「夫(妻)が不倫をしているみたい……。不倫の慰謝料を請求するためにはどんなものが証拠になるの?」
配偶者が浮気・不倫をして慰謝料を請求したいという場合、相手に浮気・不倫を否定された場合に備えて、特に「不貞行為に関する証拠」を集めておく必要があります。
不貞行為に関する証拠になる可能性があるのは、動画や写真、メール、念書など実に様々です。
ただ、証拠としての価値があまりないものを、たくさん集めてもあまり意味はありません。
浮気・不倫に関して慰謝料を請求しようという場合には、良質な証拠を少しでも多く集める必要があります。
今回の記事は、次のことについて弁護士が解説します。
- 慰謝料請求のための証拠
- 証拠を集める時の注意すべきポイント
- 証拠の集め方

法政大学、及び学習院大学法科大学院卒。アディーレ法律事務所では、家事事件部にて、不貞の慰謝料請求、離婚、貞操権侵害その他の男女トラブルを一貫して担当。その後、慰謝料請求部門の統括者として広く男女問題に携わっており、日々ご依頼者様のお気持ちに寄り添えるよう心掛けている。第一東京弁護士会所属。
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慰謝料請求に証拠が必要な理由
浮気・不倫による慰謝料とは、相手の加害行為によって生じた精神的苦痛を金銭に換算したもので、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償として位置づけられます。
不法行為により精神的苦痛を受けたとして、慰謝料を請求するだけであれば、法的には証拠は必須ではありません。
配偶者や浮気・不倫相手に慰謝料を請求すると、相手が不法行為の事実を認めて慰謝料を支払うこともあります。
このような場合、結果的に言えば、証拠の出番はありませんので、証拠がなくても構いません。
ですが、相手が浮気・不倫を認めずに慰謝料の支払いを拒否した場合、証拠がなければ相手の言い逃れを追及することができません。
ですから、慰謝料を獲得するには、やはり、相手方の浮気や不倫の事実を証明する証拠を集めることが重要なのです。
(1)慰謝料を請求できる浮気・不倫のポイントは不貞行為の有無
浮気・不倫によって慰謝料が請求できるのかの鍵は「不貞行為の有無」にあります。
不貞行為とは、「配偶者以外の相手と、自由な意思で行う性行為(肉体関係)・性交類似行為(愛撫など)」のことをいいます。
裁判例によれば、性行為(肉体関係)・性交類似行為がなくても、婚姻関係を破綻に至らせるような異性との交流は不貞行為にあたる場合もありますが、かなり稀なケースです。
日中のデートや食事、手をつなぐという行為だけでは基本的に不貞行為とはなりません。
そこで、相手方に「不貞行為はない」と否定されないためにも、まずは、肉体関係に関する証拠を集めることが重要となってきます。
(2)慰謝料請求では、被害者側に立証責任がある
裁判では、浮気・不倫の慰謝料を請求する側が、不貞行為の事実などを立証しなければいけません。
これを立証責任といいます。
浮気・不倫の慰謝料を請求する場合、請求する相手によって、主に次の事実に関する証拠が必要になります。
請求する相手と必要な証拠 | |
配偶者に請求する場合 | 「不貞行為」に関する証拠 |
浮気・不倫相手に請求する場合 | 「不貞行為」に関する証拠 「故意・過失」に関する証拠 |
「不貞行為」に関する証拠は、どのような証拠ですか?
不貞行為を「直接証明できる」証拠があると一番良いです。
例えば、まさに性交をしている状況を撮影した動画などです。
もっとも、そのような証拠がないことも多いので、実際には不貞行為を「推認させる」証拠(こういう証拠があれば、通常は不貞行為があったであろうと言える証拠)を集めることになります。
慰謝料請求の裁判では、「不貞行為を推認させる証拠」によって、間接的に立証していくケースが一般的です。
そこで、有利な証拠を少しでも多く積み重ねていくことが重要になっていくのです。
さらに、浮気・不倫相手に慰謝料を請求するためには、不倫・浮気相手が、その相手が既婚者であることについての故意・過失がなければいけません。
ですから、「故意・過失」に関する証拠が必要になります。
故意・過失に関する証拠とは何ですか?
具体的にはどんなものがありますか?
浮気・不倫相手が、(自分の交際している相手が)既婚者であることを知っていたこと又は知らなかったとしても知らないことに過失(落ち度)があることの証拠です。
例えば浮気・不倫相手が「早く奥さんと別れて欲しい」と送っていたメールや、(あなたの)配偶者が浮気・不倫相手に「妻と別れて君と結婚したい」と送っていたメールなどは、浮気・不倫相手が、(自分の交際している相手が)既婚者であることを知っていたことの証拠になります。
浮気・不倫を立証できる証拠
具体的な証拠としては、次のようなものが挙げられます。
メール、SNS、アプリでの会話など
メール、SNS、アプリでの会話などは浮気・不倫の慰謝料請求の証拠となることがとても多いです。
例えば、配偶者と浮気・不倫相手の間でやり取りをしている、肉体関係を直接推認させる内容のメールなどは、不貞行為の有力な証拠となります。
先ほどご説明したように、「早く夫(妻)と別れて一緒になりたい。」などというメールであれば、浮気・不倫相手の故意、つまり相手が既婚者であることを知っていたことの証拠になります。
一方、浮気・不倫相手から「浮気相手から独身であると言われていた」という証拠(故意を否定する証拠)として使われる場合もあります。
そこで、そのメールなどによって、何を立証できるのか(何の役に立つのか)という点を見極めることが重要となってきます。
写真、動画など
写真や動画も浮気・不倫の慰謝料請求の証拠になります。
例えば、性行為中の動画(お互いの顔がはっきり写っていたり、名前を呼んでいたりして配偶者が不貞をしていることが分かるもの)などは、不貞行為を直接証明できる強力な証拠になります。
他方、性行為中であっても誰が写っているのか分からないような場合には、「自分ではない」と否定され不貞行為の証拠にならないこともあります。
夫が女性とキスをしている写真がありました。不貞行為の証拠になりますか?
キスをしている写真が1枚あるというだけでは、不貞行為の証拠として認められない可能性が高いです。
ただし、キスをしている場所が明らかにラブホテルの部屋の中であるときには、有力な証拠となる可能性があります。
また、キスをしている場所が街中やレストランなどであっても、他の証拠をとあわせて慰謝料請求のための強力な証拠になる可能性は十分にあります。
浮気・不倫を認めている音声データなど
配偶者や浮気・不倫相手が不貞を認めている音声データなどは、不貞行為を直接証明できる証拠ですから、慰謝料請求のための強力な証拠になります。
ただし、音声データは顔が写っていませんから、「誰が話しているのか」ということが後で問題になる可能性はあります。
ホテルの領収書など
ホテルの領収証は、それだけでは宿泊者が誰なのかがわからないことが多いです。
そこで、誰が、誰と、何の目的で行ったのかということが問題になります。
この場合は、日付、部屋数、部屋番号、施設の性質、施設の場所、料金、宿泊者の名前、人数について着目することが大事です。
例えば、日付は「不貞行為の日を特定するため」に重要です。
また、また、施設の性質は、何の目的で利用したかという点から重要です。
ラブホテルなのか、シティホテルなのか、ビジネスホテルなのか、などによって何の目的で施設を利用したかが一定程度わかりますので、証拠としての意味合いも変わってきます。
ラブホテルは、通常は肉体関係を持つことを目的としての利用を前提とした場所です。ですから、例えば、配偶者名義のラブホテルの領収書があれば、少なくとも配偶者に対する慰謝料請求の強力な証拠になります。
他方、ラブホテルの領収書であっても誰と一緒に行ったのか分からないのであれば、浮気・不倫相手への慰謝料請求の証拠としては不十分でしょう。
調査会社の調査報告書
いわゆる探偵による写真付きの調査報告書です。
内容は様々なため、依頼する際には何を調べてほしいのか、どんな証拠が欲しいのかなどについてしっかり話し合うようにしましょう。調査報告書ができたら、その内容を確認し、何の事実がその調査報告書からわかるのかを見極めておきましょう。
例えば、配偶者が不倫・不貞相手と一緒にラブホテルに入り、数時間後に出てきたことがわかる顔写真付きの調査報告書などは、肉体関係を推認できますので、慰謝料請求の強力な証拠になります。
また、浮気・不倫相手に慰謝料請求したくても、誰だか分からない場合には、調査により相手方を特定(氏名、住所、勤務先、家族構成、結婚の有無など)できることがあります。
配偶者や浮気・不倫相手の作成した念書など
念書とは、念のため相手に書いてもらう文書のことを指します。
念書といってもさまざまなものがあります。
「不貞行為があった」と一筆だけ書いてあるものから、「不貞行為の開始時期、肉体関係をもった回数、交際の内容、婚姻していることの認識」など、具体的な事実を認めるものまでさまざまです。
不貞行為を認める念書は、慰謝料請求の重要な証拠になります。
ただ、後になって「浮気・不倫なんてしていないのに、脅されて仕方なく書いた」「浮気してないのに、したしたとうるさいので、その場を終わらせるためにとりあえず一筆書いた。」などと念書の内容を否定されることがあります。
念書を書かせる時は、場合によっては書いている状況をICレコーダーなどで録音したりするなどの注意が必要です。
これらの証拠の1つ1つは、それだけでは証明力が弱くても、複数の証拠を積み重ねることによって不貞行為の立証が成功することもあります。
ですから、できるだけ質の良い多くの証拠を集めておくことが、慰謝料請求にあたっては重要になってきます。
一方で、肉体関係が確認・推測できない日常的な内容のメールや、買い物の利用明細等は、「証拠」として認められにくいです。
クレジットカード売上票(レシート)
加盟店名、利用(決済)日時、会員番号、利用金額、カード名義人について着目しましょう。
例えば、利用日時について、宿泊施設で午前中に決済していれば、チェックアウト時に清算したということで、宿泊したという立証に役立つことがあります。
電話の通話記録や通話履歴
肉体関係が分かるわけではないので、それ自体では有力な証拠にはなかなかなりにくいですが、頻繁に連絡を取っていたということが証明できれば、有利な証拠の1つとなる可能性があります。
なお、肉体関係を直接推認させる証拠がないという場合であっても、例えば、浮気・不倫相手と親密なメールを送り合っていることをきっかけに配偶者を問い詰めたところ、配偶者が浮気・不倫を認めるというケースも多いです。
慰謝料を請求するための証拠としてどのようなものがあれば良いのか分からない、又は手持ちの証拠で慰謝料を請求できるか分からない、という方もあきらめずにまずは弁護士に相談されることをお勧めします。
また、配偶者の浮気・不倫が疑われているものの、どんなものから証拠を集めれば良いのか分からない、という方は次の記事もご参照ください。
参考:探偵事務所の調査内容や調査費用の目安は、HPやサイトからも確認することができます。【外部サイト】

証拠を集める際の4つの注意点
手に入れた証拠が、必ず証明力の高いものとは限りません。
種類や入手方法次第では、裁判時に浮気・不倫の証拠として認められない可能性があります。
そこで、証拠を集める際に知っておくべき4つの注意点をご説明します。
1.不貞行為との関連性が薄い情報・データは証拠価値が低い
慰謝料請求のために必要な証拠について大切なのは「量より質」です。
先ほどご説明したとおり、重要なのは「不貞行為を推認させる証拠」を集めることです。
三者と出かけているというのを見たというような、不貞行為との関連性が薄い情報・データは証拠として価値がないことが多いので注意が必要です(※ただし、他に不貞行為を確認できるものがある場合は、浮気・不倫の関係を証明するものとして、証拠としての価値が認められる可能性があります)
そこで、先ほど解説したラブホテルの出入りをしたという写真など、確かな証拠を集めることが重要となります。
2.改ざんしやすいデータ(加工、編集できるもの)は証拠価値が認められない可能性がある
この場合、改ざんを疑われて証拠としての価値が認められないことがあります。
他の証拠も合わせて集めておくことや、加工が疑われない形(画面をさらに撮影するなど)での記録をすることが重要です。
デジカメの画像、メールやSNSのスクリーンショット、加工が可能な音声データなどは改ざんしやすいものといえます。
3.風俗店の領収書・風俗嬢の名刺があっても慰謝料請求が認められないこともある
風俗店といってもいろいろですが、一般的には性交渉のない風俗店(個室ビデオ店やのぞき部屋など)の利用では慰謝料を請求できないことが多いです。
他方、ソープランドなど性交渉を前提とする風俗店の場合には慰謝料を請求できる余地があります。
ただし、風俗店の利用が1度きりである場合には、請求できる慰謝料の額は少なくなる傾向にあります。証拠があったとしても、離婚時の慰謝料は一般人との不倫の場合よりも少なくなる傾向があります。
さらに、あくまでも店舗内で客に対するサービスとして性交渉を行っていた場合には、風俗嬢に対する慰謝料の請求は認められない可能性が高いです。
店内の性交渉については、客の対価を得て肉体関係に応じたものであり、それ自体夫婦の婚姻共同生活の平和を害するものではない(不法行為ではない)、と考えられているためです。
このような場合には、夫に対する慰謝料請求を検討するのが現実的でしょう。
風俗通いを理由に離婚や慰謝料請求ができるかについて詳しくはこちらの記事もご参照ください。
4.違法に集めたもの(盗聴、盗撮、窃盗)は証拠として認められないことがある
窃盗やプライバシーの侵害にあたる行為で集めた証拠は、「違法収集証拠」とみなされる傾向があります。
例えば、浮気・不倫相手の部屋に盗聴器を仕掛けて配偶者との会話を盗聴したデータなどがそれにあたります。
違法に収集された証拠は、慰謝料を求める民事裁判において証拠として認められないこともありますので、注意が必要です。
浮気・不倫の証拠の集め方
1.調査会社に依頼する
この方法によるメリットは主に2点があります。- 認められやすい証拠を最大限集めてくれる
- 証拠を集めていることが配偶者や不倫相手に発覚しにくい
ただし、一般的に費用が高額になりますので、次にご説明する慰謝料の相場から請求できる慰謝料と調査会社に支払う費用との関係で利用を検討するのが良いでしょう。
調査会社を利用する場合にはまずは調査会社に状況を説明して、見積もりを取りましょう。
この際、信頼できる調査会社に依頼すること、証拠を収集できそうな日時や場所を指定することがおすすめです。
浮気・不倫相手と会う日時や場所が指定できれば、調査期間が短くなるため、調査費用を抑えることができます。
探偵に浮気・不倫の調査を依頼するポイントについて詳しくはこちらの記事もご参照ください。
2.自分で集める
この場合のポイントは3点です。- 複数の種類の証拠を集め、証明力を高める
- 継続的な不貞行為があることを推認できるように、ある程度の期間・回数の証拠を集める
- できるだけ違法性が疑われにくい方法で証拠を集める
集めた証拠の種類や、そもそも証拠として使えるのかといった点に不安がある場合は、慰謝料に詳しい弁護士に相談することがおすすめです。
慰謝料の相場
最後に、浮気・不倫の慰謝料の相場について簡単にご説明します。
浮気や不倫が発覚した場合、離婚しなくても、慰謝料を請求することは可能です。
ただし、一般的には浮気・不倫の結果、離婚に至った方が慰謝料の金額は高額になります。
浮気・不倫の慰謝料の相場は、一般的には次のとおりです。
不倫慰謝料の裁判上の相場(目安) | |
離婚をする場合 | 約100万~300万円 |
離婚をしない場合 | 数十万~100万円 |
離婚の原因になったかどうかや交際期間など、事情や状況によって増額されたり減額されますので、慰謝料の金額には幅があります。
【まとめ】浮気・不倫の慰謝料請求のためには「不貞行為を推認できる証拠」を集めることが重要
今回の記事のまとめは、次のとおりです。
- 配偶者が浮気・不倫をしている場合には、基本的には配偶者と浮気・不倫相手に慰謝料を請求できる。
- 配偶者や浮気・不倫相手が慰謝料を支払わない場合は最終的には裁判で慰謝料を請求することになるが、その際に請求が認められるためには証拠が必要となる。
- 配偶者に慰謝料を請求するためには、不貞行為に関する証拠があれば良いが、浮気・不倫相手に慰謝料を請求する場合、不貞行為に関する証拠に加えて相手が既婚者であることを知っていたことあるいは過失により知らなかったことの証拠が必要。
- 不貞に関する証拠とは、不貞行為を直接証明する証拠のほか、不貞行為を推認させる証拠である。
- 次の証拠は慰謝料請求の証拠にならないことがあるため、証拠を集める際は注意が必要。
- 不貞行為との関連が薄いもの
- 改ざんしやすいデータ
- 風俗店の利用に関するもの
- 違法に集めたもの
- 浮気・不倫の慰謝料の相場は、離婚に至った場合は100万~300万円、離婚をしない場合には数十万~100万円程度
アディーレ法律事務所では、浮気・不倫の慰謝料請求につき、相談料、着手金をいただかず、原則として成果があった場合のみ報酬をいただくという成功報酬制です。
原則として、この報酬は獲得した賠償金等からのお支払いとなりますので、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要がありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
(以上につき、2023年4月時点)
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(※なお、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。)
また、アディーレ法律事務所では、安心してご依頼いただけるよう、離婚問題について、ご依頼の目的を全く達成できなかったような場合には、ご依頼時にお支払いいただいた基本費用などを原則として返金いたしますので、費用倒れになることは原則ありません(2023年6月時点)。
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