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報復人事とは?その対策と法的手段を弁護士が徹底解説 

作成日:
y.kanno

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

職場での人事異動のタイミング次第では、「これって報復人事なのでは?」と不安になることがあるかもしれません。 

例えば、上司と意見が対立した後で人事異動の内示が出た場合などが挙げられます。 

実は、人事異動が報復人事に当たる場合、その人事命令は無効であり、異動を拒否することができます。 

このコラムでは、報復人事の定義や原因、通常の人事異動との違い、そして違法性が問われる基準についてくわしく解説します。また、報復人事に直面した場合の具体的な対処法や相談先についても紹介しています。 

この記事を通じて、自分の状況を確認し、安心して働くための知識を手に入れましょう。 

この記事を読んでわかること 

  • 報復人事とは 
  • 報復人事のよく見られる原因とは 
  • 報復人事と通常の人事異動の違いとは
  • 報復人事が違法とされる基準とは 
  • 報復人事への対処法とは 
  • 報復人事で悩んだ場合の相談先とは

ここを押さえればOK!

報復人事とは、正当な理由なく不利益な配置転換や降格を行うことであり、パワハラの一種です。
原因としては、内部告発や上司との意見衝突、休暇取得、退職勧奨拒否、労働組合活動などが挙げられます。通常の人事異動は企業の業務効率化を目的とし、適正な手続きが伴いますが、報復人事は特定の従業員を不当に扱う意図があります。

報復人事が「人事権の濫用」に当たる場合、違法とされ無効になる可能性があります。
報復人事への対処法としては、異動拒否、理由説明の要求、退職、法的手段などがあります。相談先には労働基準監督署や弁護士があり、法的知識を活用して安心して働ける環境を築くことがおすすめです。

報復人事とは

報復人事とは、正当な理由なく不利益な配置転換や降格を行うことをいいます。懲罰人事とも呼ばれ、パワハラの一種と整理することができます。 

報復人事の原因とは

次に、報復人事のよく見られる原因について紹介します。 

(1)内部告発・内部通報に対する人事

内部告発は、企業の不正を正すために重要ですが、告発者が報復人事の対象となることがあります。例えば、企業の不正を告発した結果、意図的に遠方への異動を命じられるケースです。 

(2)上司との意見衝突をきっかけとする人事 

職場での意見の衝突や業務改善の意見を伝えた結果、それが原因で報復人事が行われることがあります。例えば、業務の進め方を巡って上司と対立した結果、降格されるケースです。 

人事は業務上必要だから行われるものであって、上司の個人的な主観のみで行われる人事は報復人事に当たる可能性が高いでしょう。 

(3)休暇の取得に対する人事

有給休暇や育児休暇の取得をしたことで報復的な人事が行われることがあります。 

有給休暇や育児休暇の取得は、法律で定められた正当な権利です。しかし、長期休暇をとりにくい雰囲気や風土のある会社の場合、こうした休暇・休業の取得をするだけで、反感を買ってしまうことがあります。 

(4)退職勧奨の拒否に対する人事

退職勧奨を拒否した結果、意図的な配置転換が行われることがあります。 

従業員が嫌がる配置転換を行うことで、従業員に対し退職を追いやるのです。 

しかし、退職勧奨はあくまでも任意で、拒否ができます。退職勧奨を拒否することで配置転換を行うことは「報復人事」に当たる可能性が高いでしょう。 

(5)労働組合での活動に対する人事

労働組合で活動していることを理由に不当な人事が行われることがあります。例えば、組合活動を理由に重要なプロジェクトから外されるケースなどです。 

労働組合での活動は労働者の権利であり、これに対する報復は不当労働行為として扱われます。 

報復人事と通常の人事異動の違いとは

報復人事と通常の人事異動の違いは、目的と手続きの適正さにあります。 

通常の人事異動は、企業の業務効率化や従業員のスキル向上を目的として行われます。一方、報復人事は特定の従業員を不当に扱う意図で行われます。 

適正な人事異動は、労働契約や就業規則に基づいており、合理的な理由を内容とする事前の説明が行われます。 

報復人事が違法とされる基準とは

報復人事が社会通念上妥当な範囲を逸脱した人事権の行使にあたる場合、つまり報復人事が「人事権の濫用」に当たると、その報復人事は違法になります。 

ここでは、報復人事が「人事権の濫用」に当たり違法となる場合について、過去の裁判例から見えてくる基準やポイントを紹介します。 

(1)人事権行使の根拠があるのか

そもそも人事権行使の根拠があるのかどうかを確認する必要があります。 

基本的には、会社には人事権の行使が認められます。 

例えば、次のような場合です。 

  • 就業規則に「業務の都合により出張、配置転換、転勤を命じることができる」などの規定がある場合 
  • 労働契約の締結の経緯、内容、人事異動の実情などから人事権の行使が認められる場合 

一方で、例えば次のような場合には人事権の行使をすることは難しいでしょう。 

  • 就業規則や雇用契約書で勤務地が限定されている場合に他の勤務地に配転を命じること 
  • 医師・看護師・技師などの職種が採用条件となっていた場合に他の職種に配転を命じること 

(2)人事権の濫用に当たるか

人事権の行使ができる場合であっても、人事権の行使が人事権の濫用に当たる場合には違法となります。 

人事権の行使が「人事権の濫用」に当たるかどうかは、次のポイントで判断します。 

  • 業務上の必要性があるか 
    • 労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点があるかどうか 
  • 不当な動機・目的をもってなされたものか 
  • 従業員に著しい不利益があるか 
    • 配転すると家族の介護・看病などをできなくなるといった著しい不利益があるかどうか 

また、給与減額が伴う場合、もとの給与と減額後の給与の差額について請求できることがあります。 

報復人事への対処法とは

報復人事に直面した場合、適切な対処法を講じるようにしましょう。 

自身の状況に合わせて参考にしてください。 

(1)報復人事を拒否する 

人事命令に対して、基本的に従業員に拒否権はありませんが、不当な人事命令(報復人事)に対しては拒否する権利があります。 

ただし、拒否が業務命令違反と見なされるリスクもあるため、慎重に判断する必要があります。 

(2)理由・説明を求める方法 

企業に対し、異動の理由を正式に説明するよう求めることができます。 

具体的な手段としては、書面での問い合わせや、上司との面談を通じて説明を受けることが考えられます。 

説明が不十分な場合は、報復人事の不当性を主張する材料となります。

(3)退職する 

報復人事が続く場合、退職を選択することも解決方法の1つです。 

報復人事が行われる会社に居続けたとしても、精神的ストレスから体調不良をきたし、再就職がままならない状態になるおそれもあるからです。 

退職を拒否される場合には、弁護士による退職代行サービスの利用も検討してみましょう。 

(4)法的な手段をとる 

不当な報復人事に対し「拒否します」と伝えても、適切な対処が行なわれない場合には法的な手段をとることを検討してみましょう。 

例えば、「裁判で今回の人事の無効を主張する」または「精神的苦痛を受けたとして慰謝料を請求する」などの選択肢があります。 

(4-1)裁判で報復人事は「無効」と主張する 

報復人事が人事権の濫用であると認められた場合、その人事は無効となることがあります。 

(4-2)損害賠償請求をする 

報復人事によって生じた損害について、損害賠償を請求することが可能です。これは、精神的苦痛や経済的損失に対する補償を求めるものです。 

報復人事で悩んだ場合の相談先とは

報復人事に直面した際、適切な相談先を知ることが解決への第一歩です。以下に、具体的な相談先とその役割を紹介します。 

(1)労働基準監督署 

労働基準監督署は、労働者の労働環境を守るための公的機関です。 

相談は無料で受け付けてくれ、監督署が会社に指導を行い、改善を促すことができます。 

(2)労働局 

労働局は、全国の都道府県に設置される厚生労働省の出先機関です。 

労働局もパワハラや解雇等に関する相談とマタハラやセクハラ等に関する相談などにのってくれます。 

(3)弁護士 

弁護士に相談することで、報復人事に対する具体的な法的対策を講じることができます。特に、配置転換や降格の違法性を主張し、交渉や裁判を通じて解決を図る際に有用です。 

法律の専門家として、具体的な証拠の集め方や手続きの進め方をサポートします。

【まとめ】報復人事とは正当な理由なく不利益な配置転換や降格を行うこと 

報復人事は、正当な理由なく行われる不利益な人事であり、違法とされる場合は無効にできます。 

このコラムでは、報復人事の定義、原因、違法性の基準、対処法を詳しく解説しました。特に重要なのは、報復人事は業務上の必要性を欠き、不当な動機で行われる場合に違法とされる点です。 

適切な相談先として労働基準監督署や弁護士を活用し、法的知識を深めて安心して働ける環境を築きましょう。状況に応じた対策を講じ、必要であれば公的機関や弁護士に相談することをおすすめします。勇気を持って一歩を踏み出し、健全な職場環境を取り戻しましょう。 

この記事の監修弁護士
弁護士 山内 涼太

東京大学法学部・東京大学法科大学院卒。アディーレ入所後は未払残業代請求事件をメインに担当し、2022年より労働部門の統括者。「自身も同じ労働者だからこそ、労働者の方々に寄り添える」との信念のもと、より多くのご依頼者様を、より良い解決へ導くことを目標に尽力している。東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

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