「慰謝料請求をしたら、分割でないと払えないといわれた。分割払いだと途中で滞納されそうで不安。どうしたらいい?」
確かに一括払いの方が、一度で全額支払ってもらえるので安心でしょう。
しかし、相手の資金が乏しい場合、分割払いでないと事実上回収が難しい場合もあります。
そのため、分割払いに応じた方が良いケースもあります。この場合、滞納のリスクを最小限にするため、次の対処法をとるとよいでしょう。
- 公正証書を作成する
- 滞納時に残債を一括払いする旨取り決める
- 遅延損害金を取り決める
- 慰謝料完済まで互いの連絡先を通知するよう取り決める
- 保証人をつけてもらう
今回の記事では、次のことについて弁護士が解説します。
- 分割払いを承諾するリスクやメリット、
- 分割払いを持ち掛けられた場合の対処法

法政大学、及び学習院大学法科大学院卒。アディーレ法律事務所では、家事事件部にて、不貞の慰謝料請求、離婚、貞操権侵害その他の男女トラブルを一貫して担当。その後、慰謝料請求部門の統括者として広く男女問題に携わっており、日々ご依頼者様のお気持ちに寄り添えるよう心掛けている。第一東京弁護士会所属。
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慰謝料の分割払いは滞納されるリスクがある
裁判の判決で慰謝料が決まる場合には、一括払いしかできません。しかし、 話し合いで慰謝料を決める場合には、分割払いも可能です。
そのため、当事者同士の話し合いで慰謝料の金額等を決める場合は、相手側が分割払いを願い出てくるケースがあります。
しかし、慰謝料の分割払いには、滞納されるリスクがあることに注意が必要です。
当初は分割金を支払っていても、途中から資金繰りが厳しくなったりして、支払いが滞る可能性もあります。
仮に滞納なく支払われていたとしても、慰謝料の完済まで「きちんと支払ってもらえるだろうか」という心理的な負担もあります。
分割払いに応じないと現実的に支払いを受けられないケースもある
慰謝料の分割払いには滞納されるリスクがあるため、できれば一括払いでもらえるようにしたいところです。
しかし、相手が一括払いに応じないのであれば裁判上の請求をしなければなりません。
裁判自体、ハードルが高いと感じる人は多いですし、分割払いでなければ支払えないような相手に対して裁判で請求が認められたとしても、相手に資産がなければ差し押さえで回収することもできません。
相手の支払い能力を考えれば、分割払いに応じる方が現実的に慰謝料を受け取れる可能性が高い場合もあるといえます。
慰謝料の分割払いに応じるなら……5つの対策
このような事情から慰謝料の分割払いに応じる必要がある場合に、分割払いによる慰謝料滞納のリスクを減らすための方策として、次の5つの方法があります。
- 公正証書を作成する
- 滞納時に残債を一括払いする旨取り決める
- 遅延損害金を取り決める
- 慰謝料完済まで互いの連絡先を通知するよう取り決める
- 保証人をつけてもらう
これらにつき説明します。
(1)公正証書を作成する
慰謝料について取り決めた内容について、公正証書を作成しましょう。
公正証書は、法務省に属する機関である公証役場で公証人により作成される公文書のことです。
慰謝料の合意内容について強制執行認諾文言(民事執行法22条5号)付きの公正証書を作成しておくと、滞納が生じたときに相手の財産(給与や預金等)の差押えを裁判所に申立てられるため強制執行がスムーズになります。
差し押さえ可能な財産については、次の記事が詳しく説明しています。
公正証書は公証役場で20年間保管してもらえるので、紛失の恐れがないというメリットもあります。
公正証書について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(2)滞納時には残債を一括支払いする旨を取り決めておく
慰謝料についての合意をする際に、滞納が生じた場合には、残りの額について一括払いする義務があるという取り決めをしておきましょう。
というのも、上記取り決めがないと、分割払いの場合、期限の到来していない分の分割金については、その期限が到来するまでは支払わなくて良いということになっています。
しかし滞納が生じた場合には、残りの額について一括払いする義務があるという取り決め(「期限の利益を失う」という条項)を設けることにより、将来に支払えばよかったものを今すぐに支払わなければならなくなるため、残額を一括で支払うよう請求することができるようになります。

(3)遅延損害金の設定を取り決めておく
支払期日に遅れた場合のペナルティとして、遅延損害金(遅延利息)の取り決めをしておきましょう。
支払期日に遅れた場合には、払うまで利息が付されるため、支払者はいつまでも支払わないままにしておくと、どんどん利息が増えていくことになります。
(4)慰謝料完済まで、互いに連絡先を通知する旨を取り決めておく
滞納が生じたときにすぐに相手に督促できるように、慰謝料を完済してもらうまで、相手との関係が断ち切れないようにしなければなりません。
互いに住所や電話番号が変わった場合は通知する旨をあらかじめ取り決めておく必要があります。
(5)保証人をつけてもらう
相手の支払い能力にリスクがある場合は、分割払いに応じる条件として保証人や連帯保証人をつけてもらうことも考えられます。
ただ、保証人をつけてもらうには、不倫や浮気の慰謝料請求の保証人となって欲しいと債務者が説明しなければならず、債務者本人が嫌がることが多いため、保証人をつけてもらうことは難しいかも知れません。
慰謝料の分割払いに応じたくないときの交渉ポイント
分割払いは、慰謝料を受け取る側にとって滞納のリスクがあるため、可能な限り一括払いしてもらいたいところです。
分割払いを求める相手に対して一括払いを求めるときには、交渉に工夫が必要になります。
例えば許容できる程度内で慰謝料の減額に応じるという方法があります。
これにより、分割払いを回避できることもあります。
【まとめ】分割払いに応じる場合には、合意内容に工夫が必要
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 慰謝料を分割払いで受け取るのは、受け取る側にとって滞納リスク、完済までの心理的コストなどデメリットがある
- 他方で、分割払いに応じないと現実的に支払いを受けられないというケースもある
- 分割払いに応じるのであれば、次の5つの対策を参考にリスクヘッジができるようにすることが重要
- 公正証書を作成する
- 滞納時に残債を一括払いする旨、滞納した際の遅延損害金を取り決める
- 慰謝料完済まで互いの連絡先を通知するよう取り決める
- 保証人をつけてもらう
- 可能な限り一括払いで慰謝料を受け取れるように、交渉に工夫を
浮気・不倫の慰謝料請求の交渉など、ご自身で行うことが難しい場合には、弁護士に相談すると良いでしょう。
アディーレ法律事務所では、浮気・不倫の慰謝料請求につき、相談料、着手金をいただかず、原則として成果があった場合のみ報酬をいただくという成功報酬制です。
原則として、この報酬は獲得した賠償金等からのお支払いとなりますので、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要がありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
(以上につき、2022年12月時点)
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