2020年の司法統計によれば、離婚調停において離婚を希望した女性のうち、実に8576人が夫の暴力を離婚理由に挙げています(離婚理由は複数選択可)。男性の1454人に比べると、6倍近くにもなります。
「夫から暴力を受けているけれど、誰にも相談できないし、逃れる方法がわからない…」
2001年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(いわゆるDV防止法)が制定され、暴力をふるう加害者から被害者を保護する仕組みが作られました。
その代表的なものが、地方裁判所による接近禁止命令です。
2024年に改正され、保護命令制度の拡充、保護命令違反の厳罰化などが新たに定められました。
この記事を読んでわかること
- 接近禁止命令の内容
- 接近禁止命令の効果や要件
- 申立ての流れ
- 接近禁止命令に関する注意点
参考:第19表 婚姻関係事件数-申立ての動機別申立人別|裁判所 – Courts in Japan
ここを押さえればOK!
接近禁止命令と同時に、電話やメールでの連絡を禁止する「電話等禁止命令」、子どもや親族等への接近を防ぐ「子への接近禁止命令」や「親族等への接近禁止命令」を申し立てることもできます。加害者と同居している場合には、同居する住居からの退去を命じる「退去命令」があります。
申立ての流れは、警察やDVセンターへの相談、裁判所への申立て、申立人の面接、相手方の審尋を経て、裁判所が決定を下します。申立てには、過去の暴力や脅迫の証拠、結婚や同棲の事実を示す資料が必要です。
接近禁止命令は万能ではなく、命令違反の罰則があっても加害者が従わない場合もあります。被害者は自衛策を講じ、危険を感じた場合には速やかに警察に連絡することが重要です。
慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。
接近禁止命令とは?
DV防止法には、配偶者(事実婚を含む)・元配偶者からの暴力を防止し、被害者の生命・身体・自由等の保護を目的として、裁判所が、被害者の申立てにより、一定期間、加害者を被害者から引き離すために発する保護命令を発令できることが規定されています。
被害者に対する保護命令は、大きく分けて次の3つがあります。
- 被害者への身辺への「つきまとい」や「はいかい」を禁止する『接近禁止命令』(DV防止法10条1項)
- 被害者への電話等禁止命令(同法10条2項)
- 同居する住居からの退去等を命じる『退去等命令』(同法10条の2)
まずは、接近禁止命令について詳しく説明します。
参考:保護命令手続きについて|裁判所 – Courts in Japan
(1)接近禁止命令の具体的な内容
接近禁止命令は、被害者(「申立人」といいます)の申立てにより、裁判所が、保護命令の効力が生じた日から1年間、被害者の身辺につきまとい、又は通常いる場所の付近をはいかいしてはならないことを、加害者である相手方に命じるものです。
(接近禁止命令等)
引用:DV防止法10条1項|e-gov
第十条 被害者(配偶者からの身体に対する暴力又は生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知してする脅迫(以下この章において「身体に対する暴力等」という。)を受けた者に限る。以下この条並びに第十二条第一項第三号及び第四号において同じ。)が、配偶者(配偶者からの身体に対する暴力等を受けた後に、被害者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者。以下この条及び第十二条第一項第二号から第四号までにおいて同じ。)からの更なる身体に対する暴力等により、その生命又は心身に重大な危害を受けるおそれが大きいときは、裁判所は、被害者の申立てにより、当該配偶者に対し、命令の効力が生じた日から起算して一年間、被害者の住居(当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く。以下この項において同じ。)その他の場所において被害者の身辺につきまとい、又は被害者の住居、勤務先その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずるものとする。
(2)期待できる効果
保護命令に違反した場合には、2年以下の懲役(※)又は200万円以下の罰金という罰則がありますので(DV防止法29条)、刑罰の抑止力により、「保護命令を守って付きまとうのを控えよう」という心理が生じることが期待されます。
また、保護命令が発令されると、その旨が地方裁判所から警察や配偶者暴力相談支援センターへ通知されますので(DV防止法15条3項、4項)、万が一、相手方の保護命令違反があって警察に相談する際には、迅速に対応してもらうことができるでしょう。
※2022年6月、懲役刑と禁錮刑を一本化した「拘禁刑」とするなどの法改正が行われ、2025年までに施行される予定です。
申立人への接近禁止命令では防止できないこと
申立人に対する接近禁止命令だけでは、相手方からの電話やメール、FAX、手紙などを送る行為は禁止対象に含まれませんので、防止することができません。
また、申立人以外のその子どもや親族等への接近を防ぐことができません。
したがって、電話やメールで生命・身体に対する脅迫を受けていたり、子どもの連れ去りの危険があったり、申立人の親族宅に押し掛けるおそれがあったりする場合には、別途、電話などの行為を禁じたり、子どもや親族等へのつきまといやはいかいを禁止する接近禁止命令について申立てる必要があります。
電話等の行為の禁止命令と子どもや親族等への接近禁止命令は、単独で発せられるものではありません。申立人への接近禁止命令を前提とし、それと同時又はその発令後に、発令されることになります。
申立人に対する接近禁止命令がメインで、電話等の行為の禁止命令と子どもや親族等への接近禁止命令は、オプションであると考えるとわかりやすいです。
なるほど、電話等の行為の禁止命令や子どもや親族等への接近禁止命令だけを発令してもらうことはできないのですね。
はい。実務では、申立人に対する接近禁止命令と同時に申し立てることが多いようです。
被害者に対する接近禁止命令以外の保護命令
被害者へ接近禁止命令だけでは防ぐことができない、相手方からの電話等での連絡、子どもや親族等への接近を防ぐために、被害者への電話等禁止命令、子への接近禁止命令・電話等禁止命令、親族等への接近禁止命令を申立てることができます。
また、相手方に対して、被害者と同居する住居からの退去を命じる退去命令を申し立てることも可能です。
それぞれについて説明します。
(1)電話等禁止命令
電話等禁止命令とは、被害者の申立てにより、その生命・心身に重大な危害が加えられることを防止するために、(元)配偶者に対して、被害者に対する接近禁止命令の効力が生じた日から1年間、次の内容の行為を禁止する保護命令です(DV防止法10条2項各号)。
- 面会を要求すること。
- その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
- 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
- 電話をかけて何も告げず、又は緊急やむを得ない場合を除き、連続して、電話をかけ、文書を送付し、通信文その他の情報をファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信すること。
- 緊急やむを得ない場合を除き、午後10時から午前6時までの間に、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、又は電子メールを送信すること。
- 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
- その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
- その性的羞恥心を害する事項を告げ、若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を送付し、若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し、若しくはその知り得る状態に置くこと。
- その承諾を得ないで、その所持する位置情報記録・送信装置により記録され、又は送信される当該位置情報記録・送信装置の位置に係る位置情報を政令で定める方法により取得すること。
- その承諾を得ないで、その所持する物に位置情報記録・送信装置を取り付けること、位置情報記録・送信装置を取り付けた物を交付することその他その移動に伴い位置情報記録・送信装置を移動し得る状態にする行為として政令で定める行為をすること。
(2)子への接近禁止命令・電話等禁止命令
子への接近禁止命令とは、(元)配偶者が被害者と同居している幼い子を連れ戻すおそれがあり、そのために被害者がその子について(元)配偶者と面会を余儀なくされることを防ぐために、被害者に対する接近禁止命令の効力が生じた日から1年月間、子の住居や学校などでの子へのつきまといやはいかいの禁止を命じるものです(DV防止法10条3項)。
子が15歳以上の場合は、子への接近禁止命令を発する場合には、その子の同意が必要です(同条3項但書)。
例えば、配偶者が被害者の幼い子を通園先から連れ去ったりして、被害者がその子の世話をするために配偶者のもとに行かざるを得なくなれば、再度、被害者は暴力を受ける危険があります。そのような事態を防ぐために、被害者の接近禁止命令の他に、子への接近禁止命令が設けられています。
被害者と同居する未成年の子への接近禁止命令の要件を満たす場合、子への電話等禁止命令も可能です。対象行為は、被害者への電話等禁止命令で禁止される2~10に当たる行為です。
(3)親族等への接近禁止命令
親族等への接近禁止命令とは、(元)配偶者が被害者の親族などの住居に押し掛けて、著しく乱暴な言動を行っているなどの事情から、被害者がその親族等について配偶者と面会を余儀なくされることを防ぐために、被害者に対する接近禁止命令の効力が生じた日から1年間、親族などの身辺でのつきまとい又は住居・勤務先などでのはいかいの禁止を命じるものです(DV防止法10条4項)。
親族等が15歳以上である場合にはその同意が必要で、15歳未満の場合はその法定代理人の同意が必要です。
例えば、配偶者が被害者の親族等の住居に押し掛けて、「被害者の住所を教えろ」「教えなければ殴るぞ」などと著しく乱暴な言動を行うなどの事情があり、被害者が親族等を助けたり仲裁したりするために配偶者と会わざるを得なくなれば、再度、被害者は暴力を受ける危険があります。
そのような事態を防ぐために、被害者の接近禁止命令の他に、親族等への接近禁止命令が設けられています。
(4)退去等命令
退去等命令は、命令の効力が生じた日から2ヶ月間、被害者と同居している住居から退去すること及びその住居の付近をはいかいしてはならないことを命じるものです(DV防止法10条の2)。
住居の所有者又は賃借人が被害者のみである場合は、申立てにより6ヶ月の退去等命令がなされます。
被害者への接近禁止命令の要件とは
被害者へ接近禁止命令が発令されるためには、次のような要件があります。
(1)相手方と申立人が夫婦、内縁関係、同棲関係であること
接近禁止保護命令は、申立人と相手方に一定の関係が存在する必要があります。
一定の関係とは、婚姻関係にある夫婦であること(事実婚を含む)、婚姻関係にあって離婚したこと(事実婚の解消を含む)、現在同棲している又は過去同棲していたことを指します(DV防止法1条2項、3項、28条の2)。
したがって、デートDV(結婚していない、恋人同士の間での暴力です)であっても同棲していれば(過去同棲していた場合も含む)DV防止法の保護命令の対象となりますが、同棲していない場合には、DV防止法の適用の範囲外となります。
- 内縁関係とまではいえなくても、同棲関係にあればDV防止法の保護命令の対象となる!
(2)結婚期間中又は同棲期間中に相手方から暴力や脅迫を受けたこと
結婚期間中または同棲期間中に、「身体に対する暴力又は生命、身体、自由、名誉もしくは財産に対し害を加える告知をしてする脅迫」を受けた事実が必要です。
身体に対する暴力だけでなく、生命、身体、自由もしくは財産に対して害を加える告知をする脅迫も含まれます。
(3)将来申立人の生命又は心身に重大な危害が及ぶおそれが大きいこと
今後、「身体に対する暴力又は生命、身体、自由、名誉もしくは財産に対し害を加える告知をしてする脅迫」を受けることにより、「生命又は心身に重大な危害を受けるおそれが大きいこと」が必要です。
「生命や心身に重大な危害を受けるおそれ」とは、被害者が、(元)配偶者の暴力により、殺人、傷害等の被害を受けるおそれがあるだけでなく、精神的に重大な危害を受ける恐れがある場合も含まれます。
保護命令違反の罰則が重いことから、単に将来生命・心身に重大な危害をうける可能性があるだけでは足りず、過去の暴力の頻度、態様、被害者のケガの程度などの事情を考慮したうえで、被害者に対して暴力等を振るってその生命や心身に重大な危害を受ける可能性が高いといえることが必要だと考えられています。
接近禁止命令の申立ての流れ

接近禁止命令の手続きは、通常、次のような流れになります。
専門機関への相談
裁判所への申立て
申立人の面接
相手方の審尋
接近禁止命令の決定
順にご説明します。
(1)警察やDVセンターへの相談
申立書には、警察又は配偶者暴力相談支援センター(DVセンター)へ相談したり保護を求めていたりした場合には、その事実と所定事項を記載します。配偶者暴力相談支援センターには、申立書のひな型が備え付けられていますので、利用するとよいでしょう。
事前に警察などに相談していない場合には、公証人役場でDV被害の内容や状況についての公証人面前宣誓供述書(当事者が書面に記載してあることが事実であると宣誓・押印し、公証人に認証してもらった書面)を作成する必要がありますが(DV防止法12条3項)、手間や時間、費用がかかることもあり、あまり利用されていないようです。
参照:警察に対する相談は 警察相談専用電話 #9110へ|政府広報オンライン
参照:配偶者暴力相談支援センター一覧(全国)|男女共同参画局
(2)申立てを行う
接近禁止命令の申立ては、申立人の住所又は居所(一時的に避難している場合は避難先の場所)を管轄する地方裁判所、相手の住所地を管轄する地方裁判所、DV被害が発生した地を管轄する地方裁判所のいずれにも行うことができます。
申立書などの記録は、相手方が閲覧できますので、避難先の住所を秘匿したい場合には、避難前の住所を記載すれば足ります。
申立書に記載すべき事項は、基本的に、接近禁止命令を求める旨、過去相手方から身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた具体的状況、将来生命・心身に重大な危害をうけるおそれが大きいといえる具体的事情、警察などに相談した事実です(DV防止法12条1項各号)。
親族等や子への接近禁止も求める場合には、親族等や子の情報も必要になります。
過去暴力を受けた証拠(ケガの写真、診断書、DVの日記など)や、今後の暴力のおそれが大きいといえる証拠(暴言やつきまといがある証拠)も提出します。
また、結婚の事実や同棲の事実がわかる資料(戸籍謄本、住民票、賃貸契約書の写し、公共料金の請求書の写しなど)も必要です。
(3)申立人の面接を行う
保護命令は緊急性が高いので、地方裁判所は速やかに対応するものとされています(DV防止法13条)。
通常、申立ての当日または直近の日に、地方裁判所で申立人の面接が行われます。
(4)相手方の審尋(しんじん)
申立人の面接後、相手方に申立書や証拠の写しなどを送付し、原則として相手方に対して裁判所への出頭を求め、申立てられた内容について口頭で陳述をする機会を設けます(DV防止法14条1項本文)。
通常、申立人の面接から1週間~10日程度内に行われているようです。
また、裁判所は、申立人が相談した警察又は配偶者暴力相談支援センターに対し、相談や保護の内容について記載された書面の提出を求めたり、説明を求めたりします(DV防止法14条2項、3項)。
(5)申立てについての決定
接近禁止命令は、相手方が審尋に出頭した場合には、その場で言い渡されて効力が生じます。
相手方が審尋に出頭しない場合には、決定書が相手方に送達されることで効力が生じます(DV防止法15条2項)。
接近禁止命令の要件を満たさないと判断された場合には、命令は発令されません。
接近禁止命令に関する注意点
接近禁止命令は、命令違反の罰則を担保にして、相手方に一定の行為を禁止することから、決して簡単に認められるものではありませんので、次のような注意が必要です。
(1)証拠次第で接近禁止命令が発令されない場合がある
裁判所は、接近禁止命令を発令するにあたっては、法律上必要な要件を満たすかどうかを証拠に基づいて判断しますので、過去受けた身体的暴力や脅迫、将来身体的暴力を受ける可能性が高いことなどについて、客観的な裏付けとなる証拠が必要です。
したがって、身体的DVにより負傷したことのわかる診断書や写真、脅迫を受けた記録(音声データや動画)などがあると、有利な証拠となります。
申立人の陳述書(申立人がDV被害を受けた経緯について述べた書面)以外の客観的な証拠がないような場合、接近禁止命令が発令されず、申立てが却下される可能性があります。
また、暴力を受けた証拠があっても、その時期が申立ての数ヶ月前のみであるような場合には、将来生命・心身に危害を受けるおそれが大きいとは言えないとして、申立てが却下される可能性もあります。
参考:配偶者暴力に関する保護命令を申立てようとお考えの方へQ13 広島地方裁判所|裁判所 – Courts in Japan
(2)再度の申立ても可能
被害者は、一度接近禁止命令が発令された後でも、再度接近禁止命令を申立てることができます。
接近禁止命令の効力は、命令の効力が生じた日から1年ですから、その後も生命・心身に重大な危害をうけるおそれが大きいといえるような場合には、再度の申立てを検討することになります。
裁判所が、新たな申立てとして審理しますので、申立て書類一式が再度必要になりますし、接近禁止命令の要件を満たしているかどうかも新たに審理されます。
例えば、相手方が「接近禁止命令の効力が終わったら覚悟しろ」などと危害を加える旨の予告をしているような場合には、効力失効日と次の接近禁止命令の発令日までに空白期間ができないよう、申立てを行うことが大切になります。
(3)離婚後や別居後の住所を知られないようにする
被害者は、自分の身を守るために、相手方に離婚後や別居後の住所を知られないように細心の注意を払う必要があります。
すぐに避難先が見つからないような場合には、緊急一時保護施設(シェルター)を利用することもできます。
シェルターは、婦人相談所や民間団体の施設などに設置されており、原則として地域の福祉事務所を通して利用することになっていますが、緊急の場合には、24時間いつでも、警察に保護を求めるようにしましょう。警察にシェルター利用の希望があることを伝えれば、警察からシェルターに連絡をしてくれます。
また、市役所に住民票等の交付制限の申出をすることで、相手方が住民票などを取得して住所を調べることを防止することができます。
接近禁止命令の申立ての際にも、申立書に現住所を書く必要はなく、証拠に現住所が記載されている場合には、黒塗り・白抜きするなど、相手方に現住所を知られないようにする必要があります。
(4)接近禁止命令が万能ではないことを理解する
接近禁止命令の効力には1年という制限があり、罰則で担保されているものの、処罰されてもかまわないという人物がいないとは限りません。
接近禁止命令発令後も、相手方の行動範囲には近づかない、相手方と通じている人物との接触を控える、夜間一人での外出を控えるなどの自衛行為が必要となるでしょう。
危険を感じた場合には、速やかに警察に連絡するようにしてください。接近禁止命令が発令されたことについては、裁判所から警察に連絡がいくことになっていますので、迅速に対応してくれるでしょう。
【まとめ】接近禁止命令の期間は1年で、申立てが認められる要件に注意
生命・心身への危険を感じた場合には、警察に保護を求めて、まずは避難して安全を確保するようにしましょう。
接近禁止命令の申立てが必要とされる状況は、緊急性がありますので、命令発令に必要な要件を満たすのかどうか、十分な証拠があるのかどうかなどについて、迅速に判断して申立てをする必要があります。
法テラス(公設の法律事務所)であれば、所得上限などの利用条件がありますが、相談は3回まで無料ですし、弁護士費用の立替制度(弁護士費用を長期分割で支払う)を利用できる可能性があります。そのため、経済的に不安を抱える方も弁護士に依頼することが可能です。
すみやかに接近禁止命令の申立てを行うためには、接近禁止命令の申立を扱っている弁護士に相談することをご検討下さい。