退職勧奨を受けたことがありますか?
会社から突然「退職を考えてみてはどうか」と言われたら、戸惑いや不安を感じるのは当然です。
このコラムでは、退職勧奨とは何か、そしてそれに対してどのように対応すべきかを解説します。例えば、「退職勧奨されたらどうすればいいのか」「退職を拒否する方法はあるのか」「もし過度な退職勧奨を受けたらどう対応すればいいのか」といった疑問に答えています。
これを読むことで、退職勧奨をされた戸惑いや不安を解消することができるでしょう。
この記事を読んでわかること
- 退職勧奨とは
- 退職勧奨をされた場合の対処法
- 過度な退職勧奨や退職の強要をされた場合の対処法
ここを押さえればOK!
退職勧奨を拒否したい場合、自分の意思をはっきりと伝え、解雇予告手当金や退職金を受け取らないように注意します。受け入れる場合は、退職条件を交渉し、書面で確認することが重要です。
過度な退職勧奨や退職の強要は違法となる可能性があります。違法な退職勧奨に対しては、証拠を集め、会社に正式に通知し、場合によっては慰謝料を請求する方法がとることができます。
東京大学法学部・東京大学法科大学院卒。アディーレ入所後は未払残業代請求事件をメインに担当し、2022年より労働部門の統括者。「自身も同じ労働者だからこそ、労働者の方々に寄り添える」との信念のもと、より多くのご依頼者様を、より良い解決へ導くことを目標に尽力している。東京弁護士会所属。
退職勧奨とは
まずは、退職勧奨について知っておきましょう。
「解雇(クビ)とは何が違うの?」というギモンにもお答えします。
(1)退職勧奨とは
退職勧奨とは、会社が社員に対して自発的に退職を促す行為です。「肩たたき」とも呼ばれます。退職勧奨が行われる背景には、経営の悪化や組織再編成などがあります。
例えば、上司から「退職を考えてみてはどうか」といった提案がされることが多いようです。退職勧奨は強制力を持たず、社員がその提案を受け入れるかどうかは自由です。
(2)退職勧奨と解雇(クビ)の違いとは
退職勧奨は社員の自主的な退職を促す行為であり、社員が同意しなければ成立しません。退職の条件を交渉することもでき、退職に納得がいかない場合には退職を拒否できます。
一方、解雇は会社側が一方的に雇用契約を終了させる行為で、会社側に合理的な解雇理由が必要です。退職条件を交渉することはできません。
<退職勧奨と解雇の違い>
- 退職勧奨:自主的な退職、条件交渉が可能
- 解雇:会社からの一方的な通知、解雇理由が必要
解雇について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
退職勧奨されたらどうすべき?
次に、退職勧奨されたらできることを解説します。
退職を拒否したい場合と受け入れる場合に分けて説明しますので、あなたの状況に合わせてお読みください。
(1)退職を拒否したい場合
退職勧奨を受けたが退職を拒否したい場合、まず自分の意思をはっきりと伝えることが重要です。退職勧奨は法的に強制力がないため、拒否する権利があります。
(1-1)退職を拒否することをはっきり伝える
退職を拒否する場合は、上司や人事担当者に対して明確にその意思を伝えましょう。例えば、面談時に「退職する意思はありません」とはっきり言いましょう。
雰囲気に押されて、その場しのぎで「わかりました」など退職勧奨を受け入れると捉えることのできる発言をすると、退職を前提とした手続がとられてしまう可能性があるので気をつけてください。
(1-2)解雇予告手当金や退職金は受け取らない
退職を拒否する場合、退職金を受け取らないことが重要です。これらを受け取ると、退職を承諾したと見なされる可能性があります。
解雇予告手当について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(2)退職を受け入れる場合
退職勧奨を受け入れる場合、退職条件と自己都合の退職か会社都合の退職なのかという2点を確認しましょう。失業保険の関係で会社都合退職となったほうがメリットがあります。
(2-1)退職条件の交渉をする
退職条件に納得がいかない場合には退職条件を交渉することもできます。
この場合、退職の条件に納得するまでは働き続ける意思を示しておきましょう。
<退職条件の確認>
- いつまで出勤する必要があるのか
- いつから有給休暇を消化するのか
- 退職金はいくらなのか
退職勧奨のなかで、退職の条件として増額した退職金の支払いが提示されることもあります。また交渉することで増額できる可能性もあるため、金額の確認を行いましょう。
(2-2)退職条件は書面でもらう
退職条件は書類で通知してもらうにようにしましょう。条件に納得していない状態で、退職する意思を見せると、会社側の都合のいいように解釈されてしまうおそれがあるからです。
書面で通知してもらうことで、言った、言わないでのちのち争うなどのトラブルを防げます。
過度な退職勧奨や退職の強要をされたらどうすべき?
最後に、しつこく退職するように説得されたり、退職を強制的に求められたりした場合の対処法を解説します。
(1)過度な退職勧奨や退職の強要は違法になる可能性
退職を拒否する社員に対して会社側が退職するように説得をすることはできますが、過度な退職勧奨や退職の強要は違法となる可能性があります。労働者の自由意志を侵害し、精神的苦痛を与える行為は法律に反します。
<退職勧奨が違法となる可能性のある例>
- 長時間・長期間にわたる執拗に退職を促す
- 嫌がらせにより退職を迫る
- 強圧的な言動で退職を強要する
(2)違法な退職勧奨に取るべき対応
退職を拒否する社員に対し、違法な退職勧奨を受けた場合、退職勧奨をやめるように会社に対して交渉することになります。ここでは、とるべき具体的な対応について解説します。
(2-1)証拠を集める
まず証拠を集めましょう。証拠がないと、違法行為を立証することが難しくなります。例えば、あなたが会社から退職を強要されたと訴えても、会社がしていないと言ってしまえば退職を強要されたことを証明することが難しいのです。
<証拠の例>
- 会話の録音
- メールや書面でのやり取り
- 退職勧奨を受けた日時や内容のメモ
(2-2)退職勧奨をやめるようにメールや内容証明郵便を送る
退職勧奨をやめるように正式に通知することが重要です。メールや内容証明郵便を送ることで、相手に対する正式な警告となります。
退職勧奨をやめるようにメールや内容証明を送ったにもかかわらず、退職勧奨がやまない場合には、裁判所に退職勧奨の差し止めを求める方法もあります。
(2-3)慰謝料を請求する
違法な退職勧奨に対して、慰謝料を請求することができる可能性があります。精神的苦痛を受けた場合、損害賠償請求を行うことで正当な補償を得ることができます。
【まとめ】退職勧奨をされたら拒否か応じるかの2択!
退職勧奨を受けた場合、まずその内容を理解し、自分が取るべき対応を明確にしましょう。
退職を拒否する場合は、はっきりと意思を伝え、解雇予告手当金や退職金を受け取らないことが重要です。一方、退職を受け入れる場合は、退職条件をしっかり交渉し、書面で確認することが必要です。