相続放棄の書類を裁判所に提出したものの、「本当に手続きが完了したのだろうか?」「これで借金から解放されたのか?」と不安を感じていないでしょうか。
その不安を解消し、法的に被相続人が残した負債から解放されたことを確認できるのが、家庭裁判所から交付される「相続放棄申述受理通知書」です。
しかし、この通知書を受け取った後、「相続放棄申述受理証明書」という名称が似た書類との違いに混乱し、その後の金融機関や債権者対応で戸惑う方も少なくありません。
本記事では、まず受理通知書が持つ法的効力と受け取るまでの流れを解説します。
さらに、再発行ができない通知書と、再発行が可能な証明書との違いを比較し、不動産登記や債権者対応といった実務でどちらの書類が必要となるかを具体的にご説明します。
万が一、通知書が届かない、または紛失してしまった場合の対処法まで網羅的に解説します。
ここを押さえればOK!
この通知書は原則として再発行ができないため、大切に保管しましょう。
金融機関や不動産登記といった外部機関に対し、相続放棄の事実を証明する必要がある実務上の場面では、別途申請により交付される、相続放棄申述受理証明書の提出を求められることが一般的です。
この受理証明書は、申述人だけでなく利害関係人も申請して取得できます。手数料はかかりますが、再発行が可能です。
万が一、通知書が届かない場合は、管轄の家庭裁判所に問い合わせましょう。
相続放棄後の手続きを円滑に進めるためには、相続放棄申述受理通知書と、相続放棄申述受理証明書の役割の違いを理解することが大切です。
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相続放棄申述受理通知書とは?法的意味と受け取るまでの流れ
裁判所は、相続放棄の申述を受理する審判を行うと、相続放棄の申述をした者に対して受理したことを書面で通知します。
この書面の法的意味と受け取るまでの流れを説明します。
(1)「相続放棄申述受理通知書」が持つ法的効力と申述人にとっての重要性
相続放棄申述受理通知書は、家庭裁判所に対して行った相続放棄の申述が、裁判所によって受理されたことを示す公的な文書です。
相続放棄の申述を受理するかどうかは、家庭裁判所の審判という手続きで行われ、審判の結果は申述人に通知されます(家事手続法規則106条2項)。
申述が受理されたときに通知される書面のことを、「相続放棄申述受理通知書」と呼んでいるのです。
相続放棄の申述を行った人は、この通知書により、「相続放棄手続が無事終了し、被相続人の残した借金や負債の支払い義務から解放された」ということを知ることができます。
相続放棄の手続きにおける最終段階を意味するこの通知書は、本人が望んだ「相続人としての権利義務からの解放」が法的に認められた証拠として極めて重要な意味を持ちます。
(2)申述から通知書が届くまでの一般的な期間と郵送方法
相続放棄の申述書を家庭裁判所に提出した後、受理通知書が手元に届くまでの期間は、裁判所の状況によって多少変動します。
一般的には、申述から概ね1~2週間程度で、まず家庭裁判所から申述の意思確認のための「照会書・回答書」が届きます(ただし、申述内容が明確である場合などには、照会書が送付されないこともあります)。
この照会書・回答書を返送し、受理がなされたら、当事者に受理通知書が交付されます。
通知書に必ず記載されている4つの基本情報
相続放棄申述受理通知書は、各家庭裁判所によって書式が若干異なりますが、相続放棄が法的に成立したことを証明する上で必要となる次の4つの基本情報が必ず記載されています。
- 裁判所が管理するための「事件番号」
- 相続放棄の申述を行った「申述人」の氏名
- 亡くなった「被相続人」の氏名
- 相続放棄の申述を受理した日
この受理日が、申述人が法的に相続人ではなくなった日付となります。
「受理通知書」と「受理証明書」の決定的な3つの違い
相続放棄の手続きを終えた方が次に直面しやすいのが、相続放棄申述受理通知書と、名称が似ている相続放棄申述受理証明書との混同です。
この二つの書類の役割と用途を理解しておくと、その後必要な手続きもスムーズに進められるでしょう。
(1)自動交付される通知書と申請が必要な証明書
相続放棄申述受理通知書は、裁判所が申述を受理すると、その事実を申述人に知らせるために自動的に交付される書類です。
一方、相続放棄申述受理証明書は、申述人本人だけでなく、利害関係人(債権者や次順位の相続人など)が外部機関に対して相続放棄の事実を公的に証明するために、裁判所へ別途交付申請を行って初めて取得できる書類です。
証明書は、第三者に対して「誰々が相続放棄を行ったこと」を証明する書面として機能することから、申請手続きが設けられています。
(2)再発行は不可能か?紛失時のリスクと代替策
再発行の可否は、通知書と証明書の最も決定的な違いです。
相続放棄申述受理通知書は、再発行ができません。そのため、紛失や汚損はそのままリスクとなりますので、注意をして保管する必要があります。
これに対し、相続放棄申述受理証明書は、外部機関への提出のために何度も利用されることが想定されているため、再発行が可能です。
万が一、通知書を紛失した場合でも、受理されたという事実は変わらないため、代替手段として証明書を裁判所に申請して取得することができます。
(3)費用はかかるか?交付手数料(印紙代)の有無
取得にかかる費用も両者の違いの一つです。
相続放棄の申述の受理後、家庭裁判所から自動的に交付される相続放棄申述受理通知書は、交付手数料は別途かかりません。
一方で、相続放棄申述受理証明書は、裁判所に交付申請を行う際、1通あたり150円の収入印紙を交付手数料として納める必要があります。証明書は何枚でも取得可能ですが、必要枚数分の収入印紙が必要となります。
相続放棄の事実を証明する書類が必要となる実務上の3つのシーン
通知書と証明書の違いを理解した上で、実務において相続放棄の事実を第三者に証明する必要がある具体的な場面と、その際に求められる書類について確認しましょう。
通知書は1通しかありませんので、通常、提出が必要になるのは受理証明書となります。
(1)金融機関(銀行・証券会社)での預貯金解約手続き
被相続人が残した銀行の預金口座や証券口座を解約し、残高を払い戻す相続手続きを行う際、金融機関は下記のような書類の提出を求めます。
- 金融機関所定の届出書
- 遺言書
- 遺産分割協議書
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
- 相続放棄した人がいる場合には相続放棄申述受理証明書 など
提出書類は、金融機関によって、また遺言書の有無などの事情によって異なります。
基本的に、書類は原本で提出する必要がありますので、1通しかない通知書ではなく、証明書の方を提出することになるでしょう。
解約手続きをしようとする金融機関の受付窓口に連絡し、手続と必要な資料について確認するようにします。
(2)不動産の相続登記(名義変更)で利用する場合
被相続人が不動産(土地や建物)を所有していた場合、その名義を相続人に変更する相続登記の手続きにおいても、相続人の中に相続放棄をした人がいる場合には、相続放棄の事実の証明が必要です。
そこで、相続放棄申述受理証明書を相続登記の手続きで利用することになります。
相続放棄申述受理通知書を利用できるケースもあるようですが、こちらは1通しかなく再発行できませんので、受理証明書を利用した方がよいでしょう。
(3)債権者から督促を受けた際に提示する場合
相続放棄が完了した後でも、被相続人の債権者がその事実を知らず、相続放棄をした人に対して借金の支払いを求めて督促状を送付してくることがあります。
この場合、自身がすでに相続人ではないことを債権者に伝えた方がよいでしょう。
債権者は、相続放棄をしたことを確認するために、何らかの資料の提出を求めてくることがあります。その際には、相続放棄申述受理証明書を提出するとよいでしょう。もしコピーでもよいのであれば、相続放棄申述受理通知書のコピーを提出するという方法もあります。
「届かない」「紛失した」場合の対処法
受理通知書は普通郵便で送付されます。
届かない、あるいは紛失してしまうというトラブルも想定されます。
そのような場合の冷静な対処法を事前に確認しておくことが重要です。
(1)申述受理通知書が届かない場合には家庭裁判所に問い合わせる
相続放棄の申述を行った後、受理されれば1~2週間程度で通知書は届きます。
そこで、申述を行ってから、又は照会に対する回答を送付してから2週間以上経過しても通知書が届かない場合には、一度申述を行った家庭裁判所に問い合わせてみるとよいでしょう。
(2)通知書を紛失・汚損した際には証明書の交付を申請する
相続放棄申述受理通知書は原則として再発行ができませんが、通知書を紛失してしまったとしても、相続放棄の申述が認められたという事実は消えることはありません。
この場合、再発行が可能な相続放棄申述受理証明書を家庭裁判所に交付申請することで、受理の事実を対外的に証明することができます。
証明書の取得方法としては、相続放棄の申述を行った被相続人の死亡時の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、交付申請書、1通あたり150円の収入印紙、本人確認書類などを揃えて申請します。
必要な書類については、事前に該当する家庭裁判所のホームページを確認したり、電話で問い合わせるとよいでしょう。
万が一「不受理通知書」が届いた場合の次の選択肢
割合としては非常に少ないですが、相続放棄の申述が認められず却下されると、「不受理通知書」が届きます。2度目の相続放棄はできません。ただし、却下に対して2週間以内に即時抗告をし、高等裁判所に再度審理してもらうことができます(家事事件手続法201条9項3号、86条)。
専門的な知識や却下理由の分析などが必要になりますので、個人で相続放棄の申述を行って却下された場合には、速やかに弁護士に相談する事をお勧めします。
相続放棄後の手続きは弁護士に相談を
相続放棄の手続きは、個人でも可能です。
しかし、仕事や家事育児など、忙しい毎日を送りながら、必要書類をそろえて書面を作成し、郵送するのには労力がかかります。
弁護士に依頼すれば、必要な書類収集や書面作成、申述までサポートを受けることができます。契約内容にもよりますが、債権者への連絡対応や、他の相続人への連絡対応も任せられることもあります。
相続放棄手続きをスムーズに進めるためにも、弁護士への相談・依頼を検討することをお勧めします。
【まとめ】相続放棄申述受理通知書は1通のみ、証明書は再発行可能
相続放棄申述受理通知書は、申述人が相続人でなくなったことを示す重要な文書です。
しかし、この通知書は原則として再発行ができないという制約があるため、金融機関や不動産登記といった外部機関に提出する公的な証明が必要な場合は、別途申請が必要で再発行可能な相続放棄申述受理証明書を取得し活用することが一般的な実務です。
相続放棄をお考えの方は、1人で悩まず、一度アディーレ法律事務所にご相談ください。























