「たぶんもらっていない残業代はあると思うけど、どのくらい残業したかわかる証拠がないと請求はできないよね…」
未払いとなっている残業代がいくらあるかを計算するためには、残業時間などの証拠が必要です。
しかし、手元に「どれくらい残業していたか」の証拠が不足していても、残業代請求を諦めるのはまだ早いです。
例えば、足りない証拠については会社に開示するよう請求できます。また、証拠が足りない場合でも、粘り強く交渉することなどによって残業代を獲得できる可能性もあるのです。
この記事では、次のことについて弁護士が解説します。
- 残業代請求で重要となる証拠
- 証拠が足りない場合でも、残業代を請求できる可能性があること
中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。
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残業代請求における証拠の重要性
まず、残業代請求で証拠が重要となることについてご説明します。
(1)残業代請求で証拠が重要となる理由
残業代請求を成功させるためには、残業代についての証拠が重要です。
労働者が残業した以上、残業時間分の残業代を受け取ることは正当な権利です。
しかし、請求する側が権利について証明しなければならないというのが法律上の建前ですので、労働者側が「何時間残業していて、未払いの残業代がいくらあるのか」を示さなければならないのです。
そのため、残業代請求には証拠が重要となります。
(2)どんな証拠があると有利?
残業代請求を有利に進めるために集めておきたい証拠は、主に次の4つに分けられます。
証拠の種類 | 証拠の具体例 |
---|---|
残業時間に関する証拠 |
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基礎賃金に関する証拠 |
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残業代の支給額に関する証拠 |
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業務指示に関する証拠 |
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それぞれについてご説明します。
(2-1)残業時間に関する証拠
未払いになっている残業代を計算するには、残業した時間が欠かせません。
残業した時間についての証拠には、例えば次のものがあります。
- 出勤簿
- タイムカード
- web打刻のスクリーンショット
- 日報 など
(2-2)基礎賃金に関する証拠
基礎賃金とは、残業代を計算するときに基礎となる賃金のことです。
残業代は、1時間あたりの基礎賃金に一定の割増率を乗じることで算出されます。
基礎賃金が高いほど残業代も高くなるので、基礎賃金がいくらなのかが重要となります。
例えば月給制の場合、1時間あたりの基礎賃金は次の計算式で求められます。
1ヶ月分の賃金額(※)÷1ヶ月の所定労働時間
※1ヶ月に受け取る給与から、家族手当や通勤手当などを除いた金額です。
基礎賃金についての証拠には、例えば次のものがあります。
- 雇用契約書
- 労働条件通知書 など……
残業代の計算方法や割増率について、詳しくはこちらをご覧ください。
(2-3)残業代の支給額に関する証拠
残業代が未払いになっていることを示すためには、残業代の支給額に関する証拠も必要です(残業代が部分的に支払われていた場合には、不足分を請求します)。
残業代の支給額に関する証拠には、例えば次のものがあります。
- 給与明細
- 源泉徴収票 など……
(2-4)業務指示に関する証拠
また、残業代を請求すると、会社側から「確かに残業していたかもしれないが、残業をするようにという指示は出していない。不必要な残業であった以上、残業代は払わない」などという反論が出てくることがあります。
ですので、そうした反論に備えて、業務の指示に関する証拠を用意できると心強いです。
業務指示に関する証拠には、例えば次のものがあります。
- 残業を指示するメールや書面など
- 「残業をするように」とは書かれていないものの、残業をしなければ到底終わらないような分量の業務指示が載っているメールや書面など……
残業代請求のために集めておきたい証拠について、さらに詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

必要な証拠がない場合でも、残業代を請求できる可能性はある!
ここまでで挙げてきた証拠の例の中で、「そんな証拠、手元にない!」と思われた方もいらっしゃることと思います。
ですが、現時点で証拠が不足しているからといって、残業代請求を諦めるのはまだ早いです。
必要な証拠を、会社から回収できる可能性もあるからです。
それでは、証拠が不足している場合の対処法についてご説明します。
(1)対処法1|会社に対して、必要書類を開示するよう請求する
残業代請求の際に、残業代の正確な計算のために必要な書類を開示するよう会社に対して求めることができます。
会社は労働関係に関する重要な書類を3年間(※)保管しておく義務があるので、残業代計算に必要な書類も保管されている可能性があります。
※労働基準法109条では「5年間」と定められているのですが、経過措置として当面の間は「3年間」となっています。最新の情報にご注意ください。
参考:改正労働基準法等に関するQ&A 6頁|厚生労働省労働基準局
弁護士に残業代請求を依頼すると、弁護士から会社に対してこうした開示請求をします。
会社によっては、弁護士がついたというだけで真摯な態度をとって開示に応じることもありますので、残業代請求は弁護士に依頼することがおすすめです。
(2)対処法2|訴訟の際に、「証拠保全」を利用する
会社が書面を開示してくれず交渉が難航する場合、訴訟などの裁判所での手続きを通じて残業代を請求することができます。
そして、訴訟の場合、「証拠保全」を利用できるケースがあります。
証拠保全とは、訴訟での通常の証拠調べを待っていては証拠を調べることが不可能・困難になってしまうおそれがある場合に、前倒しで証拠調べをしてもらう手続きです(民事訴訟法234条)。
例えば、訴訟が始まってから証拠調べをするのでは会社側が重要な証拠を隠滅してしまうおそれがある場合などに、利用を検討します。
証拠保全では、裁判官が実際に証拠を見に行くなどして、証拠調べを行います。
証拠保全を希望する側の当事者が申立てをして、裁判所が「証拠保全が必要だ」と判断すると、証拠保全が行われます。
証拠保全について、詳しくはこちらをご覧ください。
【まとめ】証拠が足りなくても、残業代を獲得できる可能性はある!
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 残業代請求のときに集めておきたい証拠は、主に次のものがある。
証拠の種類 | 証拠の具体例 |
---|---|
残業時間に関する証拠 | 出勤簿、タイムカード、web打刻のスクリーンショット、日報など |
基礎賃金に関する証拠 | 雇用契約書、労働条件通知書など残業を指示するメールや書面など |
残業代の支給額に関する証拠 | 給与明細、源泉徴収票など |
業務指示に関する証拠 | 残業を指示するメールや書面、残業しなければ終わらないような分量の業務を指示するメールや書面など |
- 証拠が足りない場合、例えば次のような方法で証拠を確保できる可能性がある。
- 会社に対して、必要書類を開示するよう請求する
- 訴訟の際に、「証拠保全」を利用する
- 証拠が不足していても、推定計算や粘り強い交渉などを通じて残業代を獲得できる可能性は残っている。
残業代は、残業をしたことについての正当な対価です。
たとえ証拠が足りなくてもご相談いただければ、一部なりとも残業代を取り戻せる可能性はあります。
諦めずに、まずは相談だけでもしてみませんか?
アディーレ法律事務所は、残業代請求に関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として成果があった場合のみを報酬をいただくという成功報酬制です。
そして、原則として、この報酬は獲得した金銭(例:残業代、示談金)からお支払いとなり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
※以上につき、2022年9月時点
残業代請求でお悩みの方は、残業代請求を得意とするアディーレ法律事務所へご相談ください。