交通事故の過失割合は、最終的に被害者が受け取れる賠償金額に大きな影響を与えます。
自動車とバイクの事故では、バイクの方が交通弱者であることもあり、自動車の方の過失が大きいとされる傾向にあります。そして、自動車とバイクの巻き込み事故でも、基本的に、自動車側の責任が重いと考えられています。
ただ、事故の状況次第では、バイクの方の被害が大きい場合であっても、バイクの方の過失が大きいとされる可能性があります。
賠償金を損をせずに受けとるためには、被害者自身も過失割合について知っておくことが重要です。
今回の記事では、次のことについて弁護士がくわしく解説します。
- 巻き込み事故の概要
- 原付・バイクの巻き込み事故の過失割合
- 過失割合を決めるポイント
岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。
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バイク(原付)が被害者になりやすい「巻き込み事故」とは
「巻き込み事故」とは具体的にどういう事故を指すのか、またどういう原因で発生する事故なのかを説明します。
(1)巻き込み事故とはどういった事故か
「巻き込み事故」とは、通常、交差点を曲がろうとした自動車が、後方から交差点を直進しようとした二輪車(バイクや原付、自転車)と接触する交通事故のことを指します。
自動車が、二輪車を巻き込むようにして事故になることから「巻き込み事故」と呼ばれています。
巻き込み事故は典型的な事故類型の一つであり、死亡事故など重大な結果が生じることもあることから、運転免許の安全講習でも頻繁に取り上げられているようです。
(2)巻き込み事故の原因
巻き込み事故が発生する主な原因としては、次のようなものがあります。
- 交差点を曲がろうとする自動車の後方確認が不十分である。
- 交差点を曲がろうとする自動車が、方向指示器(ウィンカー)を適切に操作していない(出すタイミングが遅い、方向を間違えるなど)。
- 自動車が、内輪差(四輪以上の車輪を持つ車両がカーブを曲がる時、内側の前輪と後輪が描くアーチの半径に生じる差)を意識せずに運転している。
- 左折する際に十分に左端に寄らなかったために、後方からバイクが左3端を直進してきた。 など
(3)交差点を左折する車両が守るべき交通ルール
交差点で左折しようとする車両には、巻き込み事故を起こさないために、次のような守るべきルールがあります。
- 交差点の手前30mの地点から合図を出す(道路交通法53条1項、2項、道路交通法施行令21条)。
- あらかじめできる限り道路の左端に寄り、かつ、できる限り道路の左端に沿って徐行する(道路交通法34条1項)。
- 左折時には、ルームミラー、サイドミラーを確認し、ミラーで確認できない死角部分は目視して安全確認を行う。
交通事故が発生するということは、当事者に何らかの過失があったと考えられます。特に、巻き込み事故の場合には、左折する自動車側に、上記の守るべきルールを守らなかったことで巻き込み事故が起こることが多いです。
そのため、基本的に、巻き込み事故の過失割合は、自動車の運転者の方の過失が大きいとされ、バイク側の過失は比較的に小さいとされています。
ただし、バイク側に著しい前方不注意があるなどの過失が認められる場合には、過失割合が修正されます。
【ケース別】バイクが被害者となる左折巻き込み事故の過失割合とは
次に、バイクが被害者となる左折巻き込み事故の基本の過失割合について説明します。
なお、基本の過失割合は、具体的な事故の状況次第で、修正される可能性があります(くわしくは後で説明します)。
(1)先行して左折する自動車が、後ろから直進するバイクを巻き込んだケース
交差点手前30mの時点で、先行する自動車が左折の指示を出して、左折を開始したが、後ろから直進するバイクを巻き込んだケースです。
このケースの基本の過失割合は、「バイク:自動車=20:80」です。
自動車側に大きな過失があるとされる一方で、バイク側にも、自動車の左折の合図に気をつけていれば避けられた可能性がありますので、軽度の前方不注意の過失が認められます。
(2)後続の自動車が、先行するバイク(原付)を追い越して左折したケース
後続の自動車が、先行するバイクを追い越して左折し、バイクを巻き込んだケースです。
このケースの基本過失割合は「バイク:自動車=10:90」です。
このケースの場合、(1)先行して左折する自動車が、後ろから直進するバイクを巻き込んだケースよりも、自動車側の過失が大きくなります。
それには、次の2つの理由があります。
- 交差点の手前30mは追い越しが禁止されている(道路交通法30条3号)
- 左側のバイクの存在およびその進路妨害をすることを当然認識している
過失割合は事故の状況次第で変わる!?修正要素とは
基本の過失割合は、事故の状況次第で修正されます。
例えば、車の運転者が飲酒運転をしていた場合には、車側の過失が基本の過失割合よりも大きくなります。一方で、バイク側もスピード違反があった場合には、バイク側の過失が基本の過失割合よりも大きくなります。
このように、基本の過失割合は、事故の状況次第で修正される可能性があるのです。これまで説明した基本の過失割合が修正される主な修正要素としては、次のようなものがあります。
(1)自動車の過失割合が加算される要素
修正要素 | 自動車に加算される過失割合 |
---|---|
大回り左折・進入路鋭角 | 10 |
左折合図遅れ | 5 |
左折合図なし | 10 |
直近左折 ※ | 10 |
徐行なし ※ | 10 |
著しい過失(わき見運転等著しい前方不注意、携帯電話等を利用しながらの運転、酒気帯び運転、一般道路上で概ね時速15㎞以上30㎞未満のスピード違反など) | 10 |
重過失(酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、一般道路上で概ね時速30㎞以上のスピード違反など) | 20 |
(2)バイクの過失割合が加算される要素
修正要素 | バイクに加算される過失割合 |
---|---|
著しい前方不注意 | 10 |
15㎞以上の速度違反 | 10 |
30㎞以上の速度違反 | 20 |
著しい過失(わき見運転等著しい前方不注意、携帯電話等を利用しながらの運転、酒気帯び運転など) | 10 |
重過失(酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、高速道路におけるヘルメット不着用、ことさらに危険な体勢での運転など) | 20 |
過失割合の修正要素についてくわしく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
不利な過失割合にならない2つのポイント
交通事故の過失割合は、被害者が最終的に受けとることのできる賠償金額を大きく左右します。
例えば、事故の被害者に過失があるとされた場合には、賠償金額が、被害者に過失があるとされた分だけ減額されることになります。
つまり、適切な賠償金を受け取るためには、その前提として、事故の状況を踏まえた適正な過失割合を算定することが非常に重要です。
ただし、ここで注意が必要なのが、保険会社の提示する過失割合は、被害者に不利な形になっているケースも少なくないということです。
事故当事者の主張が異なる場合には、被害者の主張ではなく、加害者の主張する事実に基づいて過失割合を提案してきている可能性があります。
例えば、バイク側(被害者側)は前方不注意などしていないのに、加害者側が「バイク側(被害者側)が前方不注意をしていた」と主張し、その主張に基づいて被害者に不利な過失割合が認定されてしまっているケースです。
このように、被害者側が納得のいかない不利な過失割合になってしまう可能性があります。このような不利な過失割合にならないためには次の2つポイントを踏まえておきましょう。
- 現場の写真など証拠になりそうなものを残しておく
- 交通事故への対応経験が豊富な弁護士へ相談する
それぞれ説明します。
(1)現場の写真など証拠になりそうなものを残しておく
自分の主張する過失割合が正しいと相手方を説得するためには、根拠が必要です。
例えば、自動車とバイクの破損部分や事故現場を撮影した写真や車やバイクにドライブレコーダーを搭載している場合には、ドライブレコーダーの録画映像も証拠になります。
また、警察が作成する実況見分調書も過失割合を算定する際の証拠となります。事故の当事者は、実況見分に立ち会いますので、警察に対してしっかりと事故状況について説明したうえで、調書に残してもらうようにしましょう。
過失割合の決め方についてくわしく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
(2)交通事故への対応経験が豊富な弁護士に相談する
加害者側から提示された過失割合に納得できず、自分で交渉しても話が進まない場合には、交通事故への対応経験が豊富な弁護士に相談してみることをおすすめします。
自分で対応しても、相手方の任意保険会社が誠実に対応してくれなかったり、自分の主張を適切に伝えられなかったりすることがあります。
しかし、交通事故の対応経験が豊富な弁護士に示談交渉を依頼したりすると、弁護士は、道路状況や車の損傷部分や程度などのさまざまな証拠をもとに正しい事故状況を検討します。そして、弁護士はその結果を基に保険会社と交渉します。これにより、妥当な過失割合で保険会社と示談できる可能性が高まります。
弁護士に依頼することで保険会社が提示する示談金額よりも増額できる可能性があります。「示談金の金額が妥当かわからない」「示談金の金額に納得ができない」という方も弁護士へ相談ください。
【まとめ】バイクの巻き込み事故の過失割合は自動車側の過失が大きくなる傾向がある
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 基本的に、巻き込み事故の過失割合は、自動車の運転者の方の過失が大きいとされ、バイク側の過失は比較的に小さいとされています。
- バイクが被害者となる左折巻き込み事故の過失割合(ケース別)
- 先行して左折する自動車が、後ろから直進するバイクを巻き込んだケース
→バイク:自動車=20:80 - 後続の自動車が、先行するバイク(原付)を追い越して左折したケース
→バイク:自動車=10:90
- バイク側の修正要素(バイク側の過失が大きくなる可能性あり)
- 著しい前方不注意
- 15㎞以上の速度違反
- 30㎞以上の速度違反
- 著しい過失(わき見運転等著しい前方不注意、携帯電話等を利用しながらの運転、酒気帯び運転など)
- 重過失(酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、高速道路におけるヘルメット不着用、ことさらに危険な体勢での運転など)
- 不利な過失割合にならない2つのポイント
- 現場の写真など証拠になりそうなものを残しておく
- 交通事故への対応経験が豊富な弁護士へ相談する
交通事故の賠償金や過失割合は、保険会社に任せておけばこちらに不利なことはないだろうと思われているかもしれません。
しかし、保険会社が提示してくる過失割合や示談金の額を鵜呑みにしてしまうと、最終的に貰える賠償金額が、弁護士が交渉すればもらえたはずの金額より、低くなってしまうケースが多くあります。
交通事故の被害による賠償金請求をアディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、原則として手出しする弁護士費用はありません。
すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。
また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりご相談者様・ご依頼者様に手出しいただく弁護士費用は原則ありません。
※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。
実際のケースでは、弁護士費用は、この上限内に収まることが多いため、ご相談者様、ご依頼者様は実質無料で弁護士に相談・依頼できることが多いです。弁護士費用が、この上限額を超えた場合の取り扱いについては、各法律事務所へご確認ください。
(以上につき、2022年1月時点)
交通事故の被害にあって賠償金請求のことでお悩みの場合は、交通事故の賠償金請求を得意とするアディーレ法律事務所にご相談ください。