「嘱託社員って、一体どのような雇用形態なの?待遇は正社員とどう違うの?」
このような疑問を感じたことはありませんか?
実は、嘱託社員に明確な法律上の定義はありません。
一般的には、期間の定めのある雇用契約を締結している非正規の労働者のことを指します。
特に、定年後に再雇用された労働者のことをこう呼ぶ会社も少なくないようです。
この記事では、嘱託社員とほかの雇用形態との違い、メリット・デメリット、そして働く際の注意点などについて解説します。
契約内容の確認ポイントやトラブル回避のための対策も紹介していますので、安心して働くための参考になれば幸いです。
嘱託社員としての働き方を理解し、自分に合ったキャリアを築くための第一歩を踏み出しましょう。
この記事を読んでわかること
- 嘱託社員とは
- 契約社員などとの違い
- 嘱託社員として働くメリット・デメリット
ここを押さえればOK!
嘱託社員と正社員の違いは、雇用期間が定められているかどうかです。嘱託社員には契約期間があり、更新されなければ雇止めとなります。
嘱託社員のメリットとしては、勤務日数や時間が少ないためワークライフバランスが確保しやすいことや、再雇用の場合には定年後も慣れた職場で働けることが挙げられます。
一方、デメリットは雇用の不安定さや、再雇用の場合には元部下が上司になることがある点です。
嘱託社員として働く際には、契約内容を十分に確認し、契約期間、給与、労働時間、福利厚生などを詳細に把握することが重要です。
東京大学法学部・東京大学法科大学院卒。アディーレ入所後は未払残業代請求事件をメインに担当し、2022年より労働部門の統括者。「自身も同じ労働者だからこそ、労働者の方々に寄り添える」との信念のもと、より多くのご依頼者様を、より良い解決へ導くことを目標に尽力している。東京弁護士会所属。
嘱託社員とは
「嘱託」とは、仕事などを誰かに頼んで任せることを意味します。
嘱託社員には、法律上の明確な定義があるわけではなく、その実態は職場によってまちまちです。
一般的に非正規雇用の一つとして、定年後に再雇用される場合や、契約期間を定めて採用される場合などの呼び名として使われることが多いようです。
したがって、ほかの社員とは異なる待遇や労働条件が設定されていることがあります。
この記事では、嘱託社員とは、有期雇用契約を締結している社員であることを前提に、嘱託社員について解説することとします。
嘱託社員の待遇について
明確な定義はないものの、嘱託社員は、非正規雇用の一つを指すことが多いため、一般的には正社員よりも給与などの待遇が良くないというイメージがあることでしょう。
嘱託社員がフルタイム勤務ではないことも多いです。
もっとも、特定の業務に対する専門性や経験を見込まれ、期間限定で雇用されていることもあり、そのような場合には、むしろ高給取りなこともあると考えられます。
また、勤務日数などの加入条件を満たす限り、社会保険にも加入しなければならないのは正社員と同様です。
どのような経緯であれ、嘱託社員として働く際には契約内容や労働条件を十分に確認するようにしましょう。
嘱託社員とほかの雇用形態の違い
次に、嘱託社員と正社員などとの一般的な違いについて、解説します。
(1)正社員との違い
大きな違いは、雇用期間が決まっているかどうかです。
正社員の場合、会社とは期間の定めのない雇用契約を締結しています。
一方、嘱託社員の場合、契約期間があるため、契約期間が満了すれば、更新されない限り雇止めとなってしまいます。
そのため、法律上容易には解雇されない正社員と比べて不安定な働き方であるといえるでしょう。
もっとも、雇い止めに一定の制限をかけるための「雇い止め法理」は存在します。不当な雇止めにあったのではないかとお悩みの際は、労働問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
正社員との待遇格差などについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(2)パート・アルバイトとの違い
嘱託社員も、パートやアルバイトも、法律上明確な定義があるわけではないためその違いは職場によってまちまちです。
一般的に、どちらも非正規雇用の労働者を指す言葉ですが、パートやアルバイトはフルタイム勤務ではない労働者を指す言葉です。
一方、嘱託社員は、正社員と同じ所定労働時間のこともあります。
もっとも、嘱託社員もパートやアルバイトと同じく、正社員より労働時間が短いことも多いため、呼び名は職場によってまちまちで、明確な違いはないといえるでしょう。
(3)契約社員との違い
契約社員にも法律上の定義はなく、一般的には期間の定めがある雇用契約を締結している労働者を指すため、嘱託社員との間に明確な違いはありません。
同じ職場に嘱託社員と契約社員の両方が存在する場合、定年後に再雇用されている労働者のことを嘱託社員と呼んで区別している職場も多いようです。
また、有期雇用の労働者のうち、フルタイム勤務の労働者を契約社員、短時間勤務あるいは勤務日が週5日未満の労働者を嘱託社員と呼んで区別している場合もあります。
嘱託社員のメリット・デメリット
嘱託社員として働く際に生じ得るメリットとデメリットの両方をご紹介します。
(1)メリット
嘱託社員は、正社員と比べて勤務日数や勤務時間が少ないことが多いため、ワークライフバランスを確保しやすいといえるでしょう。
また、定年後の再雇用の場合、通い慣れた職場で働き続けられることも、メリットだと感じる人が多いようです。今まで培った経験やスキルを発揮しやすいこともメリットになるでしょう。
(2)デメリット
デメリットは、やはり不安定な雇用形態であることでしょう。
前述のとおり、期限の定めがある以上、正社員が解雇されるリスクに比べて、契約の更新を拒絶される、つまり雇止めにあってしまうリスクは高いといえます。
また、定年後に再雇用されて嘱託社員として働く場合には、元部下が上司になることも少なくないため、やりづらいと感じる人もいるようです。
嘱託社員として働く際の注意点
最後に、嘱託社員として働く際に注意しておきたいポイントをご紹介します。
(1)契約内容の確認ポイント
嘱託社員として働く際には、事前に契約内容をよく確認することが非常に重要です。
まず、契約期間を確認しましょう。契約が期間限定であるため、終了時期や更新の可能性について確認することが必要です。
次に、給与や手当、ボーナスの支給条件を詳細に確認し、納得のいく条件であるかを確認します。
また、労働時間や勤務形態についても明確にしておくことが重要です。特に、残業や休日出勤の取り扱いについては、事前に確認しておくことでトラブルを防ぐことができます。
さらに、福利厚生や社会保険についても確認し、自分の生活にどのような影響があるかを理解しておくことが大切です。
(2)トラブル回避のための対策
まず、(1)で述べたとおり、契約書を詳細に確認し、不明点や疑問点があれば事前に会社側に確認しましょう。労働条件に関する変更があった場合には、なるべく書面での確認を求めることが重要です。
次に、労働環境や職場のルールについても確認・把握しておくようにしましょう。
これにより、職場でのコミュニケーションが円滑になり、誤解や摩擦を避けることができます。
【まとめ】嘱託社員は非正規雇用の一つ。実態は職場によってさまざま
嘱託社員には、法律上の明確な定義があるわけではありません。
一般的には期間の定めのある雇用契約を締結している労働者のことを指します。
いわゆる非正規雇用の一つですが、パート・アルバイトや契約社員と法律上明確な違いがあるわけではありません。
嘱託社員として働くことには、メリットとデメリットの両面があると考えられますが、契約内容は事前によく確認するようにしましょう。
どのような働き方であっても、その内容をしっかりと把握し、納得したうえで就職することが大切です。