退職金は、退職後の生活を支える重要な資金です。
退職金は、一般的には退職後1〜2ヶ月以内に支給されることが多いですが、企業によって異なります。
振り込まれないときには、支給条件を確認する、担当部署に連絡する、労働基準監督署や弁護士に相談する、という対処法があります。
安心して退職後の生活設計を立てるために、この記事の情報がお役に立てば幸いです。
ここを押さえればOK!
退職金の相場は業界や企業規模、勤続年数により異なりますが、大卒で20年以上勤務・45歳以上の場合、定年退職で約1900万円程度です。受け取り方には、企業によって異なりますが一般的に一時金、年金、併用があり、税金の扱いも異なります。
退職金を運用する場合は、余剰金で行い、リスクとリターンのバランスを考慮し、分散投資することが重要です。ライフプランに合わせて適切な方法を選びましょう。
退職する際には、未払い残業代の有無の確認も重要です。
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退職金は、一般的に退職後1~2ケ月後にもらえる
退職金は、法律上支払いが義務付けられているわけではありません。
退職金を支給するかどうかは、企業の裁量に委ねられています。
退職金制度のある企業であれば、基本的に、退職金規程や就業規則等に、支払時期や計算方法等が定められています。就業規則などの定めはなくとも、慣例上、退職金を支払っているケースもあります。
支給時期は、企業の規程によって異なりますが、退職後1〜2ヶ月以内に支給されることが一般的です。
最後の給与の支払いと同時に支払われる場合もありますし、それとは別途支払われる場合もあります。
退職金がいつ貰えるのかの確認方法
退職金の支給時期については、以下の方法で確認することができます。
(1)就業規則の確認
企業の就業規則や退職金規程などを確認しましょう。退職金に関する次のような情報が確認できるはずです。
- 退職金が支給される労働者の範囲
- 決定方法
- 計算方法
- 支払方法
- 支払時期
例えば、厚生労働省が公表している「モデル就業規則」では、次のように定められています。
(退職金の支給)
第54条 労働者が退職し又は解雇されたときは、この章に定めるところにより退職金を支給する。ただし、第68条第2項により懲戒解雇された者には、退職金の全部又は一部を支給しないことがある。
2 継続雇用制度の対象者については、定年時に退職金を支給することとし、その後の再雇用については退職金を支給しない。(退職金の額)
第55条 退職金の額は、退職又は解雇の時の基本給の額に、勤続年数に応じて定めた下表の支給率を乗じた金額とする。
勤続年数 支給率 5年未満 1.0 5年~10年 3.0 11年~15年 5.0 16年~20年 7.0 21年~25年 10.0 26年~30年 15.0 31年~35年 17.0 36年~40年 20.0 41年~ 25.0 2 第9条により休職する期間については、会社の都合による場合を除き、前項の勤続年数に算入しない。
(退職金の支払方法及び支払時期)
引用:モデル就業規則について|厚生労働省
第56条 退職金は、支給事由の生じた日から か月以内に、退職した労働者(死亡による退職の場合はその遺族)に対して支払う。
就業規則や退職金規程は、従業員が確認できるよう、企業が管理する内部ネットワークで共有されていたり、紙媒体で備え付けられています。
定年退職が近づいたり、退職を考えたら、必ず確認するようにしましょう。
プリントアウト・コピーしたりして、退職後も確認できるようにするといいですね。
(2)担当部署への問い合わせ
就業規則がどこで確認できるか分からなかったり、読んでも不明点があったりする場合は、給与を担当する部署に直接問い合わせましょう。
自分で退職金の試算が難しい場合には、担当部署に退職金見込額証明書の発行を依頼すると、発行してもらえることがあります。
理由を伝える必要はありませんが、もし問われたら「将来や老後のことを考えて、退職金がどれくらいもらえるのか把握したい」等と伝えるとよいのではないでしょうか。
退職金の相場
退職金の相場は、業界や企業の規模、従業員の勤続年数等によって異なります。一般的には、勤続年数が長く、企業規模が大きいほど退職金が多くなる傾向にあります。
令和5年度の就労条件総合調査によれば、勤続20年以上かつ45歳以上の退職者(管理・事務・技術職)に対する平均の退職金は、次のとおりです。
【大学・大学院卒】
- 定年退職 1896万円
- 会社都合退職 1738万円
- 自己都合退職 1441万円
- 早期優遇退職 2266万円
【高卒】
- 定年退職 1682万円
- 会社都合退職 1385万円
- 自己都合退職 1280万円
- 早期優遇退職 2432万円
参考:令和5年度就労条件総合調査 4退職給付(一時金・年金)の支給実態|厚生労働省
懲戒解雇された場合には、一般的に、就業規則などに退職金が不支給となったり、減額となる旨が定められています。
したがって、懲戒解雇された場合には、退職金が不支給・減額となることがあります。
ただし、不当な懲戒解雇であれば退職金不支給・減額も不当です。懲戒解雇の事由に当たる場合であっても、判例上退職金の不支給・減額は不当とされることもあります。
退職金がもらえない場合の対処法
退職金の試算もしたけれど、退職した後、なかなか退職金が支払われない場合はどうしたらよいのでしょうか。
対処法を4つ紹介します。
(1)退職金の支給条件を満たしているか確認
まず、退職金の支給条件を満たしているかを確認しましょう。退職前に準備した就業規則や退職金規程の写しを確認し、支給条件を満たしているかを確認します。
(2)担当部署に連絡
支給条件を満たしている場合や、就業規則を見ても支給条件を満たしているかどうか分からない場合には、勤めていた企業の担当部署に連絡を取り、状況を確認します。
問い合わせたい事項があるため、退職した会社に連絡をすることは問題ありません。
「退職金が支払われると思いますが、まだ振り込みを確認できません。支払いはいつ頃になりますか?」等、知りたいことを明確に質問するようにします。
(3)労働基準監督署に相談
担当部署に問い合わせても、真摯な回答が得られない場合や、状況が解決しない場合は、労働基準監督署に相談する方法もあります。相談費用は無料です。
労働基準監督署は、労働者の相談窓口として、労働基準法などに違反する事実の申告を受けています。相談の結果、問題があると判断されれば、調査・指導をしてもらえることもあります。
ただし、労働基準監督署は、相談者の代理人として会社に支払いを求めて交渉することはしません。
労働基準監督署が調査・指導を行わない場合や、調査・指導しても支払われない場合には、別途自ら支払いを請求し、交渉する必要があります。
労働基準監督署について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(4) 弁護士に相談
弁護士に相談すると、退職金の支給条件を満たしているのか、満たしているとして支給額はどの程度なのか、不支給決定は不当で争えるのかなど、法的な問題について具体的なアドバイスが得られるでしょう。
弁護士に対応を依頼すれば、弁護士は依頼者の代理人として、会社に対して退職金の支払いを求めて交渉します。
弁護士に相談する際には、経緯をまとめたり、就業規則などの証拠類を準備しておくと、スムーズに相談が進むでしょう。
退職金をもらう際の注意点
退職金の支給を受ける際には、次の点に注意しましょう。
(1)もらい方の選択肢
退職金のもらい方には、一般的に、一時金受け取り、年金受け取り、そして一時金と年金の併用があります。自分の勤めた会社にどの貰い方があるのか、事前に確認しておくようにしましょう。
一時金として受け取るべきか、年金として受け取るべきかなど、自分のライフプランに合わせて、最適な受け取り方法を事前に検討しておくことが重要です。
また、一時金として受け取るときには、退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を必ず提出するようにします。提出しないと、退職所得控除が受けられず、通常の所得と同じ税率で課税されて源泉徴収されてしまいます。
(2) 税金がかかる
退職金にも所得税や住民税などの税金がかかります。
次のように、受け取り方法に応じて税負担が異なってきます。基本的に、年金受け取りや併用を選択すると受取総額は増えますが、その分税負担が増すこともあります。
- 一時金受け取りの場合の税金:
退職所得として、他の所得とは分離して課税され、退職所得控除が受けられます。退職所得控除額を差し引いた2分の1の金額が課税対象となります。
参考:退職金と税|国税庁 - 年金受け取りの場合の税金:
雑所得として毎年課税され、公的年金等控除が受けられます。 - 併用受け取りの場合の税金:
一時金部分は退職所得として、年金部分は雑所得として、それぞれ控除・課税されます。
(3)請求できる期間の確認
退職金の請求には期限があり、退職金を請求できる日の翌日から5年以内に請求する必要があります。
この期間を過ぎると、退職金の請求は難しいでしょう。
請求期限の他、退職金請求について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
退職金はいつもらえるのかに関連するよくある質問
退職金の支給額はどのように決まるのですか?
退職金の支給額は、企業の就業規則や退職金規程などに定められており、一般的に勤続年数、最終給与額等によって決まります。
企業によっては、業績や役職に応じた加算がある場合もあります。
勤める会社の就業規則や退職金規程を確認してみましょう。
退職金の受け取り方法を変更することはできますか?
退職金の受け取り方法を変更できるかどうかは、企業の規程によります。
通常、退職前に受け取り方法を選択する必要がありますが、状況によっては変更が可能な場合もあります。
一般的に考えて、一時金から年金への変更は、一度受け取ったお金を返還する必要があったり、税計算をやり直す必要があったりするので、困難でしょう。
年金から一時金への変更は、企業によっては条件を満たせば認めることもあるようです。
変更を希望する方は、一度担当部署に相談してみるとよいでしょう。その際には、税負担がどうなるかも確認するようにしましょう。
退職金を運用する際のおすすめの方法は何ですか?
資産運用の大原則は、余剰資金で行うことです。生活費や必要なお金として退職金が必要な場合には、運用は控えた良いでしょう。
退職金を運用する際には、自己責任であることを理解したうえで、リスクとリターンのバランスを考慮し、分散して行うことが重要です。
一般的な資産運用方法としては、定期預金や国債などの安全性の高い金融商品、投資信託や株式などの高リスク商品、金や債券などのリスクがあまり高くないといわれる商品があります。
自身のリスク許容度やライフプランに合わせて、家族とも相談しながら、適切な運用方法を選ぶようにします。ファイナンシャルプランナーなどに相談してもよいでしょう。
【まとめ】
退職金の支給時期は企業によって異なりますが、一般的には退職後1〜2ヶ月程度で支給されます。
退職前に、受け取り方法や税金についても確認し、自身のライフプランを考慮した最適な選択をすることが重要です。
もし「退職の意思を伝えにくい」という場合は、退職代行サービスを使えば、上司に直接伝える必要はありません。
また、退職する際には、未払いの残業代がないか確認することも大切です。もし(懲戒)解雇されて退職金が不支給・減額となった場合、不当解雇や不当な不支給・減額として、社員としての地位や退職金の支払いを請求できるかもしれません。
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