中学生男子の間で人気の高い髪型「ツーブロック」。
そのスタイリッシュな見た目と手軽さから、中学生に限らず多くの生徒が取り入れたいと考える人気の髪型となっています。
しかし、学校の校則でツーブロックが禁止されているケースも少なくありません。なぜこの髪型が禁止されるのか、その背景にはどんな理由があるのでしょうか?
また、ツーブロック禁止の校則に対する批判や、髪型を制限する校則の妥当性についても解説します。
この記事を通じて、現代の教育現場における髪型規制のあり方や、自分らしさを表現するためのヒントが見つかれば幸いです。
この記事を読んでわかること
- ツーブロックとは
- ツーブロックが校則で禁止される背景
- 髪型を制限する校則は法的に問題ないのか
ここを押さえればOK!
ツーブロックが校則で禁止される理由は、教育現場での秩序と統一感を保つためだと言われています。また、「不良っぽい」という偏見や、髪型の自由を許すことで他の規律や校則に対する遵守意識が低下する懸念があるようです。
ツーブロック禁止の校則には、個性や自己表現の自由を制限するという批判があります。
また、髪型の規制が教育の本質とは無関係であり、学業や人格形成に直接的な影響を与えるわけではないという意見もあります。
髪型を制限する校則が法的に問題ないかどうかについては、学校が合理的な範囲で規律を設ける権利があるものの、過度な制限は生徒の自己決定権を侵害する可能性があります。
学校側の処分が不当だと考えられる場合には、弁護士に相談するなど、法的に争うことも手段の一つとして検討するとよいでしょう。
早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。
ツーブロックとは?中学生男子に人気の理由
まずは、ツーブロックという髪型の概要と人気の理由について解説します。
(1)ツーブロックとは
ツーブロックとは、髪のサイドや後ろを短く刈り上げ、トップの髪を長めに残すスタイルのことを指します。
ツーブロックの特徴は、サイドとトップの髪の長さに明確な差があることで、これにより髪型全体に立体感が生まれます。また、ツーブロックはアレンジがしやすく、日常の手入れも比較的簡単です。
トップの髪をワックスやジェルでセットすることで、さまざまなシーンに対応できるのも魅力の一つです。
(2)人気の理由
ツーブロックが中学生男子に人気の理由は、そのスタイリッシュな見た目と手軽さにあります。サイドを短く刈り上げることで清潔感があり、トップの髪を自由にアレンジできるため、個性を表現しやすいのが魅力です。
また、手入れが簡単で、忙しい学生生活でも手軽におしゃれを楽しむことができます。
さらに、スポーツや部活動をしている生徒にとっても、動きやすく快適な髪型として支持されているようです。
ツーブロックが校則で禁止されている理由
ツーブロックが校則で禁止されている理由は、主に教育現場での秩序と統一感を保つためです。学校は生徒に対して規律を守ることの重要性を教える場であり、髪型の規制もその一環とされています。
学校側は、ツーブロックは個性的で目立つ髪型であるため、他の生徒との違いが強調され、集団生活における一体感を損なう恐れがあると考えていることがあるようです。
また、ツーブロックは一部の大人から「不良っぽい」イメージを持たれることがあり、学校側は生徒が社会的に好ましくない印象を持たれるのを避けたいという意図もあります。
さらに、髪型の自由を許すことで、他の規律や校則に対する遵守意識が低下する可能性があると懸念されることも理由の一つでしょう。
このように、ツーブロック禁止の校則は、教育現場での秩序維持と生徒の社会的評価を考慮した結果として設けられていると考えられます。
ツーブロック禁止の校則に対する批判
ツーブロックを禁止する校則には、多くの批判もあります。
まず、個性や自己表現の自由を制限するという点です。
現代社会では多様性が尊重されるべきであり、髪型もその一部と考えられるでしょう。生徒たちが自分らしさを表現する手段を奪うことは、創造性や自己肯定感の育成に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、ツーブロックが「不良っぽい」とされる偏見も時代遅れであり、実際には多くの一般的な若者がこの髪型にしているという事実があります。
さらに、髪型の規制が教育の本質とは無関係であり、髪型が学業や人格形成に直接的な影響を与えるわけではないという意見もあります。
これらの批判は、校則の見直しや柔軟な対応を求める声として、教育現場や社会全体で議論されています。
ツーブロック禁止の校則を守るべきか
次に、校則に従わないことで生じ得るリスクや、校則そのものを変更する方法について解説します。
(1)校則に従わない場合のリスク
校則に従わないことには、さまざまなリスクが考えられます。
まず、学校内での評価が下がる可能性があります。
教師やほかの生徒から「規律を守らない生徒」と見なされることで、信頼を失うことがあります。
また、校則違反が続くと、指導や注意を受けるだけでなく、場合によっては停学や退学といった厳しい処分が下されることもあります。
校則違反が内申書に悪影響を及ぼし、進学や就職に不利になることも考えられるでしょう。
これらのリスクを考慮すると、校則に従うかどうかは自身の将来にとっても重要な影響を及ぼし得るといえます。
もっとも、学校側の処分が不当だと考えられる場合には、弁護士に相談するなどして、法的に争うことも手段の一つです。
(2)校則変更を求める方法
まず、生徒会を通じて校則の変更を提案することが考えられます。
学校によっては、生徒会が生徒の代表として、校則変更の提案を正式に議題として取り上げてくれるかもしれません。
次に、保護者の協力を得ることも重要です。
保護者会などを通じて意見を集め、学校側に働きかけることで、より強力なサポートを得られる可能性もあります。
また、アンケートや署名活動を行い、多くの生徒や保護者の賛同を得ることで、学校側に対する説得力を高めることも考えられます。
さらに、教育委員会や地域の教育関係者に相談することも一つの手段です。
学校外からも支援を得られれば、校則変更の実現可能性が高まるでしょう。
髪型を制限する校則は法的に問題ない?
髪型を制限する校則が法的に問題ないかどうかは、議論の余地があります。
髪型の自由を巡っては、過去に裁判上で何度か争われてきました。
例えば、熊本地裁昭和60年11月13日判決では、熊本県にある公立中学校が男子生徒の髪型を丸刈りと定め、長髪を禁止した校則の適法性が争われました。
この裁判では、他の中学校では髪型を規制されないのに特定の中学校の生徒、しかも男子のみが規制を受けるのは法の下の平等に反する、髪型は思想を表現する一手段なのにこれを制限することは表現の自由に反する、等の主張が生徒側からされました。
裁判所は、服装規定等の校則は各学校が独自に判断するものであるし、男子と女子の髪型には異なる慣習があるのが当然だから法の下の平等には反しない、また髪型が思想を表現する手段であるとは認められないし、特に中学生という子供が髪型で思想を表現するとも考えられないので、表現の自由にも反しない、と判断しました。
そのうえで、中学校の校長は校則を定める広い権限を有しており、校則が教育を目的として定められた場合には、その内容が著しく不合理な場合でない限り、その校則は違法とはならない、として、学校側に校則を定める広範な裁量を認めました。そして、本件の校則の目的は、非行化の防止、中学生らしさの清潔感の維持に加え、髪型を整えることによる遅刻防止、髪を授業中に髪をいじって授業に集中しなくなることの防止、帽子をかぶらなくなることの防止、教室に整髪料の匂いが漂うことの防止、といった教育的観点にあるとし、内容も著しく不合理とまではいえないとして、丸刈りの校則を適法としました。
また、私立高校のパーマを禁止する校則の妥当性が争われた最高裁平成8年7月18日判決においても、最高裁はパーマをかけることを禁止しているのも、高校生にふさわしい髪 型を維持して非行を防止するためであるから、本件校則は社会通 念上不合理なものとはいえず、違法ではない、と判断しています。
このように、法律上は、学校側に校則を定める広い裁量があるとしつつ、その校則が社会通念上明らかにおかしい場合には違法となる、というのが裁判所の基本的な考え方です。
もっとも、社会通念というのは時代や地域により大きく異なります。前記の熊本地裁の判決も、当時の学者によれば、当時熊本県内で男子の長髪を許可していた中学校が全体の約15%しかなかったという実情が重視されたことで、校則を適法とする判断がされたそうです。
そのため、時代が変化して個人の自由が大きくクローズアップされるようになった令和の現在においては、裁判所の判断もまた変わってくるのかもしれません。
校則そのものの違法性が真正面から認められた裁判例はまだありませんが、具体的な内容や状況によっては、「校則そのものが違法だ」とされる余地はあるということです。
【まとめ】
ツーブロックは中学生男子に人気の髪型ですが、校則によりツーブロックを禁止している学校もあるようです。
その理由としては、教育現場での秩序維持や統一感の確保、さらには社会的なイメージの問題があると考えられます。
しかし、ツーブロック禁止の校則には、合理的な理由がないという批判も多くあるようです。
髪型を制限する校則は、不当な制約ではないかという意見も増えてきています。
これからは、生徒一人ひとりが自分らしさを表現できるよう、校則の見直しや柔軟な対応が求められていくことでしょう。