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交通事故の加害者が不起訴になったとき、被害者ができること

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リーガライフラボ

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

交通事故の加害者は、起訴されて有罪判決を受け、懲役刑や罰金刑等を受ける可能性があります。
しかしながら、悪質でない過失による交通事故の場合、過失運転致死傷罪が成立することが多く、その86.5%が不起訴処分となっています(2021年度・下記統計参考)。
一方で、危険運転致死傷罪においては、起訴率が77.8%と高くなっており、不起訴処分となるのは22.2%にとどまっています。
このように、交通事故の加害者が起訴されるか不起訴となるかは、交通事故について成立する罪名に大きく影響していることがわかります。

今回の記事では、交通事故の加害者が負う刑事責任、起訴・不起訴処分が決定する流れ、不起訴処分となったときに被害者ができることなどについて解説します。

参考:不起訴人員及び起訴率の累年比較 検察庁統計│e-Stat

この記事の監修弁護士
弁護士 南澤 毅吾

東京大学法学部卒。アディーレ法律事務所では北千住支店の支店長として、交通事故、債務整理など、累計数千件の法律相談を対応した後、2024年より交通部門の統括者。法律を文字通りに使いこなすだけでなく、お客様ひとりひとりにベストな方法を提示することがモットー。第一東京弁護士会所属。

交通事故の加害者が負う刑事責任

交通事故を起こした加害者は民事、行政及び刑事上の3つの責任を負うことになります。
民事上は、被害者に対して負う責任で、被害者が被った人的及び物的損害を賠償する責任を負います。
行政上は、運転免許は点数制度が採用されていますので、交通ルール違反の点数が加算されて、一定の点数以上となると免許停止又は免許取消処分を受けたりします。また、交通ルール違反の種類や車両種別によって金額の異なる反則金を納付する責任を負います。
最後に、刑事上は、交通事故の内容が法令上犯罪に該当するような場合には、刑事上の責任(懲役や禁固、罰金)を負います。

刑事上の責任は、交通事故を起こした加害者が、法令上定められた犯罪行為を行ったものとして、公訴提起され、有罪との判断を受けて懲役刑や禁固刑、罰金刑などの刑罰を受けることをいいます。公訴提起されずに不起訴となる場合もありますが、不起訴となると加害者は刑事罰を受けることはありません。
被害者の負傷の有無・程度や死亡事故かどうか、運転時の状態(飲酒をしていた、無免許運転だったなど)、事故直後の対応(警察に報告し、被害者を救護したかどうか)などにより、起訴されるかどうか、起訴されて有罪となったとして科される刑事罰は異なってきます。
近年は、あおり運転や危険運転が社会問題となって厳罰化が求められるようになり、法律も改正されています。

刑事責任の種類根拠法令罰則
過失建造物損壊道路交通法116条6ヶ月以下の禁固または10万円以下の罰金
危険防止等措置義務違反(軽車両の場合、物損事故の場合)道路交通法117条の5第1号1年以下の懲役又は10万円以下の罰金
危険防止等措置義務違反(軽車両でない人身事故の場合)道路交通法117条1項5年以下の懲役又は50万円以下の罰金
警察官への報告義務違反道路交通法119条1項10号3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金
負傷者救護義務違反道路交通法117条2項10年以下の懲役又は100万円以下の罰金
酒酔い運転道路交通法117条の2第1号5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
無免許運転道路交通法117条の2の2第1号3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
過失運転致死傷自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金
危険運転致死傷自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条人を負傷させた場合は15年以下の懲役、死亡させた場合1年以上20年以下の懲役

交通事故の発生から、交通事故加害者の起訴・不起訴が決まるまで

交通事故の加害者は、検察官に起訴されることで刑事裁判手続きが開始され、裁判所による有罪判決を経て刑事罰が科されることになります。
検察官が加害者を起訴しない場合もあり、そうなると加害者は民事上や行政上の責任を負うかどうかは別として、刑事罰を科されることはありません。
交通事故の加害者は、どのように起訴・不起訴となることが決まるのかを説明します。

(1)警察への報告

交通事故に関連する車両の運転者(同乗者も含む)は、道路交通法上、直ちに運転を停止し、道路に生じている危険を防止するなどの必要な措置を取る必要があり、また警察への報告義務があります(道路交通法72条1項)。
交通事故で負傷者が発生した場合、上記の義務に加えて、負傷者を救護すべき義務があります。

(2)警察による捜査

警察が交通事故の報告を受けると、警察による交通事故の捜査が開始されます。
事故当事者や目撃者から事情を聴いたりして事情聴取を行い、調書を作成します。
また、警察官が当事者立会いの下、交通事故現場や事故車両、被害者が身に付けていたものなどを詳しく見分して、実況見分調書を作成します。
事故に関係する物は、警察から証拠として提出を求められることもあります。

(3)警察から検察への事件送致

警察が捜査を行い、犯人(加害者)を特定すると、事件を検察庁に送ります。これを送致といいます。
逮捕には法律上の要件が必要ですので、警察が事件の捜査中であっても、犯人(加害者)が捜査に協力的で、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがなければ、逮捕されることはありません。
しかしながらひき逃げ事故やあおり運転などでは、加害者が犯行後逃亡することもあり、法律上の逮捕要件を満たすとして、逮捕されることも少なくありません。

(4)検察による起訴・不起訴の決定

事件送致を受けた検察官は、警察官から送致された資料を吟味し、新たに事情聴取や取り調べを行うなどの捜査を行ったうえで、事件を起訴するか、不起訴にするかを決定します。
起訴できる権限は検察官のみが有しており、また起訴できる事件でも、様々な事情を考慮して不起訴とする権限があります(刑事訴訟法248条)。

起訴するとしても、犯罪の内容が比較的軽く、検察官が100万円以下の罰金又は科料が相当であると判断したときは、加害者の同意により、公判を開くことなく書面だけで裁判が行われます(略式起訴、略式裁判、略式命令などといいます)。

加害者が起訴された場合の有罪率は、99%以上と極めて高く、2022年度の地方裁判所における無罪率は0.0015%にすぎません(令和4年司法統計年報概要版(刑事)|裁判所)。

交通事故加害者の不起訴処分に納得できないときは?

交通事故は日々発生しており、過失による事故がほとんどであることから、大半が不起訴処分や罰金刑で終了します。
交通事故の加害者が不起訴となっても、加害者の謝罪や誠意ある対応が見られ、十分な被害賠償がなされれば、被害者も納得できるかもしれません。
しかしながら、ケガの程度が重大で、交通事故の状況や加害者のその後の対応などによっては、加害者が不起訴処分となると、被害者として納得できないと感じることもあります。
加害者の不起訴処分に納得できないとき、被害者が取ることのできる対応について紹介します。

(1)検察審査会に審査を申立てる

不起訴処分に納得できないときに、検察審査会への審査請求を行い、検察官が被疑者を不起訴としたことが妥当かどうかについて、審査を求めることができます。
検察審査会は、法律上検察官が被疑者(犯罪の嫌疑を受けている者)を起訴するかしないかを判断する権限を独占していることから、この起訴・不起訴の判断の妥当性に民意を反映させて、その適性を図ることを目的として設けられています。
検察審査会は、全国の地方裁判所所在地と主な支部の所在地に設けられており、20歳以上で選挙権を有する国民の中からくじで選ばれた11人のメンバーで構成されています。
検察審査会の審査会議は非公開ですので、会議の場で被害者が直接意見を述べることなどは不可能です。事前に、不起訴処分を不当とする理由や、起訴が相当であることの理由を裏付ける根拠などを準備して提出することが大切です。

結論は、基本的に審査員11人の多数決で決められ、1.不起訴相当、2.不起訴不当、3.起訴相当の議決がなされます。
検察が3.起訴相当の議決の結果を受けたにも関わらず、再度不起訴処分となった場合(又は決められた期間内に処分の通知がなかった場合)には、再度の審査(第二段階の審査)がなされます。
第二段階の審査の結果、8人以上の検察審査員が「起訴すべき」という起訴議決をした場合には、指定弁護士が検察官に代わって当該被疑者を起訴することになります(強制起訴)。

審査の申立てには、費用はかかりません。
また、法律上審査申立てをすることができる期限の定めはありませんが、犯罪には殺人罪などを除いて公訴時効が定められており、決められた時効期間が過ぎると起訴はできなくなりますので、公訴時効に注意して審査申立てを行うようにしましょう。

(2)高等検察庁に不服を申立てる

検察審査会への審査申立てとは別に、高等検察庁検事長宛てに不服を申立てることも可能です。
検事長は、高等検察庁の長として、地方検察庁の職員を指揮監督するものとされていますので(検察庁法8条)、指揮監督権に基づいて不起訴を撤回し、捜査を再開してほしい旨、不服を申立てることができます。

交通事故加害者の不起訴処分が撤回されたら?

交通事故加害者の不起訴処分が撤回され、起訴される裁判が開かれることとなった場合には、被害者は被害者参加制度を利用して、刑事裁判手続きに参加することができます。

被害者参加制度とは

被害者参加制度とは、殺人や危険運転致死傷、過失運転致死傷など一定の犯罪について、被害者や遺族などが、裁判所の許可を得て刑事裁判に参加できる制度をいいます。

制度を利用できる人は、被害者本人、被害者の法定代理人(未成年者の両親など)、被害者が死亡した場合や心身に重大な故障がある場合には被害者の配偶者・直系親族・兄弟姉妹などです。
具体的には、刑事裁判で次のようなことが可能になります。

  • 公判期日に、検察官の隣などに着席し、裁判に出席できる。
  • 検察官の訴訟活動に関して意見を述べ、説明を求めることができる。
  • 情状証人の供述の証明力を争うために必要な事項について、証人を尋問できる。
  • 意見を述べるために必要と認められる場合に、被告人に質問できる。
  • 証拠調べ終了後、事実又は法律の適用について法廷で意見を述べることができる。

経済的に余裕のない方は、被害者参加人のための国選弁護制度を利用できるかもしれませんので、詳しくは最寄りの公設事務所(法テラス)に問い合わせてみましょう。

交通事故加害者の刑事責任を問いたいときは、弁護士に相談を

起訴とするか不起訴とするかについては、法律上検察官に権限がありますので、検察官が一度不起訴処分と決定した事件について、再度捜査が開始され、不起訴処分が撤回されることは極めて例外的です。
しかしながら、不起訴処分にどうしても納得できないという場合には、検察審査会に対して審査申立てするなどの手段がありますので、自分での対応が困難であれば、費用は掛かりますが弁護士に相談することを検討するとよいかもしれません。
また、起訴されることとなった場合、過失運転致死傷などの一定の罪では、被害者参加制度を利用することができます。
この制度においても、弁護士に依頼して参加すると、効果的な尋問内容について弁護士からアドバイスを受けたり、被害者参加人の代わりに弁護士が法廷で発言したりすることもできます。
また、被害者は同じ弁護士に対して、加害者への民事上の損害賠償を請求することについても併せて相談し、対応を依頼することができますので、加害者に対する対応による精神的肉体的負担を軽減し、けがの治療や普段の生活を取り戻すことに集中することができます。

【まとめ】交通事故加害者が不起訴となったとき被害者ができること

今回の記事の内容は次のとおりです。

  • 悪質なものでない限り、交通事故の加害者が不起訴処分になることは多い。
  • 不起訴処分に納得できないときは、検察審査会への審査申立てができる。
  • 検察審査会への審査申立てでは、不起訴処分不当、起訴処分相当とする根拠資料を提出する。
  • 一定の犯罪では、被害者参加制度を利用して、被害者も刑事裁判手続きに参加することができる。

この記事の監修弁護士
弁護士 南澤 毅吾

東京大学法学部卒。アディーレ法律事務所では北千住支店の支店長として、交通事故、債務整理など、累計数千件の法律相談を対応した後、2024年より交通部門の統括者。法律を文字通りに使いこなすだけでなく、お客様ひとりひとりにベストな方法を提示することがモットー。第一東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2025年2月時点。

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