「職場に妊娠を報告したら、嫌がらせをされるようになった。これってマタハラ?」
妊娠や出産を理由に職場で不当な扱いを受ける「マタニティハラスメント(マタハラ)」は、働く女性にとって深刻な問題です。
あなたがもし、妊娠や育児を理由に職場で嫌がらせを受けたり、不利益を被ったりしているなら、それは決して一人で抱え込むべき問題ではありません。
この記事では、マタハラに関する法律について解説しつつ、安心して働ける環境を築くための具体的なアドバイスを提供します。あなたの権利を守り、健全な職場環境を取り戻すための第一歩を踏み出しましょう。
この記事を読んでわかること
- マタハラとは
- マタハラの違法性
- マタハラへの対処法
ここを押さえればOK!
少子化や女性の社会進出が進む中で、妊娠・出産を理由とする差別が依然として根強く残っている現状が背景にあります。
具体的な例としては、妊娠を理由に職場で不当な扱いを受けたり、降格などの不利益を被ったりすることなどが挙げられます。
マタハラは労働基準法、男女雇用機会均等法、育児介護休業法に違反する可能性があります。法律は妊娠・出産を理由とする不当な扱いを禁止しており、過去の裁判でも、妊娠を理由にした雇止めが無効と判断されたケースがあります。
マタハラの兆候を早期に発見することは重要であり、上司や同僚からの態度の変化、業務内容の突然の変更などが兆候として現れることがあります。
これらの兆候を見逃さず、早期に上司や人事部門に相談することが必要です。
労働者は、マタハラを受けない権利を法律によって保護されています。
具体的な対処法としては、証拠の収集、上司や人事部門への相談、外部の専門機関への相談が挙げられます。最終的には法的手段を取ることが必要な場合もあります。
今後の展望としては、さらなる法的整備と社会全体の意識向上が求められます。
社会全体でマタハラを根絶するためには、法的措置とともに古い企業文化や社会意識の変革が不可欠です。
東京大学法学部・東京大学法科大学院卒。アディーレ入所後は未払残業代請求事件をメインに担当し、2022年より労働部門の統括者。「自身も同じ労働者だからこそ、労働者の方々に寄り添える」との信念のもと、より多くのご依頼者様を、より良い解決へ導くことを目標に尽力している。東京弁護士会所属。
マタハラとは?その定義と背景
マタニティハラスメント、通称「マタハラ」とは、妊娠・出産・育児に関連する嫌がらせや差別行為を広く指します。
たとえば、妊娠を理由に職場で不当な扱いを受けることや、昇進や評価において不利益を被ることがあるようです。
マタハラは、労働者の権利を侵害し、精神的・身体的な健康に悪影響を及ぼす重大な問題です。
この問題が社会問題として注目される背景には、少子化や女性の社会進出が進むなかで、妊娠・出産を理由にした差別が依然として根強く残っている現状があります。
さらに、働く女性が増える一方で、職場環境がそれに追いついていないことも一因でしょう。
マタハラは、個人の問題にとどまらず、企業の生産性や社会全体の健全な発展にも影響を及ぼすため、早急な対策が求められています。
職場におけるマタハラの具体例
職場におけるマタハラの具体例には、次のようなものがあります。
- 妊娠・出産・育児に関して嫌味を言われる
- 辞職を迫られる・解雇される
- 降格や不利益な配置転換など、労働環境を悪化させられる
期間を定めて雇用されている場合、妊娠をきっかけに「契約を更新しない」と言われることもあるようです。
マタハラは違法となりうる
マタハラは、主に労働基準法、男女雇用機会均等法、育児介護休業法に違反する可能性があります。
労働基準法は、産前・産後休業についての規定を設けています。
男女雇用機会均等法は、「妊娠、出産等を理由とする不利益取扱い」を禁止しています。
したがって、女性労働者が妊娠・出産などを理由に、解雇や不利益な取扱いをすることは違法です。
また、育児介護休業法は、育児休業など子の養育に関する一定の制度または措置の利用に関する周囲の言動により就業環境が害されることがないよう、事業主が相談に応じたり、適切な措置を講じたりしなければならないと規定しています。
なお、過去の裁判においては、女性労働者に対して妊娠を理由に雇止めした行為が、男女雇用機会均等法により禁じられたものであるなどとして無効と判断されたケースも存在します(松山地裁宇和島支部判決平成13年12月18日:正光会宇和島病院事件)。
マタハラの兆候と早期発見のポイント
マタハラの兆候を早期に発見することは、被害を最小限に抑えるために非常に重要です。
まず、上司や同僚からの態度の変化に注意を払いましょう。
たとえば、妊娠を報告した後に突然冷たくなったり、無視されるようになったりした場合は、マタハラの兆候かもしれません。
また、業務内容の突然の変更や、重要なプロジェクトから外されるといった不当な扱いも警戒すべきです。
さらに、職場で孤立感を感じた場合や、会議や社内イベントへの参加が制限される場合も、マタハラの一環かもしれません。
自分自身の心理的・身体的な変化にも注意を払いましょう。
たとえば、職場に行くことが苦痛に感じるようになったり、ストレスから体調を崩すことが増えたりした場合は、マタハラが原因である可能性があります。
そのような場合には、早期に上司や人事部門に相談することが重要です。
マタハラの兆候を見逃さないように、日頃から職場の雰囲気や同僚との関係性を観察し、異変を感じたらすぐに相談するなど、適切な対応策を講じるようにしましょう。
マタハラに関する労働者の権利と具体的な対処法
マタハラに関する労働者の権利は、法律によってしっかりと保護されています。
前述のとおり、法律によって妊娠・出産を理由とする不当な扱いは禁止され、労働者が安心して働ける環境を提供するための枠組みが構築されています。
マタハラを受けた場合の具体的な対処法としては、まず冷静に状況を把握し、証拠を収集することが挙げられます。
たとえば、嫌がらせの内容や日時を詳細に記録し、メールやメモなどの物的証拠があれば保存しておくとよいでしょう。
次に、上司や人事部門に相談し、問題を共有することが必要です。
この際、具体的な事実をもとに話すことで、より効果的な対応が期待できます。
もし社内での解決が難しい場合は、外部の専門機関に相談することも検討しましょう。労働基準監督署や労働局、あるいは弁護士などです。
特に実害が生じているような場合は、弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
弁護士が介入したことにより、法的な問題に発展する可能性が高いと企業側が判断し、すぐに対応に動く場合があります。
また、悪質なマタハラにより損害が生じている場合には、慰謝料など損害賠償を請求できる可能性もあります。
最終的には、法的手段を取ることも視野に入れる必要があるかもしれません。
訴訟を起こすことで、企業に是正措置を求めることができ、同時にほかの労働者に対する抑止力になることがあります。
マタハラに関する労働者の権利を理解し、適切な対処法を実践することで、安心して働ける環境を築くことを目指しましょう。
マタハラに関する今後の展望
今後の展望としては、さらなる法的整備と社会全体の意識向上が求められます。
従業員一人ひとりがマタハラの問題を理解し、適切に対応できるようになることで、職場環境の改善が進むでしょう。
また、働く女性の増加に伴い、2025年度育児介護休業法が改正され、育児休暇やフレックスタイム制度など、柔軟な働き方を支援する制度の普及も進んでいます。例えば、看護休暇の取得理由や残業免除の対象者が拡大したり、育児と仕事の両立に向けて会社に意見を言いやすくなるようです。
これにより、妊娠・出産を理由とする差別が減少し、労働者が安心して働ける環境が整うことが期待されます。社会全体でマタハラを根絶するためには、法的措置とともに、古い企業文化や社会意識の変革が不可欠といえるでしょう。
【まとめ】妊娠・出産等を理由とする不当な扱い(マタハラ)は違法
マタニティハラスメント(マタハラ)は、妊娠・出産・育児に関連する嫌がらせや差別行為であり、労働者の権利を侵害する重大な問題です。
労働基準法や男女雇用機会均等法によって法的に保護されているものの、早期発見と適切な対処が不可欠と考えられます。
労働者は、自身の権利を理解し、必要な場合には証拠を収集し、相談窓口や専門機関に頼るようにしましょう。
今後は、法的整備とともに、社会全体の意識向上が求められます。
安心して働ける環境を築くために、個人と企業が協力し、マタハラの根絶を目指しましょう。