交通違反をし、警察から「免停通知がくるよ」と伝えられ、不安になられているかもしれません。
しかし、免停通知が来て、すぐに免停となるわけではありません。
免停通知とは、あくまでも、免許停止処分を伝えるお知らせのことをいい、その後手続きをすることで免停となる流れになります。
免停通知がこれから届くという方も免停通知が届き、どうすればいいかわからないという方も、免停通知書とはどういったものなのか、免停通知を無視した場合はどうなるのかを知っておきましょう。
免停通知に対してきちんと対応することで免停処分を軽くすることができる可能性もあります。
この記事では、次のことについて弁護士が解説します。
- 免停になる違反点数や免停期間と免停処分者講習
- 免停通知の内容、免停通知を無視した場合の流れ
- 免停に納得がいかない場合の対処法
東京大学法学部卒。アディーレ法律事務所では北千住支店の支店長として、交通事故、債務整理など、累計数千件の法律相談を対応した後、2024年より交通部門の統括者。法律を文字通りに使いこなすだけでなく、お客様ひとりひとりにベストな方法を提示することがモットー。第一東京弁護士会所属。
免停通知とは
免停通知とは、警察から免停となる違反点数に達し、免停処分となったことを伝える通知のことをいい、免停となる違反点数に達してから数週間(違反内容次第では2ヶ月以上)経過後に届くことが一般的です。
そもそも、免停とは「免許停止処分」の略称で、一定期間車両の運転が禁止される行政処分をいいます。
交通ルールに違反をすると違反点数が加算され、過去3年間の違反点数の合計が多くなると免停になります。
免停通知が来た時の免停期間(30~180日)
免停の期間は、過去に受けた免停の回数と累積違反点数に応じて、30日・60日・90日・120日・150日・180日となります。
なお、違反点数が重い場合は、免停処分ではなく免許取消し処分が課されます。
【前歴の回数別】免停通知が来る違反点数
免停通知が来る違反点数(免停となる違反点数)は、過去3年間に免停や免許取消といった行政処分の前歴があるかどうかによって違ってきます。
ここでは、過去3年間に行政処分の前歴がない場合とある場合を分けて説明します。
(1)前歴がない場合:違反点数6点以上
過去3年間に免停を受けたこと(これを「前歴」または「行政処分前歴」といいます。刑事事件の「前歴」とは別です)がない場合、過去3年間の違反点数が累積6点以上になると、免停となります。
免停の期間は、過去3年間の累積違反点数に応じて次のようになります。
違反点数 | 免停期間 |
---|---|
6~8点 | 免停30日 |
9~11点 | 免停60日 |
12~14点 | 免停90日 |
15点以上 | 免許取消し |
最初の持ち点は0点で、違反をするごとにこれらの点数が加算されていきます(同時に複数の違反をした場合は、それぞれの点数が合わせて加算されます)。
例えば、追越し違反や信号無視の違反点数は2点なので、前歴がない場合には、これらを1回しただけでは免停にはなりません。これに対し、30キロの速度超過をした場合の違反点数は6点なので、前歴がなくても一発で免停(30日)となってしまいます。
<コラム>交通違反と違反点数の例
ここで、交通違反とそれに対する違反点数について一部紹介します。
- シートベルト未装着:1点
- 無灯火:1点
- 追越し違反:2点
- 信号無視:2点
- 運転中の携帯電話使用:3点(事故を起こすなど交通の危険を生じさせた場合は6点)
- 速度超過(20キロ未満):1点
- 速度超過(20キロ以上25キロ未満):2点
- 速度超過(25キロ以上30キロ(高速40キロ)未満):3点
- 速度超過(30キロ(高速40キロ)以上50キロ未満):6点
- 速度超過(50キロ以上):12点
- 酒気帯び運転:13~25点
- 無免許運転:25点
(2)前歴が1回ある場合:違反点数4点以上
過去3年間に前歴が1回ある場合、過去3年間の違反点数が累積4点以上になると、免停となります。
免停の期間は、過去3年間の累積違反点数に応じて次のようになります。
違反点数 | 免停期間 |
---|---|
4~5点 | 免停60日 |
6~7点 | 免停90日 |
8~9点 | 免停120日 |
10点以上 | 免許取消し |
<コラム>前歴がある場合の違反点数の計算方法
前歴がある場合の違反点数の計算方法には、ルールがあります。
ここで、いくつかのルールについて紹介します。
- 一度免停処分を受けた場合であっても、免停期間が無事満了すれば点数は0に戻る(また、免許取消しにより改めて免許を取り直した場合も点数は0に戻ります)。
- 最後の違反から(免許停止期間や免許取消期間を除き)1年以上無事故・無違反で過ごすと、点数は0点に戻る。
- 2年以上無事故・無違反で過ごした運転者が、軽微な違反(3点以下)をした後に3ヶ月以上無事故・無違反で過ごすと、その軽微な違反の点数は累積しない扱いになる(いわゆる3ヶ月ルール)。
(3)前歴が2回ある場合:違反点数2点以上
過去3年間に前歴が2回ある場合、過去3年間の違反点数が累積2点以上になると、免停となります。
免停の期間は、過去3年間の累積違反点数に応じて次のようになります。
違反点数 | 免停期間 |
---|---|
2点 | 免停90日 |
3点 | 免停120日 |
4点 | 免停180日 |
5点以上 | 免許取消し |
(4)前歴が3回ある場合:違反点数2点以上
過去3年間に前歴が3回ある場合、過去3年間の違反点数が累積2点以上になると、免停となります。
免停の期間は、過去3年間の累積違反点数に応じて次のようになります。
違反点数 | 免停期間 |
---|---|
2点 | 免停120日 |
3点 | 免停150日 |
4点以上 | 免許取消し |
(5)前歴が4回以上ある場合:違反点数2点以上
過去3年間に前歴が4回ある場合、過去3年間の違反点数が累積2点以上になると、免停となります。
免停の期間は、過去3年間の累積違反点数に応じて次のようになります。
違反点数 | 免停期間 |
---|---|
2点 | 免停150日 |
3点 | 免停180日 |
4点以上 | 免許取消し |
過去3年間の前歴が多いほど、免停になりやすくなり、免停期間も長くなります。
参考:行政処分基準点数|警視庁
現在のご自身の累積点数を確認したい場合は、自動車安全運転センターから「累積点数等証明書」を発行してもらうことができます。
免停通知書には2種類ある
免停通知書は、警察からあなたに対して、免停となる違反点数に達したことを知らせるためのものをいい、次の2種類があります。
- 出頭通知書
- 意見の聴取通知書
基本的には、「出頭通知書」が届くことになりますが、免停期間が90日以上の場合には「意見の聴取通知書」が届くことになります。
では、それぞれの内容について見ていきましょう。
(1)出頭通知書(呼出通知書)
出頭通知書は、期間が60日以下の免停処分の違反点数に達した場合に届くものです(後で説明する「意見の聴取」に欠席した人にも届きます)。
正式な名称は「運転免許行政処分出頭通知書」といいます(警視庁では「出頭通知書」として紹介されていますが、「行政処分通知書」「行政処分呼出通知書」としている県もあります)。
出頭通知書には、出頭しなければならない日時・場所(運転免許センターなど)が記載されており、指定された日時・場所に出頭すると、その場で免許証を返納し、この日から停止期間の満了日まで運転ができなくなります。
なお、指定日時に出頭できない場合は、事前に連絡すると変更することができます。
(2)意見の聴取通知書
意見の聴取通知書は、期間が90日以上の免停(または免許取消し)処分の違反点数に達した場合に送られてくる免停通知です。
期間が90日以上の免停(または免許取消)といった重い処分には、処分が公正に行われるよう、運転者が意見を述べ、自己に有利な証拠を提出する機会が与えられています(これを「意見の聴取手続き」といいます)。
意見の聴取通知書に指定された日時・場所(警察署や運転免許センターなど)に行くと、そこでこれまでの交通違反についての具体的な事実確認が行われ、運転者にも意見が求められ、運転者の交通違反がやむを得ない事情によって行われたなどの場合には、処分が軽減されることもあります。
例えば、次のような場合には処分が軽減されます。
- 被害者側の不注意が原因の交通事故の場合(違反車に責任なし)
- 危篤状態の人を病院に移送するためにスピード違反した場合 など
意見の聴取の日時と場所は約1週間前までに通知されますが、基本的に日時を変えることはできません(本人は欠席して弁護士などの代理人が出席することができますし、本人が弁護士と一緒に出席することもできます)。
通知された日時の意見聴取を欠席した場合、書面審査のみにより処分が決定され、運転者からの意見の聴取は二度と行われません。
免停通知書を無視すると、処分がさらに重くなる可能性も
免停通知書を無視し、車を運転し続けていた場合には、処分がさらに重くなってしまう可能性があります。
免停通知書を無視し、車の運転を続けていた場合には、次のような流れとなります(免許の住所変更を行わず、免停通知が届かなかった場合も同様です)。
- 警察による検問や職務質問で免停通知を無視して運転していることが判明
- 警察はあなたの免許証を預かり、代わりに(免許証の)保管証を交付
(保管証はその有効期限内(原則20日以内)は運転免許証代わりになる)
- 警察は、あなたに対し、保管証の有効期限内に「出頭命令書」を交付
- 出頭命令書に従い出頭(免許停止処分となる)
- 出頭命令も無視した場合、出頭がなくとも免許停止処分に(書面通知)
なお、保管証の有効期限を超えて運転した場合には、無免許運転として重ねて違反行為となります。
免停通知を無視した場合、運転者の意見聴取の機会もありませんので、処分を軽くしてもらうことも難しくなり、さらに、次で説明する講習による免停期間の短縮も受けられません。このような不利益を受けないよう、免停通知を受け取ったらすぐに日程を確認して出頭するようにしましょう(免許の住所変更も忘れないようにしてください)。
免許停止処分者講習を受けることで免停期間が短くなる!?
免許停止処分者講習とは、免停処分を受けた際に受ける運転や交通ルールを学ぶ講習のことをいいます(強制ではありません。運転者の任意で受講します)。
具体的な講習内容は、運転適性検査・運転シミュレーターによる運転練習・試験場内での実車運転・座学による講義などです。
免許停止処分講習の最後には、筆記試験(考査)が行われ、考査の成績により短縮される日数が決まります。例えば免停60日の処分を受けた場合、考査の成績により免停期間を30日に短縮することができます。
講習は、当初受けた免停処分の停止期間により、「短期講習」・「中期講習」・「長期講習」の3種類があります。講習の種類によって、短縮される日数や講習時間、料金が異なります。
講習の種類 | 停止期間 | 短縮日数 | 講習時間 | 料金 |
---|---|---|---|---|
短期講習 | 30日 | 20~29日 | 1日(6時間) | 1万1700円 |
中期講習 | 60日 | 24~30日 | 2日間(10時間) | 1万9500円 |
長期講習 | 90日 | 35~45日 | 2日間(12時間) | 2万3400円 |
120日 | 40~60日 | |||
150日 | 50~70日 | |||
180日 | 60~80日 |
免許停止処分者講習の受講をおすすめします。
受講しなければ当初受けた免停処分の停止期間がそのまま確定してしまいます。免停の期間を短くするためには受講しておくのがよいでしょう。
免停処分内容に納得できない場合の対処法
ここでは、免停処分に納得ができない場合の対処法について、2つの場合に分けて説明します。
- 免停処分の原因となった違反行為に納得できない場合
- 免停処分の内容に納得できない場合
それぞれ説明します。
(1)免停処分の原因となった違反行為に納得できない場合
免停処分の原因となった違反行為について納得できない場合があります。
例えば、次のような場合です。
- 一時停止したのに警察官が認めてくれずに青キップを切られた場合
- 街路樹や植栽で道路標識が見えなくなっている場合
- オービスが誤作動していたと思われる場合 など
このような場合は、ドライブレコーダーなどの客観的証拠を集めて所轄の警察署に申し出るようにしましょう。処分が撤回される可能性があります(警察本部長の判断:道交法127条2項)。
また、反則金の支払いを拒否して、刑事裁判で争う方法もあります。しかし、この場合、逮捕されてしまう可能性もあります(交通違反の内容が重い場合や前歴がある場合など)。
(2)免停処分の内容に納得できない場合
一方、免停処分となったことに対して納得ができない場合には、次の方法をとることができます。
- 意見聴取手続(90日以上の免停処分を受ける場合)で免停処分の内容が納得できないことを主張する
- 免停処分を受けた後に、処分を行った都道府県の公安委員会に対する審査請求(行政不服審査法2条、同4条1号)を行う(※1)
- 地方裁判所に免停処分の取消を求める裁判を起こす(※2)
※1 審査請求は、原則として処分を知った日の翌日から3ヶ月以内に行う必要があります。処分があった日の翌日から1年を経過したときは、その後に処分があったことを知った場合でも、原則として審査請求はできません。
※2 原則として、免許停止処分または裁決が有った事を知った日の翌日から6ヶ月以内、または免許停止処分または裁決がされた日から1年以内に提起する必要があります。
【まとめ】免停通知とは、警察から免停を知らせる通知
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 免停通知とは、交通違反(免停通知となる違反点数に達した場合)から数週間(違反内容次第では2ヶ月以上)経過後に来るケースが多い。
- 免停になる違反点数になってから、すぐに免停となるわけではなく、警察から免停通知が届き、その後手続を行い、免停となる。
- 免停となる違反点数は前歴がない場合6点以上。免停の期間は、過去に受けた免停の回数と累積違反点数に応じて、30日・60日・90日・120日・150日・180日となる。
- 免停通知には、出頭通知書と意見の聴取通知書の2種類。
免停通知が来て免許証を預けて免停処分を受けるまでは車を運転し続けることができますが、通知書の呼出しを忘れて放置すると、検問等の際に免許証を取り上げられ、再度呼出しを受けることになります。
免停通知が来た場合には、指示された日時・場所に行き、免停処分者講習を受講し、免停期間を短くすることができますので、無視しないようにしましょう。