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業務・通勤の交通事故は労災になる?後遺障害認定と慰謝料請求も解説

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仮名Kさんは、外回りの営業で自動車を運転していた際、交差点で他の車と接触し、むち打ちの後遺症を負ってしまいました。業務中のケガのため、Kさんは治療費や休業損害を労災に申請すべきか、それとも事故の相手方の自賠責保険に請求すべきか迷っています。
この記事では、

  • 業務上・通勤中の交通事故は労災になるのか
  • 業務上・通勤中の交通事故で適用される保険と補償内容
  • 労災の後遺障害認定の基準と申請のポイント
  • 労災の後遺障害認定でも慰謝料請求できるか

について、弁護士が解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 村松 優子

愛知大学、及び愛知大学法科大学院卒。2010年弁護士登録。岡﨑支店長、家事部門の統括者を経て、2018年より交通部門の統括者。同年よりアディーレの全部門を統括する弁護士部の部長を兼任。アディーレが身近な存在となり、依頼者の方に、水準の高いリーガルサービスを提供できるよう、日々奮闘している。愛知県弁護士会所属。

業務上・通勤中の交通事故は労災になる

業務中の交通事故も労災保険の補償対象になります。

その事故が業務中に起こったのか、通勤中に起こったのかにより異なる扱いとなります。

以下ではまず、労災保険における次の概要を説明します。

  • 業務災害
  • 通勤災害

(1)業務災害とは?

業務災害とは、業務時間内、休憩時間、出張中などに起きた業務上の災害をいいます。
業務中の交通事故が業務災害と認定されるためには、次の2つの基準を満たす必要があります。

  • 労働災害の原因が業務と関係しているか(業務起因性)
  • 労働災害の原因が業務中に発生したか(業務遂行性)

つまり業務災害とは、「仕事をしていなければ起きなかった災害」ということができます。

(2)通勤災害とは?

これに対し、自宅と職場の往復や、職場から別の職場への移動、単身赴任先からの帰宅などの最中に事故を起こした場合は通勤災害に該当します。

「通勤」とは、労働者が就業に関し、次の1〜3号の移動を合理的な経路および方法で行うこといいます(業務の性質を有するものは除く。労働者災害補償保険法第7条)。

  1. 住居と就業の場所との間の往復
  2. 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
  3. 第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る)

「合理的な経路および方法」とは、住居と就業場所を往復する際に、一般に労働者が用いるものと認められる経路及び方法をいいます。

また、通常の通勤ルートの移動だけでなく、事業所間の移動や、単身赴任をしている人が赴任先の住居と帰省先の家との間を移動することも、「通勤」に含まれます。

なお、家と勤務先との間の通勤ルートを逸脱・中断して事故にあった場合は、通勤とはみなされないことがあるので注意が必要です。

例えば、「仕事帰りに居酒屋で一杯飲む」「仕事帰りに映画館に寄る」など、仕事に関係ない行為をした場合です。

もっとも、勤務先からの帰宅途中に日用品を買うためスーパーに立ち寄ったりして、通勤ルートに戻った後に事故にあった場合は、「日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるものを止むを得ない事由により最低限度の範囲で行う場合」であるとして、労災保険の適用対象になります(労働者災害補償保険法施行規則第8条)。

業務上・通勤中の交通事故で適用される保険と補償内容

では、業務上、または通勤中に交通事故にあった場合、どの保険から支払いを受けられるのでしょうか。以下で解説します。

(1)業務上・通勤中の交通事故では労災保険が使える

上で述べた、業務災害または通勤災害に該当する交通事故であれば、労災保険が適用されます。

なお、会社が労災保険に加入しないことは法律上許されないため(労働者災害補償保険法第3条ほか)、もし会社が労災保険への加入手続きを怠っていたり、忘れていたりした場合も、労働者は補償を受けられます。

労働保険の補償内容は次のとおりです。

【労災保険給付の支給事由と内容】

種類支給事由保険給付の内容特別支給金の内容
療養補償給付
療養給付
業務災害または通勤災害による傷病により療養するとき。必要な療養の給付又は療養費の全額。
休業補償給付
休業給付
業務災害または通勤災害による傷病の療養のため労働することができず、賃金を受けられないとき。休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の60%相当額。(休業特別支給金)
休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の20%相当額
障害補償年金
障害年金
業務災害または通勤災害による傷病が治った後に障害等級第1~7級までに該当する障害が残ったとき。障害の程度に応じ、給付基礎日額の313~131日分の年金。 (障害特別支給金)
障害の程度に応じ、342万~159万円までの一時金
(障害特別年金)
障害の程度に応じ、算定基礎日額の313~131日分の年金
障害補償一時金
障害一時金
業務災害または通勤災害による傷病が治った後に障害等級第8~14級までに該当する障害が残ったとき。障害の程度に応じ、給付基礎日額の503~56日分の一時金。 (障害特別支給金)
障害の程度に応じ、65万~8万円までの一時金
(障害特別一時金)
障害の程度に応じ、算定基礎日額の503~56日分の一時金
遺族補償年金
遺族年金
業務災害または通勤災害により死亡したとき。遺族の数等に応じ、給付基礎日額の245~153日分の年金。(遺族特別支給金)
遺族の数にかかわらず、一律300万円
(遺族特別年金)
障害の程度に応じ、算定基礎日額の245~153日分の年金
遺族補償一時金
遺族一時金
1.遺族(補償)年金を受け得る遺族がないとき
2.遺族(補償)年金の受給権者が失権し、かつ、他に遺族(補償)年金を受け得る者がない場合であって、すでに支給された年金の合計額が給付基礎日額の1000日分に満たないとき。
給付基礎日額の1000日分の一時金(ただし2の場合は、すでに支給した年金の合計を差し引いた額)。 (遺族特別支給金)
遺族の数にかかわらず、一律300万円
(遺族特別一時金)
算定基礎日額の1000日分の一時金(ただし2の場合は、すでに支給した特別年金の合計額を差し引いた額)
葬祭料
葬祭給付
業務災害または通勤災害により死亡した者の葬祭を行うとき。31万5000円に給付基礎日額の30日分を加えた額
(その額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は、給付基礎日額の60日分)。
傷病補償年金
傷病年金
業務災害または通勤災害による傷病が療養開始後1年6ヶ月を経過した日又は同日後において次の各号のいずれにも該当することとなったとき
1.傷病が治っていないこと
2.傷病による障害の程度が傷病等級に該当すること。
障害の程度に応じ、給付基礎日額の313~245日分の年金。 (傷病特別支給金)
障害の程度により114万~100万円までの一時金
(傷病特別年金)
障害の程度により算定基礎日額の313~245日分の年金
介護補償給付
介護給付
障害(補償)年金または傷病(補償)年金受給者のうち第1級の者または第2級の者(精神神経の障害および胸腹部臓器の障害の者)であって、現に介護を受けているとき。 常時介護の場合は、介護の費用として支出した額(10万4290円を上限とする)
ただし、親族等により介護を受けており介護費用を支出していないか、支出した額が5万6600円を下回る場合は5万6600円。
随時介護の場合は、介護の費用として支出した額(5万2150円を上限とする)。
ただし、親族等により介護を受けており介護費用を支出していないか、支出した額が2万8300円を下回る場合は2万8300円。
二次健康診断
等給付
事業主が実施する定期健康診断等の結果、脳・心臓疾患に関連する一定の検査項目(血圧、血中脂質、血糖、肥満)のすべてについて異常の所見があると認められたとき。1.二次健康診断
1年度内に1回に限る
2.特定保健指導
二次健康診断1回につき1回に限る。

(注)1 「保険給付の種類」欄の上段は業務災害、下段は通勤災害に係るものです。
2 表中の金額等は2012年4月1日現在です。
3 給付基礎日額とは、原則として被災直前3ヶ月間の賃金総額をその期間の暦日数で除した額です。
4 算定基礎日額とは、原則として被災直前1年間の特別給与総額(ボーナスなど)を365で除した額です。

引用:各労災保険給付の支給事由と内容について教えてください。|厚生労働省

(2)加害者の自賠責保険も併用可能

交通事故による損害については、加害者が加入する自賠責保険から賠償を受けることもできます。

つまり、業務上、または通勤中の交通事故においては、労災保険と、(加害者側の)自賠責を併用できることになります。

もっとも、労災保険と自賠責で重複する補償内容については、二重取りすることはできません(「支給調整」といいます)。

重複する部分を一方に請求し、損害額がその補償の限度額を超える場合は、超える分を他方に請求するというやり方をします。

なお、この他に、加害者が加入する任意の自動車保険に請求することも可能です(二重取りは不可)。

労災保険の後遺障害認定の基準と申請のポイント

次に、業務上、または通勤中の交通事故によるケガで後遺症が残ってしまった場合の、自賠責と労災保険の後遺障害認定基準の違いと、申請時の注意点について解説します。

(1)自賠責・労災保険における後遺障害等級認定の違いとは?

交通事故でケガを負った場合、治療してもこれ以上回復できない状態で症状が残ることがあります。これを「後遺症」といいます。

「後遺障害」とは、このように交通事故で負った後遺症のうち、自賠責保険の基準に基づき、所定の機関により障害を認定されたものをいいます。

後遺障害は1~14級(および要介護1級・2級)の等級に分かれており、1級の症状が最も重く、症状が軽くなるに従って2級、3級……と等級が下がっていきます。
各等級で、眼・耳・四肢・精神・臓器などの部位、障害の系列に応じた障害の認定基準(各号)が定められています。

この後遺障害等級の認定基準は、自賠責、労災保険ともにほぼ共通です。

ただし、自賠責は国土交通省の自動車損害賠償責任保険、労災保険は厚生労働省の労働者災害補償保険というふうに、全く別の保険制度です。

自賠責では、医師の後遺障害診断書やMRI画像などの医療記録、交通事故証明書などの書面で後遺障害を証明します。

一方、労災保険の後遺障害等級認定は、資料提出のほかに、労働基準監督署の詳細な調査が行なわれるという違いがあります。

具体的には、請求人(当事者)や主治医からの聴取、面談調査、専門医からの意見の収集などです。

(2)自賠責・労災保険の両方に後遺障害等級の申請が可能

業務上、または通勤中の交通事故が業務災害または通勤災害に該当し、労災に認定されると、(加害者側の)自賠責と労災保険いずれに対しても後遺障害等級の申請が可能となります。
自賠責と労災保険両方同時に申請し、有利な認定のほうを選択することも可能です(二重取りはできません)。ただし、自賠責による後遺障害認定がなされないと、相手方の任意保険による賠償金が支払われない場合があります。

なお、自賠責では過失相殺(※)によって賠償額が減額されることがありますが、労災保険では過失相殺による賠償額の減額はないという違いがあります。
(※)過失相殺…交通事故が起きた際に、被害者側と加害者側それぞれにどの程度の原因や責任があるのかを示す割合(=過失割合)に応じて、賠償額を差し引くこと。

自賠責と労災保険の違いについては、こちらもご参照ください。

通勤時の交通事故で補償額を増やす方法は?労災保険と自賠責保険の関係について解説

(3)自賠責と労災保険で後遺障害等級が一致しないことも

上で述べたように、自賠責と労災保険では、後遺障害の等級認定基準は共通です。

しかし、自賠責と労災保険では、等級認定を申請する際に提出する書類や審査方法が異なるため、両者で認定結果が一致しないこともあります。

自賠責と労災保険では提出する書類が異なるため、例えば診断書に記載される症状や検査結果が微妙に異なっていたりすると、認定結果が異なってしまうことがあるのです。

自賠責と労災保険で後遺障害等級の認定結果が一致しない場合は、自賠責では異議申立て、労災保険では審査請求という、再審査の請求手段があります。

後遺障害等級認定に対する異議申立て(自賠責)、労災保険の審査請求についてはこちらもご参照ください。

後遺障害の異議申立てとは?認定された後遺障害等級を争う方法

参考:労災保険審査請求制度|厚生労働省

慰謝料は労災保険では支払い対象にならない

交通事故による損害としては、治療費や休業損害などの経済的損害の他に、入通院を余儀なくされたことや後遺障害が残ったことによる精神的損害(=痛い・辛いといった精神的苦痛)があります。

これらの精神的苦痛に対する賠償を「慰謝料」といいます。

慰謝料は、自賠責では補償の対象となりますが、労災保険では対象となりません。

そこで、慰謝料については、加害者が加入する自賠責や任意保険に請求することになります。

なお、入通院慰謝料や後遺症慰謝料の金額を決める基準は次の3つがあります。

  • 自賠責の基準……自動車損害賠償保障法(自賠法)で定められた、必要最低限の賠償基準
  • 任意保険の基準……各保険会社が独自に定めた賠償基準
  • 弁護士の基準……弁護士が、加害者との示談交渉や裁判で用いる賠償基準(「裁判所基準」ともいいます)

これらの3つの基準を金額の大きい順に並べると、一般的に

弁護士の基準>任意保険の基準>自賠責の基準

となります。
※ただし、自賠責保険金額は、交通事故の70%未満の過失については減額対象にしませんので、ご自身の過失割合が大きい場合(加害者側になってしまった場合など)には、自賠責の基準がもっとも高額となることもあります。

交通事故の被害者が、加害者に対して慰謝料を請求する場合、その金額について、通常は加害者が加入する保険会社と示談交渉を行うことになります。

その際、被害者本人(加入する保険会社の示談代行サービスを含む)が加害者側の保険会社と示談交渉すると、加害者側の保険会社は自賠責基準や任意保険基準による低い慰謝料額を提示してくるのが通常です。

これに対し、弁護士が被害者本人に代わって示談交渉や裁判を行う場合は、通常最も高額な弁護士の基準を用いた主張を行います。

これにより、慰謝料の増額が期待できます。

詳しくはこちらの記事もご確認ください。

【自賠責より弁護士基準】交通事故の慰謝料の相場と計算方法を解説

【まとめ】業務上・通勤中の交通事故による後遺症慰謝料については弁護士に相談を

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 業務上・通勤中の交通事故は、業務災害・通勤災害にあたれば労災保険の補償対象になる。
  • 業務災害・通勤災害にあたる交通事故の場合は、自賠責と労災保険の両方から補償を受けられる(ただし、二重取りは不可)。
  • 業務災害・通勤災害にあたる交通事故で後遺症が残った場合は、自賠責・労災保険の両方に後遺障害等級の認定を申請できる(二重取りは不可)。自賠責と労災保険で認定結果が異なる場合がある。
  • 入通院慰謝料や後遺症慰謝料などの慰謝料は労災保険では補償の対象とならない。これらは加害者側の自賠責や任意保険に請求する。
  • 加害者側との示談交渉を弁護士に依頼すれば、慰謝料額などを増額できる可能性がある。

業務上・通勤中の交通事故による後遺障害や慰謝料請求についてはアディーレ法律事務所にご相談ください。

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