「保険会社提案の示談金額に納得できず、示談交渉が進まない…。交渉が決裂したらどうなるの?」
交通事故の被害にあった場合、加害者やその保険会社に対して生じた損害の賠償を請求できます。
ただ、治療費など実費が賠償される損害とは違い、慰謝料など一律に金額が決まっておらず、交渉による増額の余地がある損害については、なかなか保険会社と金額などについて合意ができずに示談交渉が決裂することも珍しくありません。
特に、示談交渉に不慣れだと、インターネットなどで適正な慰謝料を調べてご自身で保険会社と交渉をしても、なかなか保険会社が応じず交渉が決裂して示談が進まないことが多いです。
今回は、そんな時どうしたら良いのかご説明します。
この記事では、次のことについて弁護士が解説します。
- 交渉が決裂する理由
- 交渉が決裂した場合の解決方法
- 交渉を有利に進める方法

東京大学法学部卒。アディーレ法律事務所では北千住支店の支店長として、交通事故、債務整理など、累計数千件の法律相談を対応した後、2024年より交通部門の統括者。法律を文字通りに使いこなすだけでなく、お客様ひとりひとりにベストな方法を提示することがモットー。第一東京弁護士会所属。
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交通事故の示談交渉が決裂する理由
交通事故の示談交渉が決裂する理由には、主に次のようなものがあります。
(1)損害と事故との因果関係について主張が食い違う
交通事故による被害について加害者側に損害賠償を請求するためには、被害者が被った損害と交通事故との間に『相当因果関係』(その事故からその結果が生じることが相当と言えること)が認められなければなりません。
さらに、支出した費用などが必要かつ相当な範囲であることなどが求められます。
このような観点から、例えば、次のような内容について主張が食い違うことがあります。
- 病院に通った治療費を請求する場合に、その通院期間や費用が事故やけがの内容と比べて適切か
- 仕事を休んだために休業損害を請求する場合に、それだけの期間休む必要があったのか など
また、例えば、交通事故によるケガで身体の一部にしびれなどの後遺症が残った場合にも食い違いが起きることがあります。
被害者からすれば事故前には全く問題がなかったのだから、事故が原因なのは明らかでも、加害者側の保険会社から「しびれは事故以前から生じていた可能性があり、今回の事故が原因とは言い切れない」と主張されることがあります。これは、しびれの症状について、MRI検査やCT検査といった精密検査の画像からは確認できない場合によく起こります。
このように、被害者に生じた損害と事故との因果関係について主張が食い違うのが、示談交渉が決裂する理由の一つです。
(2)過失割合に納得できない
過失割合とは、事故が発生したことについての各当事者の過失(不注意・ミス)の割合を言います。
例えば被害者の過失が2割、加害者の過失が8割の場合、過失割合は20:80となります。
仮に、交通事故により被害者に生じた損害額が1000万円だった場合、1000万円のうち200万円は被害者自身が負担し、加害者は800万円を被害者に支払うことになります。

過失割合が大きいほど責任が重くなるため、お互いに自分の過失を小さくするような主張をすることは決して珍しくありません。
これにより双方の主張に食い違いが生じるのです。
例えば、被害者が「相手がウインカーを点けずに曲がってきたから衝突した」とか、「衝突の時、相手方の信号は黄色から赤色に変わっていた」など主張するのに対し、加害者がこれを否定する場合です。
目撃者がおらず、ドライブレコーダーなどの客観的な証拠が乏しいケースでは、深刻な争いとなることも多く、これが交渉決裂の一因となります。
(3)賠償金の金額に納得できない
相手側の保険会社が提示してくる賠償金の金額が少ないケースです。
交通事故の被害者が加害者に対して請求できる賠償金は、次のとおり、多岐にわたります。
- ケガに関する治療費
- 入通院をした際の交通費
- 休業損害
- 逸失利益(=後遺症のために得られなくなった将来の収入)
- 入通院慰謝料(傷害慰謝料ともいいます)
- 後遺症慰謝料
- 死亡慰謝料
- 破損した車の修理費 など
加害者側の保険会社が提示する賠償金額の中に、逸失利益や後遺症慰謝料が含まれていなかったり、含まれていても低額すぎると思われることがあります。
また、慰謝料(入通院慰謝料・後遺症慰謝料・死亡慰謝料)を算出する基準は1つではなく、次の3つがあります。
- 自賠責の基準
- 任意保険の基準
- 弁護士の基準(「裁判所基準」ともいいます)
これらを金額の順に並べると、一般的には次の順番になります。
弁護士基準>任意保険基準>自賠責基準

(※ただし、自賠責保険金額は、交通事故の70%未満の過失については減額対象にしませんので、ご自身の過失割合が大きい場合などには、自賠責の基準がもっとも高額となることもあります。)
加害者側の保険会社は、慰謝料について弁護士基準によるのではなく、自賠責の基準や任意保険の基準による低い金額を提示してくることが通常です。
被害者がこれらの金額に納得できない場合は、示談交渉は決裂します。
詳しくはこちらの記事もご確認ください。
示談はやり直しができない!損をしないため判断は慎重に
示談書への署名捺印をもって示談交渉が成立すると、特別な事情がない限り示談をやり直すことはできません。
今ご説明したとおり、加害者の保険会社は、各保険会社の支払基準に基づく低い金額で示談金を提示してくることが一般的です。示談金が適正な金額かどうかは、慎重に判断する必要があります。
その点、示談交渉を弁護士に依頼すると、被害者に有利な弁護士の基準に基づいて交渉を行うため、示談金の増額が期待できます。弁護士に依頼した場合弁護士費用がかかりますが、ご自身が加入している自動車保険に弁護士特約が付いていれば、原則として弁護士費用は保険会社が負担してくれます。
弁護士の基準で計算すればもっと示談金が増額されたはずだったという理由だけでは、示談のやり直しはできません。
示談を成立させる前に、弁護士の基準だったらどうなるのか確認することが大切です。

交通事故の示談交渉が決裂した時の3つの解決法

では、示談交渉が決裂した場合はどうすればよいのでしょうか?
最終的な手段は訴訟(=裁判)となりますが、方法はそれだけではありません。示談交渉が決裂した場合に採り得る3つの解決法について説明します。
(1)ADR(裁判外紛争解決手続)
ADRとは、Alternative(代替的)Dispute(紛争)Resolution(解決)の略で、裁判外紛争解決手続とも言います。ADRは、第三者が間に入って当事者どうしの話し合いを円滑にする手続きです。代表的なものとしては、交通事故紛争処理センターによる和解あっ旋が挙げられます。
交通事故紛争処理センターを利用するメリットは、主に次のとおりです。
- 第三者が間に入ってくれるため、公平な結論が期待できる
- 裁判に比べ、手間と時間がかからない
- 裁判や調停に比べ、費用がかからない
もっとも、センターはあくまでも中立な立場であり、被害者の立場に立って判断してくれるというわけではありません。
また、次のようなケースでは利用できませんので、最終的な解決に至らない場合があります。
- 後遺障害認定に関する紛争
- 加害者が自動車保険に加入していない場合
- 自動車やバイクが関係しない事故(自転車同士の事故など)の場合 など
後遺障害等級認定の結果に不服があるという場合には、交通事故紛争処理センターではなく損害保険料率算出機構に対する異議申立てや自賠責保険・共済紛争処理機構に対する紛争処理申請などを先行する必要があります。
詳しくはこちらの記事もご確認ください。
(2)調停
調停とは、調停委員と呼ばれる中立的な第三者が当事者双方の言い分を公平に聴き、調整して、合意を目指す手続きです。裁判所で行われますが、裁判のように勝ち負けを決めるものではありません。
調停期日では、調停委員が双方の言い分を聴いた上で争点(=争いのポイント)を整理し、提出された資料を調べます。
調停委員は、双方に対して相手方の主張を伝えたり、譲歩できないか説得にあたったりもします。双方の主張を踏まえ、最終的に裁判官によって解決案が作成され、両当事者に提示されます。
この解決案に双方が合意できれば、調停が成立し紛争は終了となります。
調停のメリットは、主に次のとおりです。
- 当事者間だけの交渉に比べ公平な解決が見込める
- 裁判よりも紛争を早く解決できる
- 裁判ほど厳密に法律にこだわらず、柔軟な解決が可能
また、調停が成立した際に作成される調停調書には、裁判の判決と同様、強制執行力があります。これにより、加害者が調停で合意した内容を守らず支払いをしてこない場合、預金や給料を差し押さえて強制的に支払わせることが可能となります。
なお、交通事故紛争処理センターの手続きと異なり、調停を申立てるための手数料などがかかります。
詳しくはこちらの記事もご確認ください。
(3)裁判
最後は裁判(=訴訟)です。
裁判には、次のメリットとデメリットがあります。
裁判のメリット
- 法律に基づいた厳正な判断が期待できる
- 判決に強制執行力がある
- 加害者に対し、遅延損害金や弁護士費用の一部(通常は賠償額の10%程度)も請求できる
裁判のデメリット
- 訴訟費用や弁護士費用などの費用がかかる
- 判決が出るまでに時間がかかる
- 裁判に勝つための主張や証拠を揃えるのが難しい
- 敗訴すると1円も支払ってもらえない可能性がある
こちらの記事もご確認ください。
示談交渉を弁護士に依頼して示談金が増額した事例

「弁護士に依頼して示談金が増額するとしても弁護士費用がかかってしまうのなら意味がないのではないか」、そう思われる方も少なくありません。
ですが、そう思われる方は、まずはご自身やご家族の保険に『弁護士費用特約』が付いていないかご確認ください。
弁護士費用特約について詳しくはこちらの記事もご参照ください。
また、弁護士費用特約が使えなかったとしても、成功報酬制の弁護士を選べば、弁護士を依頼することにより万が一費用倒れになることを防ぐことができます。そもそも弁護士による交渉の結果、弁護士費用を上回るほど示談金が増額されることも少なくありません。
保険会社の提示する示談金に納得ができず、このままでは示談交渉が決裂してしまうかも…そんな方は、まずは弁護士に依頼すれば、どの程度示談金が増額される見込みがあるか、一度弁護士に相談されることをお勧めします。
交通事故の示談交渉を弁護士に依頼するメリットについて詳しくはこちらの記事もご参照ください。
ご自身で交渉すると保険会社から「これが限度です。」などと言われることがあります。それでも、弁護士が交渉すると、そこからさらに示談金が増額されることも多いのです。
ご自身で保険会社と交渉してうまくいかない場合であっても、交渉が決裂してしまうくらいなら…とあきらめて保険会社の提示する金額で示談をすることはお勧めできません。
交通事故の損害賠償は、あなたが痛い思いや不自由な思いをしたことに対する正当な請求です。ぜひ、弁護士に相談した上で、適正な示談金を受け取られることをお勧めします。
【まとめ】交通事故の示談交渉が決裂してもADRなどの解決方法はある
今回の記事のまとめは、次のとおりです。
- 交通事故の示談交渉が決裂しがちな理由は、主に次の3つ。
- 交通事故と損害との因果関係の主張が食い違う
- 過失割合に納得ができない
- 損害賠償の金額に納得ができない
- 当事者同士や保険会社との間で示談が決裂した場合には、ADR、調停、裁判といった解決方法がある。
- 交通事故の慰謝料は自賠責の基準・任意保険の基準・弁護士の基準の3つがあり、通常は弁護士の基準がもっとも高い。
- 保険会社の提示する示談金額は、自賠責の基準や任意保険の基準のため、弁護士が交渉することにより、最終的に受け取れる示談金が増額される可能性がある。
交通事故での示談内容や賠償金に納得できず示談交渉が決裂した場合は、ADR(裁判外紛争解決手続)や裁判所を利用した調停、訴訟で解決を図る方法があります。
ですが、ADRや調停では、仲介者はあくまで話し合いを仲介する立場であり、被害者の味方ではありません。また、訴訟では、法的な主張や証拠の提出が必要なため、被害者ご自身で対応することは困難を伴います。
他方、弁護士はあなたの味方として、交渉から裁判まで対応が可能です。交通事故の示談交渉は弁護士に依頼するのが望ましいといえます。
交通事故の被害による賠償金請求をアディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、原則として手出しする弁護士費用はありません。
すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。
また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりご相談者様・ご依頼者様に手出しいただく弁護士費用は原則ありません。
※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。
実際のケースでは、弁護士費用は、この上限内に収まることが多いため、ご相談者様、ご依頼者様は実質無料で弁護士に相談・依頼できることが多いです。弁護士費用が、この上限額を超えた場合の取り扱いについては、各弁護士事務所へご確認ください。
(以上につき、2022年11月時点)
交通事故の被害にあって賠償金請求のことでお悩みの場合は、交通事故の賠償金請求を得意とするアディーレ法律事務所にご相談ください。
