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【弁護士監修】夫以外の子を妊娠したら、法律上だれが父親になる?

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kiriu_sakura

「もしかしたら、今妊娠しているのは夫の子じゃないかもしれない。子に罪はないし、出産して大事に育てるつもりだけれど、法律上は、だれが父親になるのかな…」

このような場合、法律上は夫の子だと推定されます(嫡出推定:民法772条1項)。
そのため、あなたの夫が法律上の父親として扱われることになるでしょう。

しかし、仮に夫以外の男性の子であるということが発覚した場合、この推定がくつがえる可能性があります。

そうなると、生まれてくる子の父親についての身分関係が不安定になります。また何よりも、子が実の親を知る機会がなくなったり、夫の子ではなかった場合には結果的に自分の子だと信じる夫をだますことになるという問題があります。今のうちに生じ得るリスクや影響について知っておくと良いでしょう。

今回の記事では、次のことについて弁護士が解説します。

  • 法律上の親子関係とは
  • 法律上の推定が覆る場合とは
この記事の監修弁護士
弁護士 池田 貴之

法政大学、及び学習院大学法科大学院卒。アディーレ法律事務所では、家事事件ドメイン(現:慰謝料請求部)にて、不貞の慰謝料請求、離婚、貞操権侵害その他の男女トラブルを一貫して担当。その後、慰謝料請求部門の統括者として広く男女問題に携わっており、日々ご依頼者様のお気持ちに寄り添えるよう心掛けている。東京弁護士会所属。

法律上は、夫の子と推定される

民法は、法律上の親子関係について、次のように規定しています。

第722条1項(嫡出の推定)

妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。

引用:民法|e-Gov法令検索

法律上婚姻している夫婦の間で、子どもが生まれるたびに「自分の子ではないかもしれないから扶養しない(子の生活費を出さない)」という夫の主張が許されれば、あまりに子の地位・身分を脅かします。
そこで、法律によって、婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子は、夫の子と推定することになっているのです。
これを嫡出(ちゃくしゅつ)推定制度といいます。

嫡出推定によって法律上の親子関係が生じると、父親には、子に対する扶養義務が発生します。
扶養義務とは、簡単に言えば生活に必要な費用を出して子を養う義務のことです。

そして、法律上の親子関係が生じると、父と子は互いに相続人となります。
父親が亡くなった場合、その子は相続人となります(民法887条1項)。
つまり、父親が亡くなった場合は子がその遺産を相続する権利を持つことになります。
また、父親より早く子が亡くなり、その子に孫やひ孫などの直系卑属がいない場合には、父親が相続人となります(民法889条1項1号)。

父親と法律上の親子関係が認められることで、子の身分関係は安定

  • 子は父親に対して扶養を求める権利があり、父親は子を扶養する義務がある
  • 子は父親の財産を相続する権利がある(父親も子の財産を相続する場合がある)

離婚後300日以内でも「前夫の子」に

さらに、民法772条2項は、次のように規定しています。

第722条2項(嫡出の推定)

婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

引用:民法|e-Gov法令検索

つまり、婚姻中ではなくても、離婚後300日以内に生まれた子についても、法律上の父親は前夫となるのです(※ただし、この規定は将来改正される可能性があります)。

嫡出推定

コラム~民法722条の【嫡出推定】
この規定の目的は、子の父親との法律上の親子関係が認めることで、子の身分関係を安定させることにあります。
しかし、この規定があることで、かえって子の身分関係を脅かすという事態が生じていました。

離婚後300日以内に出産した女性が、前夫が子の法律上の父とされることを防ぐために、出生届を提出せずに無戸籍の子どもが生じてしまっていたのです。
法制審議会の部会がまとめた民法改正の要綱案(2022年2月1日付)によると、今後、女性が出産した時に再婚していれば、たとえ出産の日が離婚後300日以内であったとしても現在の夫の子だと推定する、という規定が新たに設けられる可能性があります。

この改正の目的は、前夫の子と推定されて法律上の親子関係が生じることを避けるため、再婚後に出産した女性が出生届を提出せず、無戸籍の子どもが生じるケースを防止することです。

しかし、民法772条2項の規定自体は残り、女性が再婚していなければ子の父親は前夫と推定されますので、無戸籍の子が生じるという同様の問題が残ります。

参考:「民法(親子法制)等の改正に関する要綱案」(令和4年2月1日)|法務省

夫以外の男性の子であることが発覚した場合は法律上の親子関係がくつがえる可能性も

先ほどご説明したとおり、そのまま夫の子として育てるつもりなのであれば、その子は法律上も夫の子として扱われることになります。
しかし、これからご説明するように、その子が夫以外の男性の子どもであり、万が一そのことが発覚した場合、法律上の親子関係がくつがえるかもしれません。

(1)嫡出否認

嫡出推定による法律上の親子関係は、あくまで「推定」ですので、夫が生まれた子との親子関係を争った場合にはくつがえる可能性があります。
嫡出推定をくつがえす制度としては、嫡出否認(民法774条)があります。

第774条(嫡出の否認)

第七百七十二条の場合において、夫は、子が嫡出であることを否認することができる。

引用:民法|e-Gov法令検索

例えば、何かのきっかけで、あなたが妊娠前に夫以外の男性と肉体関係を持ったことが夫に発覚したとします。それで子の父親が自分ではないかもしれないと疑念を抱いた夫がDNA鑑定を依頼した結果、生物学上の親子関係が否定された場合に、夫が法律上の親子関係を否定するための手段が、この「嫡出否認」です。

嫡出否認のためには、まず家庭裁判所に嫡出否認の調停を申立てます。

この調停で解決できず不成立となった場合には、嫡出否認の訴え(民法775条)を提起する必要があります。
ただし、夫が子の出生を知ったときから1年以内でなければ、嫡出否認の手続きをすることはできません。

では、子どもが生まれてから1年経てば、夫と法律上の親子関係が否定されることはないのですか?

夫が、子が生まれたことを知ってから1年経てば、「嫡出否認」はできなくなるのが原則です。
しかし、例外的に「親子関係不存在確認」という方法で、法律上の親子関係を否定できる場合があります。

参考:嫡出否認調停|裁判所 – Courts in Japan

(2)親子関係不存在確認

「親子関係不存在確認」によって、親子関係を否定できるのは、主に次の場合です。

  • 推定されない嫡出子
  • 推定の及ばない嫡出子

それぞれ、ご説明します。

親子関係不存在確認ができる場合

親子関係不存在確認も、嫡出否認の場合と同様、まずは家庭裁判所に調停を申立て、調停が不成立になった場合には、親子関係不存在確認の訴えを提起することになります。
嫡出否認とは異なり、親子関係不存在確認に期間制限はありません。

参考:親子関係不存在確認調停|裁判所 – Courts in Japan

(2-1)推定されない嫡出子とは

「嫡出子」とは、法律上結婚している男女の間に生まれた子のことです。
しかし、結婚後200日以内に生まれた子は、民法772条2項により嫡出推定されないため、「推定されない嫡出子」と呼ばれます。

授かり婚(できちゃった婚)の場合が典型的なケースといえるでしょう。
推定されない嫡出子であっても、出生届の提出により夫婦の嫡出子となります。
しかし、夫となった男性との親子関係が推定されないことから、親子関係を争う場合には、嫡出否認ではなく、親子関係不存在確認の申立てをすることができます。

(2-2)推定の及ばない嫡出子

先ほどご説明したとおり、結婚後200日経過後~離婚後300日以内に生まれた子は、本来嫡出推定が及びます。
ですが、その期間内に生まれた子であっても、夫の不在期間に妊娠した子など、夫の子を妊娠する可能性がないことが客観的に明らかであれば、例外的に嫡出推定は及びません。
このような子を「推定の及ばない嫡出子」と言います。
推定の及ばない嫡出子についても、例外的に親子関係不存在確認の訴えを提起できる可能性があります。
例えば、次のようなケースです。

  1. 夫が服役中
  2. 夫が長期出張中で一度も会っていない
  3. 夫が海外在住で別居していた     など

嫡出推定を受ける子について、夫がその出生を知ってから1年が経過しても、DNA鑑定で親子関係がないという結果が出た場合は、親子関係不存在の訴えが認められますか?

嫡出推定を受ける期間(婚姻から200日経過後~離婚後300日以内)に子どもが生まれた場合には、DNA鑑定により科学的に本当の子どもではないと証明できたとしても、基本的には親子関係不存在確認は認められないでしょう。

妊娠した時期に夫婦が性的関係を持つことが客観的にあり得ない事情があったわけではなく、DNA鑑定の結果はその後の事情に過ぎません。
このような場合にも父親からの親子関係不存在を認めると、それまで養育されてきたのに、今後の扶養や相続を否定されることになり、子と父との身分関係が不安定になります。

法的な親子関係は、生物学的な親子関係と一致するとはかぎりません。次の最高裁判決では、生物学上の父子関係が否定されても、嫡出推定ありとされ、親子関係不存在確認の訴えで親子関係を争うことはできないと判断されています。

最高裁判所判決平成26年7月17日より一部引用

夫と子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであり、かつ、子が、現時点において夫の下で監護されておらず、妻及び生物学上の父の下で順調に成長しているという事情があっても、子の身分関係の法的安定を保持する必要が当然になくなるものではないから、上記の事情が存在するからといって、同条による嫡出の推定が及ばなくなるものとはいえず、親子関係不存在確認の訴えをもって当該父子関係の存否を争うことはできないものと解するのが相当である。

参考:最高裁判所判決平成26年7月17日|裁判所

じゃあ、うちの場合は夫とは数年前に結婚していて出産するわけだから、子が生まれて1年経つまでに浮気がバレなければ、法律的に夫が父親だと扱われるということですね。ずっと同居していて、夫の子を妊娠する可能性も大いにあり得ますし。

お子さんとの関係はそうなるでしょう。
しかし、お子さんの本当の父親は誰なのかという問題、お子さんにそれを知る機会を与えるべきかどうかという問題は残ります。また肉体関係を伴う浮気が発覚すれば、あなたが夫から離婚や慰謝料を請求される可能性があります。

夫から離婚や慰謝料を請求される可能性について

肉体関係を伴う浮気は「不貞行為」といって、原則として法定離婚事由に該当します。
つまり、不貞行為をした方が「離婚したくない」と言って離婚を拒否したとしても、離婚を求める裁判を提起されると、離婚が認められる可能性が高いということになります。

さらに、離婚の原因を作った配偶者は、離婚の際に慰謝料を請求される可能性があります。
慰謝料というのは、法律上、加害者の不法行為により加えられた精神的苦痛に対して加害者に請求することが認められている損害賠償のことです(民法709条)。
浮気された側は、配偶者の不貞行為によって婚姻共同生活が破壊され離婚せざるを得ず、精神的苦痛を被ったとして、離婚慰謝料を請求することができます。

離婚には至らなかった場合であっても、夫から不貞行為を理由に慰謝料を請求される可能性があります。離婚しなくても、不貞行為により夫に精神的苦痛を与えたことについては、その責任を取る必要があります

不貞行為で妊娠した場合について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

不倫で妊娠が発覚した場合はどうする?取るべき行動についても解説

【まとめ】婚姻中に妊娠したなら、夫以外の男性の子であっても原則として夫が法律上の父親となる(嫡出推定)

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 妻が婚姻中に妊娠した子は、夫の子であると法律上推定される(嫡出推定)
  • 嫡出推定をくつがえす手段として、嫡出否認という制度がある
  • 嫡出否認は、夫が子の出生を知ったときから1年以内にしなければならない
  • 親子関係不存在確認は、「嫡出推定が及ばない子」や「推定されない嫡出子」との親子関係を否定する場合の手段である
  • DNA鑑定などで父親が夫ではないことが発覚しても、嫡出推定は及んでいるため、親子関係不存在確認の訴えで父子関係を争うことはできない

婚姻中に妊娠した子が、夫以外の男性の子である可能性があったとしても、法律上は夫が父親だと推定されるのが原則です。
しかし、もしも婚姻中の浮気(不貞行為)が発覚すれば、嫡出否認によって夫が扶養義務を免れることにより子の身分や地位が不安定なものになってしまう可能性があります。

また、あなた自身も夫から離婚や慰謝料を請求される可能性があります。

もし、夫以外の男性の子を妊娠したかもしれないとお悩みの方は、法律上の親子関係などについて対応している弁護士に相談してみるといいでしょう。

この記事の監修弁護士
弁護士 池田 貴之

法政大学、及び学習院大学法科大学院卒。アディーレ法律事務所では、家事事件ドメイン(現:慰謝料請求部)にて、不貞の慰謝料請求、離婚、貞操権侵害その他の男女トラブルを一貫して担当。その後、慰謝料請求部門の統括者として広く男女問題に携わっており、日々ご依頼者様のお気持ちに寄り添えるよう心掛けている。東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

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