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拘禁刑はなぜ導入される?施行はいつから?新しい刑罰を弁護士が解説

作成日:
LA_Ishii

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

2025年6月1日から改正刑法が施行され、新しく拘禁刑という刑罰が導入されます。
それにともない、今までの懲役刑や禁錮刑は廃止され、拘禁刑に一本化されることとなっています。
なぜ、このような刑罰の変更が必要とされたのでしょうか?

この記事では、拘禁刑導入の背景や目的、従来の制度との違い、そして期待される効果と課題について弁護士が解説します。
刑事司法制度の未来を左右するかもしれないこの重要な改正について、一緒に理解を深めていきましょう。

この記事を読んでわかること

  • 拘禁刑とは
  • 拘禁刑が導入される理由
  • 拘禁刑の特徴と従来の制度との違い

ここを押さえればOK!

2025年6月1日から施行される改正刑法により拘禁刑が導入され、懲役刑と禁錮刑が廃止されます。刑罰の種類が変更されるのは、1907年の刑法制定以降初めてのことです。

従来の制度では、受刑者の高齢化、再犯率の高さ、懲役刑と禁錮刑の区別の意味の薄れなどの課題がありました。

拘禁刑の特徴は、受刑者の特性をより重視した処遇・教育を行う点にあります。
拘禁刑の場合、刑務作業は必ずしも義務ではなく、受刑者の資質や希望に応じて適切な作業や教育プログラムが提供されます。

拘禁刑の導入により期待されることは、受刑者の更生支援強化、社会復帰の促進、個別化された処遇の実現などです。具体的には、個別の処遇計画の立案、就労支援プログラムの充実、社会適応訓練の実施などが行われます。

一方で、新制度の円滑な運用には、専門的人材の確保、施設設備の整備、地域社会や企業との連携強化、国民の理解促進などの課題があります。これらに適切に対応しながら、拘禁刑制度を効果的に運用していくことが今後の刑事政策の焦点となるでしょう。
この記事の監修弁護士
弁護士 重光 勇次

弁護士 重光 勇次

アディーレ法律事務所

同志社大学、及び、同志社大学法科大学院卒。2009年弁護士登録。アディーレに入所後、福岡支店長、大阪なんば支店長を経て、2022年4月より商品開発部門の統括者。アディーレがより「身近な法律事務所」となれるよう、新たなリーガルサービスを開発すべく、日々奮闘している。現在、神奈川県弁護士会所属

拘禁刑とは

2025年6月1日から施行される改正刑法により、拘禁刑という刑罰が新しく導入されます。
つまり、今までの懲役刑と禁錮刑は廃止され、拘禁刑に一本化されるのです。
刑罰の種類が変更されるのは、刑法が1907(明治40)年に制定されてから初めてのことです。

拘禁刑は、刑事施設に収容される点では懲役刑や禁錮刑と同じですが、受刑者の特性や意向を考慮し、より受刑者の処遇の充実を図ることが拘禁刑を導入した目的であるようです。
具体的には、受刑者一人ひとりの希望や特性に合わせた処遇や、受刑者の社会復帰のためのより効果的な支援が期待されているといえるでしょう。
拘禁刑の導入は、日本の刑罰制度を現代社会のニーズに適応させる重要な一歩となるはずです。

そもそも刑罰の目的とは

刑罰の目的には、従来からいくつかの考え方がありました。
ひとつは、刑罰は、罪を犯したことに対する報い、ペナルティだとする考え方(応報刑論)です。

また、犯罪には刑罰が与えられることを予告することによって、犯罪者ではない一般の人に犯罪を思い止まらせる効果を狙う、という考え方を、「一般予防」といいます。
誤解をおそれず言えば、「威嚇」や「見せしめ」と言えばわかりやすいかもしれません。

そして、一般予防に対し、「特別予防」という考え方があります。
特別予防は、犯罪者に対し刑罰や教育などその他の措置を講じることによって、再犯を防止しようとする考え方のことです。

今回の拘禁刑の新設は、犯罪者に刑罰を与えて懲らしめるだけではなく、改善更生や矯正教育により、再犯の防止を目指すものであるといえるでしょう。

なぜ拘禁刑が導入されるのか

今回の改正により、なぜ懲役刑と禁錮刑が一本化され、あらたに拘禁刑が導入されたのかについて解説します。

(1)従来の制度における課題

従来の制度において、受刑者の処遇につき次のような課題が指摘されていました。

  • 受刑者の高齢化
  • 再犯率の高さ
  • 懲役刑と禁錮刑を区別する意味があまりない

(2)懲役刑と禁錮刑の違い

懲役刑と禁錮刑の違いは、主に「刑務作業が義務であるか否か」です。
しかし、禁錮刑の受刑者は懲役刑の受刑者に比べて圧倒的に少ないうえ、禁錮刑の受刑者の多くが自ら希望して刑務作業に従事しているという実態があります。
その実態に鑑み、「懲役刑と禁錮刑を区別する意味はないのでは?」という意見がありました。

ちなみに、拘禁刑の場合、刑務作業は必ずしも義務とはされておらず 、刑務作業を行うかどうかは受刑者により異なります。

拘禁刑の特徴と従来の制度との違い

拘禁刑の最大の特徴は、従来の懲役刑と禁錮刑を一本化し、受刑者の特性をより重視した処遇・教育を行う点です。
前述のとおり、懲役刑には作業が義務付けられ、禁錮刑には作業の義務がありませんでしたが、拘禁刑ではこの区別がなくなります。代わりに、受刑者の資質や希望に応じて、適切な作業や教育プログラムが提供されることとなっています。
また、社会復帰を見据えた処遇計画が立てられ、より効果的な更生支援が可能になると期待されています。
さらに、必要に応じて受刑者の意向も考慮されるため、自主性を尊重した処遇や教育の実施が予定されています。

拘禁刑の導入で期待されていること

では、拘禁刑の導入によって、具体的にどのようなことが期待されているのでしょうか。

(1)受刑者の更生支援強化

拘禁刑導入の主要な目的の一つは、受刑者の更生支援を強化することです。
新しい制度では、受刑者一人ひとりの特性、背景、ニーズを詳細に評価し、個別の処遇計画を立てます。
これにより、従来よりも効果的な教育プログラムや職業訓練を提供することを目指しています。例えば、薬物依存の問題を抱える受刑者には専門的な治療プログラムを、学力課題がある受刑者には適切な教育や職業訓練を重点的に行う、といった具合です。
また、心理的なサポートや生活指導なども、個々の状況に応じて柔軟に提供されることとなっています。
このように、従来よりも個別化された処遇により、受刑者の更生意欲を高めることや、再犯防止効果が期待されています。

(2)社会復帰の促進

刑法改正による拘禁刑の導入による受刑者の矯正処遇の改善が目指していることの一つに、受刑者の円滑な社会復帰を促進することがあります。
具体的には、就労支援プログラムの充実、社会適応訓練の実施、出所後の住居や就職先の確保支援などが行われます。
また、段階的な社会復帰プログラムを導入し、徐々に社会生活に慣れる機会を提供することなどが提案されています。
これらの取り組みにより、受刑者が出所後にスムーズに社会に再統合され、再犯を防ぐことが期待されています。

(3)受刑者の処遇・教育はどう変わる?

拘禁刑が新設された趣旨は、各受刑者の特性に応じ、その更生及び再犯防止を図るために、より柔軟な処遇の実施を可能にすることです。
以前からも、刑務所などでは受刑者の更生のため、その特性に応じた処遇や教育に努めてきたのですが、懲役刑・禁錮刑という自由刑が拘禁刑に一本化されることにともない、受刑者の処遇方針も新たに検討されることとなっています。

たとえば、受刑者には次のような更生プログラムの実施が検討されています。

【検討例】

受刑者の特性特性に応じた矯正処遇の主な内容
若年の受刑者・学力向上のための教科指導
・職業的な技能及び知識を付与する職業訓練
出所後、生計を維持すべき受刑者・就労経験が少ない者:勤労習慣や忍耐力・集中力等を身に付けさせるための作業
・就労経験が相応にある者:有用な作業や職業訓練を中心とした処遇
高齢者・障害を有する受刑者・認知機能や身体機能の維持・向上に資する作業(訓練)
・出所後の社会適応のための知識・能力を付与する改善指導、福祉的支援等
依存症などを抱えている受刑者・依存症などの問題性に応じた改善指導
・出所後の就労を見据えた作業

参考:矯正処遇等の在り方に関する検討会|法務省
(https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei05_00143.html)

拘禁刑がもたらす影響と今後の課題

拘禁刑の導入は、日本の刑事司法制度に大きな変革をもたらすと期待されています。
受刑者の更生と社会復帰の促進により、再犯率を低下させることが求められているのでしょう。

一方で、新制度の円滑な運用には課題も存在します。
まず、各受刑者の特性に応じた、個別化された処遇を実現するための専門的な人材の確保や、施設設備の整備が必要です。
また、社会復帰支援の充実には、地域社会や企業との連携強化が不可欠といえるでしょう。

さらに、新制度に対する国民の理解を深めるだけでなく、元受刑者の社会復帰に対する偏見を減らすことも引き続き重要な課題であるといえます。
これらの課題に適切に対応しながら、拘禁刑制度を効果的に運用していくことが、今後の刑事政策の焦点となるでしょう。

【まとめ】

2025年6月1日から施行される改正刑法で導入される拘禁刑は、従来の懲役刑と禁錮刑を一本化した新しい刑罰です。
刑法改正による拘禁刑の導入や受刑者の矯正処遇の改善により、受刑者一人ひとりの特性に応じた処遇や更生プログラムの提供を目指しています。

拘禁刑の導入により、再犯率の低下が期待される一方、専門人材の確保や施設整備、社会との連携強化などの課題も存在します。
今後は、これらの課題に適切に対応しながら、新制度を効果的に運用し、より人道的で効果的な刑事司法制度の実現を目指すことが重要といえるでしょう。

この記事の監修弁護士
弁護士 重光 勇次

弁護士 重光 勇次

アディーレ法律事務所

同志社大学、及び、同志社大学法科大学院卒。2009年弁護士登録。アディーレに入所後、福岡支店長、大阪なんば支店長を経て、2022年4月より商品開発部門の統括者。アディーレがより「身近な法律事務所」となれるよう、新たなリーガルサービスを開発すべく、日々奮闘している。現在、神奈川県弁護士会所属

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