「相続登記の義務化は、もう済ませたから大丈夫」 「うちは実家の名義も変えたし、兄弟仲もいい。相続のトラブルなんて無縁だ」
もしあなたがそう思っているなら、今すぐその「安心」を一度リセットしてください。
2026年2月現在、私たちの生活に静かに、しかし確実に忍び寄っている「新しいルール」があります。それは、相続だけでなく、あなた自身の「引っ越し」や「結婚」による名義変更さえも、放置すれば国から過料(罰金)を科せられるという時代の幕開けです。
「まさか自分が、法律違反で罰金を払うことになるなんて……」 そんな後悔を抱える人が、今後増えてしまうかもしれません。
10年前の「完璧な相続」が落とし穴に
架空の相談事例として、ある50代の男性(Aさん)のお話をしましょう。
Aさんは非常に真面目な方でした。10年前に父親を亡くした際、実家の名義変更(相続登記)を「自分で」きっちり終わらせました。「これで将来も安心だ」と胸をなでおろしたそうです。Aさんは実家には住まずに、結婚して別途所有する家に家族と住んでいました。
しかし、その後に落とし穴がありました。 Aさんはその後、仕事の都合で引っ越しをしました。その際、所有する自宅を賃貸に出して、別の賃貸物件に住むことになりました。
新しい生活に追われ、相続した実家と自宅の登記に記載されている自分の住所を変更することなんて、微塵も頭にありませんでした。
「自分の家であることは変わらないんだから、どこに住んでいようと問題ないだろう」
そう思うのも仕方ないのかもしれません。
しかし、法律はそれを許さなくなりました。 2026年(令和8年)4月から、「住所や氏名の変更登記」が義務化されるのです。住所や氏名の変更があってから2年以内に登記をしなければなりません。
また、Aさんのように、2026年4月以前に引っ越して、登記上の住所を昔のまま放置している人も、すべて対象になります。
猶予は2年。2028年(令和10年)3月31日までです。
もし、登記官から変更するように催促されたにもかかわらず、正当な理由なく怠ると、「5万円以下の過料(罰金)」の対象となります。
Aさんの場合、所有名義の不動産は実家と今の自宅の2カ所。もし両方の変更を放置し続ければ、合計で10万円近い出費を強いられるリスクがあるのです。
「相続登記が終われば、もう問題ないと思っていたのに……」 Aさんは、慌てて登記の手続きをとることになりました。

なぜ罰則まで定めて変更登記が義務化されたのか?
なぜ、国はここまで厳しく義務付けたのでしょうか。 答えはシンプルです。
日本中に「誰のものか分からない土地」が増えすぎて、災害復旧や都市開発がストップしてしまうという、大きな問題に直面しているからです。
これまでは、不動産について「登記をするかどうかは個人の自由」で、登記をしないことの不利益は個人が受ける、という考えでした。しかし、その結果、所有者が不明な土地が増えてしまい、全国で所有者が不明な土地が占める割合は九州の面積に匹敵するともいわれています。
そこで、2024年に相続登記の義務化が定められました。続いて、2026年4月からは、「すべての不動産所有者」に対して、住所や氏名が変更した際の登記も義務付けられることになりました。
| 相続登記の義務化 | 住所・氏名変更登記の義務化 | |
| 開始時期 | 2024年4月1日〜 | 2026年4月1日〜 |
| 期限 | 相続による所有権の取得を知った日から3年以内 | 変更から2年以内 |
| 正当な理由なく怠った時の過料 | 10万円以下 | 5万円以下 |
| 遡及適用 | あり(過去の相続も対象) | あり(過去の引越等も対象) |
今、あなたができる「最初の一歩」
「法律」と聞くと、誰かを攻撃するための武器のように感じるかもしれません。
でも、登記の義務化は、所有者不明の土地をなくし、公共事業や復興をスムーズに進め、よりよい国を作るために定められました。
登記に正確な情報を反映すれば、所有者と連絡がつきやすくなりますので、土地の流動性が高まります。
2026年4月の義務化が始まる前に、今日、この瞬間からできる準備をしましょう。
実は、「スマート変更登記(検索用情報の申出)」という便利な制度も始まります。1度だけ、この制度の利用申出をすれば、法務局自身が、あなたの住所等の変更を調べて変更登記をしてくれるのです。引っ越して住所が変わっても、別途自分で変更登記を行う必要はありません。
必要書類は、身分証明書(マイナンバーカード、運転免許証等)だけです。
ただ、2025年4月21日より前に所有者名義人となっている場合には、不動産の地番等の情報も必要ですので、権利証(登記済証)や登記識別情報通知、登記事項証明書などを手元に準備しておくとよいでしょう。
インターネット環境が整っている方はPCやスマホから申出可能ですし、書面でも申出可能です。
引っ越すたびに、所有する不動産の変更登記をするとなると、労力と手間がかかります。「スマート変更登記」を利用して、自動で変更登記をしてもらえるのであれば大助かりですね。
海外に居住している方は日本のシステムで住所が確認できないので、自身で変更登記の申請を行う必要がある点には注意しましょう。

最後に
法律が変わり、自分にも影響があるときは、誰だって不安です。
しかし、正確な情報を把握して、自分がすべきことを理解すれば、怖がることはありません。
まずは今日、不動産の所有名義人となった後、氏名や住所の変更があったかを確認することから始めましょう。
相続登記がまだお済みでない方は、一人で悩まず一度アディーレ法律事務所にご相談ください。
























