浮気が原因で離婚をしてしまうケースはよくあることです。
しかし、仮に浮気をされたとしても、離婚することなく、婚姻を継続しようとするケースも多いでしょう。
そこには、やはり離婚には、相当の費用やエネルギーがかかることを見込まないといけないということがあります。子どもの問題が関連してくる場合もあるでしょう。
したがって、離婚しないにこしたことはないのですが、そうして浮気問題が発覚した後に婚姻を継続する際には、やはりしっかりした取り決めをしておく必要があります。
今回は、そうした、浮気をされてしまったにもかかわらず婚姻を継続するケースについての、ポイントを解説します。
慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。
浮気されたけれど復縁すべき?まずは自分の気持ちを見つめ直す
パートナーの浮気・不倫が発覚した直後は、誰しも大きなショックを受けて頭が真っ白になってしまいます。
ですから、すぐに復縁するか離婚するかを決めずに、じっくり自分の気持ちを見つめ直す時間をとる方がよいでしょう。
「復縁か離婚か」という二択で考えるよりも、「自分がこれからどういった生活をしていきたいか」「数年後にどういう気持ちで過ごしていきたいか」という観点で考えることをお勧めします。
そうすると、おのずと取るべき道が見えてくるでしょう。
浮気を許して復縁することのメリット
ご自身の判断に後悔しないためには、浮気を許して復縁するメリットとデメリットを知っておくことが大切です。
以下で、それぞれに関して解説していきます。
(1)浮気を許して復縁することのメリット
浮気が起こった原因をよく検証して、お互いが努力し、浮気問題を乗り越えることで、以前よりも強い信頼関係が築けることがあります。
そうすれば、離婚や引っ越しなどの煩雑な手続きを取らなくて済むことになります。
また、子どもへの影響も防げることになります。
離婚をしてしまうと、シングルマザー・シングルファーザーとして子どもを養育することになりますので、経済的に苦しくなってしまうケースが多くなります。
離婚をしてしまうと経済的に不安な場合、復縁を選ぶことで生活を維持できることにもなります。
(2)浮気を許して復縁することのデメリット
さらに、浮気された側は、また浮気されるのでは?という不安につきまとわれることが考えられます。
そして、以前に浮気された際のフラッシュバックに悩まされるかもしれない、という不安もあります。その際の状況が、何度も何度も頭の中をよぎってしまうような状況です。
さらに、形式的な復縁に終わり、夫婦間の不和が続けば、かえって子どもに悪影響を与えてしまうケースもあります。
浮気から復縁しても大丈夫?判断に迷う場合のチェックポイント
たとえば、DVがある場合など、復縁について特に慎重に判断すべきケースもあります。
復縁を検討する方が一度はチェックしておきたいポイントを紹介します。
(1)DVの有無
DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、夫婦や恋人など親密な関係にある(あった)者からふるわれる暴力のことをいいます。
DVは、暴行、傷害といった犯罪行為になります。夫婦や恋人の間でも、暴行罪や傷害罪は成り立ちます。
身体的暴力だけでなく、精神的・性的・経済的・社会的暴力や、子どもを利用した暴力もDVにあたります。すなわち、子どものいる前で暴力を振るうのは児童虐待にもあたるのです。
DVが疑われるような行為がある場合は、容易に復縁を決めるべきではないでしょう。
DVは決して愛情の裏返しではないので、少しでも疑わしいことがあれば、自分の生命・身体を守るために、自治体や専門機関の相談窓口、弁護士などに相談するようにしましょう。
(2)浮気の回数
浮気を繰り返されている場合にも、復縁には慎重になった方がよいでしょう。浮気性な人は、いつまでたっても治らないケースも多いからです。
今回は許しても、万が一また浮気されたらどうするか、などということも考えてみるべきでしょう。
それでもやはり復縁したいときは、もう浮気はしないという示談書を作り、約束を破ったら慰謝料を支払ってもらうという対応を検討するとよいかもしれません。
慰謝料の約束にプラスして、「今度浮気したら離婚」と約束したり、離婚届にサインして交付させたりするケースもあります。
(3)浮気相手が妊娠していないか
もし夫が浮気して、その浮気相手が妊娠し、夫が浮気相手との子どもを認知した場合、その子どもも夫の財産を相続する権利を持つことになります。
その場合、法律上は、夫婦間の子どもも、浮気相手との子どもも、同じだけ相続分を持つことになっています。したがって、事前に相続に関する話し合いをしておくことが必要となってくるでしょう。
また、認知された子どもには、養育費を払わなければなりません。
子どもを監護する親は、子どもを監護していない親に対して、子どもを育てていくための養育に要する費用を請求することができます。
この費用が「養育費」と言われるものです。
離婚をしたとしても、2人とも親である以上、子どもを扶養する義務があるだけに、養育費は監護をしない相手方の親から当然支払ってもらうべき費用ということになります。
浮気相手が妊娠している場合は、この件も含めてよく考えておくべきでしょう。
なお、夫が浮気相手との子どもを認知している場合、離婚しても認知した子どもの養育費請求権や相続権はなくならないため、離婚は解決方法になりません。離婚をしたとしても、養育費の支払い義務は継続して負うことになります。
(4)配偶者がどこまで本気か
浮気にのめり込んで同棲を始めてしまったり、生活費も払ってもらえなくなったりしたら、離婚を考えざるを得なくなってしまうでしょう。
浮気を許して復縁すると決めたら守りたい3つのポイント
浮気を許して復縁すると決めたら、以下の内容に気をつけることが大切です。
(1)浮気の原因について冷静に話し合う
まずは、どうして浮気をしてしまったのか、根本的な問題を探るのがよいでしょう。
コミュニケーションが不足して寂しかった、性生活のあり方に満足できなかった、パートナーの愛情を感じ取れずに不安だった、自分の存在価値を認めてほしかったなど、さまざまな理由で人は浮気に走ります。
浮気した側が悪いのはもちろんですが、浮気された側が改善できることもあるので、冷静に話し合って、関係をより良いものにしていくことが大切でしょう。
(2)次はないことをはっきり伝える
もちろん、相手に甘くなる必要はありません。
自分が浮気されて感じたこと(傷ついた、悲しかった、怒りに震えた、など)を説明し、「今回は許すけれどもう次はない」という旨をはっきりと伝えましょう。
慰謝料の話をしたり、「次に浮気したら離婚」という約束をしたりするのがよいでしょう。
(3)一度許したら浮気のことを蒸し返さない
浮気問題がすべて片付いたら、そのあとは浮気の話を無駄に蒸し返さないことも重要です。
世の中には、「浮気や不倫をしたら絶交、もう二度と会わない」といった人も多いでしょう。
浮気を発見したときの気持ちなどが何度もよみがえってつらい気持ちになることがあるかもしれません。
そういったときは、カウンセリングを受けて、心理のプロとともに心の問題を解決していくことをおすすめします。
復縁後に二度と浮気をさせないためにやっておきたい3つのこと
復縁後にもう二度と浮気をさせないようにするには、やはりしっかりとけじめをつけておくことが大切です。
そこで、以下では、3つの対処法を解説します。
(1)浮気相手との接触をやめさせる
同じ相手との浮気を再発させないように、浮気相手とパートナーの接触を禁じておきましょう。こうした条項を、接触禁止事項といいます。
そうした接触禁止事項については、違反した場合にペナルティ(違約金)を与えることも可能です。
したがってこの場合は、浮気相手も交えて、しっかりと条項を確認しながら、示談書を作成した方がよいでしょう。
(2)けじめとして慰謝料を請求する
不貞行為(配偶者以外とおこなう性行為のことをいいます。風俗店などでの1回きりのものは除きます。)の事実があれば、配偶者の浮気(不倫)は民法709条の不法行為に該当することになります。
民法709条では、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と規定されています。
この侵害行為のことを、法律上は不法行為と呼んでいます。そして、権利や利益を侵害された側(被害者)は、侵害した側(加害者)に対して、損害賠償責任の追及として、慰謝料を請求することができます。
配偶者以外とおこなう性行為としての不貞行為は、相手方の配偶者を精神的に傷つけてしまうため、上記の条文にしたがい、損害賠償責任が生じることとなります。
慰謝料といえば離婚のときに請求するものというイメージがあるかもしれませんが、婚姻を継続する場合でも、請求することはできます。
婚姻継続の場合は、浮気相手にのみ請求することが多いです。
浮気をした配偶者に請求しても、それからも婚姻を継続して家計を共有するわけですから、結局自分が自分の家庭に請求するような形になってしまうからです。
そのようにして、けじめとして浮気相手に慰謝料を支払ってもらうことで、浮気の再発防止が期待できます。
(3)示談書を作成しておく
接触禁止の要求や慰謝料の請求を行う場合は、示談書を作成し、双方の取り決めをしっかり書面に残しておくことが大切です。
接触禁止条項に反した場合には、違約金を支払う内容にすべきでしょう。
示談書は、あとでトラブルが起こらないよう、論理的で明確な内容である必要があります。
接触禁止の要求や、慰謝料の請求、そして示談書の作成は、すべて「テンプレート通り」にはいかないものです。
これらを検討している方は、トラブルを避けるため、まずは弁護士に相談するのがおすすめです。
【まとめ】浮気に対する慰謝料請求はアディーレ法律事務所にご相談ください
パートナーの浮気を許し、関係を継続するのには、かなりの寛容さと覚悟が必要なはずでしょう。
浮気をした側にも、しっかり覚悟を持って改心してもらうことが大切です。
復縁後の生活を安心して送るためのけじめとして、慰謝料の請求も検討してみてはいかがでしょうか。
復縁するにしても、示談書など法的な対応が必要になるので、弁護士に相談するとよいでしょう。