離婚後、やっと落ち着いたと思っていたら、慰謝料請求をされて慌てているかもしれません。
しかし、慌てて対応してしまってはいけません。
本当に慰謝料を支払う義務があるのか、また支払う義務があるとして、減額や分割払いができる可能性はないのか、慎重に確かめる必要があります。
この記事を読むことで、離婚後に慰謝料請求された場合の対処法について知ることができます。
この記事では、
- 慰謝料とはどのようなときに請求される?
- 離婚後に慰謝料を支払う義務はある?
- 時効により支払わなくてもよい可能性もある?
- 慰謝料の相場ってどれくらい?
- 慰謝料請求されたときの正しい対処法って?
- 慰謝料を支払う前に示談書の作成を
について、弁護士が詳しく説明します。

法政大学、及び学習院大学法科大学院卒。アディーレ法律事務所では、家事事件部にて、不貞の慰謝料請求、離婚、貞操権侵害その他の男女トラブルを一貫して担当。その後、慰謝料請求部門の統括者として広く男女問題に携わっており、日々ご依頼者様のお気持ちに寄り添えるよう心掛けている。第一東京弁護士会所属。
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慰謝料とはどのようなときに請求される?
「慰謝料」とは、不法行為により他人に精神的苦痛を与えた場合に、他人に与えた精神的苦痛に対して慰謝するために支払うお金のことをいいます。
つまり、慰謝料が請求されるということは、あなたが不法行為によって他人に精神的苦痛を与えたということが前提となります。
不法行為とは、様々な行為があてはまります。
配偶者から慰謝料を請求されるケースについては、不法行為としては次のようなものが考えられます。
- 不貞行為(浮気や不倫)
- DV(暴力や経済的DVも含む)
- モラハラ など
離婚後に慰謝料を支払う義務はある?

通常、離婚後であっても、慰謝料を支払う義務があります。
慰謝料を支払う義務は、離婚すればなくなるというものではありません。
さらに、通常、財産分与後であっても、慰謝料を支払う義務はなくなりません。
そもそも、財産分与には、慰謝料的要素を含めて相手に多く財産を分けることがあります(例えば、相手の希望する金額を渡すなど)。
しかし、そのような財産分与を行った場合であっても、離婚後に慰謝料を支払わなくてはならない場合があります。
慰謝料的要素を含めて財産分与を行った場合であっても、財産分与によって相手に与えた精神的苦痛がすべて慰謝されたと認められない限り、財産分与後であっても、さらに慰謝料請求することができるとされているのです。
慰謝料的要素を含めて財産分与をした場合に、その後も慰謝料を支払う必要があるかどうかは、あなたの行為や財産分与で分与した財産など様々な要素を考慮して検討する必要があります(慰謝料要素も含めて財産分与を行った場合に、その後慰謝料を支払う義務があるかどうかについては弁護士に相談することをおすすめします。)。
財産分与について、さらに詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
時効により支払わなくてもよい可能性もある?

慰謝料の請求には、期限があります。
時効が成立してしまうと、法的には慰謝料請求する権利を失うとされているのです。
離婚する場合における、配偶者に対する慰謝料請求の時効は、原則として次のように定められています(2020年4月1日改正後の民法が適用される場合)。
- 離婚が成立したときから3年
- 最後に有責行為(例えば不貞行為や暴力行為など)があった時から20年
⇒いずれか早い時点が時効の完成日となります。
すでに時効が成立している場合には、慰謝料請求をされたとしても、時効が成立していることを主張して、慰謝料の支払いを拒むことができます。
慰謝料の相場ってどれくらい?

慰謝料の額や相場が法律で定められているわけではないものの、不倫(不貞行為)などを原因とした慰謝料の裁判上の相場は、およそ数十万~300万円程度といわれています。
特に、不倫を原因に離婚した場合における慰謝料の裁判上の相場は、およそ100万~300万円程度といわれています。
精神的苦痛の程度などを考慮して、慰謝料の金額を決められることになります。
慰謝料請求されたときの正しい対処法って?

慰謝料請求されたときの正しい対処法としては、次の4つのポイントに気を付ける必要があります。
- 慰謝料請求されたら放置しない
- 慰謝料請求されたら支払う義務があるかを確認する
- 慰謝料の金額や支払い期限の妥当性を確認する前に支払わない
- 相手の心情に配慮した対応をする
詳しく説明します。
(1)慰謝料請求されたら放置しない
慰謝料の請求は、口頭やメール、手紙などでなされます。
慰謝料を請求する側が弁護士に依頼して、弁護士から慰謝料の支払いを求める手紙が送られてくることもあります。
また、行政書士が代わりに作成した手紙が送られてくることもあります。
突然、慰謝料が請求されると、慌てて相手に連絡をとってしまうか、面倒と放置してしまうかもしれませんが、まずは落ち着いて、手紙の内容を確認しましょう。
一方、放置してしまうと、裁判を起こされてしまう可能性もあります。
話し合いで解決する可能性があったにもかかわらず、裁判で解決が遠のいてしまうこともあります。
かといって、慌てて相手に連絡し、「支払います」など言ってしまうと、あとで慰謝料を支払う責任を否定したり、減額交渉をしたりするのが難しくなることがあります。
まずは、手紙をよく読んで、次のような点を確認します。
(1-1)慰謝料を請求してきた相手方
まずは、請求してきた人を確認します。
元配偶者なのか、それとも、別の人なのか、を確認します。
(1-2)手紙を作成した専門家(弁護士や行政書士)の氏名および連絡先
行政書士が手紙を作成している場合、行政書士は弁護士のように、請求してきた人の代理人として相手方と話しあったり、裁判を起こしたりすることはできません。
したがって、話し合うべき相手は行政書士ではなく、請求してきた相手方本人ということになります。
一方で、弁護士は、本人に代わり金額について交渉したり、裁判を起こしたりすることができます。
したがって、弁護士の名前で手紙が届いた場合は、話し合うべき相手は弁護士ということになります。
話し合いでの解決は、双方にとってメリット(早期の解決が望める、裁判費用がかからない、など)がありますので、通常は、真摯に交渉すればすぐに裁判を起こされることはありません。
しかしながら、双方の慰謝料の主張金額が離れていたり、歩み寄りの姿勢がない場合には、最終的に交渉での解決は無理だと判断されて、裁判を起こされることもあります。
(1-3)行為の特定
慰謝料を請求されるということは、あなたに相手に精神的苦痛を与えた何らかの行為があったと、相手方が考えているということです。
例えば、不倫(不貞行為)が原因として慰謝料を請求された場合には、単に「○○と不貞行為を行った」と記載されていたり、「遅くとも○年〇月頃から、○○と不貞行為を行った」と記載されていたりします。
また、日付や時間を特定して、「〇月〇日〇時頃、○○とラブホテルにいき、肉体関係をもった」など具体的に記載されていることもあります。
記載されている行為の内容を確認し、それが事実なのか事実ではないのかを確認します。
例えば、不倫を原因として慰謝料を請求する場合には、肉体関係(ないしそれに類似する行為)が必要と考えられていますので、基本的に単なるデートだけでは慰謝料を請求することはできません。
不倫が事実ではない、または肉体関係(もしくはそれに類似する行為)がない場合には、相手方に事実ではない、もしくは肉体関係(それに類似する行為)がないことを相手に伝えましょう。
(1-4)請求された慰謝料の金額
通常は、相手が支払ってほしい慰謝料の金額が記載されていますので、金額を確認し、相場と比べます。
相場よりも高額な場合は、相手に相場よりも高いことを伝え、減額交渉することを検討しましょう。
(1-5)支払い、もしくは、返事を求められている期限
通常、慰謝料を請求する手紙を送る場合、支払い期限や、返事を求める期限を記載します。
例えば、「この書面を受領して2週間以内に支払え」や「○月〇日までに回答するように」などが記載されています。
期限に加えて、「期限までに支払いや回答がない場合には、事前の通知なく訴訟を提起する」などと記載されていることもあります。
期限が一方的に定められているので、慌ててしまいますが、専門家(行政書士や弁護士)が書面を作成している場合には、一応の期限を記載しているだけということがほとんどですので、期限を経過したからといって、すぐに裁判が起こされるということはほとんどありません。
ただ、期限内に回答が可能であれば、回答するようにしましょう。
「手紙を受け取った、内容を確認してまた回答します」などの回答でも構いません。
請求をしている側も、相手から回答があると交渉可能であるということがわかりますので、交渉をスムーズに進めることにつながります。

(2)慰謝料請求されたら支払う義務があるかを確認する
慰謝料を請求されたときに、一番重要なのは、支払う責任があるかとうかという点です。
この点について、事前に検討せずに連絡してしまうと、自分にとって不利ともとられかねない発言をしてしまうこともあるので注意が必要です。
(2-1)慰謝料を請求された原因が不倫にある場合

不倫を原因に慰謝料請求する場合は、原則、性行為(それに類似する行為)をともなう不倫である必要があります。
また、性行為(それに類似する行為)を伴う不倫であったとしても、夫婦が長年別居しておりすでに夫婦関係が冷め切っていたあとに不倫をしたのであれば、慰謝料を支払う責任がない場合もあります。
不倫をしたからといって、必ず慰謝料を支払わなければならないというものではありません。慌てて、「支払います」などと発言してしまうと、肉体関係を伴う不倫をしたことを認める発言にもとられかねませんので、注意しましょう。
(2-2)慰謝料を請求する原因がモラハラやDVなどにある場合

モラハラやDVを原因に慰謝料請求する場合には、どういう場合に、モラハラやDVにあたるのか、あたるとしても、慰謝料を請求できる程度にまで達しているか、など難しい判断が必要となります。
請求をしてきた側にとってはモラハラやDVにあたるとしても、客観的に見て慰謝料を支払う責任を負うほどのモラハラやDVにあたらないということもよくあることです。
モラハラやDVの場合、自分が慰謝料を支払う責任を負うかどうかの法的判断は難しいこともありますので、お悩みの際には一度弁護士に相談してみることをおすすめします。
(3)慰謝料の金額や支払い期限の妥当性を確認する前に支払わない

慰謝料を支払う責任を負うとしても、請求された慰謝料金額が妥当であるとは限りません。
慰謝料金額が相場よりも高ければ、減額交渉すべきですし、支払い期限や支払い方法(一括か分割か)などの条件についても交渉が可能な場合もあります。
一度支払う約束をしてしまうと、後から取り消すことは困難になりますので、事前に慰謝料金額などについて検討するようにします。
(4)相手の心情に配慮した対応をする
慰謝料は、相手の精神的苦痛を慰謝するためのものなので、慰謝料請求された側は、相手の心情に配慮し、相手の怒りを増幅させたりさらに傷つけたりしないように対応することが求められます。
しかしながら、当事者同士で接触して話し合うと、どうしても感情的になってしまったり、法的な根拠のない請求(引っ越しや退職要求など)を受けたりすることがあります。
そのような場合には、交渉を弁護士に依頼し、冷静な立場から淡々と交渉してもらうことが有効な対処法になります。
慰謝料請求されたが支払えないときの対処法って?
慰謝料を支払う義務があるが、慰謝料を支払えないときの対処法としては、2つの方法があります。
- 減額の交渉をする
- 分割払いの交渉をする
詳しく説明します。

(1)減額の交渉をする
請求された慰謝料の額が相場よりも高い場合は、通常は減額交渉を行います。
請求側も、通常、慰謝料の相場は知っていますので、相場よりも高い慰謝料を請求している場合には、減額交渉を受けることを見越している可能性があります。
また、相場の額であっても、経済的事情から支払いが難しいケースもあります。
そのような場合には、経済的事情から請求額は支払えない旨、いくらであれば支払える旨を伝えて交渉することになります。
請求側も、訴訟を提起して勝訴しても、相手方に強制執行をかけて回収する資産がなければ、慰謝料を回収することはできません。そうすると訴訟をしても手間と時間、費用が無駄にかかることになりますので、相手方の経済的事情は考慮せざるを得ません。
単に、「支払えないから安くしてほしい」と伝えても、相手方はその事実が真実かどうかわかりませんので、負債状況や、収入額、家計状況を尋ねられるかもしれません。
個人情報を必要以上に伝えなくともよいですが、相手方を説得するためにも、開示できる範囲で知らせることを検討するとよいでしょう。
(2)分割払いの交渉をする
慰謝料の金額自体には納得しているものの、一括で支払うことが困難な場合には分割払いの交渉をすることができます。
通常、請求側にとっては分割払いよりも一括払いの方がメリットがありますし、訴訟で勝訴すれば分割払いではなく一括払いが命じられますので、分割払いを嫌う傾向があります。
しかしながら、経済的事情から一括払いが不可能であるのに、一括払いの約束をすることはできませんので、真摯に分割払いの交渉をするようにしましょう。
頭金として初回支払い時にまとまった額を準備できる場合には、その旨を伝えるようにするとよいでしょう。
請求側も、裁判で勝ったとしても財産がなければ回収は困難ですので、分割払いであってもきちんと支払ってくれるのであれば、分割払いで合意するメリットはあります。
分割払いは途中で未払いになるリスクがありますが、一定額まで支払ったら残額を免除するという合意がなされることがあります。このような合意は、未払いになるリスクを抑えて、継続して支払うことの動機付けをすることができるというメリットがあります。
慰謝料を支払う前に示談書の作成を

慰謝料額について合意できたとしても、示談書を作成する前に支払うことはあまりお勧めしません。
後から、「以前の支払いは慰謝料の一部にすぎないから、残額を支払え」と請求され、紛争が最終的に解決しないリスクがあるためです。
したがって、慰謝料額、支払い時期、支払い方法などについて、後日、主張に違いが生じてもめるということがないように、合意内容については示談書を作成して客観的に明確にするようにします。
例えば、一般的に、不貞行為の慰謝料の支払いについての示談書には、次のような事項が記載されます。
- 合意当事者の氏名、住所、署名、押印
- 示談書締結日(示談日)の記載
- 不貞行為の当事者と不貞行為の存在
- 慰謝料額
- 支払い方法(一括又は分割、支払い期限、振込先口座情報など)
- 接触禁止条項(合意当事者間で、不貞相手と今後連絡を取らない旨約束した場合)
- 口外禁止条項(合意当事者間で、不貞行為について口外しない旨約した場合)
- 清算条項(この件については、合意した以上の債権債務は双方に存在しないことの確認)
相手方から、一方的に準備された示談書に署名押印を求められることも少なくありません。
しかしながら、記載内容については落ち着いた状況でしっかりと確認する必要がありますので、確認せずに署名押印して合意することは避けなければなりません。
一度合意してしまうと、後で「確認していなかった」と言っても、合意を取り消したり、無効としたりすることは困難です。
弁護士に交渉を依頼している場合には、通常弁護士が示談書を作成したり、修正したりしますので、示談書の内容について説明を受けて理解してから合意するようにしましょう。
【まとめ】慰謝料請求されたときは、支払義務の有無や相場をしっかり確認!
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 「慰謝料」とは、不法行為により他人に精神的苦痛を与えた場合に、他人に与えた精神的苦痛に対して慰謝するために支払うお金のこと。
- 配偶者から慰謝料を請求されるケースは、不貞行為、DV、セックスレス、モラハラなど。
- 慰謝料を支払う義務は、離婚すればなくなるというものではない。さらに、通常、財産分与後であっても、慰謝料を支払う義務はなくならない(財産分与の中に、慰謝料全額が含まれていると客観的に評価される場合を除く)。
- 時効が成立してしまうと、慰謝料請求されても支払いを拒むことができる。
- 慰謝料の額や相場が法律で定められてわけではないものの、離婚を原因とする慰謝料の相場は、およそ100万~300万円程度。
- 慰謝料請求されたときの正しい対処法
- 慰謝料請求されたら放置しない
- 慰謝料請求されたら支払う義務があるかを確認する
- 慰謝料の金額や支払い期限の妥当性を確認する前に支払わない
- 相手の心情に配慮した対応をする
- 慰謝料請求されたが支払えないときの対処法
- 減額の交渉をする
- 分割払いの交渉をする
- 慰謝料を支払う前に、慰謝料額、支払い時期、支払い方法などについて、後日、主張に違いが生じてもめるということがないように、合意内容については示談書を作成して客観的に明確にすることがお勧め。
自分で対応することが困難な場合や、相手方がすでに弁護士に依頼しているような場合には、弁護士に相談してみることをおすすめします。
アディーレ法律事務所では、不倫慰謝料を請求された事件の相談料は何度でも無料です。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため、費用倒れの心配はありません。
(以上につき、2021月12日時点)
不倫の慰謝料請求をされてお悩みの方は、アディーレ法律事務所へご相談ください。
