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退職金について労働基準監督署に相談できる?支払義務についても解説 

作成日:
y.kanno

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

「会社が退職金を払ってくれないんだけれど、労働基準監督署に相談できる?」 

退職金は労働者の大切な権利ですが、支払いをめぐるトラブルは後を絶たないようです。 

実は、労働基準監督署は退職金問題の相談窓口として重要な役割を果たす場合があります。 

この記事では、退職金に関する労働基準監督署の役割や、相談の具体的な方法を解説しています。 

さらに、会社の退職金支払義務の有無や、支払いを拒否されたときの対処法についても紹介しています。 

この記事を読んでわかること 

  • 退職金の支払義務 
  • 退職金が支払われないケースとその理由
  • 労働基準監督署ができること

ここを押さえればOK!

一般的に、退職金は「功労報償金」や「後払い賃金」としての性質を持ちますが、労働基準法には明確な規定がありません。支給条件は就業規則、労働協約、労働契約で定められ、これらに規定がある場合には会社に支払義務が生じます。
退職金が支払われない主な理由には、会社の経営状況悪化、就業規則や労働契約の不備、退職理由(懲戒解雇など)があります。
労働基準監督署は労働関係法令の遵守を監督・指導する機関で、退職金問題に関して相談窓口としての対応や会社への調査・指導を行うことがあります。しかし、就業規則等で支給基準が明確でない場合は対応できないこともあります。
労働基準監督署で解決できない場合、労働審判や民事訴訟といった法的手段を検討する必要があります。労働審判は短期間で結論が出る利点がありますが、民事訴訟はより詳細な審理が可能です。
トラブル予防のためには、入社時から退職金制度を確認しておくことが重要です。退職時には支払時期や方法を書面で確認し、必要書類を確実に受け取るようにしましょう。
この記事の監修弁護士
弁護士 山内 涼太

東京大学法学部・東京大学法科大学院卒。アディーレ入所後は未払残業代請求事件をメインに担当し、2022年より労働部門の統括者。「自身も同じ労働者だからこそ、労働者の方々に寄り添える」との信念のもと、より多くのご依頼者様を、より良い解決へ導くことを目標に尽力している。東京弁護士会所属。

退職金とは何か?法的根拠と支払義務 

多くの労働者にとって、退職金の有無や金額は将来の生活設計に大きな影響を持つものでしょう。 

しかし、その法的な位置づけや支払義務については、意外と知られていない部分があります。 

退職金の定義と法的位置づけ 

退職金は、一般的に「功労報償金」や「後払い賃金」としての性質を持つとされています。長年の勤務に対する感謝の意味合いと、在職中に支払われなかった賃金の一部という二つの側面があるのです。 

しかし、労働基準法には退職金に関する明確な規定がありません。つまり、法律上、会社に退職金を支払う義務が一律に課せられているわけではないのです。 

退職金の支給条件を決定するのは、基本的に以下のとおりです。 

  1. 就業規則 
  2. 労働協約 
  3. 労働契約 

これらのいずれかで退職金の支払いが定められている場合、会社にはその内容に従って退職金を支払う義務が生じます。 

また、就業規則などには退職金についての規定がないものの、その会社では退職金が支払われ続けているといった慣行があるならば、会社に退職金の支払義務が生じる場合もあります。 

退職金が支払われないケースとその理由 

退職金は多くの労働者にとって重要な権利ですが、実際には支払われないケースが存在します。ここでは、退職金が支払われない主な理由とそのケースについて詳しく見ていきましょう。 

(1)会社の経営状況による未払い 

最も一般的な理由の一つが、会社の経営状況の悪化です。 

たとえば、資金繰りが悪化し、一時的な資金不足に陥っている場合、退職金の支払いが遅延することがあります。 

この場合、完全な未払いではなく、分割払いや支払い時期の延期を提案されることもあります。 

つぎに、会社が倒産手続に入った場合にも、退職金の支払いが困難になることがあります。 

この場合、未払賃金立替払制度を利用できる可能性がありますが、退職金全額が保証されるわけではありません。 

未払賃金立替払制度については、最寄りの労働基準監督署で相談できます。 

(2)就業規則や労働契約の不備 

退職金制度に関する規定の不備や曖昧さが原因で、支払いが拒否されるケースもあります。 

たとえば、就業規則や労働契約に退職金に関する明確な規定がない場合、会社側が支払義務を否定する根拠となることがあります。 

また、退職金の支給条件が明確でない場合、解釈の違いによりトラブルが発生することもあります。 

(3)退職理由による不支給 

退職の理由によっては、退職金が支払われないケースがあります。 

(1)懲戒解雇 

多くの会社では、懲戒解雇された場合に退職金を支給しない旨を就業規則に定めています。 

ただし、懲戒解雇の正当性が認められない場合、退職金請求が可能となることがあります。 

(2)自己都合退職 

一部の会社では、自己都合退職の場合には退職金の減額や、支給しない旨の規定を設けていることがあります。 

(3)勤続年数不足 

多くの会社では、退職金の支給に最低勤続年数を設定しています。 

この年数に満たない場合、退職金は支給されません。 

退職金が支払われないケースに直面した場合、まずは就業規則や労働契約の内容を確認し、会社側に説明を求めることが重要です。 

そのうえで、不支給の根拠が不明確だったり、不当だと感じる場合は、労働基準監督署に相談することをおすすめします。

労働基準監督署の役割と退職金問題への関与 

労働基準監督署は、労働基準法をはじめとする労働関係法令の遵守を監督・指導する国の機関です。 

具体的には、以下の対応を行うことがあります。 

  • 労働トラブルの相談窓口としての対応 
  • 退職金規定の適切性についての助言
  • 会社への調査や指導 
  • 未払い退職金に関する是正勧告

もっとも、労働基準監督署は、会社が労働基準法違反をしている可能性がある場合に調査や指導対応を行う厚生労働省の機関です。 

そのため、就業規則などで退職金の支給基準が明確にされていない場合には、労働基準監督署では対応してもらえないことも考えられます。 

労働基準監督署への相談手順 

まず、相談前の準備として、以下の書類を用意しましょう。 

  • 労働契約書 ・就業規則(退職金規定を含む) 
  •  給与明細 
  • 退職証明書 
  • その他関連する書類や証拠

次に、最寄りの労働基準監督署に電話で予約を取ります。 

相談当日は、準備した書類を持参し、状況を簡潔に説明します。相談員の質問に正確に答え、感情的にならないよう心がけましょう。 

相談後、労働基準監督署が会社に対して調査や指導を行う場合があります。 

この過程で、追加の情報提供を求められることもあるため、連絡を取りやすい状態を維持しておくことが大切です。 

ただし、労働基準監督署は、違法な退職金の未払いがあれば調査・勧告・指導等の対応をしてくれますが、あなたの代わりに退職金を請求してくれることはありません。 

労働基準監督署で解決できない場合の対処法 

労働基準監督署が介入しても退職金問題が解決しない場合、退職金を回収するためにはさらなる手段を検討する必要があります。 

主な選択肢として、労働審判や民事訴訟があります。 

(1)労働審判 

労働審判では、原則として3回以内の期日で審理を終結し、調停による合意形成を試みます。合意できなければ、審判が下されます。 

労働審判の大きな利点は、通常の裁判より短期間で結論が出ること、非公開で行われるためプライバシーが守られること、そして費用が比較的安いことです。 

手続としては、管轄の地方裁判所に申立書を提出し、退職証明書や労働契約書、就業規則などの必要書類を添付します。 

ただし、審判に不服がある場合は異議申立てをすることで、通常の民事訴訟に移行できます。 

(2)民事訴訟 

民事訴訟は、より詳細な審理を希望する場合や、労働審判で解決しない場合に選択される手段です。正式な訴訟手続となり、証拠や証言に基づいて詳細な審理が行われます。 

ただし、解決までに通常1年以上かかり、費用も比較的高額になる可能性があります。 

訴訟を提起する際は、弁護士に依頼するのが一般的で、訴状の作成や証拠の収集・提出などの手続が必要となります。 

これらの法的手段を検討する際は、弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談することをおすすめします。 

また、法的手段に出る前に、弁護士による企業との直接交渉を試みることが有効な場合もあります。正当な権利を諦めずに、適切な方法で問題解決に当たることが重要です。 

退職金トラブル予防のためのアドバイス 

退職金に関するトラブルは、そもそも未然に防ぐことが望ましいでしょう。 

そのためには、入社時から退職時まで注意を払うことが重要です。 

まず、労働契約締結時に退職金制度の有無や内容を確認しましょう。就業規則や労働契約書に退職金に関する明確な規定があるか確認し、不明点があれば人事部門に質問することをおすすめします。 

在職中は、自身の勤務状況や貢献度を記録しておくとよいでしょう。 

特に、昇進や特別な功績があった場合は、それらを文書化しておくことがのちのち役立つ可能性があります。 

退職を考え始めたら、早めに退職金の試算を依頼し、予想額を把握しておきましょう。 

退職時には、退職金の支払時期や方法について書面で確認することが大切です。 

また、退職証明書や離職票なども確実に受け取りましょう。 

【まとめ】会社に法的な支払義務があれば、退職金について労働基準監督署に相談可能 

退職金に関するトラブルに直面した際は、まず就業規則や労働契約書を確認し、会社に支払義務があるかを見極めることが重要です。支払い義務が明確な場合は、会社と直接交渉を試みましょう。 

交渉がまとまらない場合、労働基準監督署に相談することができます。労働基準監督署は中立的な立場から助言や指導を行い、問題解決を支援します。 

しかし、それでも会社が支払いに応じない場合は、弁護士への相談・依頼をおすすめします。法的な専門知識を持つ弁護士のサポートを受けることで、労働審判や訴訟など、より強力な手段を通じて権利を主張することができます。 

この記事の監修弁護士
弁護士 山内 涼太

東京大学法学部・東京大学法科大学院卒。アディーレ入所後は未払残業代請求事件をメインに担当し、2022年より労働部門の統括者。「自身も同じ労働者だからこそ、労働者の方々に寄り添える」との信念のもと、より多くのご依頼者様を、より良い解決へ導くことを目標に尽力している。東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

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