代を会社に請求する

最後に未払い残業代を会社に請求します。
未払い残業代の請求の方法としては、主に次のものがあります。

  1. まずは会社と直接交渉する
  2. 労働審判を使う(裁判所での手続き。話し合いや審判が行われる)
  3. 訴訟を起こす

会社との直接交渉で解決すればよいのですが、会社が交渉に応じてくれない場合は、裁判所の労働審判や訴訟手続きを利用して、未払い残業代の支払いを求めることになります。

時効前であれば退職後でも残業代請求が可能

残業代請求には時効があるため、注意が必要です。

すなわち、残業代は、請求しないまま一定期間が経過すると、会社側が時効を主張することで、残業代を請求する権利を失ってしまいます。

民法改正の影響により、残業代の時効には、次の2種類があります(2021年2月11日時点)。

  • 2020年3月31日までに支払日が到来する残業代→時効は2年
  • 2020年4月1日以降に支払日が到来する残業代→時効は3年

各給料の支払日の翌日から、それぞれ時効のカウントが始まります。

そのため、残業代を請求したいと思ったら、早めに行動に移すことをお勧めします。

退職後でも、時効前であれば残業代の請求が可能です。
ただし、退職後に証拠を集めるのが難航することも多いため、証拠集めは在職中に行っておいた方がよいでしょう。

【まとめ】未払い残業代でお悩みの方はアディーレ法律事務所にご相談ください

営業職であっても、残業代が発生することはあります。
営業職の未払い残業代でお悩みの方はアディーレ法律事務所へご相談ください。

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