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【弁護士監修】パートの残業代の正しい計算方法と請求する際の注意点

作成日:
LA_Ishii

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

「給与明細の残業代が合っているか不安…」そう感じていませんか?

パートタイムで働く方にも、「労働者」である以上、正社員と同じく法律に基づいた残業代が支払われる権利があります。しかし、具体的な計算方法や法律のルールが分からず、未払いに気づかなかったり、気づいても泣き寝入りしてしまったりするケースも少なくありません。

この記事では、あなたの抱える疑問を解決するため、パートの残業代がもらえる法的根拠から、具体的な計算方法、未払いの場合の対処法まで、弁護士が分かりやすく解説します。
この記事を読んで、ご自身の労働環境が正当なものか確認する第一歩を踏み出しましょう。

ここを押さえればOK!

パートタイマーであっても「労働者」であるため、正社員と同様に法律に基づいた残業代が支払われる権利があります。「パートに残業代は出ない」という会社の言い分は間違いで労働基準法違反です。
残業代は「1時間あたりの基礎賃金 × 割増率 × 残業時間」で計算されます。

●基礎賃金:時給制は時給がそのまま基礎賃金です。月給制などの場合は計算が必要です。家族手当、通勤手当など一部の手当は基礎賃金から除外されます。

●残業の種類と割増率(法定の下限):
 o法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える時間外労働: 1.25倍以上
 o月60時間を超える時間外労働(超過分): 1.5倍以上
 o午後10時~翌朝5時の深夜労働: 1.25倍以上(時間外労働と重複する場合は加算)
 o法定休日労働: 1.35倍以上

●残業時間: 会社の所定労働時間を超えても、法定労働時間内であれば割増率は発生しませんが、その分の賃金は請求できます。法定労働時間を超えた分に割増率が適用されます。

固定残業代制度でも、定められた時間を超えた分の残業代は別途支払う義務があります。
未払い残業代には、給与支払日の翌日から3年間の消滅時効があるため、気づいた場合は速やかに、タイムカードなどの証拠を集めて会社に請求するなどの対応が必要です。未払い残業代でお悩みの方は、一度アディーレ法律事務所にご相談ください。

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パートでも残業代はもらえる?まずは残業の基本を知ろう

パートタイムで働く方の中には、「自分には残業代が出ない」と思っている方もいますが、それは誤解です。労働基準法では、パートやアルバイト、契約社員といった雇用形態にかかわらず、労働者として働くすべての人に残業代を支払うことが義務付けられています。
パートやアルバイトであっても、労働者である以上、会社は法定労働時間を超えて働かせた場合、労働者に対して残業代(割増賃金)を支払う必要があります(労働基準法37条)。

もし会社が「会社の決まりでパートには残業代は出ない」と説明したとしても、それは労働基準法違反となります。

「法定労働時間」と「所定労働時間」の違い

残業代を正しく計算するためには、「法定労働時間」と「所定労働時間」の二つの違いを理解することが不可欠です。
法定労働時間とは、労働基準法で定められた「1日8時間、週40時間」という上限の法定労働時間を指します。
これに対し、所定労働時間とは、雇用契約書や会社の就業規則で個別に定められた労働時間のことで、例えば「1日5時間勤務」などがこれにあたります。

所定労働時間を超えても、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えていなければ、法定の割増率による割増賃金を支払うべき残業にはなりません(会社によって割増率が定められていることもあります)。しかし、所定労働時間を超えた分の労働時間に対応する賃金は、原則として特段の定めがなくとも、請求することができます。

会社は、法定労働時間を超えて労働者(パートを含む)に残業をさせたり休日労働をさせたりする場合、あらかじめ全労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者と36協定を締結し、労働基準監督署に届け出ることが必要です 。

また、36協定は労働者に周知しなければなりません。
この協定なしに法定外労働や休日労働をさせることは労働基準法違反となります。
そして、36協定がある場合でも、月45時間、年間360時間という時間外労働の上限規制(特別条項を締結した場合を除く)があります。

残業代計算の「基礎」:残業代の計算に必要な3つの要素

残業代は、「1時間あたりの基礎賃金」に「割増率」と「残業時間」を掛け合わせることで算出されます。
この3つの要素を正確に把握することが、正しい残業代を計算するための第一歩となります。

(1)1時間あたりの基礎賃金

基礎賃金について、説明します。

(1-1)時給で働いている方

時給で働いている場合は、その時給金額が「1時間あたりの基礎賃金」となります。

(1-2)日給で働いている方

日給で働いている場合は、日給を1日の所定労働時間で割って1時間当たりの基礎賃金を算出します。

(1-3)月給で働いている方

月給制の場合は、月給を1ヶ月の平均所定労働時間で割って1時間あたりの基礎賃金を算出します。
1ヶ月の平均所定労働時間は、次の手順で計算します。

【年間所定労働時間=(365日(又は366日)―年間休日日数)×1日あたりの所定労働時間】
【月平均所定労働時間=年間所定労働時間÷12ヶ月】

例えば、年間休日数が125日、1日の所定労働時間が8時間と定められている場合、月平均所定労働時間は160.6時間となります。

(1-4)歩合給で働いている方

歩合給のパートの残業代の計算は、基本給と歩合給の部分を分けて計算します。歩合給の1時間当たりの基礎賃金は、【歩合給÷総労働時間】で計算します。
固定給部分の割増率は1.25倍となりますが、歩合給部分はすでに通常の賃金が含まれているため、0.25倍のみを乗じて計算します。

例えば、月の基本給20万円、月の歩合給5万円、月の所定労働時間160時間、月の総労働時間が180時間の場合(月20時間の時間外労働)を考えます。

基本給部分の1時間当たりの基礎賃金は20万円÷160時間で1250円です。
歩合給部分の1時間当たりの基礎賃金は5万円÷180時間で約277円です。
基本給部分の割増賃金は、1250円×20時間×1.25で3万1250円、歩合給部分の割増賃金は277円×20時間×0.25で1385円になりますので、割増賃金の合計は3万2635円です。

この合計額から、実際に残業代として支払われている賃金があれば差し引きます。

(2)割増率の法定ルール

残業代は、労働基準法上、残業の種類に応じて異なる割増率が適用されます。
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える時間外労働には、通常の賃金の1.25倍以上の割増率が適用されます。時間外労働が1ケ月60時間を超えると、割増率は1.5倍以上に増えます。
また、午後10時から翌朝5時までの深夜労働にも、時間外労働とは別に0.25倍以上の割増率が加算されます。
さらに、法定休日に働いた場合は、1.35倍以上の割増率が適用されます。

残業の種類割増率(法定の下限)内訳
法定時間外労働(月60時間以下)1.25倍以上基礎賃金(1.00) + 時間外割増 (0.25)
法定時間外労働(月60時間超)1.5倍以上基礎賃金(1.00) + 時間外割増 (0.5)
深夜労働(22時〜翌5時)1.25倍以上基礎賃金(1.00) + 深夜割増 (0.25)
法定休日労働1.35倍以上基礎賃金(1.00) + 休日労働 (0.35)
時間外労働+深夜労働1.5倍以上基礎賃金(1.00) + 時間外割増 (0.25)+深夜割増 (0.25)
法定休日労働+深夜労働1.6倍以上基礎賃金(1.00) + 休日労働(0.35)+深夜割増 (0.25)

【ケース別】具体的な残業代の計算方法

ここからは、実際のケースを例に、残業代の具体的な計算方法を解説します。ご自身の勤務状況を思い浮かべながら、確認してみましょう。

実際には、法定時間外労働をしている場合、割増率抜きですでに残業代が一部支給されていることが多いです。そのため、実際にはここで計算した金額をそのまま追加で貰えることは少ないことには注意しましょう。

(1)法定時間外労働の場合

法定労働時間(1日8時間または週40時間)を超えて働いた場合、超過した時間分には残業代が発生します。
例えば、時給1000円で、所定労働時間5時間のパートが1日に10時間働いたとします。この場合、8時間までは通常の時給で計算し、8時間を超えた2時間分に対して、1.25倍以上の割増率を適用して残業代を計算します。

具体的な残業の計算式は次のとおりです。
所定時間外労働については、割増率はありませんので、1000円×3時間=3000円です。
法定時間外労働については、1000円×1.25×2=2500円となります。

(2)深夜労働の場合

深夜労働とは、午後10時から翌朝5時までの間の労働を指し、この時間帯に働いた場合、通常の賃金に加えて、0.25倍以上の深夜手当が支払われます。
深夜労働の割増率は、法定時間外労働の割増率とは別個に適用されます。例えば、午後10時以降に法定労働時間を超えて働いた場合は、後で説明するように二つの割増率が合算されます。

例えば、時給1200円のパートが、所定労働時間4時間(18時~22時)を超え、22時~24時まで(2時間)働いた場合を想定します。この2時間は法定労働時間(8時間)を超えていないため、法定時間外労働の割増(1.25倍)は発生しませんが、深夜労働の割増(0.25倍)が単独で適用されます。

1200円×1.25×2時間=3000円

(3)法定休日に働いた場合

法定休日(週1日の休日)に働いた場合、法定労働時間を超えていなくても、労働した時間分に対して休日労働の割増賃金(1.35倍)が発生します。

なお、会社が独自に定めた「所定休日」に働いた場合は、週40時間を超えるまでは法定時間外労働にはならず、割増賃金は発生しません。

(4)複数の残業が重なった場合

時間外労働と深夜労働が重なった場合や、法定休日労働と深夜労働が重なった場合は、それぞれの割増率を足し合わせて計算します 。
例えば、1日8時間を超えて、かつ午後10時以降に働いた場合、時間外労働の1.25倍と深夜労働の0.25倍の割増率を合算した1.50倍以上で計算します。
同様に、法定休日に午後10時以降に働いた場合は、休日労働の1.35倍と深夜労働の0.25倍を合算した1.60倍以上が適用されます。

(5)月60時間を超える残業があった場合

2023年4月1日より、大企業だけでなく中小企業でも、月60時間を超える時間外労働の割増率が50%以上へと引き上げられました 。これにより、1か月の時間外労働時間が60時間を超えた場合、その超過分については通常の25%ではなく50%の割増率が適用されるため、残業代は大幅に増額されます

残業代を正確に計算するための注意点

残業代を自分で計算する際、いくつかの重要な注意点があります。ここでは、特に間違いやすい「計算に含まれない手当」と「みなし残業代」について解説します。

(1)残業代の計算に含まれない手当とは

残業代の計算の基礎となる賃金には、諸手当(役職手当、皆勤手当など)も含まれますが、次の手当は除外されます。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

これらの手当は、労働者の個人的状況に応じて支給されるものであり、残業代の計算の基礎にはならないと定められています(労働基準法37条5項、労働基準法施行規則21条)。

ただし、名目上は家族手当であっても、家族の人数に関係なく、労働者に対して一律定額を支払っているような場合には、基礎賃金に含まれると考えられますので、注意が必要です。

(2)「固定残業代(みなし残業代)」の注意点

パートでも、給与の中に一定時間分の残業代があらかじめ含まれている「固定残業代(みなし残業代)制度」を導入している会社があります。
時間外労働の有無にかかわらず、一定の残業代が支払われます。
ただこの場合でも、契約で定められた固定残業時間を超えて働いた場合は、会社は超過した時間分の残業代を別途支払う義務があります。
会社が「みなし残業代があるから、いくら残業してもそれ以上は残業代が出ない」と説明したとしても、それは法的には間違いです。

固定残業代制度について、より詳しくはこちらの記事をご覧ください。

固定残業代とは?みなし残業の違法性や残業代の請求方法も解説!

もし残業代が未払いだったら?

もし自分で計算してみて残業代が未払いであることが分かった場合、どのような行動を取ればよいのでしょうか。
未払い残業代を請求する際に知っておくべき重要な知識を解説します。

(1)未払い残業代の請求には時効がある

未払い残業代には、請求できる期間に限りがあります。
残業代の消滅時効は、給与支払日の翌日から起算して3年間です(将来的には5年になる予定です)。時効期間を過ぎた場合、請求しても相手が時効成立を主張すると、請求する権利が消滅してしまいます。
したがって、未払い残業代に気づいた場合は、速やかに対応することが重要です。
なお、給与支払日が2020年3月以前の場合は、消滅時効は2年間となります 。

(2)未払い残業代を請求する際の手順

未払い残業代を請求する際は、まず証拠の確保が最も重要です。タイムカードや勤務記録、給与明細など、残業時間や労働条件を証明できる書類を集めましょう。
その後、会社に内容証明郵便で残業代を請求したり、労働組合や労働基準監督署に相談したりする方法があります。
会社との交渉がうまくいかない場合には、弁護士に相談・依頼して代わりに交渉してもらうことも有効な手段です。

パートの残業代についてよくある質問

(1)「パートに残業代は出ない」と言われましたが、本当?

いいえ。パートタイムであっても、「労働者」である以上、会社は、正社員と同じように残業代を支払わなければなりません。
サービス残業は違法です。あなたの労働には正当な対価が支払われるべきです。

(2)残業をどれだけしたかわかりません。何を見たらいいですか。

残業代を計算するためには、残業時間がどれほどか、証拠から把握する必要があります。
残業代を把握するために、次のような証拠を集めるとよいでしょう。

  • タイムカードの写し
  • ウェブ打刻のスクショ
  • 出勤簿や勤怠管理システム
  • 残業指示や報告のあるメールやチャットの記録

残業代請求に必要な証拠の種類などについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

残業代請求を成功させるには?証拠の種類や強弱についても解説

【まとめ】

パートの残業代計算を正確にするためには、時給だけでなく、労働時間を把握したうえで、残業の種類に応じた割増率を理解する必要があります。
もし、ご自身の計算と給与明細の金額が合わない場合は、未払い残業代が発生している可能性があります。
未払い残業代には時効があるため、早めの確認と行動が大切です。

ご自身のケースで残業代がいくらになるのか、会社との交渉や請求手続きをどう進めるべきかなどでお困りの際は、1人で悩まず、アディーレ法律事務所にご相談ください。

未払いの残業代、請求しませんか?弁護士があなたの代わりに交渉します!

この記事の監修弁護士
弁護士 山内 涼太

東京大学法学部・東京大学法科大学院卒。アディーレ入所後は未払残業代請求事件をメインに担当し、2022年より労働部門の統括者。「自身も同じ労働者だからこそ、労働者の方々に寄り添える」との信念のもと、より多くのご依頼者様を、より良い解決へ導くことを目標に尽力している。東京弁護士会所属。

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