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失踪宣告とは?行方不明者の家族が知るべき申立て後の流れや費用を解説

弁護士 重光 勇次

監修弁護士:重光 勇次

(アディーレ法律事務所)

特に力を入れている分野:相続、アスベスト救済、インターネット権利侵害等

作成日:
LA_Ishii

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

大切なご家族の行方が分からず、悩み続けていませんか?
再婚や相続など、現実的な問題解決のために必要なのが「失踪宣告」という法的手続きです。

本記事では、失踪宣告の概要や申立方法などについて分かりやすく解説します。
法的な区切りをつけ、前に進むための一助となれば幸いです。

ここを押さえればOK!

ご家族の行方が長期間分からない場合、法的に死亡したとみなす「失踪宣告」という制度があります。
これには、生死不明の状態が7年間続く「普通失踪」と、災害や事故後1年間生死不明な「危難失踪」の2種類があります。
家庭裁判所に申立てを行い、認められると、戸籍上「死亡」扱いとなり、遺産相続や生命保険の受け取りが可能になります。
失踪宣告には厳格な審査や手続きが必要で、半年〜1年程度の期間を要します。
遺産相続でお悩みの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。

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失踪宣告とは?

大切なご家族が行方不明となり、長期間連絡が取れない状況は、残されたご家族にとって計り知れない不安と苦痛を伴うものです。
しかし、感情的な問題とは別に、現実の生活では「本人が不在であること」による法的な不都合が生じることがあります。

まずは、行方不明者の生死が不明な場合に、法的な解決を図る「失踪宣告」という制度について、その仕組みと効果を解説します。

(1)制度の概要と法的な効果

失踪宣告とは、行方不明者の生死が分からない状態が一定期間続いた場合に、家庭裁判所の審判により、法律上「死亡したもの」とみなす制度です(民法第30条)。
人が亡くなると相続が開始されますが、行方不明のままでは戸籍上「生存」している扱いとなるため、いつまで経っても遺産相続の手続きを始めることができません。
また、行方不明者の配偶者は再婚できません。

失踪宣告が認められると、戸籍にその旨が記載され、法律的には亡くなったのと同じ効果が生じます。これにより、以下のことが可能になります。

  • 遺産相続の開始: 預貯金の解約、不動産の名義変更などができるようになります。
  • 生命保険金の受取: 死亡保険金の請求が可能になります。
  • 婚姻関係の解消: 配偶者は、再婚が可能になります。

(2)「普通失踪」と「危難失踪」の違い

失踪宣告には、失踪の原因や状況によって「普通失踪」と「危難失踪(特別失踪)」の2種類があります。

  • 普通失踪(民法第30条1項):家出や蒸発など、一般的な理由で連絡が取れなくなったケースです。最後に音信があった時(生存が確認できた最後の時点)から7年間生死が不明である場合に認められます。法的には、この「7年の期間が満了した時」に死亡したとみなされます。
  • 危難失踪(特別失踪)(民法第30条2項):戦争、船舶の沈没、震災などの「危難(命に関わる緊急事態)」に遭遇し、その危難が去った後1年間生死が不明である場合に認められます。 法的には、「危難が去った時(沈没時や震災発生時など)」に死亡したとみなされます。

(3)単なる「家出」や「行方不明者届」との違い

よくある誤解として、「警察に行方不明者届(昔の捜索願)を出しているから、何年か経てば自動的に死亡扱いになるのではないか」というものがあります。

しかし、警察への届出はあくまで「捜索」を依頼するためのものであり、法的な身分関係には影響しません。
警察に行方不明者届を出していたとしても、家庭裁判所で失踪宣告の手続きを行わない限り、戸籍上その人は「生きている」ものとして扱われます。

そのため、どれだけ長い年月が経過しても、失踪宣告を経なければ、本人の財産を処分したり、遺産分割協議を行ったりすることはできません。
失踪宣告は、ご家族が前に進むために法的な区切りをつける、重要な手続きなのです。

失踪宣告の手続方法と流れ

失踪宣告は、ご自身の判断だけで行えるものではなく、家庭裁判所での厳格な手続きが必要です。
申立てから宣告までには時間を要するため、全体の流れを把握して計画的に進めることが大切です。

参考:失踪宣告|裁判所

(1)申立ができる人と管轄の裁判所

この手続きを申し立てることができるのは、行方不明者の「利害関係人」です。
具体的には、不在者の配偶者、相続人にあたる者、受遺者(遺言で財産をもらう人)などが該当します。単なる友人や知人は含まれません。

申立先は、申立人の住所地ではなく、「不在者(行方不明者)の従来の住所地または居所地」を管轄する家庭裁判所です。

(2)手続きの具体的なステップと所要期間

手続きは一般的に以下の流れで進みます。期間はケースによりますが、申立てから完了まで半年〜1年以上かかることが一般的です。

  1. 家庭裁判所への申立て:必要書類を揃えて、管轄の家庭裁判所に提出します。
  2. 家庭裁判所による調査:申立人や親族に対し、書面照会や面談が行われ、失踪の事実確認がなされます。
  3. 公示催告(こうじさいこく):裁判所が「この人が行方不明です。知っている人は届け出てください」という情報を「官報」や裁判所の掲示板に掲載します。 この掲示期間は、普通失踪で3ヶ月以上、危難失踪で1ヶ月以上必要です。
  4. 期間内に届出がない場合、失踪宣告の審判が下されます。
  5. 確定と戸籍の届出:審判が確定した後、10日以内に申立人が市区町村役場へ届出をします。

(3)必要な費用と書類

手続きには、実費として以下の費用がかかります。

  • 収入印紙: 800円分
  • 連絡用郵便切手: 数百円〜数千円程度(裁判所により異なる)
  • 官報公告料: 4,816円(※手続きが進んだ段階で納めます)

主な必要書類は、次の通りです。

  • 申立書(裁判所のHPから取得可能)
  • 不在者の戸籍謄本・戸籍の附票
  • 申立人の利害関係を証する資料(親族関係なら戸籍謄本)
  • 失踪を証する資料(警察が発行する「行方不明者届受理証明書」など、客観的に不在を証明できるもの)

参考:失踪宣告の申立書|裁判所

失踪宣告が認められたあとの手続き

家庭裁判所で失踪宣告の審判が下されても、それで全てが終わるわけではありません。
申立人自身による役所への届出や、失踪宣告がなされた人を被相続人とする相続手続きが必要です。

(1)戸籍の届出と相続の開始

裁判所の審判だけでは、自動的に戸籍の記載は変わりません。
申立人は、失踪宣告の審判が確定してから「10日以内」に、失踪宣告を受けた人の本籍地または申立人の住所地の市区町村役場へ「失踪届」を提出する必要があります。

この届出が受理されると戸籍上に「死亡」と記載され、正式に遺産相続の手続きを進められるようになります。
なお、死亡したとみなされる日は届出日ではなく、普通失踪なら「7年の期間満了日」、危難失踪なら「危難が去った時」までさかのぼります。

(2)生命保険金や遺族年金の請求

戸籍上の手続きが完了すると、死亡保険金の受け取りや遺族年金の請求が可能になります。

注意が必要なのは「時効」です。
保険金請求権(通常3年)や年金給付を受ける権利(通常5年)には時効があります。
手続きを放置すると権利が消滅するリスクがあるため、宣告後はすみやかに保険会社や年金事務所へ連絡を入れることが大切です。

もしも失踪宣告後に本人が生きて帰ってきたら?

失踪宣告によって法的に死亡したとみなされた後、万が一ご本人が無事に帰宅されたり、生存が確認されたりする可能性はゼロではありません。
しかし、本人が生きて戻ってきたからといって、自動的に戸籍や財産の状態が元に戻るわけではないため、法的な手続きが必要になります。

(1)失踪宣告の取消手続き

法律上の「死亡」扱いを取り消すためには、本人または利害関係人が、家庭裁判所に対して「失踪宣告取消しの申立て」を行う必要があります。
裁判所で本人の生存が確認され、失踪宣告の取消しの審判の決定があると、2週間後にその審判が確定します。
なお、戸籍の記載を変更するためには、失踪宣告の場合と同様、市町村役場への届出が必要です。

(2)相続した財産の返還義務

宣告が取り消されると、原則として失踪宣告によって財産を得た者はその財産を本人に返還しなければなりません。
ただし、本人と取引の相手方の双方が、本人が生きている事実を知らずに行った行為(売買契約など)は、その効力を失わないとされています。

また、受け取っていた遺産についても、本人が生きている事実を知らずに受け取っていた場合には、すべてを返す必要はなく「現に利益を受けている限度(現存利益)」で返還すればよいとされています。
つまり、すでに遊興費として消費してしまった分は原則として返還不要ですが、手元に現金や不動産が残っている場合には返還が必要です。

失踪宣告後の「遺産相続」を弁護士に依頼するメリット

失踪宣告はあくまで相続を始めるための入り口に過ぎません。
本当に大変なのは、その後に待っている遺産分割協議や不動産などの名義変更です。
特に失踪宣告では、「いつ死亡したとみなされるか」によって、相続人になれる人(相続権を持つ人)が変わってしまうケースがあります。
法的な判断を誤ると、あとから遺産分割協議が無効になるおそれもあるため、専門家のチェックが不可欠です。

弁護士に依頼することで、煩雑な戸籍収集や他の相続人との交渉を任せられ、将来的なトラブル予防も期待できます。
精神的な負担を少しでも軽くし、安心できる解決を目指すためにも、弁護士への相談・依頼をおすすめします。

【まとめ】

失踪宣告は、残されたご家族が前を向いて生活していくための法的な手続きです。
しかし、宣告が認められた後には、本格的な「遺産相続」の手続きが待っています。
複雑な相続問題は一人で抱え込まず、一度アディーレ法律事務所にご相談ください。

遺産相続の手続はアディーレにお任せください!