「固定残業代のある会社はやめとけ」「固定残業代制度はやばい」といった声をよく耳にしますが、本当にそうなのでしょうか?
実は、固定残業代制度には良い面も悪い面もあり、一概に「やめとけ」と言い切ることはできません。
このコラムでは、弁護士の視点から固定残業代制度の概要やメリット、また固定残業代制度がブラック(違法なもの)かどうかの判断項目をお教えします。現在固定残業代制度で働かれている方必見です。
ここを押さえればOK!
しかし、この制度には固定残業時間を超えた分の残業代が未払いになる可能性や長時間労働が常態化するリスクもあり注意が必要です。未払い残業代が疑われる場合は、アディーレへご相談ください。弁護士がこれまでの未払い分の残業代の金額を計算したり、あなたに代わり会社と交渉したりします。
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固定残業代制度とは?メリットとは?
固定残業代制度について知っているようで知らないこともあるかもしれません。まず固定残業代制度の概要とメリットを知っておきましょう。
(1)固定残業代制度とは
固定残業代とは、あらかじめ決められた時間分の残業をしたかどうかにかかわらず、決められたお金が残業代として支払われる給与制度のことです。
たとえば、あらかじめ「月30時間分の残業手当として月5万円支給する」や、「基本給30万円(月30時間分の残業代5万円を含む)」と決められている場合をいいます。
(2)固定残業代制度のメリットとは
固定残業代制度をとっている会社では、実際の残業時間が決められた残業時間を下回った場合でも、固定残業代が支給されることになります。
その結果、残業時間の長さや有無にかかわらず、毎月の給料額が安定し、家計の見通しが立ちやすいという点は労働者にとってメリットといえるでしょう。
固定残業代制度がやばい・やめとけと言われる3つの理由
固定残業代制度をとっている会社は「やばい」「やめとけ」と言われることがあります。なぜなら次の3つのリスクがあるからです。
<固定残業代制度がやばい・やめとけを入われる理由>
- 残業代の未払いリスクがある
- 実質的な時給が低くなる可能性がある
- 長時間残業することが当たり前になる可能性がある
それぞれ見ていきましょう。
(1)残業代の未払いリスクがある
固定残業代制度がやばい・やめとけを言われる理由には、残業代未払いのリスクが挙げられます。
そもそも固定残業代制度は、一定の残業代を支払えば残業し放題というわけではありません。固定残業時間を超えて残業した場合は超過分の残業手当を別途支給する必要があります。
たとえば、「月30時間分の残業代を『残業手当』として月5万円支給する」と定めていて、月40時間残業した場合を考えてみましょう。この場合、残りの10時間については別途残業代を支払わなければなりません。
しかし、固定残業代制度をとっていることを理由に、定められた固定残業時間を超えて残業した場合も超過した残業代を支払わないことがあります。また、会社側としても超過した残業代を支払いたくないため、超過した残業時間を申告させないということもあるようです。
(2)実質的な時給が低くなる可能性がある
固定残業代制度がやばい・やめとけと言われる理由には、実質的な時給が低くなる可能性が挙げられます。
基本給や固定残業代が高いと感じても、あらかじめ定められた固定残業時間が長い場合、実質的な時給が低くなる可能性があるのです。
たとえば、固定残業時間40時間に対して固定残業代が3万円であった場合、単純計算すると残業時間当たりの時給は750円になってしまいます。基本給も低く残業時間も長いとすると、全体の時給もかなり低くなってしまうケースもありえます。
(3)長時間残業することが当たり前になる可能性がある
固定残業代制度がやばい・やめとけと言われる理由には、残業することが当たり前になる可能性があることが挙げられます。
たとえば、固定残業時間が80時間とされていた場合、従業員が少なくとも80時間残業をすることを当然と考えてしまい、長時間残業することが当たり前になってしまう可能性があるのです。
固定残業代のブラック(違法)診断|あなたの会社の固定残業代制度は大丈夫?
あなたの会社が固定残業代制度をとっている場合、ブラック(違法)な固定残業代制度なのか気になりますよね。
ここでは、あなたの会社の固定残業代制度がブラック(違法)かどうかの診断をしていきましょう。もしここで紹介する5つのポイントのうち1つでも当てはまれば、ブラック(違法)な固定残業代制度の可能性があります。
(1)労働(雇用)契約書や就業規則で固定残業代が明確に定められていない
労働(雇用)契約書や就業規則で固定残業代が明確に定められていない場合には、ブラック(違法)な固定残業代制度の可能性があります。
そもそも固定残業代制度には、企業と労働者との間で固定残業代制度をとることの合意が必要となります。そして、このような重要な労働条件は、労働契約書や就業規則などの書類で残されるのが通常です。
しかし、固定残業代制度が労働契約書や就業規則で固定残業代が明確に定められていない場合、その固定残業代制度はブラック(違法)な可能性が高いと言えるでしょう。
(2)定められた残業時間が長すぎる
定められた残業時間が長すぎる場合も、ブラック(違法)な固定残業代制度の可能性があります。
たとえば、過労死ラインを超える場合には、ブラック(違法)な固定残業代制度の可能性があります。過労死ラインは、労働者が過労による健康障害や死亡のリスクが高まるとされる労働時間の基準のことです。
<過労死ライン>
発症前1か月間:時間外労働・休日労働時間が1か月当たりおおむね100時間
発症前2か月間ないし6か月間:時間外1労働・休日労働が1か月当たりおおむね80時間
つまり、1か月あたりの残業時間が80~100時間を超える場合には、ブラック(違法)と判断される可能性が高いといえるでしょう。
(3)残業代と普通の給料がはっきりと区別できない
残業代と普通の給料(基本給など)がはっきり区別できない場合も、ブラック(違法)な固定残業代制度の可能性があります。
固定残業代は、基本給とは別に手当として支払われるケースが多いですが、基本給の中に残業代を含めて支払うケースもあります。たとえば、「基本給20万円のなかに残業代を含む」といった場合です。
しかし、「基本給に残業代を含む」としか記載されず、残業代と基本給の内訳がわからないような場合は、ブラック(違法)となる可能性があります。
(4)残業時間以外の要素が考慮されている
残業時間以外の要素が考慮されて固定残業代が支給されている場合も、ブラック(違法)な固定残業代制度の可能性があります。
たとえば、残業代といいながら、実質は特定の役職や資格、業務に対して支払われている手当である場合、固定残業代としてはブラック(違法)となることがあります。
(5)時給換算すると最低賃金を下回る
時給換算すると最低賃金を下回る場合も、ブラック(違法)な固定残業代制度の可能性があります。
日本では、最低賃金法で「時給換算した場合の賃金が一定の額を下回る場合は違法」であることが定められています。つまり、時給換算した賃金が最低賃金額を下回る場合は、ブラック(違法)といえます。
たとえば、固定残業代を除いた基本給などの賃金のみで時給換算すると最低賃金を下回るといったケースなどがあります。
固定残業代に関するよくある質問(Q&A)
最後に、固定残業代に関するよくある質問を見ていきましょう。ぜひ参考にしてください。
(1)固定残業時間20時間はブラック企業なの?
固定残業時間20時間は、法律上問題はありません。
仮に週5勤務で月の残業時間が20時間であれば、1日当たりの残業時間が1時間あるかないかぐらいなので、一般的に許容範囲ともいえるでしょう。
しかし、「(会社の雰囲気上)最低20時間は残業しないといけない」「残業時間が20時間以上なのに超過分の残業代が出ない」ということであればブラック企業といえるでしょう。
(2)固定残業時間40時間はやばい?
固定残業時間40時間は、法律上問題ありません。
法律上時間外労働の上限は原則として月45時間とされています。したがって、固定残業時間が40時間分と想定されているのは違法ではありません
ただし、厚生労働省の調査によれば、一般労働者全体の所定外労働時間平均は13.7時間であるとされています。その時間と比較すると固定残業時間40時間は長いといえるかもしれません。
参照:毎月勤労統計調査 令和5年分結果速報第2表|厚生労働省
(3)超過分の残業代が未払いかも…どうしたらいい?
未払い残業代があるかも…と不安な方は、一度弁護士へご相談ください。
弁護士へ相談することで、弁護士がいくらぐらい未払い残業代があるのかを計算したり、あなたに代わって会社と交渉したりします。弁護士があなたの代理人として会社側と交渉を行うため、あなたが直接会社と対峙する必要がなくなります。
働いた分の給料をしっかりと受け取ることは、あなたに認められた正当な権利です。諦めたりせず、きちんと未払い残業代を受け取るようにしましょう。
【まとめ】固定残業代はやばい・やめとけの可能性も|未払い残業代は弁護士へ
固定残業代制度は一概に「やばい・やめとけ」とは言えませんが、注意すべき点があります。
たとえば、残業代未払いのリスクや実質時給の低下、長時間労働の常態化などの問題があり得ます。固定残業代制度に不安を感じる場合や未払い残業代の可能性がある場合は、躊躇せず弁護士に相談することをおすすめします。
アディーレ法律事務所は、残業代請求に関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として成果があった場合のみ報酬をいただくという成功報酬制です。そして、原則として、この報酬は獲得した金銭(例:残業代、示談金)からお支払いとなり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。※以上につき、2025年7月時点
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