「課長への昇進、おめでとう!」 上司から祝福され、責任ある立場を任された。期待に応えようと、これまで以上に仕事に打ち込んでいる。
…けれど、初めて受け取った管理職としての給与明細を見て、言葉を失う。
「一般社員だった頃よりも、手取り額が減っている……」
なぜ、こんな理不尽なことが許されるのでしょうか?
実はこの現象の裏には、「名ばかり管理職」や「固定残業代制度」の誤った運用という法的リスクが隠れている可能性があります。
あなたが知らずに損をしないための「違法」の境界線を解説します。
ここを押さえればOK!
・固定残業代: 定められた残業時間を超えた分は、追加支給の対象です。
・名ばかり管理職: 肩書きがあっても、経営上の権限や時間の裁量がない場合は、残業代を請求できる可能性があります。
・深夜手当: 管理監督者であっても、22時以降の深夜割増賃金は必ず支払われなければなりません。
自分の状況が法的に適切か、まずは「正確な状況」を把握することが重要です。
「残業代」の対象外になってしまったこと原因かも
管理職に昇進して給料が下がってしまった原因は、これまで支払われていた「時間外手当(残業代)」が、役職がついた途端に支給対象外になったことが理由かもしれません。
例えば、一般社員の時に残業が多く、残業代が年収の大きな割合を占めていた場合、昇進後に「基本給」や「役職手当」が多少上がったとしても、カットされた残業代の減少分を補いきれないことがあります。
特に次のような職場では、管理職に昇進したのに給料が下がってしまったということがあるようです。
- 恒常的に長時間労働が発生している。
- 基本給の設定が低く、残業代で手取りを稼ぐ給与構造になっている。
- 昇進時の昇給幅や役職手当の設定が、実際の職責に見合っていない。
固定残業代だから「それ以上残業代は出ない」は間違い!
固定残業代制度とは、あらかじめ決められた時間分の残業代を定額で支払う仕組みです。たとえば、あらかじめ「月30時間分の残業手当として月5万円支給する」や、「基本給30万円(月30時間分の残業代5万円を含む)」と決められている場合をいいます。
しかし、これは「どれだけ残業しても追加分を払わなくてよい」というわけではありません。あらかじめ定められた残業時間を超えた場合には、別途残業代を支払う必要があります。
あなたの会社の固定残業代制度が次のチェック項目に当てはまる場合、違法な固定残業代制度な可能性があります。
- 労働(雇用)契約書や就業規則で固定残業代が明確に定められていない
- 定められた残業時間が長すぎる(例:80~100時間を超える残業時間)
- 残業代と普通の給料(基本給等)がはっきり区別できない
- 残業時間以外の要素が考慮されて固定残業代が支給されている
- 残業代等を除いた部分を時給換算すると最低賃金を下回る
「管理職だから残業代が出ない」にも高いハードル|本当かどうか確かめて!
会社が「管理職だから残業代は出ない」と言い張る根拠は、労働基準法上の「管理監督者」という規定です。労働基準法第41条2号では、会社側が深夜の割増賃金以外の残業代を支払う必要のない立場として「管理監督者」というものを定めています。
しかし、「課長」や「マネジャー」という肩書きがあるだけでは、「管理監督者」とは認められません。
(1)残業代を支払う必要がない「管理監督者」にあなたは当てはまる?
次の要件に当てはまる場合には、残業代を支払う必要がない「管理監督者」に当てはまります。
- 事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められていること
- 自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること
- 一般の従業員に比しその地位と権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられていること
これらの条件に当てはまらず、平社員と同じような仕事をしているのに、管理職であることを理由に残業代が出ない場合は、「名ばかり管理職」である可能性があります。「名ばかり管理職」の場合、会社は残業代を支払う必要があります。
(2)管理職であっても深夜割増賃金は支払う必要があります!
もしあなたが上記の条件に当てはまる「管理監督者」であっても、深夜労働(22時〜翌5時)に対する割増賃金は、会社に支払義務があります。夜遅くまで会議や対応に追われているのに、深夜手当すら出ていないのであれば、それは違法といえるでしょう。
【まとめ】まずは「正確な状況」を知ることが大切!
「自分の給与体系に違和感があるけれど、会社を相手に大ごとにしたいわけではない」 そう考えるのは、ビジネスマンとして極めて健全な感覚です。大切なのは、感情的に動くことではなく、「自分の今の状況が、法的に見て適切なのかどうか」を正しく把握することです。
残業代の計算や管理監督者の判定は、法的な専門知識を要するため、個人で判断するのは非常に困難です。そのため、まずは弁護士に「現状の診断」をしてもらいましょう。
弁護士に相談したらからといって、必ず残業代を請求しなければならないというわけではありません。「現状を知りたい」という相談だけでも問題ありません。
あなたの「正確な状況」を知ることは、今の職場でより納得感を持って働くため、あるいは次のステップへ自信を持って進むための、自分を守るための備えになります。
ただし、残業代請求は3年で時効となります。つまり、残業代も請求できるようになってから3年経過すれば、時効で消滅するということです。先延ばしにしていると受け取れる残業代が減ってしまうということもありますので、注意しましょう。































