「自分はB型肝炎給付金の対象者にあたるんだろうか?また、B型肝炎給付金を受け取るためには、どのような検査や書類が必要となるんだろうか?」
B型肝炎給付金を受給するためには、国との和解によって作成された和解調書を社会保険診療支払基金へ提出し給付金等の請求をしなければなりません。
そして、国と和解するためには、所定の和解要件を満たす必要があり、和解要件を満たしていることを証明するための資料として血液検査結果のデータやカルテ等の資料が必要となります。
本記事では、
- B型肝炎訴訟の概要
- B型肝炎給付金の受給要件や必要資料
- 対象外となる典型例
について、解説します。

香川大学、早稲田大学大学院、及び広島修道大学法科大学院卒。2017年よりB型肝炎部門の統括者。また、2019年よりアスベスト(石綿)訴訟の統括者も兼任。被害を受けた方々に寄り添うことを第一とし、「身近な」法律事務所であり続けられるよう奮闘している。東京弁護士会所属。
ここを押さえればOK!
1989年に集団予防接種等における注射器の連続使用によってB型肝炎ウイルスに感染してしまった被害者5名が国に対して訴訟を提起し、2006年の最高裁判決で国の責任が認められました。 その後、2011年に国と原告団との間で基本合意書が成立し、2012年に特措法が施行され、給付金の支給が開始されました。 給付金の額は病態や除斥期間の経過の有無によって異なり、死亡や重度の肝硬変の場合は最大3600万円が支給されます。
給付金を受給するためには、一次感染者(幼少期に集団予防接種で感染)や二次感染者(一次感染者からの母子・父子感染)であることを証明する必要があります。証明には血液検査結果や予防接種の記録が求められます。
受給対象外となる典型例としては、生年月日が救済対象期間外である場合やB型肝炎ウイルス感染の記録がない場合、母子感染の疑いが排除できない場合などがあります。 また、資料が不足している場合でも、弁護士の助言により資料が収集できるケースもあるため、B型肝炎給付金の受給をお考えの方は弁護士に相談してみるとよいでしょう。
B型肝炎に関するご相談は何度でも無料!
弁護士費用は安心の成功報酬制!
ご相談・ご依頼は安心の全国対応。国内65拠点以上(※1)
お電話によるご相談だけでなく、お近くの本店・支店にお越しいただいてのご相談も可能です
B型肝炎訴訟の概要
B型肝炎訴訟は、幼少期に受けた集団予防接種等における注射器の連続使用によってB型肝炎ウイルスに感染した方等が、その賠償を国に求める訴訟です。
その訴訟手続きの中で国と和解を締結すると、B型肝炎給付金を請求できるようになります。
ここでは、B型肝炎訴訟の概要等について解説します。
(1)B型肝炎ウイルスの感染原因
B型肝炎ウイルスは血液等を媒介として感染するウイルスです。
B型肝炎ウイルスの感染原因には、垂直感染と水平感染とがあります。
垂直感染とは、B型肝炎ウイルスに感染した母親の産道や胎内で子どもに感染してしまうことをいい、母子感染ともいいます。
水平感染とは、性交渉等の濃厚接触、覚せい剤の濫用における注射器の連続使用、刺青針やピアッサーの使い回し、出血を伴うような民間療法、父子感染などの家族内感染、不衛生な器具による医療行為等による感染をいいます。
1948年に予防接種法が施行されて以来、1994年に至るまで、予防接種が国民の義務とされていましたが、この予防接種の実施においては、多くの場合で集団予防接種の方法がとられていました。
そして、この集団予防接種においては、注射器の連続使用がなされ、注射器に付着したB型肝炎ウイルス感染者の血液を媒介として、接種者の間でB型肝炎ウイルス感染が拡大することになりました。
1988年1月27日に国が注射筒の一人ごとの取り替えを指導するまで、この注射器の連続使用は続いたとされています。
(2)B型肝炎訴訟の経緯
B型肝炎訴訟とは、幼少期に受けた集団予防接種等における注射器の連続使用によってB型肝炎ウイルスに感染してしまった方等が、国に対してその賠償を求める訴訟をいいます。
幼少期に受けた集団予防接種等における注射器の連続使用によってB型肝炎ウイルスに感染してしまった被害者5名が、1989年、国に対してその賠償を求める訴訟を提起し、2006年の最高裁判決により、国の責任が裁判所により認められることとなりました。
その後、2011年6月に国と全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団との間で「基本合意書」が成立し、救済の認定要件や金額等が合意され、2012年1月13日に、「基本合意書」に基づき和解が成立した被害者等に対して給付金等を支給することを内容とした「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」(「特措法」といってご説明します)が施行されるに至りました。
参考:B型肝炎訴訟について(救済対象の方に給付金をお支払いします)|厚生労働省
参考:特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法|e-Gov 法令検索
(3)B型肝炎給付金とは?
B型肝炎給付金とは、B型肝炎訴訟を提起した被害者が、国との和解を成立させた場合に、社会保険診療報酬支払基金に請求すると受給できる給付金をいいます。
裁判に提出するための資料収集を行う
↓
裁判所で国を被告とする国家賠償請求訴訟を提起する
↓
和解協議手続き・国との間で裁判上の和解を成立させる(和解調書の作成)
↓
社会保険診療報酬支払基金に給付金の請求をする
B型肝炎給付金の給付金額は次の表のようになります。
死亡・肝がん・肝硬変(重度) | 除斥期間等が経過していない方 | 3600万円 |
除斥期間等が経過している方 | 900万円 | |
肝硬変(軽度) | 除斥期間等が経過していない方 | 2500万円 |
除斥期間等が経過している方のうち、現に治療を受けている方等 | 600万円 | |
除斥期間等が経過している方で、上記以外の方 | 300万円 | |
慢性肝炎 | 除斥期間等が経過していない方 | 1250万円 |
除斥期間等が経過している方のうち、現に治療を受けている方等 | 300万円 | |
除斥期間等が経過している方で、上記以外の方 | 150万円 | |
無症候性キャリア | 除斥期間等が経過していない方 | 600万円 |
除斥期間等が経過している方 | 50万円 + 定期検査費の支給等の政策対応 |
上の表をご覧いただけると分かりますが、B型肝炎給付金の給付金額は、
- 病態
- 除斥期間等の経過の有無
(・除斥期間等の経過後の慢性肝炎及び肝硬変(軽度)の場合は、「現に治療を受けている方等」に該当するか否か)によっても金額が異なります。
なお、B型肝炎訴訟の手続きを弁護士に依頼して国との和解に至った場合、上の表の給付金とは別に、訴訟手当金として給付金額の4%が支給されます。
B型肝炎給付金の要件と必要書類・検査
B型肝炎給付金を受給するためには、所定の要件を満たす必要があり、訴訟において、その要件を満たしていることを証明する資料を提出する必要があります。
ここでは、B型肝炎給付金の要件と必要書類・検査について解説します。
(1)一次感染者・二次感染者の要件
B型肝炎給付金を受給するための要件は、一次感染者と二次感染者で異なります。
一次感染者とは、幼少期に受けた集団予防接種等によって直接B型肝炎ウイルスに感染した方をいい、二次感染者とは、この一次感染者から母子感染又は父子感染によってB型肝炎ウイルスに感染した方をいいます。
なお、三次感染者の方も救済対象になります。
(1-1)一次感染者
一次感染者の要件は次のとおりです。
- B型肝炎ウイルスに持続感染していること
- 満7歳となる誕生日の前日までに集団予防接種等を受けていること ※「集団予防接種等」とは、集団接種の方法で実施された予防接種及びツベルクリン反応検査を指します
- 集団予防接種等における注射器の連続使用があったこと
- 母子感染でないこと
- その他集団予防接種等以外の感染原因がないこと
(1-2)二次感染者
二次感染者の要件は次のとおりです。
【母子感染の場合】
- 母親が一次感染者の要件をすべて満たしていること
- 二次感染者がB型肝炎ウイルスに持続感染していること
- 下記アイウのいずれかから、二次感染者の感染原因が母子感染であるといえること
ア:母子のB型肝炎ウイルスの塩基配列が同定されていること
イ:出生直後の時点でB型肝炎ウイルスに感染していること
ウ:父子感染等の母子感染以外の感染原因がうかがわれないこと
【父子感染の場合】
- 父親が一次感染者の要件をすべて満たしていること
- 二次感染者がB型肝炎ウイルスに持続感染していること
- 二次感染者の感染原因が父子感染であるといえること
(2)B型肝炎ウイルス持続感染は血液検査結果で確認
B型肝炎給付金を受給するための要件として、一次感染者及び二次感染者ともに、「B型肝炎ウイルスに持続感染していること」が求められます。
この要件を証明するための資料として、原則として、血液検査結果が求められます。
この血液検査結果は、次のいずれかのものが必要となります。
- 6ヶ月以上の間隔を空けた2時点における次の検査結果のいずれか
ア HBs抗原陽性
イ HBV-DNA陽性
ウ HBe抗原陽性 - HBc抗体高力価陽性
なお、これらの検査結果を提出できない場合であっても、「医学的知見を踏まえた個別判断」により、B型肝炎ウイルスの持続感染が認められる場合もあります。
例えば、B型肝炎ウイルスに感染していることがわかってすぐに他界してしまった場合などには、これらの検査結果が存在しないこともありますが、代替資料を基礎資料とする、医学的知見を踏まえた個別判断により、持続感染要件が認められる場合があります。
(3)B型肝炎訴訟の必要書類
B型肝炎訴訟では、受給要件を満たしていることを証明する資料を提出する必要があります。そのため、この資料集めがB型肝炎給付金を受給するうえで非常に重要となります。
例えば一次感染者として給付金を受給する場合、次のような資料を集めることとなります。
なお、次は一例です。ここに記載された資料が収集できなかった場合であっても、国との和解が成立する場合があります。「この資料は準備できないが自分は和解できるのか」など、具体的ケースにおいて和解が成立する見込みについては、B型肝炎訴訟に詳しい弁護士にご相談下さい。
【持続感染を証明する資料】- 本人の血液検査結果
この血液検査結果は、原則として、次のいずれかのものが必要となります。
- 6ヶ月以上の間隔を空けた2時点における次の検査結果のいずれか
ア HBs抗原陽性
イ HBV-DNA陽性
ウ HBe抗原陽性 - HBc抗体高力価陽性
※これらの検査結果が認められなかった場合であっても、「医学的知見を踏まえた個別判断」により、B型肝炎ウイルスの持続感染が認められる場合もあります。
【予防接種等を受けていることを証明する資料】
原則として、次のいずれかの資料か必要となります。
イ 予防接種台帳
ウ 母子健康手帳、予防接種台帳を提出できない場合には
- 陳述書
- 医師による接種痕意見書
- 住民票又は戸籍の附票等
【母子感染でないことを証明する資料】
次のような資料が必要となります。
- 母親が生存している場合には、HBs抗原陰性かつHBc抗体が陰性(または低力価陽性)
- 母親が死亡している場合には、80歳未満のHBs抗原陰性結果のみで可
【その他集団予防接種等以外の感染原因がないこと】
次の資料が必要となります。
ア カルテ等の医療記録
イ 父親のHBs抗原陰性の検査結果(父親がB型肝炎ウイルスの持続感染者である場合には、父子の塩基配列比較検査結果)
ウ ジェノタイプAeに感染しているのではないことを明らかにする資料
(4)B型肝炎ウイルスのジェノタイプ検査とは?
B型肝炎ウイルスには、9つの遺伝子型(ジェノタイプ)がありますが、ジェノタイプ検査とは、感染しているB型肝炎ウイルスの遺伝子型を判定する検査です。
B型肝炎ウイルスの中でもジェノタイプAeという遺伝子型を持つB型肝炎ウイルスは、1996年以降に日本において感染例が確認されており、また、成人後の感染でも約10%の方が持続感染化することが報告されています。
感染しているB型肝炎ウイルスの遺伝子型がこのジェノタイプAeであった場合、少なくとも幼少期の集団予防接種等が原因ではないということが分かりますので、B型肝炎給付金を受給するための必要資料として、原則としてジェノタイプ検査結果の提出が求められています。

B型肝炎給付金の受給対象外になるケース
B型肝炎給付金を受給するためには、前記の要件を満たし、その要件を満たしていることを証明するための資料を訴訟で提出する必要があります。
ここでは、B型肝炎給付金の受給対象外となる典型例を解説します。
(1)生年月日が救済対象期間外
一次感染者としてB型肝炎給付金を受給するためには、予防接種法の施行日である1948年7月1日から、注射筒の一人ごとの取り替えが国から指導された1988年1月27日までの間で、かつ、満7歳になる誕生日の前日までの間に集団予防接種等を受けている必要があります。
この期間内の集団予防接種等を満7歳になるまでに受けている可能性のある方は、1941年7月2日~1988年1月27日までの間に出生した方だけですので、1941年7月1日以前に生まれた方及び1988年1月28日以降に生まれた方は、救済対象外となります(ただし、1988年1月28日以降に生まれた方については、二次感染者又は三次感染者として救済対象になることがあります)。
(2)B型肝炎ウイルス感染の記録がない
B型肝炎給付金を受給するためには、B型肝炎ウイルスに持続感染している必要があります。
持続感染を証明するためには、原則として血液検査結果が必要になりますが、被害者の方がお亡くなりになっている場合やすでに感染状態にない場合には、血液検査結果が全くないということもあります。
血液検査結果が全くないという場合であっても、持続感染していたことをうかがわせる何らかの資料があれば、救済対象になることがありますが、持続感染していたことをうかがわせる資料も全くないということになると、救済対象外となります。
持続感染していたことをうかがわせる資料の代表例はカルテですが、他にも様々な資料があります。
そのため、血液検査結果が全くない、カルテが全くないといった場合であっても、持続感染を証明するための他の手段が残っていることはあります。
(3)母子感染の疑いを排除できない
一次感染者としてB型肝炎給付金を受給するためには、母子感染ではないことを証明する必要があります。
母子感染でないことを証明するためには、原則的として母親が持続感染者ではないことを明らかにする血液検査結果が必要になります。
母親が持続感染者だった場合、一般論としては母子感染の可能性が高いということになり、そのままでは和解対象外となってしまいます。
もっとも、この場合であっても、母親と被害者の感染しているB型肝炎ウイルスのジェノタイプが異なるときや塩基配列が異なるときは、母子感染ではないということになります。
このように、一見すると母子感染であることを証明することができなさそうな場合であっても、母子感染でないことを証明する手段が残っていることがあります。
(4)B型肝炎訴訟をあきらめる前に弁護士に相談
B型肝炎給付金の受給を検討しているが、資料がない、本人がすでに亡くなっているなどの理由で、受給対象外とあきらめてしまうケースも少なくありません。
もっとも、本人がすでに亡くなっていたとしても受給対象外とはなりませんし、一見すると資料がないように思えても弁護士によるアドバイスによって資料が収集できるケースもあります。
そのため、B型肝炎給付金の受給をお考えの方については、弁護士に一度相談されることをお勧めします。
【まとめ】B型肝炎給付金を受給するためには血液検査結果のデータや医療記録等の資料が必要
本記事をまとめると次のようになります。
- 集団予防接種等によるB型肝炎ウイルス感染者が国を相手に提起した訴えをきっかけに、国との和解成立で給付金を受け取れるようになった
- B型肝炎給付金を受給するためには、所定の要件を満たす必要があり、その要件を満たすことを証明する資料も提出する必要がある
- 必要資料がない等の理由によりB型肝炎給付金の受給をあきらめるケースも少なくないが、弁護士に相談することによって解決するケースもある
(※)母子手帳など、弁護士では収集できない一部資料を除きます。
アディーレ法律事務所では、B型肝炎給付金の受給手続きに関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として成果があった場合のみを報酬をいただくという成功報酬制です。
そして、原則として、この報酬は獲得した給付金からお支払いとなり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
※以上につき、2024年8月時点
アディーレ法律事務所では、B型肝炎に悩まれている方を一人でも多く救いたいという思いから、B型肝炎給付金の受給をお考えの方のご相談をお待ちしております。
B型肝炎給付金の受給をお考えの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。
