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残業代の計算方法|弁護士が正しい計算と理想的な請求手順を解説

作成日:
s.miyagaki

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

毎月の給与明細を見て、「残業時間に見合った手当が支払われているだろうか」と不安に思ったことはありませんか。複雑な給与体系だと、ご自身で確認するのは難しいと感じるかもしれません。

このコラムでは、残業の定義といった基本から、ご自身の給与額を使った具体的な計算方法、固定残業代などのケース別計算まで詳しく解説します。さらに、未払いが発覚した際の請求手順やよくある疑問にもお答えします。

この記事を読めば、ご自身の残業代が適正か大まかに判断でき、正当な権利を守るための知識が身につきます。

残業の定義

ひとくちに「残業」といっても、法律上は4種類に分けられます。それぞれ割増賃金が発生するかどうかが異なるため、まずはこの違いを正しく理解することが重要です。

法定時間外労働

労働基準法で定められた「1日8時間・週40時間」の法定労働時間を超える労働のことです。この時間を超えて働いた場合、会社は通常の賃金単価を25%以上割り増しした割増賃金(残業代)を支払う法的な義務があります。

法内残業

会社の就業規則などで定められた所定労働時間(例:1日7時間)は超えているものの、法定労働時間(1日8時間)の範囲内に収まる労働のことです。この場合、会社は、通常の賃金単価で働いた時間分の賃金を支払う必要があります。

このほか、労働基準法では、深夜労働と休日労働に対しても割増賃金を支払う必要があると定められています。これらについては、後ほど説明します。

残業代の計算方法

残業代は、3つのステップで計算できます。ご自身の給与明細や就業規則と照らし合わせながら、順を追って確認していきましょう。

1. 基礎時給の算出

まず、残業代計算の基礎となる基礎時給(1時間あたりの基礎賃金)を算出します。これは月給制の場合、「月給 ÷ 1ヵ月の平均所定労働時間」で求められます。注意点として、計算に使う「月給」には、家族手当、通勤手当、住宅手当など、労働との関連性が薄い一部の手当は通常含まれません。基本給に役職手当などを加えた金額で計算します。

2. 割増率の確認

次に、残業の種類に応じた割増率を確認します。法定時間外労働は25%以上、法定休日の労働は35%以上、深夜労働(22時~翌5時)は25%以上の割増が必要です。また、時間外労働と深夜労働が重なった場合は合計50%以上、月60時間を超える時間外労働は50%以上の割増率が適用されます。

3. 計算式とシミュレーション

基礎時給と割増率がわかれば、残業代を計算できます。計算式は「基礎時給 × 残業時間 × 割増率」です。たとえば、基礎時給が1,500円の人が法定時間外労働を10時間した場合、「1,500円 × 10時間 × 1.25」で、残業代は18,750円となります。

ケース別の計算

働き方によっては、残業代の計算が複雑になる場合があります。ここでは、特に間違いやすい4つのケースについて解説します。

固定残業代(みなし残業代)

固定残業代(みなし残業代)は、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含めて支払う制度です。しかし、定められた時間を超えて残業した場合は、その超過分の残業代を別途請求できます。固定残業代が支払われているからといって、会社が超過分の残業代を支払わなくてよいわけではありません。

深夜・休日労働

深夜(22時~翌5時)に働いた場合は25%以上、法定休日に働いた場合は35%以上の割増賃金が発生します。もし法定時間外労働が深夜におよんだ場合、割増率は合算されます。具体的には、時間外労働の25%と深夜労働の25%を足した、合計50%以上の割増賃金が必要です。

フレックス・変形労働時間制

フレックスタイム制では、清算期間(通常1ヵ月など)で定められた総労働時間を超えた分が時間外労働となります。変形労働時間制では、同様に、あらかじめ定められた期間の総労働時間を超えて働いた分が時間外労働となるほか、1日・1週の所定労働時間または法定労働時間を超えて働いた分も時間外労働となり、割増賃金の支払い対象となります。

アルバイト・パート

残業代の支払いは、正社員だけでなく、アルバイトやパートといった雇用形態にも適用されます。労働基準法は原則としてすべての労働者を対象としているため、アルバイトであっても1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えて働けば、割増賃金を受け取る権利があります。

未払い残業代の請求手順

計算の結果、残業代が未払いの可能性がある場合、適切な手順を踏んで請求することが重要です。ここでは、ご自身で請求を進める際の基本的な流れを解説します。

1. 証拠収集

残業代を請求するうえでもっとも重要なのが、残業した事実を客観的に証明する証拠です。タイムカードや勤怠システムの記録、PCのログ、業務上のメール送信履歴、業務日報などが有効です。日々の始業・終業時刻を手帳などにメモしておくことも、会社が記録を開示しない場合に役立ちます。

2. 会社への通知

証拠が揃ったら、会社に対して未払い残業代を請求する旨を記載した通知書を送付します。この際、送付した事実と内容を郵便局が証明してくれる「内容証明郵便」を利用するのが一般的です。これにより、残業代請求権の時効の完成を一時的に止める効果も発生しきます。

3. 労働審判・訴訟

当事者間の交渉で解決しない場合は、裁判所を利用した法的手続を検討します。時間や手間を抑える観点から、まずは原則3回以内の期日で迅速な解決を目指す「労働審判」を申し立て、それでも合意に至らなければ「訴訟」に移行するのがお勧めです。これらの手続は専門的な知識を要するため、弁護士への依頼なしには難しいケースが多いでしょう。

相談先(弁護士と労基署)

未払い残業代の相談先として、弁護士と労働基準監督署があります。労基署は、会社に労基法違反があれば必要に応じて是正勧告を行いますが、個人の代理人として残業代を回収してくれるわけではありません。一方、弁護士はあなたの代理人として会社と交渉し、労働審判や訴訟まで一貫して対応できます。残業代の回収を具体的に進める場合は、弁護士へ依頼できるか相談してみることが有効です。

残業代のQ&A

最後に、残業代の計算や請求に関して、多くの方が抱く疑問にお答えします。

Q. 時効はありますか?

はい、あります。残業代を請求する権利は、賃金の支払日から3年で時効により消滅します(2020/4/1以降に支払期日が到来した賃金の場合)。時効が成立すると請求できなくなるため、未払いに気づいたら早めに行動を起こすことが重要です。

Q. 管理職に残業代は出ますか?

労働基準法上の「管理監督者」に該当する場合、時間外労働や休日労働に対する割増賃金は支払われません。しかし、役職名だけでなく、経営への関与や勤務時間の裁量といった実態で判断されるため、権限のない「名ばかり管理職」は残業代を請求できる可能性があります。なお、深夜手当は管理監督者にも支払われます。

Q. 残業時間は何分単位で計算しますか?

労働時間は、原則として1分単位で計算しなければなりません。会社が15分や30分未満の労働時間を日々切り捨てて計算している場合、その運用は労働基準法違反にあたる可能性が高いです。日々の労働時間を正確に記録しておくことが大切です。

Q. 退職後でも請求できますか?

はい、請求できます。会社を退職したあとでも、時効が完成していなければ、在職中の未払い残業代を請求する権利は失われません。退職によって証拠が集めにくくなる可能性もあるため、在職中からタイムカードのコピーなどを準備しておくことが望ましいです。

ご自身の残業代が正しく支払われているか、この記事で確認できたでしょうか。未払いが疑われる場合でも、タイムカードなどの証拠を集め、適切な手順を踏めば請求することが可能です。ただし、残業代請求権には3年という時効があるため、早めの行動が重要です。

会社との交渉や法的手続に不安がある場合は、弁護士にご相談ください。あなたの代理人として、残業代の計算から交渉まで一貫してサポートします。

アディーレ法律事務所では、残業代に関するご相談を承っております。まずはお気軽にお問合せください。

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