退職金を受け取るための条件や手続きに不安を感じていませんか?
退職金は、あなたの今後の生活を支える大切な資金です。しかし、条件が不明確だったり、未払いの問題が発生したりすることもあります。
このコラムでは、退職金が支給される条件や退職理由による違い、未払い時の請求方法、さらには時効について詳しく解説します。
必要な情報を得て、確実に退職金を受けとりましょう。ぜひこの記事で退職金に関する不安を解消してください。
この記事を読んでわかること
- 退職金が支給される条件を確認する方法
- 退職理由による退職金の違い
- 未払いの退職金を請求する方法
- 退職金請求の時効
ここを押さえればOK!
支給条件は、就業規則や労働契約に基づくことが多いため、事前に確認が必要です。
退職理由によっても金額は異なり、会社都合退職は高額、自己都合退職は低額になりがちです。懲戒解雇でも全額不支給とは限りません。
未払いの場合、内容証明郵便や支払督促、労働審判、訴訟で請求可能です。時効は5年で、早めの対応が求められます。
未払い退職金がある場合は、労働基準監督署や弁護士に相談することをおすすめします。
東京大学法学部・東京大学法科大学院卒。アディーレ入所後は未払残業代請求事件をメインに担当し、2022年より労働部門の統括者。「自身も同じ労働者だからこそ、労働者の方々に寄り添える」との信念のもと、より多くのご依頼者様を、より良い解決へ導くことを目標に尽力している。東京弁護士会所属。
退職金とは
退職金とは、退職時に労働者へ支給されるまとまったお金のことです。
しかし、退職金は、必ずもらえるわけではありません。
給料や残業代は、労働基準法などの法によって支払いが義務付けられているのに対し、退職金は法律で支払いが義務付けられているわけではありません。
退職金は、原則として、労働契約、就業規則(賃金規程)または労働協約に明確にその支払義務が規定されている場合に限って会社に退職金の支払義務があるものとなります。
そして、いつ、どのような基準で支給するかについては、通常は会社の就業規定などで定められており、多くの場合では会社の裁量に委ねられています。
退職金が支給されるか否かを確認する方法とは
民間企業において退職金が支給されるか否かは、主に就業規則や労働契約に依存します。多くの企業では、退職金に関する条件が明記されており、これが支給の基準となります。
(1)就業規則などを確認する
退職金が支給されるかどうかは、就業規則や労働契約書(雇用契約書)にその旨が明記されている場合が多いです。
例えば、「勤続年数10年以上で支給」「退職金の額は基本給に勤続年数に応じた支給率を乗じた金額とする」といった具体的な基準がある場合、それを満たしていれば請求が可能です。このように、就業規則などに記載される条件に当てはまる場合には、退職金を請求することができます。
(2)過去の慣例を確認する
就業規則などに明記されていなくても、慣例的に支給されている場合には退職金を請求できる可能性があります。例えば、過去10年間にわたり退職者全員に退職金が支給されているような場合、それが慣例と見なされる可能性があります。
退職理由による退職金の違いとは
退職理由によって退職金の金額が異なることがあります。ここでは、退職理由による退職金の違いを見ていきましょう。
(1)会社都合退職の場合
会社都合退職の場合、退職金の金額が一番高額に設定されていることが多いです。
そして、退職金共済制度のように外部の運用機関から支払われる場合は、退職金請求の際に、退職金請求書などの書類の作成・提出が求められることもあります。
(2)自己都合退職の場合
自己都合退職の場合、会社都合退職よりも退職金の金額が安くなることが多いです。
また、就業規則で定められた会社側への退職予告がなかったり、欠勤を繰り返した上での退職をしたりしたような場合には、退職金もスムーズに支払われないようなことがあります。
(3)懲戒解雇の場合
懲戒解雇とは、労働者の犯罪行為や長期の無断欠勤といった、労働者側に原因がある問題が懲戒事由に該当したときに行われる解雇のことをいいます。
懲戒解雇の場合、大きな問題へのペナルティ的な側面が大きいことから、就業規則のなかで「懲戒解雇の場合には退職金を支払わない」と明記している場合もあります。
実際、懲戒解雇の場合は退職金がもらえないという印象を持っている人も多いでしょう。
しかし、裁判例においては、懲戒解雇が有効であっても、退職金の全額を不支給とするためには「当該労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為があることが必要である」と高いハードルを要求しているものがあります。
その会社の退職金が持つ性格にもよりますが、懲戒解雇イコール退職金ゼロというわけではないのです。
未払いの退職金を請求する方法とは
退職金を確実に受け取るためには、適切な手段を講じることが重要です。まず、退職金の制度や支給条件を理解し、自分の状況に合った方法を選択しましょう。
(1)内容証明郵便で請求する
内容証明郵便で請求することで、会社に対して退職金を請求する旨を伝え、会社にプレッシャーを与えることができます。
(2)支払督促で請求する
退職金を請求する方法として、支払督促を利用する方法もあります。
支払督促は、裁判所に申し立てし、書記官から会社に対して督促を送ってもらう方法です。
裁判所から督促を送ってもらうことで、個人で送るより強いプレッシャーを会社にかけることができます。
(3)労働審判で請求する
労働審判を利用することは、迅速に紛争を解決するための手段です。これは、裁判よりも簡易でスピーディーな手続きになります。
労働審判では、裁判官と労働問題の専門家が仲介し、公平な解決を図ります。例えば、会社との直接交渉が難航した場合、この手続きを利用することで解決への道が開けます。
(4)訴訟で請求する
上記いずれの方法でも退職金が支払われない場合、訴訟を起こすというのも1つの選択肢です。
訴訟は時間と費用がかかることがありますが、裁判官によって最終的な判断をしてもらうことができます。
(5)労働基準監督署や弁護士に相談する
労働基準監督署や弁護士に相談することも有効な手段です。専門家の助けを借りることで、スムーズに問題を解決できる可能性が高まります。
- 労働基準監督署: 労働基準法に基づき、企業に対して是正を指導することができます。
- 弁護士: 法的なアドバイスを受け、必要に応じて交渉から訴訟までの一連の法的手続きのサポートをしてもらえます。
(1)~(4)の手続はもちろん個人でも行うことができますが、専門的な知識が求められたり、時間もとられたりと大きな負担がかかります。弁護士を任せることでなあなたにかかる負担を減らすことができます。未払いの退職金を請求する場合には、弁護士などの専門家にご相談ください。
退職金請求には時効がある!未払いの退職金には早めの対応を
退職金請求の時効期間は5年間です。
したがって、会社を辞めてから5年以上が過ぎた頃になって、退職金がもらえていないことに気付いたとしても、請求をすることは難しいでしょう。
また、未払い残業代などの請求にも時効があります。この場合の時効期間は、3年間です。
そのため、会社を辞めたときの給与や残業代、退職金といった未払いのお金をすべて請求したい場合は、早めの対応をおすすめします。
【まとめ】未払いの退職金は労働基準監督署や弁護士へ相談を!
今回の記事のまとめは、次のとおりです。
【退職金請求の可否 】
- 就業規則や労働契約に記載➡記載の支給条件を満たせば、請求可能
- 就業規則などの記載がなくても、退職金の慣行があれば、退職金請求が可能。
【退職理由による違い】
- 会社都合退職:退職金の金額が一番高くなりやすい。
- 自己都合退職:会社都合退職よりも退職金の金額が低くなりやすい。
- 懲戒解雇:懲戒解雇=全額不支給ではない。退職金が支給される可能性も。
【未払い退職金の請求方法】
- 内容証明郵便、支払督促、労働審判、訴訟。
- 労働基準監督署や弁護士への相談。
未払いの退職金がある場合には、労働基準監督署や未払い退職金の請求を扱っている弁護士の助けを借りることをおすすめします。